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レディアント・ロード 2nd season  作者: hygirl
魔獣怪異編
4/1085

4話 脅かす影


 《センチネル・ガーディアン》、その話をする前にまず簡単な話をしよう。

 

 姫神ヒロムとその仲間である雨月ガイたちがチーム《天獄》の結成に至る経緯にもなり、《センチネル・ガーディアン》というシステムが生まれたきっかけとも言えるある事件がこの物語の半年前に起きていた。

 

 この事件を日本政府と関係者は《十家騒乱事件》と呼んで後世にも語り継いで同じ過ちを繰り返さぬようにしている。そもそもその《十家騒乱事件》とは何なのか?

 事件の名にも入っている《十家》、これは家の名に一から十の数字のいずれかを持つ10の名家の集まりを指す言葉であるとともに古くから日本にあったシステムだ。優れた能力を持つ当主10人政府や警察に代わって必要な権力のもとで治安の維持や経済の発展、果ては国家の未来すら担おうとしていたものだ。だがこのシステムはある家が日本国家を支配するためにその必要性をでっち上げて築くことで権力を得ようとして組み上げられたものだった。

 

 その家は《十神》、《十家》というシステムを築いた家であり100年ほどは最強の能力者が数代に渡って当主を務めながらトップに君臨していた。君臨する中で《十神》は圧倒的な権力を得ていき、その権力を得た《十神》の新しい当主・十神アルトは若くして刀身になると力を欲する強欲さからありとあらゆる人間を権力で絶望させた。その被害者の1人が姫神ヒロムである。姫神ヒロムは十神アルトの権力悪用による策略のせいで幼くして希望を奪われるような被害に遭ってしまい、16歳の夏に黒幕が誰かも分からず戦うヒロムの父親は彼を強くするためにその身を犠牲にして命を絶つ。家族を失いながらもヒロムは黒幕である十神アルトを当初は敵と思われていた《十家》の一角たる《一条》の協力を受けながらも倒した。

 

 その際に十神アルト以外にも権力に盾にして悪事を働いていた当主もヒロムと彼の仲間によって暴かれ、日本政府は《十家》というシステムを廃止するとともにその権力を無効化。当然のように全てを企てた《十神》と現当主の十神アルトは罪人として扱われることとなった。

 

 《天獄》というチームは姫神ヒロムと昔から付き合いのある雨月ガイと相馬ソラ、一度は敵として戦った黒川イクトと紅月シオン、ほかのメンバー数人とともに姫神ヒロムを陥れた権力に抗うために結成されたもの。

 彼らの行いにより《十家》の闇が暴かれ、同時に黒幕の十神アルトの暴挙を止めるに至った。その功績を日本政府と警視総監が考慮した上で今の日本国が権力の支配から解かれるとともに悪意に飲まれる可能性があるとしてそれに対抗する策として用意したのが国の防衛と悪意への脅威として力を示すための《センチネル・ガーディアン》という新たなシステムだ。《十家》での過ちを重ねぬように《センチネル・ガーディアン》には暴動などの騒乱への戦闘介入およびそれの正当化、テロリストの出現に際しては警察等の許可無く自由に対処出来るという対能力者のシステムが設けられた。国の防衛戦力とも言える《センチネル・ガーディアン》には数人が任命されており、その中の1人が姫神ヒロムであり《天獄》はそんな彼の協力者としてその恩恵を受けて活動できる組織として選ばれたのだ。


 彼ら《天獄》のメンバーは姫神ヒロムが《センチネル・ガーディアン》に任命されると協力を受諾するが、その条件として《警察や政府の飼い犬にはならない》《戦闘行動および防衛行為に口出ししない》《学生である自分たちの日常に干渉しない》というものを姫神ヒロムとともに提示し、政府と警視総監はそれを了承。これにより姫神ヒロムたちは先日の3悪党への攻撃を行い、それを街を守るための行為として正当化している。

 

 ……少し話が長くなったが、要点をまとめるならば

・かつてヒロムを陥れた悪党がいた

・その悪党が権力を握って日本を支配すべく暗躍していた

・ヒロムたちはそれを阻止した

・阻止したヒロムたちは国が認める防衛戦力の1つとなった

 

 と覚えてもらえればいい。

 

 

 すまない、話の要領が悪いせいで長くなった。物語にはあと数行で戻るから要点だけ覚えてくれれば有難い。では……

 

 

 

 

 

******

 

 

 ゾノ、ガビ、大男を倒したその翌日。春休みの最中であるヒロムはシオンと街にいた。

ジャージ姿のどこかやる気のなさそうなヒロムと銀髪に赤目でどこか人相の悪いシオン。2人が揃って歩くとガラの悪いヤンキーに思えてもおかしくない。一応は国の防衛手段となる《センチネル・ガーディアン》なのだが、その点を差し引いた場合2人はただの不良だ。

 

「珍しいな。オマエがオレについてくるなんて」

 

「別に。オマエといれば何か問題が起きて敵が現れるとかは思ってねぇから安心しとけ」

 

「……悪い、少し意外だとか思ったオレがバカだった。

相変わらず根っからの戦闘好きなんだな、オマエは」

 

「当然だな。オレの中には今は滅んだ戦闘種族《月閃一族》の血が流れてるからな。

その血があるかぎりは戦いを求め続ける運命にある」

 

「単にオマエが戦闘好きってだけなんじゃないのか?」


「そうとも言えるな。

だから1年前にオマエに挑んで負けて、その屈辱を晴らすために近くで技術を盗もうとしたら……気がつけば国が認める防衛戦力の1人の協力者になったってわけだ」

 

 経緯が経緯だからか今の自分がどこかおかしく思えるシオンの語る話。その話を聞くヒロムは話を聞いた中で感じたことを彼に言った。

 

「少なくともオレはオマエが力になってくれると言ってくれた時は何かを守ろうとする意志を感じた。オレを倒そうとしてたとかは初耳だけど、オマエがオレたちの仲間として誇らしい存在になったのは光栄なことじゃないか?」

 

「どこがだ。

防衛戦力になったとはいえオマエやガイの提示した条件のせいで大して派手な戦いを出来るわけでもねぇ窮屈さは消えねぇからな。

その点だけは納得いかねぇ」

 

「とか言いながら昨日の編成も二つ返事で納得してたろ。

オマエ、案外いいヤツなんだよな」

 

 うるせぇ、とヒロムの言葉にどこか照れながらシオンは言うと彼から離れるようにどこかへ向かっていく。

 

「どこに行くんだ?」

 

「気が変わった。何か騒ぎが起きたら戻ってくる」

 

 行き先を伝えることなくシオンは雷を纏いながら消え、シオンの自由さにヒロムはどこか羨ましさを感じながらどこかに向かうわけでもなく歩こうとした。

すると……

 

「ヒロムくん!!」

 

 ヒロムが1人で歩こうとすると後ろから誰かが彼の名を呼ぶ。女の声、その声に覚えがあるのかヒロムは振り向くと笑顔を見せる。

 ヒロムが振り向くとその先には1人の少女がいた。長い黒髪に綺麗な黒い瞳、整った容姿の少女は年相応の可愛らしいオシャレな格好をしてヒロムの元へと慌てて駆け寄って来る。

 

「ヒロムくん、1人なの?」

 

「いや……さっきまでシオンがいた。

ユリナが名前呼ぶ寸前に消えたんだけど……」

(アイツ、わざとだな)

 

 シオンがどこかに消えた理由が何なのか察しのついたヒロムは彼の行動に少し呆れてしまうもすぐに気を取り直すと少女と話した。

 

「そういえばユリナも1人なのか?」

 

「う、うん。

今日は夕飯の買い出しを……」

 

「まだ昼前なのにもう晩飯の買い出しか。

相変わらず家の事手伝ってるとはさすがだな」

 

「そういうヒロムくんはいつも通り?」

 

「だな。家には何から何までやってくれるアイツがいるし、アイツがいなくてもフレイたちがやってくれるからつい頼っちまう」

 

「ふふっ、そうなんだ」

 

 他愛もない世間話、何気ない会話ではあるがこの会話をしてるこの瞬間はヒロムの心も落ち着く。

それはおそらく彼女……姫野ユリナと親しい仲にあるが故の距離感だからこそのものだろう。そんな中……

 

 ヒロムのそばを銀髪の少年が横切っていく。シオンとはまた違う銀髪の少年。髪色が似てるとヒロムは思ったくらいでそれ以上は何も気にしないつもりだったが……

 

「……天才の実力、そのうち確かめに行くよ」

 

 横切っていく少年が発したであろう言葉を聞き逃さなかったヒロムは慌ててその少年が歩いていった方を向いた。が、振り向いた先にはそんな少年などどこにもいなかった。

 

「……いない?」

 

「ヒロムくん?」

 

「あっ、いや。何でもない」

(気のせいか……?でもそれらしいヤツが横を歩いていたような……)

 

 気のせい、そう思えるような事と直面したヒロムを不思議そうな目で見るユリナの前出ヒロムは頭の中で先程見たと思われる少年について考えようとしていた。その時だった。

 

「きゃぁぁぁあ!!」

 

 突然悲鳴が聞こえ、ヒロムとユリナが悲鳴のした方を見るとその視線の先には何やら炎を纏った人とは異なる異形の化け物がいた。ゴツゴツした岩のような体、その異形の化け物が唸り声をあげる奥にはサイのような獣人にも似た化け物の姿もあった。

 

「ヒロムくん、アレって何なの!?」

 

「分からねぇ……!!

とにかく、野放しには出来ねぇ!!」

 

 ヒロムは見たことの無い化け物を前にして対処しようと走り出した。

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