36話 ゼロ
大量のクリーチャーを相手に苦戦を強いられる兵士たちのもとに現れた紫色の髪の謎の少年。その少年の登場に指揮官と思われる男は困惑した様子を見せていた。
「何故貴様がここに……!?」
「……あん?」
「き、貴様が何故ここにいる?一体どうやって……」
「教えるわけねぇだろバーカ。
オマエみたいな知能指数低いヤツに説明しても時間の無駄だ」
「なっ……」
「大体オマエらはアイツの頼みを受けた姫神愛華に依頼されてここを防衛してんだろ?ならそれなりの戦果を挙げて実力示せってんだ」
「貴様……!!」
「って言っても無理か。能力を持たないが故に実弾武装してる時点で火力不足で勝ち目はないんだし、せいぜい機能したとしても時間稼ぎ程度の戦力じゃ難しいわな」
やれやれ、と少年は右手に灰色の稲妻を纏わせると右手を敵に向けてかざし、右手をかざすと同時に少年は纏わせた灰色の稲妻を敵に向けて撃ち放つ。
撃ち放たれた灰色の稲妻は大量のクリーチャーの体を次々に貫くと爆散させ、それが次々に引き起こされると大量にいたクリーチャーはあっという間に全滅してしまう。
「……まぁ、このくらいの芸が出来るなら話は別な訳だがな」
「たった一撃で……全滅させた……!?」
「た、隊長……彼は一体何者なんですか?」
少年がクリーチャーを一瞬で壊滅させたことに驚いていると指揮官と思われる男に兵士の1人が少年について何か知っていないのかと尋ねる。尋ねられた指揮官と思われる男は気を取り直すように咳払いをすると少年について語っていく。
「……彼の名はゼロ。出自などは一切不明なんだがいつからか《センチネル・ガーディアン》の姫神ヒロムのために行動しているという男だ。神出鬼没、現れたと思ったらすぐに消える上に街が襲われてるなどの有事の際にいない事が多いなど問題しかないのだが実力はあの姫神ヒロムに劣らぬほどで一部からは行動や態度が更生されれば《センチネル・ガーディアン》に選ばれていたとすら言われている実力者だ。さらに言うなら噂でしかないが神出鬼没すぎるこの男は人ではなく精霊ではないかとすら怪しまれている。」
「そ、そんな能力者がどうしてここに!?」
「分からん……姫神ヒロムの指示なのかこの男の独断かは知らない。だがハッキリ言えることはあの男が現れた以上ここは間違いなく死守できるということだ」
「……長々と無駄な説明ご苦労さん。報酬も出ないのによく他人の事話せるな」
兵士の質問に指揮官と思われる男が解説しているとし……ゼロは退屈そうにしながら失礼極まりない発言をし、ゼロの言葉に指揮官と思われる男がイラッとしているとゼロは冷たい口調で男と他の兵士たちに告げた。
「全員そのまま動くな。無駄に動かれたら死人が出る」
「なにを……」
「出て来やがれ、化け物が。コソコソしなくても相手になってやるよ」
何かに向けてゼロが告げると突如空気が重くなり、急に重くなった空気に兵士たちが戸惑っているとゼロの前にどこからか闇が現れその闇は骸骨剣士へと変化する。
現れた骸骨剣士の姿にゼロは何故か嬉しそうに笑うと敵と思われる骸骨剣士に向けて話しかける。
「よぉ、クリーチャー。その見た目から察するに他のとは違う個体だよな?」
「……初見で見抜くとはオマエ、何者だ?」
「質問に質問で返すなよクソ雑魚。
オレが何者だろうがオマエには関係ないだろ?」
「……なるほど、敵なのは確かか。オマエからはオレににて闇を強く感じ取れるから味方の可能性も考えたが不要な思考だったらしいな」
「オマエの仲間?冗談じゃねぇ、オマエの仲間になるくらいならここで自害した方がマシだ」
「……なら望み通り殺してやろう。自害ではないが、死に到達するという点に変わりはない!!」
ゼロは敵、そう単純に解釈した骸骨剣士は歪な剣を構えると素早い動きでゼロに接近して首を切断しようとした……が、骸骨剣士の剣がゼロの首を斬ろうとすると何かがそれを阻止するように剣を止める。
「!?」
「……どうした?
見た目の割にその剣は鈍か?」
「この……!!」
何が邪魔するかわからぬ中ゼロの挑発の言葉を受けた骸骨剣士はゼロを殺そうと何度も斬撃を放とうと攻撃の手を激しくさせるが、どれだけ攻撃を放ってもゼロに命中せずに何かによって防がれてしまう。
「バカな……何故だ……!!」
「おい……ナメてんのか?」
「ふざけるな……これでも受けろ!!」
骸骨剣士は幾度と放った攻撃が通用しないとわかると剣に闇を強く纏わせながらゼロに向けて一撃を放つ。必殺の一撃、そう思っても間違いない攻撃を放とうとする骸骨剣士の攻撃を前にしてゼロは不敵な笑みを浮かべると嬉しそうに素手で剣に掴みかかる。
「なっ……コイツ、正気か!?」
「笑わせんなよ……このクソ雑魚底辺野郎が!!」
突然のゼロの奇行に骸骨剣士が驚いてしまう中でゼロは嬉しそうに笑いながら骸骨剣士の剣を掴み、件を掴んだゼロは素手で強く握ると敵の剣を粉砕してしまう。
「なっ……!?」
「おいおい……ご自慢の武器はこんなもんかよ!!」
どこか楽しそうに笑うゼロは骸骨剣士を蹴り飛ばし、敵を蹴り飛ばしたゼロは一瞬で蹴り飛ばした敵に接近すると頭を掴んで地面に叩きつけ、地面に叩きつけた敵に何度も蹴りを食らわせる。
まるで玉蹴りを楽しむ子どものように笑いながら敵を蹴るゼロ。そのゼロに蹴られる骸骨剣士は全身に闇を強く纏うとゼロの蹴りを止めて反撃に転じようと試みるが、骸骨剣士の動きを読んだのかゼロは不敵な笑みを浮かべながら灰色の稲妻を右足に纏わせるとサッカーボールを遠くへ飛ばすように蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた骸骨剣士が倒れるとゼロは笑いながら首を鳴らし、ゼロは右手に闇を纏わせると冷たく言い放つ。
「……ノアルの力を取り込んでクリーチャーの個体自体の力も増したと期待してたのに興醒めだ。せめて最後は……本当の楽しませ方ってのをその身に教えてやるよ!!来い、《ディアボロ》!!」
終わらせるかのような言葉を告げるとゼロは叫び、彼の叫びに呼応するように右手に纏われた闇が形を得ていく。銃の銃身のない引き金とグリップがゼロの手に握られ、銃身の代わりを成すかのように矢尻のような突起がついた黒い弓が装着される。クロスボウ、そう呼ぶに相応しい武器を装備したゼロは弓を骸骨剣士に向けると引き金に指をかける。
「滅弓・《ディアボロ》、オレ専用の武器だ。光栄に思えよ?これをオマエみたいな虫けらに使うなんてことは滅多にないんだからな!!」
「くっ……」
「狂え……ディアボロディストピア!!」
《ディアボロ》を構えたゼロが引き金を引くと《ディアボロ》から数千にも及ぶ闇の矢が射ち放たれていき、放たれる数千の闇の矢を前にして骸骨剣士は闇を両手に纏わせると手刀で矢を破壊して何とかその場をしのごうと試みるも数千にも及ぶ闇の矢を前にして破壊を行う攻撃が対応しきれないのか次から次に体を矢に貫かれ、いつの間にか動くことすら出来ないほどに闇の矢に全身を貫かれていた。
「こ、こんなことが……」
「終わりだ、クソ雑魚」
ゼロが指を鳴らすと闇の矢が爆発し、矢に体を貫かれている骸骨剣士はその爆発に巻き込まれて体が破壊されていく。破壊された敵の体は爆発とともに消え去り、敵が倒れるとゼロは《ディアボロ》を闇に変えて消すと病院の方へと歩き出す。
あまりにも一方的に敵を倒したゼロに兵士たちが言葉を失っているとゼロは彼らに指示を与えた。
「このまま警戒しながら待機してろ。15分、15分経っても新手が現れなかったら撤退しても問題ないだろうな」
「何故そう言える?」
「クリーチャーの親玉はおそらく《センチネル・ガーディアン》のアイツが対処している。国の防衛戦力たるアイツが相手をしてる以上その親玉もこっちに手を割く余裕は無いはずだ。15分ってのはただの目安、適当に判断すればいい」
「……オマエはどこにいくつもりだ?」
「オレはやるべき事があるからな。寝てるヤツを起こして連れていく役目がな」




