35話 街の守護
同じ頃……
街……特に人通りの多い大通りが何やら騒がしかった。何かから逃げるように走っている人々は大通りを去るように消えていき、人々が走る中でガイとソラ、イクトは大通りの中心部に向かうかのように他の人たちとすれ違うように歩き進んでいた。
そして、ガイたちの向かう先には……無数のクリーチャーがいた。炎を帯びたクリーチャー、冷気を発するクリーチャー、岩のようにゴツゴツしたクリーチャーなど……個性的な見た目の化け物どもが大勢いるその群れの先頭には他とはかなり外観の異なるクリーチャーがいた。
2体だ。1体は全身機械の体でスクリーン状のフェイスパーツで覆われた頭部を持つ不気味なロボットであり、1体は武者を思わせるような風貌の刀を持った鬼。
2体のそのクリーチャーを先頭にクリーチャーの群れが街を破壊するかのように存在するそこへとガイたちが到達するとロボットのようなクリーチャーがガイたちを見ながら言葉を発する。
「……話ガ違ウナ。《覇王》ガココニイナイトナレバ逃ルダケノ人間シカイナイトキイテイタノニ」
「えっ!?ソラ、今の聞いた!?
あのクリーチャー言葉を……」
「そんなのは気にする程じゃねぇだろ。ノアルの力を取り込んだビーストってヤツが力を増してるなら使役する下僕が変化するのは必然だ」
「ソラ……データベースト照合。ナルホド、《天獄》ノ能力者カ」
「ふむ、我らが主君は《覇王》以外は取るに足らんとして眼中に無いようだな」
ソラの名を聞いたロボットのようなクリーチャーがガイたちの存在について認識する隣で武者のようなクリーチャーはどこか興味深そうにガイたちを見ながら同じように言葉を発する。
「主君の力の同化が終われば脅威となりうるのは《覇王》単体のみ。ここにいる彼奴らの戦闘力云々はそれ以下と見ていいだろう」
「ソウイウコトカ。ナラバ焦ルコトハナイナ」
2体の言葉を発するクリーチャーが何やら勝手に納得しているとガイは蒼い炎を右手に出現させ、出現させた蒼い炎に形を与えると霊刀《折神》に変化させて手に持つ。
「……オレたちは最初から眼中に無いってのは心外だな。
これでもオマエらの生みの親の仲間の1人の悪巧みを止めてるんだけどな」
「過去など幾らでも捏造できよう。現時にて強いとされているのは《覇王》1人、それが真理よ」
「……そうか。なら、生まれたばっかのオマエらに教えてやるか」
「だね。さすがにナメられたまんまじゃイラッとくるよ」
「どっちが雑魚でどっちが強いかをハッキリ教えてやるよ」
ガイに続きイクトとソラもやる気を見せ、戦う意思を持つ3人は全身に魔力を纏うとクリーチャーに向けて殺気を放つ。
放たれる殺気を前にしてロボットのようなクリーチャーと武者のようなクリーチャーは一瞬驚いたような反応を見せ、ガイは霊刀《折神》を構えながら敵に言った。
「確かにオレたちはヒロムに劣る。《センチネル・ガーディアン》の恩恵も結局はアイツが指揮する《天獄》に属してる間しかオレたちには機能しないオマケだ。だがな……それを差し引いたとしてもオレらは強いぞ」
「大将以外を甘く見てたら後悔するよ」
「何せオレたち3人は……」
「《センチネル・ガーディアン》の候補として名を挙げられていた能力者だからな!!」
ガイが走り出すとイクトとソラも走り出し、3人が走り出すとクリーチャーの軍勢も迎え撃つべく動き出す。
「いくぞ化け物ども!!この世界のどこにもオマエらの居場所がないことを教えてやる!!」
「ソラ、派手なの頼むよ!!」
「命令すんなバカイクト」
イクトの頼みを冷たい言葉で一蹴したソラは右手に炎を纏わせるとそれに形を与えて紅い拳銃・《ヒート・マグナム》へと変化させて構える。ソラが《ヒート・マグナム》を構えると同時に彼の周囲に炎により構築されたとされる数百の銃口や砲門が現れ、ソラが《ヒート・マグナム》の狙いを敵に定めると数百の銃口や砲門は炎エネルギーを蓄積させていく。
「焼き払え……インフィニット・フレア・バレット!!」
ソラが《ヒート・マグナム》の引き金を引くと同時に数百の銃口や砲門が蓄積していた炎エネルギーが炎の弾丸となって一斉掃射され、放たれた炎の弾丸はロボットのようなクリーチャーと武者のようなクリーチャーの後方にいる力の弱そうなクリーチャーの群れの方への着弾していくと次々にクリーチャーの群れを焼き殺していく。
炎に焼かれるクリーチャーの聞くに絶えない不気味な声にイクトが嫌そうな顔をしているとガイは霊刀《折神》を構えたまま武者のようなクリーチャーへと接近して斬撃を放って攻撃を仕掛ける……が、武者のようなクリーチャーは手に持つカタナで受け止めるとガイに掴みかかろうとする。掴まれぬようにガイは後ろに跳ぶと構え直そうとするが、ロボットのようなクリーチャーは体の装甲の一部を展開すると後ろに跳んだことで無防備になったガイに向けて小型ミサイルを斉射する。
「ミサイル!?」
「クリーチャーっつうかスーパーロボットだね。
けど、無駄だよ」
ミサイル発射にガイが驚いているとイクトも驚いたような飯能を一瞬見せるが、左目を紫色に光らせると自身の影を拡大させるように広げながら隆起させて影の壁を生み出してガイに向けて放たれた小型ミサイル全てを防いでみせる。
「防ガレタ。次ノ手……」
「次はねぇよ」
ロボットのようなクリーチャーが次の攻撃を放とうとするとソラは両足に炎を纏わせて加速しながら走り、ロボットのようなクリーチャーの周りを高速で駆けながら炎の弾丸を撃ち込んでいく。炎の弾丸が撃ち込まれていくロボットのようなクリーチャーの四肢がソラの攻撃によって次々に損傷していき、さらにガイへの攻撃時に展開した装甲の隙間に被弾したことにより内側から次々に破壊されていく。
「コ、コレハ……損傷ガ止マラナ……」
「スキだらけだね」
ソラの攻撃によって次々に身体が損傷していくロボットのようなクリーチャーが自身のダメージに混乱しているとイクトは両手を前に突き出すと影を操って敵を捕縛する。
「……仕方ねぇからオチは任す」
「オッケー、ソラ!!お望み通りグチャグチャのバラバラに仕上げてやる!!
千手影殺幕劇!!」
イクトが叫ぶと敵を捕縛する影から枝分かれするかのように次から次に影の腕が現れ、現れた影の腕が敵を掴むとバラバラに引きちぎって殺していく。あまりにも惨い殺し方にソラが若干引いているとイクトは指を鳴らして影を元に戻し、イクトの影が元に戻るとそこにはロボットのようなクリーチャーだったと思われる闇の残滓だけが残されていた。残された残滓は風に流されて消え、ガイと相対する武者のようなクリーチャーはロボットのようなクリーチャーの末路を目撃して驚愕している。
「バカな……!?
我らの力は下等な生命を淘汰しているのではなかったのか……!?」
「自惚れが過ぎる」
武者のようなクリーチャーが驚愕しているとガイが目にも止まらぬ速さで接近し、ガイの接近に気づいたクリーチャーが刀を振ろうとするとガイの姿が消える。
消えた、敵がそれを認識した瞬間ガイは敵の背後に現れ、ガイが現れると同時に敵はバラバラに切り刻まれてしまう。
「瞬斬・神楽華」
「バ……バカな……」
「相手が悪かった、ただそれだけのことだ」
ガイが霊刀《折神》を炎に変えると切り刻まれた敵は消滅し、敵が消えるとガイはソラとイクトに指示を出した。
「……この調子なら多分シオンと真助の方も終わってるはずだ。2人は引き続き街に現れるかもしれないクリーチャーの対処をたのむ」
「あれ?ガイはどうすんのさ?」
「必要ないとは思うが……それでも行くのか?」
「ああ、悪いけど1人に任せるつもりは無い。急いでアイツに……ヒロムに加勢して《世界王府》の1人を倒す」
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同じ頃の病院……
病院駐車場には大量のクリーチャーがおり、病院側にはクリーチャーの侵攻を防ごうとするように防護服を着た兵士たちが隊列を組んで銃火器を構えていた。
「総員、攻撃始め!!」
指揮官と思われる男が叫ぶと一斉に銃火器から弾丸が放たれてクリーチャーに攻撃が開始されるが、弾丸が命中してもクリーチャーは止まろうとしない。
止まることなく迫ってくるクリーチャーを前にして兵士たちは休むことなく弾丸を放ち続けるも敵は何食わぬ顔で近づいてくる。
「だ、ダメです!!
こちらの攻撃が全く効いていません!!」
「クソ……このままでは……!!」
「……ったく、情けねぇヤツらだ」
クリーチャーが止まらぬ中で兵士たちが弱気になっていると病院の方から声がし、入口から誰かが歩いてくる。黒いロングコートを身に纏った紫色の髪の少年、その少年はアクビをしながら兵士たちのもとへ歩み寄るとクリーチャーの群れを見ながら言った。
「仕方ねぇから下がってろ。オマエらの代わりにオレがアイツらを無に帰してやる」




