191話 迎撃チーム
ビーストのもとに現れた新たな《世界王府》の能力者・ヴァレット。
ヴァレットの出現によりソラは右手に持つ《ヒート・マグナム》を構えて引き金に指をかけ、ソラが構えるとヴァレットはソラのことを観察するように独り言を話し始める。
「なるほど。コイツが《天獄》とやらの中で射撃に長けた能力者の相馬ソラだな。純粋な種でもないのに《魔人》の力を宿してるビーストが嫌う能力者だろ?」
「嫌われてるとかどうでもいい。
敵なら消す、それだけだ」
「はっ、話に聞いた通り強気な野郎だ。
面白そうだな……破壊こそが全てってことは理解してそうな野郎だぜ」
「あ?バカにしてんのか?」
「バカにするとかじゃねぇよ。
オマエはオレたちと同じこっち側の人間だろって話だ。そうだろ?」
「バカ言うな。オレはオマエらとは違う」
「どうかな?本性表さなきゃそこは分からんだろ?」
黙れ、とソラはヴァレットを黙らせようと躊躇いなく炎の弾丸を数発放っていくが、ヴァレットは手に纏わせた魔力を弾丸に変えて撃ち放つとソラの放った炎の弾丸を撃ち落としていく。
さらにヴァレットは魔力を放出させて無数の魔力の弾丸を生み出すとソラたちに向けて撃ち放つ。
「……させねぇ!!」
ソラは炎を強く纏うと《ヒート・マグナム》から炎をビームにして放ってヴァレットの攻撃を全て撃ち落とし、さらにヴァレットとビーストに向けて炎をビームにして放って敵を倒そうとする。
しかしヴァレットはソラの放った攻撃を片手で止めると消し去り、さらにヴァレットは魔力を強く纏うとそれをビームにしてソラたちに向けて放つ。
「コイツ……!!」
ヴァレットの放つ攻撃をソラたちは回避し、ソラたちが回避するとヴァレットは楽しそうに笑う。
「愉快愉快!!
どんな腕前かと思えば撃つしか能がないタイプじゃねぇか」
「何……?」
「挑発に乗るなソラ!!」
「その程度なら炎無しでもオレには真似出来る。
爆発するような才能が感じ取れねぇな」
「……この野郎が」
「ほら、熱くなれよ。
炎の能力者だろ?ならそれっぽく熱くなれよ」
「上等だ、やって……」
待て、とノアルはヴァレットの挑発に乗りかけるソラを止めると彼に冷静になるよう伝えた。
「これは罠だ。ヤツはソラと同じことが可能だと披露して挑発しているだけ、ソラの手の内を全て引き出した上で倒すつもりだぞ」
「んなことは分かってる。けどな……」
「ノアルの言う通りだソラ。冷静になれ。
このチームのリーダーとして任されたオマエだけは冷静に頼む」
「……ちっ!!
仕方ねぇ、ノアルはシオンとビーストを頼む。
オレは……あの弾丸野郎を仕留める」
「おい、それじゃさっきと何も……」
「2人でビースト倒した後加勢しろ。それまではオレ1人であの弾丸野郎を何とかする」
「なるほど……」
「それなら心得た」
「とにかく今はコイツらを移送車の捜索に向かわぬように止めることを優先に動くぞ。オレたちの力で……コイツらを何とかするぞ!!」
任せろ、とシオンは雷を強く纏うとノアルとともにビーストを倒すべく走り出し、ソラは紅い炎を強く纏うとヴァレットの相手をするべく構える。
ソラの構える姿を前にしてヴァレットは首を鳴らすと魔力を身に纏い、魔力を纏ったヴァレットが右手を大きく振るとソラに向けて数発の魔力の弾丸が放たれる。
ヴァレットの放った攻撃を前にしてソラは足に炎を纏わせて機動力を高めながら躱して《ヒート・マグナム》を構え、構えた《ヒート・マグナム》から炎を弾丸にして敵に向けて放っていく。だがヴァレットはソラの攻撃を回避すると左手を動かして砲弾を生成して放ち、放たれた砲弾はソラの1m手前ほどで爆発を引き起こす。
「!!」
(目眩しか!!)
「あらよっと!!」、砲弾の爆発により舞い上がった煙で視界が妨げられるとソラはそれが目眩しだと理解し、ソラがそれを理解するとヴァレットは煙越しに魔力の弾丸を数発放つ。
視界を妨げられる中で放たれたヴァレットの弾丸は煙の中を通ってソラに迫ったためソラはギリギリまで気づけない状態だったが、それでもソラはヴァレットの弾丸の接近を察知すると炎を強く放出させて障壁のようにすることで弾丸全てを焼き消し、さらに強く放出させた炎のその勢いで煙を吹き払う。
視界良好、ヴァレットの姿を確認したソラはすかさず炎の弾丸を数十発放ってヴァレットに命中させようとするが、ヴァレットは炎の弾丸を踊るような動きで回避してしまう。
「ふぃー、危なかっしい」
「コイツ……!!」
(弾丸を放つだけの能力者じゃねぇな。弾丸、砲弾、ビーム……手の内はオレと変わらない。いや、下手すりゃあの動きから考えるとほかにもあると見ていいはずだ。《炎魔劫拳》で速攻を決める手もあるが……ヤツが至近距離への対策を用意してるとすれば下手に接近もできない。どうするか……)
「キュッ!!」
ヴァレットに対しての策を頭の中で練るソラが迷っていると彼の肩にリスの精霊・ナッツが現れて鳴き、ナッツの声を聞いたソラは考えが結論に至ったのか頷くと左手を横に伸ばす。
「そうだなナッツ。
オレたちの力、見せるぞ……来い!!」
ソラが叫ぶと左手に紅い炎が渦巻くように集まっていき、渦巻きながら左手に集まった紅い炎は形を得るとソラの左手に握られる。
銃口が2つ付いた紅い自動小銃、それを手にしたソラは《ヒート・マグナム》とともに構えるとヴァレットに狙いを定める。
「新しい武器だと?」
「《フレイム・バレット》……オレ専用の武器だ!!」
新たに手にした紅い自動小銃・《フレイム・バレット》の引き金をソラが引くと数十発の炎の弾丸が一気に放たれ、数十発の炎の弾丸が放たれるとヴァレットは驚きながらも躱していく。
だが弾丸を躱すヴァレットの動きには余裕が見受けられなかった。
「野郎……!!
ワントリガーでこれだけの弾丸を!!」
「そこだ!!」
《フレイム・バレット》から放たれた数十発の炎の弾丸を躱しながら一度にそれだけの量が放たれたことにヴァレットが驚いているとソラは《ヒート・マグナム》とともに構えるとともにビームを放ち、放たれたビームはヴァレットの右肩に命中して彼の右肩のアーマーを破壊する。
「この……!!
そんなもの!!」
右肩のアーマーが破壊されたヴァレットはソラの《フレイム・バレット》を真似る……いや、それを超えるように100にも匹敵する魔力の弾丸を放ってソラを追い詰めようとするが、ソラは《ヒート・マグナム》をヴァレットではなく横に向けて構えて引き金を引くと高速で動き始め、高速で動くソラはヴァレットの放った100にも及ぶ弾丸をすべて避けていく。
「あん!?
野郎、武器の攻撃を放つ反動を利用して機動力を!?」
「はぁぁあ!!」
ソラはヴァレットの攻撃を避けるとお返しと言わんばかりに同じように100にも及ぶ弾丸を放ち、放たれた弾丸は次々にヴァレットに命中して……いくかのように見えた。
しかし……
「……いいねぇ!!
滾るねぇ!!」
ソラの放った炎の弾丸が迫る中でヴァレットは強く叫ぶととともに炎を強く放出させてソラの攻撃を全て消し去ってしまう。
攻撃を防がれた、それ以上にソラはヴァレットの炎に驚きを隠せなかった。
「バカな……炎を操る能力者だと……!?」
「正確にはあらゆるものを爆破する燃焼の力だ。
炎の上位互換、あらゆるものを焼き消しあらゆるものを爆ぜさせる力、それこそがオレの《爆天》の力だ!!」
ソラが驚く中でヴァレットが両手を前に突き出すと炎を纏った弾丸が放たれ、放たれた弾丸がソラに迫ると強力な爆撃を引き起こしてソラを襲っていく。
「うわぁぁぁあ!!」
「はっ、強さによる破壊の先にある終点こそ美しさがある!!
オレの力は破壊して全てを無に返すのさ!!」




