180話 姫神の分家
《カリギュラ》を纏うのはヒロムの家である《姫神》と袂を分かったことで分家となったもう1つの《姫神》だと話す科宮アンネ。それを聞いたヒロムは信じられないのかはたまた動揺してるのか白銀の稲妻を消してしまう。
「どういう事だ……?」
「言葉通りの意味よ。彼は姫神ヨハネ、分家の現当主がようやく迎えることのできた優れた能力者よ。素質だけを言うならばアナタに負けない、だから《流動術》をも会得してる」
「……何で分家のヤツが?」
「初めは分家だなんて知らなったわ。
《カリギュラ》を管理していた家を調べるうちに見つけたのよ。その家が《姫神》という同じ名の家と関係系があることを、そしてアナタと同じ歳の子供がいることもね」
「まさか《カリギュラ》を管理してたのは……」
「ええ、この子の親よ。正確には血の繋がりのない親だけど。分家と甘く見た私が愚かだったけどその子どもはどうやらサラブレッドと呼ばれるエリート気質でね。試しに有無も言わさず《カリギュラ》を装備させたら見事に適合したのよ!!すごいことよ!!ランクSSの呪具に一度で適応してみせるなんてすごいことよ!!」
「……気持ち悪いね、この人」
「科宮……!!」
「《カリギュラ》を扱えるのならやることは1つ、姫神ヒロムを倒すために必要な技術を施すこと。だから手始めに《流動術》を記録データで閲覧させてみたけど……結果はご覧の通り完全に会得したわ!!そして《カリギュラ》の操作と《カリギュラ》を纏っての戦闘の仕方を仕込んだわ。結果はご覧の通り……アナタたちを凌駕する能力者となったわ!!」
「……」
「まぁ、《カリギュラ》の秘めた呪いの影響で精神は崩壊してるに等しいからこうして指示を与えて操ってるのよ。大体の指示さえ与えれば《カリギュラ》が勝手に動かしてくれる、アナタで言うところの精霊のようなものよ。とても便利で……とても役に立つわ!! 」
「……」
「お兄さん?」
「姫神ヒロム……?」
「あら、あまりのことで言葉を失ったかしら?
無理もないわよね……分家の存在も知らず生きてきて、いざ分家の存在を知ったら分家の子は傀儡同然、そんな子と初対面したら流石に……」
「クソどうでもいい」
「姫神ヒロム!?」
「わぉ、お兄さん正直〜」
「はぁ!?どうでもいい!?
な、何言ってんのよ!?アナタと同じで《姫神》の人間なのに……」
知るか、とヒロムは戸惑う科宮アンネに冷たく言うと唾を吐き捨て、さらに中指を立てながら科宮アンネに冷たく告げた。
「本家だの分家だのクソどうでもいい。
本家の人間だから何だ?分家の人間だから何だ?そいつが呪具に乗っ取られる前にどう思ってたか次第の話を今されてオレに何て言えってんだ?そいつが分家の代表としてオレを倒したいなら受けて立つが話がしたいならそれに付き合うだけだ」
「はぁ?アナタ、状況を……」
「つうか把握してねぇのはオマエだろクソ女。
オマエ……無事に帰れると思うなよ?」
「は?」
「オマエは踏み込んではならない領域に踏み込んだ。
もう……引き返せない」
「……ハハハハハ!!
笑わせないでよ!!アンタなんか敵じゃない!!《カリギュラ》は《流動術》を覚えてもはや無敵!!アンタと同じ動きが出来るんだから!!やってしまいなさい、《カリギュラ》!!」
ヒロムの言葉をバカにするように科宮アンネは高笑いをすると《カリギュラ》に指示を出し、指示を受けた《カリギュラ》はヒロムを倒そうと走り出す。
《カリギュラ》が走り出すとヒロムは白銀の稲妻を纏うことなく歩み出し、ヒロムが動き出すと《カリギュラ》はヒロムのデータを見て会得した《流動術》で先読みをしてヒロムを動きを読もうとする。が、《カリギュラ》は突然足を止めてしまう。
「何をしてるのよ《カリギュラ》!!
そいつの動きを先読みして……」
無理だ、とヒロムは《カリギュラ》に接近すると生身の状態で《カリギュラ》を蹴り飛ばし、蹴り飛ばされた《カリギュラ》が立ち上がって殴りかかっても素手で握り止めて防ぐと殴り返す。
「アイツ……生身で?」
「お兄さん、何もしようとしてないね」
「あ?何を言って……」
「《流動術》ってのは知らないけど、気配とか読む力でしょ〜?
だからお兄さんは相手も読めないように全ての気配を消してるんだよ」
「気配を!?」
(滅茶苦茶だろ!?普通なら無理だぞ!?
人間何かアクションを起こそうとすればそれが表に出るもんだ。それを全部消すって……)
「違う……《流動術》を生み出し扱うからこそ逆を可能にしたのか!!」
「ありえないわ!!気配を完全に消すなんて……殺されるかもしれないのにこんな土壇場で……」
「土壇場なわけねぇだろ」
科宮アンネが驚く中ヒロムは《カリギュラ》を何度も殴り、怯んだ《カリギュラ》を蹴り飛ばすと科宮アンネに彼女の考えについてある点を指摘する。
「オマエは勘違いしてる。《流動術》は会得したら先読みが出来る技じゃない。《流動術》は先読みのやり方を理解するだけだ。傀儡同然に扱われてるそのガキが無駄な思考を働かせないから《流動術》の発動条件を無視できてるか知らねぇが思考が働かねぇから判断する力もない、だから《流動術》があれば大丈夫とオマエに教えられたことを過信して使い続ける。不要なところで使おうとして的確な動きが出来なくなる……オマエが自信満々に覚えさせた技術が仇になったな」
「なっ……そんなこと……」
「可能なんだよ。何せこっちは《流動術》を編み出して10年経つんだからな。10年もあれば弱点も何も分かるもんだ」
それと、とヒロムが指を鳴らすとジンが黒いオーラを強くさせながら体を強化し、《ギアバースト》を発動させて《カリギュラ》を倒そうと走り出す。
「この程度で思考止めるのならオマエの負けだ」
「一気に行くぞ姫神ヒロム!!」
「……そのまま行け」
任せとけ、とジンは黒いオーラを強くさせながら《カリギュラ》に迫ると拳で殴ろうと構え、ジンが構えると《カリギュラ》は黒衣を変形させて迎え撃とうとするがヒロムが気配もなく迫ると顔面に蹴りを放って仰け反らせ、《カリギュラ》が仰け反るとジンは拳に黒いオーラを強く纏わせて一撃を叩き込むと殴り飛ばす。
「《カリギュラ》!!」
(まずいわ……!!《流動術》の対策として同じ技を用いれば迎え打てると思ったのに……このままじゃせっかくの呪具が台無しになる!!こうなったら……)
「《流動術》の使用を解除してパターンを……」
「隙だらけ〜」
科宮アンネがタブレット端末に《カリギュラ》への命令を必死に打ち込んでいるとユウマが接近して魔剣による一撃を放つ。
放たれた一撃を科宮アンネは避けようとして慌てるが、ユウマが放った一撃は彼女ではなく彼女が持つタブレット端末を破壊してしまう。
「なぁ!?わたしの……私の武器が!?」
「クソ女弱 〜い!!」
寝ててね、とユウマは科宮アンネを蹴り飛ばし、科宮アンネが蹴り飛ばされるとヒロム、ジン、ユウマは《カリギュラ》を倒すべく敵を包囲する。
ヒロムたちに包囲される中で《カリギュラ》は立ち上がるとドス黒い闇を強く放出させ、まだ倒れようとしない《カリギュラ》を前にしてジンはヒロムにどうするかを問う。
「どうする?
急に力が増したけど……」
「制御装置を兼ねていたタブレット端末を壊したからだな。
こうなったのなら呪具が暴走して破壊衝動で全部壊そうとするはずだ」
「ボクのせい〜?」
「いや、どの道こうなるのは避けられなかった。
だから……ユウマ、オレも少し本気になるから隠してるもんだせ」
「おっけー」
「……重ねろ、《レディアント》!!」
「魔剣解放……《ジャックエッジ》」
白銀の光と稲妻に包まれるとヒロムは白銀のマフラー、ガントレット、ブーツを装備した《ユナイト・クロス》を発動させ、さらにユウマが呟くと彼の背中に闇の翼が現れ、そしてユウマの魔剣を持つ腕に紫色の痣が浮かび上がっていく。
「魔剣解放、ジャックエッジ・リッパ〜」
「……さて、ここで決めるぞ」




