178話 凸凹チーム
突然の奇行に走った科宮アンネと彼女が呼び出した黒衣の呪具を纏いし謎の少年を前にして手を組むこととなったヒロムと暴月ジン。
客席の客が状況を飲み込めず、さらには実況の三千花アナすら理解が追いつかない中で葉王はこの場にいる全員に状況を把握出来るように話していく。
『どうやら呪具纏ッたガキが瀕死の重傷負わせたことで決闘参加者の一部がルール違反と判断して自主的に棄権、《フラグメントスクール》チームの暴月ジンも決闘を中断する形で味方の女を止めようとしてるところだなァ』
『き、鬼桜さん……決闘はどうなるのですか……?』
『さァなァ。オレから言えることはただ1つゥ……あのガキと科宮アンネを止めなかったら誰かが死ぬッてことだけだァ』
『そ、そんなの決闘どころじゃ……』
『だから見届けろォ。国を守る防衛戦力たる《センチネル・ガーディアン》の姫神ヒロムの指揮の元でそれが阻止されることをなァ』
葉王の説明と言葉に三千花アナはもちろん観客も戦いの行く末のカギを握るヒロムに注目し、ヒロムに注目が集まる中で暴月ジンはヒロムに話しかける。
「……ずいぶんと期待されてるな、オマエ。
賄賂でも渡してんのか?」
「んなわけあるか。
単に自分が任命した《センチネル・ガーディアン》の力を示したいだけだ。アイツからしたらオマエもあのタブレット女もそのための利用価値のある材料ってだけだ」
「ふーん……。
で、話は戻すが勝算あんのかよ?」
「……《カリギュラ》をどこまで使いこなせるかってとこ次第だな」
「あの呪具を知ってるのか?」
「これでもその手の本をガキの頃に読み漁ったから呪具についてはそれなりの知識がある。んで《カリギュラ》の持つ力も理解してる」
「あの呪具の力ってのは?」
「……能力者を殺すまで血を求めて狩りを止めない、簡単に言うならそんな感じだ」
「能力者を殺すまで……!?
まさか能力者殺しの!?」
「驚く必要ねぇけどな。
元々呪具は数百年前に陰陽師やらが能力者と呼ばれる前の異質な力を消すために生み出した負の力。オマエの仲間の人形使いのもだが元々魔力ってのが体内にある人間を選別して消すために用意されたもんだ」
「……能力者殺しの道具ってのは理解した。それで、アレの攻撃方法は?」
知るか、とヒロムは強めに答えを返し、ヒロムの答えを聞いた暴月ジンは真剣な顔でヒロムに言い返す。
「知るかって何だよ。
その手の本を読み漁ってたんだろ?なら対策方法なり……」
「《カリギュラ》がランクSSとされるのは使い手によって攻撃機能や性質を変化させるからだ。能力者を殺すために姿や形を変えて襲いかかる黒衣の呪具……だから呪具の扱いと封印を任されている能力者が封印術施して管理してたんだ。それをあの女は……」
「……悪い」
「あ?」
「オレは今オマエがやる気なくして適当になったと勘違いした。本当は対策方法がないって話なのに……悪かった」
一方的に責めたことを謝る暴月ジン。だが暴月ジンの謝罪を受けたヒロムは嫌そうな顔をすると彼の頭を強く叩いた。
「痛っ!!」
「おい、頭のネジ無くしたのか?
戦うこと生業にしてるヤツが素直になると嫌な予感しかないからやめてくれ」
「はぁ!?
オマエ、何を……」
「オマエは《始末屋》のエースなんだろ?
《センチネル・ガーディアン》の最強と《始末屋》のエース、この2人が揃って得体の知れない呪具もってるだけのやつに負ける要素あるか?」
「……そういうことかよ」
「この流れならアイツら倒したらゲームセットだ。だから……決闘でオレを倒せなかった分をここで自分を証明することで取り返せ。オマエが強いのならそれくらいやってみろよ……暴月ジン」
おもしれぇ、と暴月ジンはヒロムの言葉を受けて笑みを浮かべると黒いオーラを纏い、暴月ジンがやる気を見せるとヒロムも白銀の稲妻を纏って構えようとした。その時、狂島はヒロムに歩み寄ると彼をじっと見つめる。
「じー……」
「……何だよ?」
「ねぇ、ボクも一緒にいいかな〜?」
「オマエも?」
「おい、殺人鬼。
せっかくの流れを乱すな」
「殺人鬼じゃないよ〜?
ボクは弟を殺した2人がボクを殺そうと襲ってきたから殺しただけだからさ〜」
「「……殺人鬼じゃねぇか」」
「いや、そんなことより……オマエもアイツと戦うつもりか?」
「うん、ボクも戦えるからね。
それにどれだけ戦えるかはお兄さんが分かってると思うしね〜」
「……まぁ、否定はしない。
意外すぎるから言葉に迷うけど、オマエも暴月ジンに負けないくらい強いのは理解してる」
「あぁん!?
オレがコイツと同じってか!?」
「それ心外〜」
「こっちのセリフだアホ!!」
「それより狂島、オマエ何で……」
ユウマだよ、と狂島は……狂島ユウマは自らの名を明かすとヒロムの言葉を聞く前に彼が言おうとしたであろう言葉について話していく。
「ボクね〜、強い人についていきたいんだ〜。
京都のお兄さんは自分が強いからって言うからついてきたんだけど、京都の人よりお兄さんの方がすごく強そうだからお兄さんについていくことにしたんだ〜」
「……そうか。
狂島……ユウマ、オマエの殺人の容疑についてこれが終わったら警察に明かしてくれるか?」
「うーん……それでついていっていいのならいいよ〜?」
なら決まりだ、とヒロムは狂島ユウマに言うと彼を自分の隣に並ばせると彼と暴月ジンに向けて伝えていく。
「タブレット女は後回し、まずはあの呪具を止めるぞ」
「方法あるの〜?」
「呪具の共通の止め方は使用者の意識の喪失だが……ランクSSにも通用するのか?」
「倒せばどっちでもいい。
いくぞ……ジン、ユウマ」
「馴れ馴れしい……けど、オマエになら悪くねぇ!!」
「おっけ〜」
ヒロム、暴月ジン、狂島ユウマ……いや、ジンとユウマの3人が構える中科宮アンネは舌打ちをするとタブレット端末に何かを打ち込んでいく。
「さっきまで敵だったヤツらが偉そうに……!!
それにジン、アンタは《始末屋》を裏切った!!その事を後悔させてあげるわ!!」
「悪いな科宮。オレからしたら四ノ宮を……仲間を殺そうとしたオマエは《始末屋》の敵でしかない!!」
「いいわ、教えてあげるわよ……カリギュラ!!
そいつらを殺しなさい!!」
黒衣の呪具を纏いし謎の少年……《カリギュラ》は瞳を怪しく光らせながらゆっくりと動きだし、《カリギュラ》が動き出すとヒロムは先陣を切るように走り出す。
「オレについてこいよ……オマエら!!」
「いいぜ、オマエについていってやるよ!!」
「いっくよ〜!!」
ヒロムに続くようにジンとユウマも走り出し、3人が走り出すと《カリギュラ》の黒衣が闇を放ちながら一部を変化させて無数の刃にして撃ち放つ。
放たれた刃をヒロムは難無く避けながら迫ると白銀の稲妻を強くさせて拳を構え、構えた拳に力を溜めると一撃を放つ。
「歯ァ食いしばれや!!」




