174話 始末屋、落ちる
もはやこれ以上は相手にするだけ無駄だ。そうヒロムは判断すると白銀の稲妻を強く纏いながら殺気を放つ。
ヒロムの放つ殺気を前にして牧瀬たちは応戦しようと構えようとするが、白銀の稲妻を纏うヒロムがさらに強く殺気を放つと牧瀬たちはそれに臆したのか構えようとするのをやめて数歩後退りしてしまう。
「……ッ!!」
「コイツ……!!」
「さて、オマエらが何分持ち堪えるか試させてもらおうか」
「持ち堪える?
ナメたこと抜かしてんじゃねぇぞ!!」
ヒロムが白銀の稲妻を纏う中でそれに応戦しようと暴月ジンは黒いオーラを強く纏いながら体から放出させ、黒いオーラを放出させる暴月ジンはヒロムを睨みながらもう一度を発動させようとする。
「能力解放……!!
ギアバー……」
「うるせぇ」
暴月ジンが《ギアバースト》を発動させようと力を高めるとヒロムは一言冷たく言いながら指を鳴らし、ヒロムが指を鳴らすと暴月ジンが放出する黒いオーラがかき消されてしまう。
「!?」
黒いオーラが消されたことにより《ギアバースト》が発動しなくなってしまった暴月ジンは戸惑いを隠せぬ様子を見せ、暴月ジンが戸惑っているとヒロムは音も立てずに暴月ジンの前に移動すると彼に話しかける。
「それは見飽きた。
能力を強く発しながら肉体と同質化させることでその力の恩恵を存分に発揮する状態……だがその状態になるには力を高めるための時間と膨大な量の魔力と能力の力を溜めなければならない難点があるらしいが、それを克服してないようなら2度目を見るつもりない」
「んだと……!?」
「オマエは最後に残しておいてやるから……せいぜいそれまでに強くなれよ」
「オレを残すだと?
何ふざけたことを……」
「残したくなくてもオマエは動けなくなる。もうじき、な」
「ジン、離れろ!!」
ヒロムの言葉に暴月ジンが理解出来ずにいると宇治原が錫杖を振りながらヒロムに向けて無数の魔力の鎖を放つ。
「拘束術式・不威絞縛節!!」
無数の魔力の鎖はヒロムに迫る中で彼を包囲しようと周囲に広がり、魔力の鎖が広がり始めると暴月ジンはヒロムから離れようとした。が、暴月ジンが離れようとするとヒロムは白銀の稲妻を周囲に勢いよく飛ばすと魔力の鎖を掴ませ、掴ませた魔力の鎖をわざと自分の方へ戻すように白銀の稲妻を回収するとヒロムは続けて自身に向けて放たれた魔力の鎖を全て白銀の稲妻とともに暴月ジンにぶつける。
「!?」
白銀の稲妻と魔力の鎖をぶつけられた暴月ジンは魔力の鎖とともに吹き飛ばされ、吹き飛ばされた暴月ジンが立ち上がろうとすると彼の体を宇治原が放った魔力の鎖が拘束してしまう。
「しまっ……」
「ほら、動けなくなったろ?」
「オマエ、こうなることを……」
「そうやって動けないまま見とけ。1人ずつ……終わらせてやる」
暴月ジンが動けなくなったのを確認したヒロムは静かに動き始めると辻岡の前に移動し、辻岡がそれに対応しようとするとヒロムは白銀の稲妻を強く解き放って辻岡を吹き飛ばすと負傷させて倒し、さらに風宮の背後に移動すると風宮の膝裏を蹴って体勢を崩させた上で軽く飛んで白銀の稲妻を纏いながら回転蹴りを放つと風宮をも蹴り飛ばして倒してしまう。
「こんの!!」
辻岡と風宮が倒されると牧瀬は青龍刀に魔力を纏わせながらヒロムに接近するとヒロムを倒そうと一撃を放つべく青龍刀を薙ぎ払うが、ヒロムは白銀の稲妻を消すと素手で牧瀬の青龍刀の刃を掴み止めてしまう。
「なっ……」
「こんなもんか」
ヒロムは青龍刀を掴む手に力を入れると簡単に青龍刀を握り潰し、青龍刀を止められるどころか簡単に潰されたことに牧瀬が驚愕しているとヒロムは白銀の稲妻を拳に纏わせて一撃を叩き込むと牧瀬を強く殴り飛ばし、殴り飛ばされた牧瀬を追撃するように白銀の稲妻が炸裂してさらに吹き飛ばし強く吹き飛ばされた牧瀬は負傷しながら壁面に衝突すると倒れてしまう。
「ぐっ……」
牧瀬は倒れはしたものの意識はまだあるらしく負傷しながらも立ち上がろうとするが、牧瀬が立ち上がろうとするとヒロムは紫色の稲妻を纏いながら走り出すと牧瀬へと迫っていく。
「させるか!!」
ヒロムが牧瀬へと迫ろうとすると瑛二が魔力を纏いながら現れてヒロムに殴りかかるが、ヒロムはそれを避けると紫色の稲妻の一部に蛇の形を与えて攻撃として放つと瑛二に噛みつかせる。
紫色の稲妻の蛇に噛みつかれても瑛二は怯むことなくヒロムを倒そうと魔力を強く纏いながら接近し、さらにヒロムの背後からは機動丸の機械兵器の残りである《陸號式》が力をチャージしながら迫っていた。
「ふーん……それで精一杯か」
ヒロムが呟くと彼の体から紫色の稲妻とともに闇が強く放出され、さらにヒロムの左手に精霊・ラミアの武器であり霊装である紫色の刀が装備される。ヒロムの左手に刀が装備されると紫色の稲妻と闇は嵐のように荒れ狂いながら力を増し、そしてヒロムが刀を構えると荒れ狂う紫色の稲妻と闇は10体の大蛇へと変化して瑛二と《陸號式》に襲いかかる。
「滅界闇大蛇!!」
ヒロムが刀を振ると大蛇は闇を強く纏いながら瑛二に喰らいつき、さらに《陸號式》の体を次々に噛み砕くとそのまま闇を纏いながら破壊してしまう。
「こ、こんの……!!」
瑛二は何とかして耐えようと魔力を強くするが、瑛二の纏う魔力が強くなると大蛇は雄叫びをあげるとともにその魔力を吸収して自らの力へ還元し、力を高めた大蛇は一斉に瑛二に襲いかかると彼を瀕死寸前の重傷まで追い詰めて倒してしまう。
瑛二が倒され《陸號式》が破壊されると大蛇は綺麗に消え、大蛇が消えると牧瀬は負傷しながらも魔力を纏ってヒロムを倒そうと走ってくる。
「このぉぉぉぉぉ!!」
「……うるせぇ」
ヒロムは左手に持つ刀を消すと青い稲妻とともに冷気を纏い、冷気の一部を精霊・アイリスの武器であり霊装である槍に変えると地を勢いよく突き、ヒロムが槍で地を突くと彼を中心に冷気の嵐が巻き起こり牧瀬がそれに飲まれてしまう。
「ブリューナク・ラプュセリテ」
ヒロムが槍を強く握りながらさらに地を突くと冷気の嵐が《フラグメントスクール》の生徒たちを巻き込みながら激しく吹き荒れると氷へと変化してフィールドの一部を氷結させ、《フラグメントスクール》の生徒たちを倒すと冷気の嵐に巻き込んでいた牧瀬を全身が凍結した状態で倒してしまう。
「そんな……!?」
次々に倒される能力者、その能力者の姿を目の当たりにして機動丸は驚きを抱くと共に絶望したかのような顔を見せ、機動丸が何も出来ずに立ち尽くしているとヒロムは槍を投げ捨てると彼の前に移動して赤い稲妻とともに炎を左手に纏わせると拳を構える。
「憤怒……インフェルノハンマー!!」
赤い稲妻を走らせる炎を纏う拳で一撃を機動丸の体に叩き込み、ヒロムの一撃を叩き込まれた機動丸は全身を炎に飲まれながら倒れてしまう。
「がっ……」
「貴様ァァ!!」
機動丸が倒れると錫杖を構える宇治原は仲間の仇を取るかのようにヒロムを倒そうと走ってくるが、ヒロムは炎を消すと琥珀色の稲妻を全身に纏うと獅子や虎の形をしたオーラを出現させて宇治原に放ち、宇治原が錫杖に魔力を纏わせて迎え打とうとするとヒロムは琥珀色の稲妻を強く纏いながら一瞬で距離を詰めると獅子や虎のオーラとともに一撃を叩き込む。
「ライジングファング!!」
ヒロムの一撃が叩き込まれると宇治原は吹き飛ばされ、一撃を受けた衝撃で負傷しながら倒れると暴月ジンを拘束する鎖が徐々に消えようとしていく。
そんな中、ヒロムは唯一治癒術を使えると思われる舞野に狙いを定めたのか彼女の方へと向かうように歩を進める。
しかし……
「させんぞ」
ヒロムの行く手を阻むように神門アイシャが舞野の前に現れ、さらに四ノ宮総悟がヒロムの後ろに立つと魔力の弾丸を生み出して構える。
「ここからは私も相手してもらう」
「……これ以上はやらせん」
「これ以上は?すでに《始末屋》は終わってる。
ガキ1人も消せない組織の結末はすでに決まってるに等しい」
「《始末屋》云々は関係ない……これはオレ個人のプライドの問題だ。貴様のような小僧1人にこの悲惨な状況を招いたまま負けるなどオレの今後に関わるからな」
「私にはこの男のプライドなど微塵も関係ないがハッキリ言おう。姫神ヒロム、オマエをここで倒して私の力を世間に見せつけさせてもらう」
「へぇ、やってみ……」
「なんや、楽しそうやないの」
四ノ宮総悟、神門アイシャがヒロムを相手にやる気を見せるとヒロムもそれに反応しようとするが、ヒロムの言葉を遮るように和装の男がのらりくらりと歩いてきて話に入ってくる。
「楽しそうやし、ワシも入れてぇや」
「……いや、誰だよオマエ?」




