169話 これが現実
あと3分で殺せ、そう告げたヒロムの言葉を受けた機動丸はヒロムを睨むと彼の言葉に対して言い返した。
「3分で殺せとは生意気だな。カップラーメンでも食べたいのか?熱湯入れて3分待てば食えるアレが食いたいだけなら降参して帰れよクソガキ。この戦力と武器を前にしてオマエが今までみたく動けると思うなよ?」
「口だけは達者だな傀儡使い。今も言ったろ?飾りを揃えても戦力差は埋まらないってな。まだ理解してないのならそこから教えてやろうか?」
「さっきので十分だ。それにそんな話を聞かされてもこの現実は変わらない。オマエ1人に対してこちらは武装が万全の能力者が何人もいる。四ノ宮や神門アイシャ、他の強者がいる中でオマエは何の力もなく倒されることを理解するべきだ」
「万全?笑わせんなよ。
その万全の能力者が何人もオレにバタバタ倒されるところを見てたなら言葉を選べよ。オマエの言う万全ってのは不完全すぎて足りねぇんだよ」
「そうか……なら、その身に教えてやるか」
「やるならさっさとしろよ。今ので1分経ったぞ。
あと2分でオレを殺せるのか?」
「……そこまで言うなら殺してやる!!
やれ、《空號式》!!」
ヒロムの挑発の言葉を受けた機動丸は《空號式》に魔力を纏わせるとヒロムを倒させようと走らせ、さらに機動丸が両手で印を結ぶと細身の機械の人型兵器《海號式》と強固な武装で身を守られた機械の人型兵器《陸號式 》が現れ、現れた2機は《空號式》に続くように動き出す。
先行する《空號式》は魔力を右手に集めるとそれを銃火器に変えて構えて無数の魔力の弾丸を放ってヒロムを牽制し、ヒロムがそれを躱すと素早い動きで《海號式》が接近してヒロムを仕留めようと魔力の刃を持った剣で斬りかかる。
が、ヒロムは《海號式》の攻撃を避けるとすかさず反撃の一撃として蹴りを放とうとするが《陸號式》が《海號式》の前に立つとヒロムの蹴りを右の前腕で防ぎ止め、蹴りを防ぎ止めた《海號式》は拳に魔力を纏わせると強力なパンチをヒロムに食らわせようと攻撃を放つ。
「……少しはやるな」
《海號式》のパンチを前にしてヒロムは想像していたより敵の兵器が強いことを思わせるような言葉を口にしながら攻撃を回避し、攻撃を避けたヒロムは《陸號式》を倒そうと拳を構えようとした。
が、ヒロムが拳を構えようとすると辻岡と風宮、波瀬がヒロムのもとへと気配を消しながら接近してきて一撃を放ってヒロムを仕留めようと仕掛ける。
3人の攻撃が迫るヒロム、だがそれを受けてやるほどヒロムは甘くない。ヒロムは息を吐くと器用に体勢を次々に変えてトリッキーな動きを披露しながら辻岡たちの攻撃を回避し、3人の攻撃を避けたヒロムは頭を天地逆になるように体勢をひっくり返しながら回し蹴りを放って辻岡たちを蹴り飛ばし、さらに体勢を天地元に戻すとその反動を利用した拳撃を《陸號式》に叩き込んで少し吹き飛ばす。
装甲が分厚いのかヒロムの攻撃を受けても少し吹き飛ばされる程度で終わってしまい、《陸號式》は立て直すと背中の装甲を展開して新たな腕を2本出現させて4本の腕で拳を構えてヒロムを攻撃しようと動き出す。
「サブアーム搭載かよ。凝ったことしやがるな」
「隙だらけよ」
《陸號式》の新たな腕にヒロムが少し興味を示していると派手な装飾の槍を持った古賀野が魔法陣を出現させながら槍を振って魔力の矢をヒロムに向けて放ち、放たれた矢はヒロムに迫っていく中で雷や炎を纏っていく。
古賀野の攻撃が迫るのを確認したヒロムは首を鳴らすとそれを迎え撃とうとでも考えてるのか拳を構えるが、ヒロムが構えると辻岡と風宮が左右から走ってきてヒロムとの距離を詰めると共にヒロムの動ける範囲を制限しようとし、さらに背後から《海號式》と波瀬がヒロムの次の動きに合わせて攻撃しようと構えながら接近して来る。
「波状攻撃か……なるほど、理にかなってるな。
個人を相手にする上で多方向からの多段攻撃となる波状攻撃は対処する余裕と時間を与えることなく追い詰められるから集団で個を襲う分には有効だ。ただし……相手がオレでなければの話だがな」
ヒロムは拳を構えるのをやめると古賀野が放った矢の方へと走り出し、ヒロムが自ら攻撃に向けて走っていくのを目の当たりにした辻岡と風宮は突然の想定していない動きに足を止めてしまう。
何を企んでいるのか、それが分からない波瀬は止まるべきかどうか迷ってしまって動きが鈍くなり、機動丸が操る《空號式》も操る機動丸が波瀬と同じように考えが乱れたのか動きが止まってしまう。
「……ったく、この程度かよ」
辻岡たちの動きが止まり、次に繋げるようなモーションも見せようとしない様子を見たヒロムはガッカリしたような顔で舌打ちをすると地を強く蹴ってUターンするとともに《空號式》へと一気に接近して敵の兵器がそれに反応するよりも速く手刀の連撃を放つと《空號式》の頭、右腕、左脚、左前腕を破壊した後胴体を上と下に両断するように引き裂いて破壊してしまう。
「なっ……!?」
「コイツ!!」
《空號式》が破壊されるとそれを想定してなかったであろう機動丸が驚きを顔に出し、《空號式》を破壊したヒロムに1番近い位置にいる波瀬は《空號式》の仇でも討つかのようにヒロムを仕留めようと妖刀《乱刃》に魔力を纏わせながら無数の斬撃を放つが、ヒロムは無数の斬撃が放たれるタイミングで波瀬の背後へと移動して全てを回避してしまう。
斬撃を回避したヒロムを仕留めようと波瀬は背後へと移動したヒロムを追うように振り向こうとするが、ヒロムはそんな波瀬の体を掴んで動きを封じると自らの盾にでもするかのように押さえ込む。
「な、何を……」
ヒロムの狙いが分からない波瀬が戸惑っていると先程古賀野がヒロムを仕留めようと放った魔力の矢が雷や炎を纏いながら接近してきて波瀬を盾にするヒロムを射抜こうと襲いかかる。
が、ヒロムはそれを予期していたかのように押さえ込んでいた波瀬の背中を強く蹴って前に突き出すと魔力の矢で敵を貫かせ、波瀬が魔力の矢に次から次に貫かれるとヒロムは波瀬の手から妖刀《乱刃》を盗み取ると一瞬で《海號式》に接近して目にも止まらない速さでの攻撃を放ってバラバラに切り刻んで破壊してみせる。
「オレの……《乱刃》を使いこなして……!?」
「……イマイチだな」
ヒロムは《乱刃》を乱暴に投げ捨てると首を鳴らすと走り出し、走り出したヒロムは波瀬を倒そうと迫っていく……が、そんなヒロムを邪魔するように暴月ジンが前に立ちヒロムに攻撃を仕掛ける。
「オマエ、アスパラガス……」
「暴月ジンだ!!オレの名前くらいさっさと覚えやがれ!!」
いつまでも名前を間違えられることに腹を立てる暴月ジンは炎にも似た黒いオーラを纏いながらヒロムを攻撃しようと殴りかかるが、ヒロムは暴月ジンの拳を避けると後ろへと飛んで距離を取る。
ヒロムの行動が気になる暴月ジンは平然と自身の力を振りほどいた先程とは打って変わって距離を置いたことについて問う。
「おい、なんで避けた?
オレの能力を警戒してんのか?さっきのでオレの攻撃は防げたはずかのになんで距離を置いた?」
「潰したら面白みが無くなるだろ」
「あ?」
「《始末屋》のエースなんだろ、オマエ?
なら本気を見せろよ。その体に宿してる才能と可能性を細胞の中で爆発させて全てを曝け出す勢いでオマエの本気を見せろよ」
「オレの本気だと……?」
「オレは本気のオマエを潰したいんだよ。だからさっさと見せてくれ……オマエの秘めてる力の全てを!!」
「……上等だこの野郎。
人の事バカにするような呼び方した次は本気出せってか?だったら望み通りやってやるよ!!」
「やめろジン!!ヤツは……」
「うるせぇ四ノ宮!!
能力解放……ギアバースト!!」
ヒロムの言葉に乗るように本気になろうとする暴月ジンを四ノ宮総悟は止めようとするも暴月ジンはそれを聞かずに本気を出すべく炎にも似た黒いオーラを大きくさせながら全身から放出させ、黒いオーラを放出させた暴月ジンの黒い髪は逆立つと白く染まっていき、両腕には黒い紋様が浮かび上がる。
「それがオマエの本気か?」
「能力解放……これを使うのは四ノ宮や太刀神とガチでやり合った時以来だ。覚悟しろよ姫神ヒロム……ここからは加減出来ねぇからな」
「楽しみだな……あと1分半、オマエはオレをどこまで追い詰めてくれるのか見せてもらうぞ」




