157話 冷酷なる破壊者
鳥宮を倒したゼロは続けて高宮を倒そうと闇を纏いながら1歩ずつ確実に距離を詰めて迫ろうとする。ゼロが近づいてくる中で高宮は魔力を全身に纏って迎え撃とうと拳を構え、ゼロに一撃を加えるべく走り始めると一気に加速して距離を詰めると右の拳に力を溜めて渾身の拳撃を放つ。
「スクラップ・ナックル!!」
高宮が放つ渾身の拳撃は風や炎のようなものを纏いながらゼロに迫っていくが、高宮の拳が迫る中ゼロは慌てる様子もなく異常なまでに落ち着いた様子で高宮の拳を素手で掴み止めて彼の拳の纏うあらゆる力を消してしまう。
「なっ……」
「スクラップ・ナックル?だっせぇ名前だな。
ならオレのは……スクラップアウト」
ゼロが何かの名前を口にすると高宮の拳を掴み止めるゼロの手から何かが弾け散るようなエフェクトが現れ、エフェクトの出現とともに高宮は何故か苦しそうに悶え始めた。
「あぁぁぁぁぁあ!!」
「これでオマエの拳は使いもんにならねぇな。内部から対象を壊す技……ヒロムがやりそうな技を真似てみたが面白みに欠けるな」
「テメェ……!!」
「んだ?怒るか?
怒れよ……己の無力さをな!!」
ゼロは高宮の拳を手放すと両手に闇を纏わせながら連続で攻撃を叩き込み、攻撃が叩き込まれると高宮は口から血を吐きながら全身を負傷してフラついてしまう。
もはやゼロに勝つ見込みは無いに等しい、高宮は負傷してボロボロになる中でそれを感じながらもここで諦める訳にはいかないと己に言い聞かせるように無事な方の拳に力を入れるとゼロを殴ろうとする……が、高宮の拳がゼロに当たるかと思われたその瞬間にゼロの全身は闇となって散り消えてしまい、高宮の拳が散り消える闇を払うように空を切るとゼロは当たり前のように高宮の背後に現れて彼を殴り飛ばして気絶させる。
「2人目……!!」
「覚悟ぉぉぉぉ!!」
高宮のダウンをゼロが確認していると大槌を装備した少女がゼロを倒そうと武器を振り下ろして襲いかかってくるが、ゼロはそれを蹴りで弾くと少女に手をかざして衝撃波を発生させて吹き飛ばす。
吹き飛ばされた少女は地面を何度も転がってしまうも立ち上がって大槌を構え、大槌を構える少女の姿を前にしたゼロは何かを思い出したのか彼女に尋ねる。
「オマエ、ナギトを潰そうとしてシンクに邪魔された角崎とかいう女か?ランキング的に選ばれてないと思ったが意外だな。何しに来た?」
「アンタらの上が偉そうに追加メンバーありにしたから私が選ばれたのよ。少し強いからってナメてんじゃないわよ……私たち《フラグメントスクール》がどれだけ苦労してるか知らないくせに!!」
知りたくもねぇよ、とゼロが少女・角崎の言葉に冷たく言い返すと何かが彼女の武器を破壊し、そしてゼロの右手に闇が集まるとそれは形を得ると彼の専用の武器であるクロスボウにも見える弓型の武器である滅弓・《ディアボロ》に変化する。《ディアボロ》を手に持つとゼロは地を蹴って天高く飛び上がり、ゼロは角崎たち全員の位置が完全に把握できる高さまで到達すると闇を翼のように広げながら手に持つ武器に闇と灰色の稲妻を収束させていく。
闇と灰色の稲妻が収束されるとゼロの武器から強い力が溢れ出し、溢れ出した力は黒竜を思わせるようなオーラとなってゼロの背後で雄叫びをあげる。
「何よ……それ……」
「オマエらが生きていく上で到達することのない次元の力だ」
「いかん!!《フラグメントスクール》、総員退避だ!!」
ゼロの強すぎる力を目の当たりにして東条竜樹は角崎やほかの生徒たちに退避を命令しながらゼロを止めるべく魔力を纏いながら高く跳び上がる。だがゼロはそれを気に止めることも無く攻撃の照準を定めると力を解き放つ。
「ディアボロスクリーム・エンド」
ゼロが武器からその力を解き放つと黒竜を思わせるようなオーラは闇と灰色の稲妻をビームのようにしてゼロの攻撃とともに放ち、放たれた攻撃は東条竜樹諸共の生徒をたおそうと迫っていく。
そうはさせない、東条竜樹は両手に魔力を纏わせながら何かの印を結んでいくと自身を中心に結界のようなものを展開しようとする。
が……東条竜樹が結界のようなものを展開しようとするとゼロと黒竜を思わせるオーラの放った攻撃は東条竜樹の前で爆散しながら彼を避けるように無数のビームとなって雨の如く角崎たち《フラグメントスクール》の生徒を仕留めようと降り注ぐ形で襲っていく。
「「ああああああああぁぁぁ!!」」
「なっ……」
「残念だな、関西の能力者。
オマエのその力で守れるものは……何も無い」
「貴様ァァァ!!」
ゼロの言葉に激しく激高する東条竜樹だが、ゼロは音も立てずに迫ると東条竜樹を地に叩きつけるように蹴り飛ばし、蹴り飛ばされた東条竜樹は地に叩きつけられて倒れてしまう。
だが意識はあるらしく何とかして起き上がるが、彼が地上で見たのはゼロの攻撃から自分が守り切れずに倒されてしまった角崎たちの姿だった。
「オマエたち……」
よっと、と呑気にゼロは着地すると《ディアボロ》を東条竜樹に向けて構え、東条竜樹がそれに気づくとゼロは冷たく告げた。
「これが現実だ。オマエらは大淵とかいうヤツに乗せられてオレたちを敵に回した。そして未熟なヤツらしかいない《フラグメントスクール》の生徒を危険に晒しただけでなくそいつらがまだ理解していない未来への可能性が皆無だということを非情にも突きつけるようなことをした。分かるよな……?オマエらがこの決闘を引き受けた時点で《フラグメントスクール》の数百人の人生は終わってるんだよ」
「何を……」
「オマエらが手を貸して勝てばヒロムに成り代わる新たなシステムになれると思ったか?オマエらが手を貸してそいつらを勝たせればそいつらは希望ある未来へ進めると思ったのか?甘ったれんなよ。オマエら大人がガキを利用して潰したんだ。未熟な戦士を戦場で絶望に追い詰めた……それがオマエらのやってる事だ」
「そうか……なら、オレはオマエを倒してそれを否定する!!」
ゼロの言葉を受けた東条竜樹は拳を強く握ると全身に強い力を纏い、東条竜樹が力を纏うと大地が呼応するかのように振動する。
「コイツ……」
(なるほど……関西で強いって紹介はあながち間違いないようだな。この異常なまでに高まってる力、そしてあの男が内側から出そうとしてる気……能力者の特異点に達していないはずなのにオレたちシンギュラリティの能力者に近い力を持ってやがる)
「……面白い」
東条竜樹の発する力を前にしてゼロは不敵な笑みを浮かべると《ディアボロ》を投げ捨て、全身に闇を纏うと拳を構えて東条竜樹の相手をしようとする。
「オマエのそれが本気ならオレにぶつけてこい。
その力をオレの糧にしてオレはさらに強くなる……そのために利用してやるよ」
「ゼロとか言ったな。オマエをここで倒してオマエのいう彼らの未来を壊したという考えを否定してみせる。彼らの未来のためにも……オレはここでオマエを倒す!!」
「倒せるもんなら倒してみろ。それに……オマエじゃ未来は決められない。未来を掴み取って決めるのはヒロムの特許だからな!!」
ゼロと東条竜樹は同時に走り出すと互いに相手を倒そうと挑みかかる。そして火蔵紅人に目をつけられたシンクも彼を倒そうと動きを見せる。
そんな中……開始してから1度も動く気配のないトウマの前に音も立てずに黒装束の少年・三雲迅が剣を片手に現れる。
「やぁ、《八神》の当主さん。高みの見物のつもり?」
「そんなつもりはないよ。ボクが手を出すと2人の邪魔になるだろうから控えてるだけさ」
「それなら大人しくダウンしてくれる?その方がオレとしては金も入るから有難いんだけど」
「……それは無理かな」
だって、とトウマは静かに右手を横に伸ばすと全身に青い光を纏い、青い光を纏いながらトウマは三雲迅に向けて言った。
「そんなことしたら兄さんに迷惑かかるからダメだ」




