155話 破壊の二戦目
『それではまず《センチネル・ガーディアン》チームの2戦目の出場メンバーに登場していただきましょう!!』
三千花アナのアナウンスが流れると《センチネル・ガーディアン》チーム側の控え室に繋がる入口から出場者が現れる。
1人目は氷堂シンク。事前に彼から出場を聞かされていたためガイたちは彼の登場については驚かない。
「シンク……」
「まさか向こうも《センチネル・ガーディアン》の1人が2戦目に出てくるとは思ってないだろうな」
「あの人、かなり強いよ。鍛えてもらったから分かるけど……多分あの人はヒロムに1番近い強さを持ってる」
「ああ、だからこそ一条カズキは選んだはずだ」
「となればあと2人はシンクを支援する能力者か?」
残る2人は誰なのか、それを真助が気にしていると……2人目の出場メンバーが現れる。
2人目に現れたのは……《八神》の当主であるトウマだった。
「トウマ!?」
「おいおいマジかよ……《センチネル・ガーディアン》の1人が出るだけでも驚きなのにまさか《一条》や《姫神》に協力する《八神》の当主が直々に出るなんてどんな選定だよ……」
「勝つためだ。それに……この2人でなければ3人目の本気には適応できないと判断したからあの2人を指名した」
「シンクとトウマじゃないと適応できない……?」
「それって誰だ?」
カズキの言葉が気になるガイと真助は客席から3人目が現れるのを待つようにフィールドを見ており、ナギトやイクト、ユリナたちも気になり入口から現れる3人目を待つ。
すると……
『《センチネル・ガーディアン》チーム2戦目の出場メンバーは現在姫神ヒロムさんと同じ《センチネル・ガーディアン》の地位にある氷堂シンクさん、《十家騒乱事件》以降《一条》の当主とともに日本のために尽力する《八神》の当主の八神トウマさん。そして……その全てが謎に包まれた能力者、素性から出身まで全ての情報が無し!!まるでそれを体現するような名前を名乗りし奇妙な能力者……その名はゼロ!!』
シンクとトウマについて話した後どこか興奮気味に三千花アナは3人目について語り、そして3人目のその人物の名が明かされると入口からその人物が姿を現す。
ガイたちのよく知る人物……ヒロムの心の闇として彼に宿りながらも独立して活動する力を持つ人と精霊の狭間に位置する存在・ゼロだった。
ゼロの登場にガイたちは驚きを隠せず、全員が全員揃ってどういうことなのかとカズキの方へと顔と視線を向ける。視線を向けられたカズキは咳払いをすると彼らにゼロについて話していく。
「ペインの出現からアイツは万が一に備えて強くするべくオレたちがあらゆる手を用いて力の強化と戦闘力の向上を試みた。元々が姫神ヒロムの半身ともいえる存在だからか素質もあり適応力もあった。強いて言うならば姫神ヒロムの心の闇に宿ったが故にかつてヤツが心に秘めていた強い憎しみや殺意を強く受けすぎて時折力が暴走直前まで肥大化することだった。それを克服させれば……と考えたオレがある事を覚えさせたら驚きの完成系になったから試しにこの決闘で暴れさせたくなったから起用した」
「試しにって……」
「今の話だけだと《一条》の当主とは思えない馬鹿さ加減が見られるね……」
「けど、逆に言うなら今のゼロは結果を出す前から一条カズキに高く評価されている。その実力が本物かどうか……それをオレたちがこの目で確かめるチャンスだ」
ナギトとイクトがカズキの言葉に呆れ戸惑う中、ガイだけはフィールドに立つゼロを真剣な眼差しで見ていた。
《一条》の当主であり最強の能力者に最も近い能力者のカズキが手を出し強さに磨きをかけられたゼロ、その実力は……
******
その頃のフィールド……
歓声に迎えられるように現れたゼロは首を鳴らすとどこか面倒くさそうにため息をついてしまう。ゼロがため息をつくとトウマは彼を気遣うように声をかけた。
「ゼロ、どうかした?」
「……やる気になれねぇって思ってな。
これからオレたちより実力の劣る目に見て明らかに弱いと分かる能力者を相手にしなきゃならないって思うとやる気も何もかも削がれて帰りたくなる」
「兄さんのためにここは頑張ろうよ」
「オマエはそれで割り切れるだろうからいいさ。オレからすれば半身の問題にオレが巻き込まれるのが気に食わないんだよ」
「半身、か。散々ヒロムと比較されることを拒んできたオマエが自分から比較されにいくか」
「おいシンク、《フラグメントスクール》のヤツらより先にオマエから消してもいいんだぞ?」
「ゼロ、そのやる気を相手に向けてくれないかな?
今だけ我慢して不満があるならあとで兄さんに言えばいいんだから」
「……当たり前のこと抜かすなよ」
「だな。まずは目の前の敵の排除だ」
『続きまして《フラグメントスクール》チームの2戦目の出場メンバーの登場です!!』
トウマの言葉でゼロとシンクがやる気を持ち気持ちを切り替えると三千花アナのアナウンスとともに対戦相手が姿を現す。
東条竜樹が先頭に立って《フラグメントスクール》の生徒が歩いてくるが1戦目では9人だったのが今歩いて現れたのは15人。その15人の後ろを黒髪の和装の男と黒い装束を着た茶髪の少年が歩いていた。
『先頭に立ちますは今注目の西日本最強と噂される能力者である破壊の天才・《砕王》東条竜樹さん、後方に見えるは自警団による活動をされている火蔵紅人さん、そして賞金稼ぎ界の次世代を担う注目のルーキーにしてエースの三雲迅さんです。尚、2戦目の《フラグメントスクール》の生徒の人数は本来9人でしたが、《センチネル・ガーディアン》チームの姫神ヒロムさんから事前に増員してもよいと伝えられていたそうで急遽6人追加されることとなり15人の参加となりました』
「律儀に解説してくれる優しいアナウンサーだな」
「だがヒロムの狙いに大淵が乗っかって助かったな。これで大淵側の《フラグメントスクール》は当初の定員数では勝てないと判断して増員許可を受け入れ利用したと全員が感じる。ただでさえ数で有利にある中で1戦目を負けてるんだから2戦目も負ければ後がない」
「そもそもを言うなら兄さんに不満があるのに3戦やってその中で7人のうちの1人を倒せば自分たちが勝つなんてルールにしてる時点で不満の声は出てると思うけどね」
「どの道倒すだけだから関係ねぇよ」
相手の登場にゼロ・シンク・トウマは気を引き締めやる気を見せようとし、そんな彼らの前に立つと東条竜樹は3人に対してまず謝罪をした。
「すまないな。オマエさんたちとフェアな戦いをしたかったのにこんな数で圧倒するような形になってしまって」
「別にどうでもいいことだ。それに……その程度のことで詫びられるほどオレらは弱くねぇ。悪いが2戦目のこの戦いは棄権できるなんて考えは捨てて挑め」
「安心しろ。オレたちはオマエさんたちと正々堂々と勝負して勝つことしか考えていない」
「そうか……それを聞いて安心した!!」
『両者揃いましたので……これより、2戦目を開始します!!』
三千花アナの開始宣言とともに2戦目が始まり、2戦目の開始と共にゼロは誰よりも先に走り出す。




