152話 折神斬帝
巨大な刀身の大太刀を構えるガイ、それに対して目に見えぬ刃を持つ妖刀・《雲水》を構える太刀神。
2人の間に緊張感と殺気が広がる中、ガイは大太刀を構えながら告げる。
「この大太刀……《折神斬帝》はオレの全てを1本に集約した今のオレの集大成だ。オマエのその妖刀とオレのこの大太刀のどちらが強いか……もう肌で感じ取って理解してるよな?」
「言われなくてもな。そのクレイジーなソードの発する異質な力……なるほど、オマエのこれまでの全てがそこに集まってるのなら納得も行く。だが……だからといってこのオレの刀が負けることにはならない!!」
太刀神はガイを倒そうと雷を纏いながら走り出すと一瞬で背後に移動し、ガイの反応を待つことなく太刀神は《雲水》で一撃を喰らわせようと振り上げ……ようとしたが、太刀神が《雲水》を振り上げようとするとガイはいつの間にか太刀神の背後に移動しており、太刀神の背後に移動しているガイは左手に《飛天》を構えると巨大な斬撃を放って太刀神を吹き飛ばす。
「……!?」
吹き飛ばされた太刀神は急ぎ立て直そうとするがそれを頭の中で思考した時にはガイは左手に《希天》を持って先回りしており、太刀神がそれに気づくと無数の斬撃が太刀神を襲っていく。
「何……っ!?」
(一瞬でウェポンを持ち替え……)
無数の斬撃に太刀神が襲われる中ガイはいつの間にか左手に《鬼丸》を装備し直して構えており、ガイが《鬼丸》を振り上げると《鬼丸》の周囲に蒼い炎の刃がいくつも現れて《鬼丸》が振り下ろされると斬撃とともに太刀神を倒そうと飛んでいく。
無数の斬撃に襲われ負傷する中で更なる攻撃が迫る中で太刀神は舌打ちをすると雷を強く放出させる形で加速しながらガイの追撃を回避する。
ガイの攻撃を回避した太刀神は《雲水》で斬撃を放とうとするが、太刀神が攻撃しようとするとガイは右手に持つ大太刀を振る。大太刀が振られると太刀神の左肩が抉れるように斬られ、さらに彼の背後の地面が大きく抉れながらフィールドの壁の一部を破壊してしまう。
ただの一振り、それで発揮されたその一撃を身に受けその攻撃の一端による被害を見た太刀神はガイに対して恐怖を覚え、太刀神が恐怖を覚える中でガイは大太刀を手に持ちながらゆっくりと近づこうと歩き進んでくる。
「どうした?オマエの力はこの程度で終わりか?」
「くっ……何故だ……!?
何故オマエがそんなパワーをゲット出来た!?オマエのどこにそのパワーをゲット出来るだけのポテンシャルがあるんだ!?」
「そんなことを知ってオマエに何が出来る?
この《折神斬帝》が何であれオマエが手も足も出ないのは今ハッキリした。これ以上は……もう必要のない戦いになる」
「必要のない戦いだと?
ふざけるな!!多少オレのパワーをオマエが上回ったことがそんなに誇らしいか!!オレにダメージを与え追い詰めたことがそんなに嬉しいか!!オレを見下したルーザーとして陥れるのが……今のオマエのやり方なのか!!」
「関係ない。この戦いでオレたちはオマエらを返り討ちにしてオレたち自身の力を証明してヒロムを勝利に導く糧となる。オレたちの前にオマエであろうと他のヤツだろうと立ちはだかるなら切り伏せて潰して勝利を掴み取るだけ。勝つことへの執念が違うんだよ、オレとオマエでは」
「ガキが……ふざけたことをほざくな!!」
ガイの言葉に怒りを顕にしながら走り出し、目に見えぬ刃が武器であるはずの《雲水》に魔力と雷を纏わせてガイを確実に殺そうとする。だがガイは……
「我流……大太刀一刀式。
修羅ノ太刀・村雨!!」
ガイに両手で大太刀を構えると勢いよく振り下ろし、ガイが大太刀を振り下ろすと太刀神の纏う雷と《雲水》が纏わされている力が消滅する。
そして少し遅れる形で風が吹き起こると何かが砕ける音が生じながら《雲水》が破壊され、太刀神の全身はひどいダメージを受けながら吹き飛ばされる。太刀神が吹き飛ばされると彼が通る先の全てが破壊されていき、太刀神が壁に叩きつけられると壁は大きく抉れるように破壊されて彼を地に叩き落す。
ガイの攻撃を受けてもはや戦闘不能となった太刀神。その太刀神の前にガイは移動すると彼を見下ろしながら冷たく告げた。
「オレの中でオマエはかつて憧れた剣士では無くなっていた。あの頃……オレに剣を教えてくれた純粋なオマエは強さを求めるその欲によって失われた。そんなオマエを倒すことに躊躇いなんてなかった」
「オマエ……」
「……悪いな。オマエらは何が何でもヒロムを倒したいようだがオレがさせない。ヒロムは……オレのライバルを殺すのはオレだから」
「オマエが……!?」
「……まぁ、それくらいでなきゃ意味無いって話だ」
太刀神に己の覚悟を伝えるとガイは背を向けて歩いていき、ガイの中にある強い覚悟を知った太刀神は敗北の悔しさを隠せぬまま意識を失っていく。
『ここで太刀神剣一さんがダウン!!笠巻大智さんも先程風乃ナギトさんによりダウンさせられたため《フラグメントスクール》はもうあとが無くなりました!!』
やったね、とナギトは《竜装術》を発動させた状態でガイのもとへ現れ、ナギトの姿を目にしたガイは嬉しそうに彼に言った。
「まさかちょっと前までオレたちに追いつくのも無理そうなヤツが今じゃ肩を並べられる手前くらいには強くなってるとはな」
「そっちこそ。出会い頭に一戦交えたあの時に比べたら人が変わったような強さになってるじゃん」
「当たり前だろ。オレはオマエより強いし、ヒロムに《天獄》のサブリーダーを任されてる男だからな。オマエに簡単に追い抜かれるほど弱くはない」
「でも必ず追い抜くよ」
「言ってろ。オマエが強くなるならオレも強くなるだけだからな」
「ならオレも負けないよ」
「当たり前だろ。オマエならオレについてくるって信じて言ってんだからな」
ガイとナギト、それぞれが相手の成長とその強さを感じ取ると共に仲間の成長を称え、そして同時にライバルとして競い合う事を言葉にして伝えるとその絆を深めていた。
そんな中……
「ぐっ……!!」
ガイとナギトが絆を深める中で真助が勢いよく飛ばされて来る。真助は何とかして受け身を取って立ち上がり、ガイとナギトは彼に何が起きたかを問うことも無く彼の飛んできた方に目を向ける。
視線の先には……剣を構えたアーサー・アストリアがいた。
「真助、無事だよな?」
「見てわかる通り余裕で問題なし。
その代わり……アイツがこっちの想定以上の強さを持ってるって厄介な話が出てきたけどな」
「真助がそれ言うってことはかなりヤバめ?」
「ヤバめとかそんなんじゃねぇよ。けど、さすがは異国で最強とか言われてるだけのことはあるって話だ。あの野郎、他のヤツらと違って本気出す素振りすら見せやがらねぇ」
「つまり、ナメられてるんだね」
「完全にな。まぁ、この3人の仲で特筆するような成長してねぇのオレだけだからナメられても仕方ねぇけど」
なら教えてやるぞ、とガイは大太刀を手に持ちながら前に出ると真助とナギトに言った。
「この国に来て自分の力が絶対だと思ってるアイツに現実を教えてやるぞ。テメェが思ってるほど世の中弱いヤツばかりじゃなない……この国には計り知れないヤバいヤツがいるってな」
「はっ、ハナからそのつもりだ」
「うん、アイツ倒して勝たなきゃだからね」
「やるぞオマエら……コイツはオレたちにとっての踏み台でしかない。今ここでオレたちの糧にして消してやるぞ!!」
ガイはアーサーを倒すべく走り出し、ガイが走り出すとナギトは飛翔し真助は地を蹴って駆け出す。3人が動き出した中、アーサーは……




