151話 修羅の覚悟
殺気を飛ばし太刀神を威圧するガイ。そのガイの殺気を受けた太刀神は長刀を握り構える手に力が入ってしまう。
「来いよ太刀神。オマエを終わらせてやる」
「終わらせる?笑わせるな……オマエにオレをエンドさせるなんて不可能なんだよ!!」
ガイの言葉に太刀神は感情を剥き出しにして長刀に雷を強く纏わせるといくつもの斬撃を放ち、放たれた斬撃はガイに迫る中で雷を帯びながら加速して襲いかかろうとする。
だがガイは《折神》を一振りして剣圧による風を発生させると放たれた斬撃全てを防ぎ消し去り、太刀神の斬撃を消し去ったガイはすかさず太刀神との距離を詰めると相手を屠ろうとするように《折神》で斬撃を放とうとするが、太刀神は長刀2本を交差させる形で防御の構えを取るとガイの攻撃を防ぎ《折神》を止める。
長刀2本で《折神》を止めた太刀神だがガイの力に負けているのか徐々に押されつつあり、負けじと力を入れて対抗しようとするとガイは太刀神を倒そうとする中で彼に話をする。
「ヒロムが表舞台で戦う前に終わらせたかったんだろうが考えが甘すぎる。ヒロムを倒すために用意してたアーサー・アストリアさえ本来の狙いのヒロムとの対戦ではなく自分たちの勝利のために初戦で使って勝とうとしてる時点で考えが甘すぎる」
「大人の世界はオマエのようなキッズには分からないビジネスのやり取りがある。綺麗事だけで全てがスマートにエンドするような世界じゃない」
「それっぽいこと言って逃げんなよ。オマエらは内心ヒロムに負けることを恐れたんだろ?始末するために情報を集める中でヒロムの底知れぬ力を知り慎重になってこの展開を選んだんだら?ヒロムの《センチネル・ガーディアン》の活躍を否定しようとする大淵のやり方に賛同して手を貸してるくせにオマエらは真にヒロムを倒そうとしていない。金のため、将来の安定のためにヒロムを利用してる愚か者だ」
「あいにく無駄なワークは避けたいポリシーでな。それにオレたちの今後のためなら如何なる手段も躊躇わない」
「誇りもなければ戦うことへの強い意志もない。どうやらオマエは本当に剣士として道を踏み外し落ちぶれたようだな」
「剣士としてジーニアスのネームを与えられてチヤホヤされていたオマエに何が分かる?オマエには理解できない苦労を重ねてきたオレたちを否定する資格はオマエにはない!!」
「ならオマエらにヒロムのやり方を口出しする資格もない!!」
ガイは《折神》に纏わせている蒼い炎を強くさせながら振り切ると太刀神の2本の長刀のうちの1本を破壊し、太刀神に蹴りを入れるとガイは続けて《折神》で敵を斬ろうとするが太刀神は蹴りを受けて怯みながらもガイの攻撃を避けると長刀に雷を強く纏わせて突きを放つ。
太刀神が突きを放つとガイは音も立てずに太刀神の前から消えて背後に移動し、太刀神の背後に移動したガイは彼に気づかれる前に一閃を放って彼の背中を刃で抉る。
「がっ……」
「オマエらはヒロムに真正面から立ち向かおうとしなかった時点で負けている。ヒロムに勝つことを諦めオレたちを見下した時点でオマエらの勝利は消えている」
「戯言を!!」
太刀神は長刀に雷を強く纏わせて振り向くと同時にガイの首を斬ろうとするが、ガイは《折神》で容易く長刀を破壊し、2本目の霊刀・《飛天》を逆手に持ちながら抜刀して柄で太刀神の胴を強く殴打すると吹き飛ばす。
吹き飛ばされた太刀神は倒れてしまい、太刀神が倒れるとガイは逆手に持つ《飛天》を持ち直して《折神》との二刀流になってゆっくりと近づいていく。
「終わりだ。オレたちを甘く見たがためにオマエは為す術もないまま倒れた。それを理解して去れ」
「……んだよ、もうウィナーになったつもりか?」
ガイが近づいてくる中ゆっくりと立ち上がる太刀神。その太刀神の手には破壊された長刀とは異なる何やら柄だけの刀が握られていた。刀身のない刀、いつの間にか手にしていたそれが何なのかは分からないがガイは1度足を止めると太刀神が手に持つものを観察するように見るとそれ以上近づこうとしない。
「なるほど……ようやく本気になるのか?
刀身のない視認不可の刃の異名を持つ妖刀・《雲水》を持っているとはな」
「さすがは《斬帝》なんて異名を与えられただけはあるな。コイツのこともご存知か。
そう……本当ならコイツを使うつもりはなかった。なのにオマエが……オマエがオレをその気にさせたんだ」
「最初から使ってればよかったものを……今更になって使っても意味が無い」
「果たしてそうかな?オマエは経験がないから分からないはずだ。目に見えぬ刃が迫り来る恐怖を……静かに迫り来るインビジブルソードの力を!!」
太刀神は刀身のない妖刀・《雲水》を構えて走り出すとガイに向けて勢いよく振り下ろすが、ガイは《折神》と《飛天》でうまく防ぐと続けて《折神》で反撃しようとした……が、太刀神はそれを《雲水》で防ぐと突きを放ってガイの右肩に小さな切り傷を与える。
「……っ」
「ムダだ。刃が目に見えぬ今オマエは自分の感覚を頼りにしてもオレのアタックは防げない。ガードしようとしてもルック出来ない刃の切っ先を見切るなど不可能!!」
太刀神は《雲水》を地面と水平に構えるとガイに向けて高速の連続突きを放ち、ガイは何とかして対処しようとするも次々に襲い来る目に見えぬ刃を前にして体は徐々に斬撃を受けて負傷していく。
一転して負傷させられるガイを前にして追い詰めつつあると考えた太刀神は《雲水》を構える中で柄を強く握ると体に雷を纏いながらガイにトドメをさそうと動き出す。
「覚悟しろ……雨月ガイ!!
これでオマエの剣士としてのライフはエンドだ!!」
「……オマエがそれを決めるな」
太刀神が勝負を決めようと《雲水》を振り下ろそうとしたその時、ガイの体から蒼い炎が殺気とともに放出されて太刀神の攻撃を押し返し、さらに太刀神自身も蒼い炎と殺気を受けて吹き飛ばされてしまう。
吹き飛ばされた太刀神はすぐに立て直して立ち上がると構え直し、太刀神が構え直すとガイは《折神》と《飛天》を地面に突き刺して残る2本の霊刀・《希天》と《鬼丸》を抜刀するとそれをも地面に突き刺す。
何をする気だ?それが気になる太刀神が警戒しているとガイは殺気を放ちながら太刀神に話していく。
「オマエの剣士としての腕がそれで全てならもういい。やっぱりオマエはその程度の人間だったってことだ」
「何を言っている……?」
「もう、オマエは用済みだってことだ。
オマエから何かしら学べることも期待してはいたが、期待しても何も得られないのならこれ以上は無意味だ」
だから、とガイが蒼い炎を全身から溢れ出させると地面に突き刺された4本の霊刀が同じように蒼い炎を強く放出し、蒼い炎を放出する霊刀は炎となってガイの周囲を渦巻き始める。
「霊刀……真意解放!!」
蒼い炎が周囲を渦巻く中ガイの金色の髪は蒼く染まりながら炎が揺らぐように長く伸び、そしてガイの右手には大剣のような大きな刀身を有した大太刀が握られていた。
蒼い炎を強く纏うガイ、そのガイの容姿の変化と武器の変化を前にして太刀神が言葉を失っているとガイは大太刀を構えながら告げる。
「覚悟しろよ太刀神、ここからは……気を緩めたら死ぬ修羅の世界だ」




