150話 殺しの太刀
太刀神を挑発するように言葉を発したガイ。そのガイの言葉を受けた太刀神は何がおかしいのか思わず笑ってしまう。
「オマエがオレをキルするなんてジョークにしてはセンスがねぇぜ!!過去に1回ゲームして負けてるようなヤツにオレがキルされてルーザーになるとでも?」
「その減らず口とふざけたワードセンスをやめたらオレに勝てるかもな。今のアンタはあん時より弱い」
「ふっ……ジョークにセンスのないオマエにセンスの話をされたくないね!!」
ガイに強く言い返すと太刀神は走り出し、太刀神が走り出すとガイは真助とナギトに視線を送る。ガイの視線を受けた真助とナギトは何かを感じ取ると頷いて走り出し、走り出した真助はアーサーを、ナギトは笠巻を倒そうと動き出す。
「《フラグメントスクール》のスチューデントがいない今オレたちが決着をつける他ない!!そしてそのバトルでフィニッシュを最初に決めるのは……オレだ!!」
太刀神とガイに近づくと迷うことなく二刀流で襲いかかるが、ガイは落ち着いた様子で霊刀・《折神》による一撃で防いでみせ、防いだガイは《折神》に蒼い炎を纏わせると太刀神の頭を狙って突きを放つ。
「なっ!?」
ガイの突きが頭を狙っていると見抜いた太刀神は足に魔力を纏わせて高速移動して回避すると距離を取ろうとするが、ガイはそんな隙も与えずに突きを放った流れで斬撃を放って追い詰めようとする。
「なんのこれしき!!」
ガイの斬撃を太刀神は右手に持つ長刀で防ぐと天に向けて受け流し、さらに左手の長刀に魔力を纏わせると巨大な斬撃を飛ばす。
太刀神の飛ばした斬撃が迫る中でガイは《折神》を何故か下ろして構えようとせず、それを見た太刀神は不思議に思う他無かった。
「構えないのか!?」
(あれだけオレをキルするなんて自信満々にトークしてたのに急にテンションダウンか?それとも……バトルを放棄したのか?)
「……その口調が腹立つってことを理解させるしかなさそうだな」
ガイは《折神》を地面に突き刺すと素手となり、太刀神が放った巨大な斬撃が迫り来るとそれに右手を伸ばすと掴み止めてしまう。
「何!?」
太刀神が驚く中ガイは右手で掴み止めた太刀神の巨大な斬撃を握力だけで握り潰して消し去ってしまう。
ガイの衝撃的な行動にただでさえナギトの強い力とこれまでの流れで唖然とさせられている観覧席はザワつき始める。
何が起きたのか、何故ガイは素手で止められたのか。そして太刀神は本気なのかと……。
客席が驚きザワつく中で渦中にある太刀神も同じように驚きを隠せずにいた。
「どういう事だ?」
(オレは今間違いなくキルするつもりで一撃を放ったんだぞ?それを刀で止めるならまだしも魔力も能力も纏っていないハンドでキャッチしてクラッシュしただと?)
「……そんなに意外だったか?」
「ん?」
「アンタの一撃をオレが止めたのがそんなに意外だったか?アンタの斬撃を掴み止めて潰したことはそんなに驚くことだったか?」
「ふっ……1度のミラクルで強気になってるなんて甘ちゃんだな。そんなんじゃオレには……」
「勝てないって言いたいなら先に言っとくぞ。アンタの刀はオレに届かない」
「おいおい、ノーセンスなジョークを……」
「アンタはオレを見てない。今のアンタが見てるのは過去に一度負かしたガキの頃のオレだ。10年も前の弱いオレのままだと思い込んでアンタはオレを倒そうとしている。だから教えてやるよ……アンタの知らないオレの本気を」
「面白い……ならショータイムといこうか!!」
ガイの言葉に太刀神はやる気を見せると魔力を全身に纏い、さらに2本の長刀に雷を纏わせるとガイを倒そうと走り出す。走り出した太刀神に対してガイは地面に突き刺した《折神》を抜くと一瞬で斬撃を飛ばし、太刀神はそれを長刀で弾こうとする……が、太刀神がガイの放った斬撃を弾こうとするタイミングでガイはすでに太刀神の背後へ移動しており、太刀神が斬撃を弾いたと同時にガイは相手に一撃を食らわせる。
だがその一撃は《折神》によるものではなく、ただの蹴りであった。ガイの一撃を背中に受けた太刀神は何故《折神》でないのかと考えさせられるが、その理由が何なのかを理解すると長刀を強く握ってガイを斬ろうと振り向き一撃を放つ。
「手加減してるってのか?オマエが?
笑わせるな!!」
太刀神の雷を纏う長刀が迫る中ガイは《折神》で簡単に防ぎ、攻撃を防がれた太刀神は二刀流によるアドバンテージである手数の多さを利用した連続攻撃でガイをその余裕ごと潰そうとした。だがガイは太刀神の連続攻撃を前にしても落ち着いた様子を崩すことなく冷静に《折神》だけで全てを防ぎ止め、そして太刀神の連続攻撃を中断させるように一撃を防ぐと次を放たれる前に太刀神の腹に蹴りを入れて彼の動きを止めさせる。
「がっ……」
「笑わせるな?アンタが言うなよ。
オレたちとの決闘のルールが自分たちに都合がいいと思ったのかは知らないが初戦で《始末屋》のリーダーとも言えるようなアンタが異国の最強剣士のアーサーと出てきたのはオレたちを甘く見てるからだ。初戦のこっちの出場枠がオレとナギトと真助と分かった時点でアンタらはナギトを倒して終わらせるくらいのつもりだったんだろ?」
「……金のため、と言いたいがそうもいかないか。
そこは否定しない。オレたちとバトルしてステータスで浮き彫りになるのはあのボーイだと思ったからな。無駄な労力をカットしてスムーズにオレたちがウィナーになりたかったんだが……読んでたのか?」
「前に言ったはずだ。アンタの太刀筋からは何も感じないってな。アンタの刀は……もはや誇りも何もない道具でしかない」
「そういうオマエのそのウェポンも所詮はアイテムだ。人をキルするためのアイテム……オマエだって誇りも何もない剣士だろ!!」
ガイの言葉に反論した太刀神は彼の言葉の否定とともに彼の存在を否定しようとガイに迫ると彼に一撃を放とうと長刀を振り下ろし、振り下ろされた長刀からは雷を帯びた斬撃が放たれる。
雷を帯びた斬撃は先程の巨大な斬撃と比べるとスピードとパワーがあり、さすがにガイはこれを止められないと太刀神も思っていた。だが……
「悪いが、今のオレには誇りがある」
ガイは《折神》に蒼い炎を纏わせると軽く振って太刀神の一撃を消し去り、そして続けて勢いよく《折神》を振ると太刀神の立つ場所から数十cm離れた場所の地面を深く抉るように一撃を叩きつける。
一瞬、今の流れは僅かな一瞬の中で起こった。防げないと思っていた太刀神は驚きを隠せず、太刀神が驚く中ガイは《折神》を持ち直すと切っ先を太刀神に向けながら構えて彼に告げる。
「アンタの中にはプライドも何も無い。オレの憧れた太刀神剣一は剣士としてはもうこの世界に居ない。だからオレは改めて決意できた……ここでオマエを殺すと」
「何……?」
「オマエはヒロムに仇なす敵、そしてオレはヒロムの敵を全て問答無用で斬り伏す刀……今のオレはその全てをヒロムに捧げて修羅となる」
《折神》に強く蒼い炎を纏わせるとガイの全身から今までにないほどの殺気が放たれ、放たれる殺気を前にして太刀神は構えが力んでしまう。
「これは……!?」
「来いよ太刀神。ここでオマエの全てを終わらせてやる」




