129話 覚悟の激突
数時間後……
対戦の場となる訓練用施設内にヒロムは入場し、ヒロムと対戦する《世界王府》の迎撃チームであるソラ、シオン、ノアルが入場してくる。
数時間経過したとはいえ連戦であるヒロムは疲れなどないのか平然としており、対するソラたちもガイたちの戦うの様子を見ていたからか落ち着いた様子の中で強い覚悟と闘志を秘めた眼差しを持ってヒロムを見ていた。
「やる気十分、か」
「当たり前だろ。今のオマエに勝つには生半可な気持ちで挑むなんざ無策で挑むのと同じだからな」
「へぇ……」
(ガイとは違って迷いがないな。最初から殺す気満々でいやがる……)
「まぁ、オレとしてもそれくらいやる気になってくれるのなら戦いが楽しめそうで嬉しいかぎりだ」
「楽しめそう?笑わせんなよヒロム。
今からオマエはモニタールームで見てる女共に負けを晒すんだから言い訳でも考えておけ」
「やってみろよ。その余裕、ここでぶっ潰してやる」
『やる気十分なのはいいがそろそろはじめるぞォ』
ヒロムとソラが睨み合い互いに強気な発言をする中で葉王のアナウンスでまもなく対戦を開始することを伝え、アナウンスを受けたヒロムとソラは睨み合うのをやめると構える。ソラに続くようにシオンとノアルも構え、全員が構えると開始までの時間を告げるようにチクタクと音が響く 。
そして、ブザーが鳴り響くとソラは脚に炎を纏わせながら地を強く蹴ると炎を炸裂させて加速してヒロムとの距離を一気に詰める。
「先手必勝ってか?」
(躊躇いなく突っ込んで来たな。無策か?それとも……)
「あんまナメんなよヒロム?
その余裕と落ち着きはここで焼き消してやるよ」
ソラは紅い炎を纏いながらヒロムに連撃を放ち、ヒロムはそれを難無く避けていく。だがソラはヒロムに攻撃させたくないのか休むことなく連続で攻撃を放っていく。
「得意の銃撃は捨てたか?」
「うるせぇよ。人のやり方に口出しすんな」
ソラの攻撃を避けていくヒロムはソラが得意とする紅い拳銃の《ヒート・マグナム》による射撃について触れるような言葉を口にするもソラは一言で一蹴すると両手に強く纏わせた紅い炎に爪の形を与えるとヒロムを焼き切ろうと襲いかかる。
ソラの連撃をヒロムは先読みを用いているのか次々に躱していくが、ソラが連撃を放ってヒロムの行動を制限させている中でノアルが迫ってくる。
紫色の炎と闇を纏いながら走ってくるノアルは両腕を《魔人》の力で紫色に染めながら前腕に盾がついたような細身のメカニカルな姿へと変化させていく。両腕を変化させたノアルは紫色の炎を纏いながらヒロムに襲いかかり、ソラの猛攻を躱し続けるヒロムはノアルの攻撃をも躱していく。
「ずいぶんと偏った戦い方だな」
(無策なんてレベルじゃないな。オレの先読みを封じるために間髪入れることなく息付く間もなく攻めると同時に策が不発に終わるリスクがない中でひたすら攻めるパワースタイル。攻撃も防御もこなせるレベルになった《魔人》の力を得たノアルが同じように《魔人》の力を宿すソラの動きに合わせることで2人の中の《魔人》の力を共鳴させて動きに更なるキレを生み出しているな。そしてそこに……)
「オラァ!!」
ヒロムがソラとノアルの猛攻を躱し続ける仲で後ろに注意を向けるとタイミングよく雷を纏ったシオンがヒロムの背後に現れ、現れたシオンが雷を纏いながらヒロムに蹴りを放つ。
ソラとノアルの猛攻を躱し続けるヒロムは背後からのシオンの攻撃に対しても落ち着いた様子で対処するように回避するが、攻撃を回避されたシオンは雷を強く纏うと猛攻を放つソラとノアルに加勢するように連続攻撃を放ち始める。
「ったく、3人が揃いも揃って攻撃の手を緩めないとは……おもしれぇ!!」
ヒロムは白銀の稲妻を強く纏うとソラとシオンの一撃を掴み止めた上で2人を蹴り飛ばし、ノアルが放つ攻撃を躱すと体を軽く浮かせながら回転して蹴りを放つことでノアルを蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたソラと シオンは受身を取り、同じようにノアルと受身を取ると3人は紅い炎、雷、紫色の炎をそれぞれ強く纏うとヒロムに向けて一撃を放つ。
「プロミネンスバスター!!」
「轟雷滅迅槍!!」
「ガイアブレイク・クロー!!」
紅い炎による砲撃、巨大な雷の槍の放出 、紫色の炎を纏いし巨大な斬撃がヒロムに向けて放たれ、3人の放たれた攻撃を前にしてヒロムは両手首の白銀のブレスレットの霊装である《レディアント》に身に纏う白銀の稲妻を収束させると左足を後ろに下げながら両手を交差させてから前へと突き出す。
「スペリオル・ブラスター!!」
前へと突き出された交差された両手から白眼の稲妻がビームとして撃ち放たれ、放たれたヒロムの攻撃はソラたち3人の放った攻撃を迎え撃つようにぶつかっていく。
激しくぶつかる両者の攻撃は一進一退を繰り広げる中で力を増しながら相手の攻撃を押し切ろうとする。だが力が高まりすぎた互いの攻撃は激しくぶつかりあったことにより全てが同時に炸裂して大きな爆発となって衝撃を生むと4人を吹き飛ばそうとする。
強い衝撃を前にしてヒロムは耐えるが、ソラたち3人はその衝撃を受けると吹き飛ばされそうになって後ろによろけてしまう。
「クソ……!!」
「オレたちの一斉攻撃も防ぐのかよ!!」
「時間差で介入しての連撃も躱されたがヒロムには通用してる。やはりソラの言う通り無駄に策を用意して挑むよりは確実に攻める方で軸を揃えるのは正解だったようだな」
「けど、オレたち3人の戦力をアイツは1人で互角にまで押し上げてる。ガイたちが先読みを用いて盤面を制す初動を選択したのに対してオレたちはヒロムの先読みの範囲を固定することに特化した方を選んだのにアイツはそれすら意に介さず対応してやがる」
(いや、精神的な成長がヒロムの視野をこれまでとは比較にならないレベルで広げてるのなら先読みを封じるってのも無意味なのかもしれない。戦術的な話をするなら今の霊装の力たる稲妻しか使ってない状態のアイツがペインすら凌ぐ《レディアント》の武装形態の《ユナイト・クロス》を今のヒロムが発動でもしたら勝ち目はなくなる。そこに今ヒロムがルール上で許されている4体の精霊を現界させて連携でもしたら負けは確定。だったら……)
「考える間はない。最低でも精霊との連携で抑えるために本気でやるぞ!!」
「要は精霊使わせなきゃいいんだろ!!」
「それなら簡単だ。オレたちが先にそれを上回るだけだな!!」
「ああ……やるぞ!!」
3人は身に纏う力を高めていき、ソラは紅い炎を両腕に集めると腕と炎を一体化させて《魔人》の力で鉱石のような紅い甲殻を纏った鋭い爪の両腕に変化させ、シオンは体を雷と同化させるとその力により髪の毛が長く伸びるとともに全身から雷を溢れださせた姿となる。
続くノアルも全身を紫色の炎に包むと両腕と同じように《魔人》の力で変化させていくと自身の姿を鬼を思わせる仮面を付けし紫色の細身でメカニカルなデザインの騎士の姿へと変化する。
「炎魔解放……イフリート・ナックル!!」
「雷鳴王!!」
「全身魔装……カラミティアームド!!」
炎の魔人の前腕武装、全身の雷との同化、純粋種の力による全身変化。3人の本気を感じ取れるその変化を前にしてヒロムは白眼の稲妻を強く纏うと3人の本気に応えるかのように拳を構える。
「……おもしれぇよオマエら。
そんな本気見せられたら……オレの魂が滾るだろうが!!」




