126話 友として
「いくぞ……ヒロム!!」
ガイを蒼い炎を強く纏うとヒロムに向けて走り出し、地を強く蹴って距離を詰めると蒼い炎を纏わせた霊刀《折神》で斬撃を放とうとする。だがヒロムはそれを迎え撃つかのように手に持つ太刀と刀による斬撃を放とうとするとともに白銀の稲妻を纏わせながら攻撃体勢に入る。
ヒロムとガイ、両者共に相手を倒そうと斬撃を放とうと考えており、そしてそれを分かった上で斬撃を放とうとそれぞれが武器を放つ。
だがガイは斬撃ではなく霊刀《折神》に纏われた蒼い炎をヒロムに向けて飛ばすとヒロムの視界を妨げるように燃え盛らせ、斬撃の代わりに放たれた蒼い炎を消すかのようにヒロムは斬撃を放って消滅させるとガイの姿を探した。蒼い炎を消したと同時にヒロムの視界上からガイが消えていた。
そう、蒼い炎は目眩しに使われたのだ。
それをすぐに理解したヒロムは太刀と刀を構えて姿を消したガイの次なる行動に警戒するが、ヒロムが構えるタイミングでガイはヒロムの背後に現れると霊刀《折神》を構えた状態で回転しながら斬りかかる。
「神楽裂き!!」
ガイの接近にヒロムが気づくよりも先にガイは霊刀で目にも見えぬ速度の連続の斬撃を放つが、ヒロムは白銀の稲妻を太刀と刀に纏わせながら防御をすると全てを防いでみせるが……ガイの攻撃を防いだヒロムの2種の武器はガイを攻撃に耐えられなかったのかヒロムの手から弾き飛ばされてしまう。
「よしっ!!」
(先読みで劣るのはよく理解した。けど、ヒロムの攻略法は見えてきた!!
ヒロムに届いた真助の一撃は真助の強い意志がヒロムの先読みを超えた。オレにそれと同じことが出来るかは分からないが今言えることは1つ!!オレの得意な技で……オレの剣術でヒロムの先読みを超えることだけだ!!)
武器を失い無防備となったヒロム、そのヒロムが次の行動に移る前にガイは莢を出現させて霊刀《折神》を納刀するとともにヒロムとの距離をさらに詰め、その状態から高速の抜刀術を放つ。
「夜叉殺し!!」
ガイの放つ高速の抜刀術、それを前にしてヒロムは防ぐことは不可能……に思われたが、ヒロムは白銀のブレスレットを琥珀色に光らせてガントレットを装備するとガイの高速の抜刀術を放つ霊刀《折神》を白刃取りで止めてしまう。
「!?」
「おらぁ!!」
ガイの抜刀術を止めたヒロムはすかさずガイを蹴り飛ばし、ヒロムの蹴りを受けたガイは霊刀《折神》を持ちながら倒れそうになるも何とか立て直すと蒼い炎に形を与えて別の霊刀を1本装備する。霊刀《飛天》、2本目の霊刀を持って二刀流となったガイは両手の霊刀に蒼い炎を纏わせると回転して炎の竜巻を巻き起こしながら飛翔する。
「斬れ味を増していく霊刀《飛天》か」
「まだだ!!」
炎の竜巻を巻き起こしながら飛翔するガイはさらに霊刀《希天》を出現させ、霊刀《折神》を持つ手に《希天》を逆手に持つとガイはヒロムに向けて炎の竜巻とともに降下していく。
「我流……三式!!
梵天大炎斬!!」
炎の竜巻とともにヒロムに迫るガイは手に持つ3本の霊刀による斬撃を炎の竜巻とともに放ち、放たれた斬撃は炎の竜巻と一体化すると炎の刃の竜巻となってヒロムに襲いかかる。
「……グランザム・スラッシュ!!」
炎の刃の竜巻が迫る中ヒロムは白銀の稲妻を強く纏うと精霊・ユリアの武器である双剣を構えると緑色の稲妻を纏わせると無数の斬撃を飛ばし、斬撃を飛ばした後双剣を連結させてツインランスにしてトドメともいえる巨大な斬撃を飛ばす。
無数の斬撃と巨大な斬撃はガイの放つ炎の刃の竜巻と衝突する……が、ガイの放った炎の刃の竜巻の勢いを少し弱らせる程度で力負けして消えてしまう。だが、ヒロムは何故か不敵な笑みを浮かべると双剣を投げ捨てる。
「なにを……」
「ガイ、先読みで負けると判断して得意の剣術で先読みを超えることを選んだのは切り替えとしては間違いない。ただし……オマエのその視野じゃ先読みで勝ってもオレには届かない」
「なっ……」
「オレの全ては先読みで終わらない……そのことをオレの近くで誰よりも見てきたオレの友であるオマエが戦いの中で忘れるんなら拍子抜けだ」
見せてやるよ、とヒロムは纏う白銀の稲妻を消すと同時に急激な加速とともに目にも止まらない速さでガイの周囲を駆けるように動き、ガイがヒロムの動きを追えずにいるとヒロムは動きながら連続攻撃を放ってガイを追い詰めていく。
「がっ……」
「忘れたのかガイ?オレが多くの敵を倒せたのは先読みだけじゃない。その先読みの辿り着く結末の全てに応えるだけの身体能力があるからこそだ」
そして、とヒロムはガイを蹴り飛ばすと同時に白銀の稲妻を白銀のブレスレットから周囲へと放出すると精霊たちの武器をいくつも出現させ、出現させた武器を自身に追従させるように飛行させながらガイへと接近すると武器を次々に持ち替えながらガイへと攻撃を放っていく。
「精霊の力を借り受けて能力者に対抗する、それが基本として存在するからこそオレの強さが語られる!!」
ヒロムが次々に放つ攻撃をガイは霊刀で防ぎ止めようとするもヒロムの激しい攻撃を前にして3本の霊刀はガイの手から弾き飛ばされて彼から離れていく。
「そんな……」
(何とかヒロムに勝てると思ったのに……。今のオレなら僅かな糸口を見つければ……)
「イグナイトアサルト!!」
次々に武器を持ち替えながら放たれるヒロムの連撃をガイは防ぐ術もなく勝利への望みを折られるかのように攻撃を受けていくと膝をついてしまう。
ヒロムの攻撃を受けて負傷したガイは膝をつき前に倒れそうになるも右手を支えにして耐え、まだ負けを認めないガイは歯を食いしばり己の中の力を出し切ってでも勝とうと強く抱いて蒼い炎を左手に纏わせながら立ち上がると共にヒロムを殴ろうとする。
だが……ヒロムは白銀の稲妻を拳に纏わせるとガイの拳にぶつけるように拳撃を放ち、放たれたヒロムの拳撃はガイの拳を強く押し返してしまうと彼の体勢を崩させる。
「クソ……オレは……!!」
「悪いなガイ……今のオマエに負けるオレじゃない。
オレに勝ちたいなら……今のオマエに無いものを取り戻してから挑みに来い!!」
ガイに対して言葉を残すとヒロムは白銀の稲妻を纏う拳でガイを殴り飛ばし、殴り飛ばされたガイは地を何度も転がりながら倒れる。
倒れたガイはまだ諦めようとせず立ち上がろうとするが、もはや残る力は無いのか立ち上がれず倒れ落ちる。
『そこまでだァ。姫神ヒロム、オマエの勝ちだァ。
次は相馬ソラたちとの対戦だからコンディションを整えとけェ。その3人の手当てについてはこちらでやるから任せとけェ』
ナギト、真助、そしてガイが倒れると葉王からのアナウンスが流れ、アナウンスが流れるとヒロムはガイたちに向けて伝えた。
「たしかにオマエらは強かった。だけど今の戦いで見せたのがオマエらの全てじゃないはずだ。何で選ばれたのか、何のために戦うのかを改めて考え直せ。そうすればオマエらはもっと強くなれる」
だから、とヒロムは背を向けると歩き出し、ガイたちの前から去ろうとする中で彼らに伝えた。
「オレは先に行く。オマエらが後から来ても一緒に進めるように道を作ってるから早く来い」
ヒロムはガイたちに言葉を伝えると訓練用施設から出ていく。ヒロムが出ていくとナギトと真助は悔しそうな顔をし、そしてガイは……倒れたままの状態で涙を流していた。




