124話 師弟対決
「……やっぱそうなるよね。
けど、やるからには本気でやるよ」
「当たり前のこと言うなよ。オマエの本気を……見せてみろ!!」
ヒロムは白銀の稲妻を纏うとナギトを倒そうと動き出し、ヒロムが動き出すとナギトも風を纏いながら走り出す。
「いくよ天才」
(精霊との特訓でオレの動きも格段に良くなってるのは間違いない。だけどそれ以上にヒロムの動きも格段に良くなってる。精神的な成長、それを軸において平穏に過ごしてるように見えてそれ以上の成果を出している……特訓という点において本質を理解して身につけるレベルの違いを埋めるには素のポテンシャルで上回るしかない!!)
ナギトは力強く地を蹴るとさらに加速してヒロムに迫り、ヒロムに接近するとナギトは右の手刀に風を纏わせながら一撃を放とうとする。が、ヒロムはそれを受け流すように躱すとナギトとすれ違う瞬間に拳の一撃を叩き込もうとし……たが、ヒロムが一撃を放とうとするとナギトはすかさず体勢を低くしてヒロムの攻撃の軌道の下へと潜り込みながら素早くヒロムの後ろに回り込み、ナギトが姿を消したことでヒロムの拳が空を切る。
ヒロムの攻撃が空振りに終わるとナギトはふたたび風を纏わせた手刀でヒロムを後ろから攻撃しようとする……のだが、ヒロムは背後のナギトを見ることなく左手を後ろに回すとナギトの手刀を掴み止める。
「嘘っ……!?」
「惜しかったなナギト。その程度の読みじゃ三手足りねぇよ」
ナギトの手刀を止めたヒロムはそのままナギトを投げ飛ばし、投げ飛ばされたナギトは地に落ちる前に風を集めて衝撃を緩和しながら立て直すと構えた。構えるナギトはヒロムが動く前に走り出し、走り出したナギトは自身に風を集めるとさらに加速していく。
「ごめん、天才。
未完成だけどこれでいくよ」
「未完成?」
「そう、これは……天才の速度を追い抜くための加速だ!!」
ヒロムに迫る中、ナギトは集めた風を竜巻のように変化させながら身に纏うと目にも止まらぬ速さでヒロムに接近し、ナギトの急激な加速を前にしてヒロムは白銀の稲妻を纏いながら蹴りを放とうとする。だがナギトはヒロムが蹴りを放つ前に彼の前から消えると一瞬でヒロムの背後に移動して蹴りを放つ。
背後へと一瞬で移動したナギトの蹴りに対してヒロムはそれを予測していたかのように右手で防ぐと続けて左手で拳撃を放ってナギトを攻撃するが、ヒロムの拳撃はナギトに命中する寸前に風が壁となって止められてしまう。
「……風を圧縮してるのか」
(風を集めて竜巻に変化させ纏うことで圧縮させた風が壁となる防御と瞬間的爆発性のある加速を会得した状態になるってわけか。フレイたち相手に特訓続けて独自の技を会得したようだが……)
「まだまだだな」
風が壁となって止められた拳にヒロムは白銀の稲妻を強く纏わせて力を高めると強引に押し切り、壁となっている風を吹き飛ばすと同時にナギトの体に拳を叩き込んで彼を殴り飛ばす。
殴り飛ばされたナギトは何度か地に叩きつけられる形で吹き飛ぶと倒れるが何とかして立ち上がると身に纏う竜巻を強くさせながら走り出し、ヒロムに迫る途中で高く飛び上がると体を高速で回転させながら竜巻を球体状に圧縮していく。
「これでもくらえ……テンペスト・ブレード!!」
球体となった竜巻をヒロムに向けてナギトが蹴ると球体は全てを破壊するかのような強い竜巻となってヒロムに襲い掛かる。迫り来る強い竜巻はまるで高速回転する槍のように力を増しながらヒロムに迫っていくが、ヒロムは白銀の稲妻を瞬時に巨大な球体状にすると左右の足で交互に連続で蹴りながら力を蓄積させながら蹴り飛ばす。
「エボリューション……ドロップ!!」
ナギトの放った槍のような竜巻とヒロムの白銀の稲妻の球体がぶつかり合い、2つの攻撃が衝突すると強い衝撃が周囲に溢れ出ようとする。しかし、2つの攻撃の勝敗はすぐに着いた。
白銀の稲妻の球体はナギトの攻撃を前にして破壊されてしまい、ヒロムの攻撃を破壊した強い竜巻はヒロムを倒すべくさらに進んでいく。
「よし、これなら……」
「甘い」
ヒロムの攻撃を突破した……とナギトが思ったその瞬間にヒロムはナギトの前に現れ、現れたヒロムは両手に白銀の稲妻を強く纏わせると拳の連撃を叩き込んでいく。
「覇王連絶拳!!」
白銀の稲妻を纏うヒロムの拳の連撃は無防備なナギトに叩き込まれ、全ての連撃が叩き込まれるとナギトの放った強い竜巻は消滅してナギト自身も吹き飛ばされることも無く静かに倒れてしまう。
ナギトが倒された、それを察知したガイと真助は精霊たちを振り切ると距離を取って構え、2人が構えるとヒロムはフレイたちに下がれと伝えるように手で合図を送る。
ヒロムの合図を受けたフレイたちは後ろに下がり、フレイたちが下がるとヒロムは前に出て構えるガイと真助に告げた。
「初手の連携はよかった。ただ、それが崩されたあとの対応が雑すぎる。雑すぎるせいで経験値の浅いナギトが狙われやすくなってるのが欠点だ。オマエらがオレを警戒して先読みの先を読もうとしてるのは見事だと思う。けどな……それじゃ付け焼き刃でしかない。オマエらのやってる先読みはオレの真似事、それじゃオマエらの強さを証明することも主張することも到底できないぞ」
「……やってみなきゃ、わからないよ」
ガイと真助の行動について酷評するヒロム。そのヒロムの言葉に言い返すように倒れたはずのナギトはボロボロの体で立ち上がると風を纏いながら構える。
ヒロムの攻撃を受けても尚立ち上がるナギト、そのナギトに対して何かを言うでもなくヒロムは背を向けたまま立っている。そのヒロムの態度が気に入らないのかナギトは風を強く纏うと走り出してヒロムを攻撃しようとする。
「まだ……終わってない!!」
「待て、ナギト!!」
「それは罠……」
そうかよ、とヒロムは白銀のブレスレットを光らせると琥珀色の稲妻を全身に纏い、全身に琥珀色の稲妻を纏いしヒロムは獅子や虎を模した稲妻を出現させると拳に力を溜めていく。力を溜めたヒロムは拳を強く握ると迫り来るナギトに一撃を叩き込み、ヒロムの一撃が叩き込まれると獅子や虎を模した稲妻はナギトに襲いかかると衝撃波とともにナギトを吹き飛ばす。
「ライジング・ファング……!!」
「ぐぁぁぁあ!!」
ヒロムの攻撃を受けたナギトは勢いよく倒れ、ナギトが倒れるとヒロムは白銀のブレスレットを金色に光らせると精霊・フレイの武器である大剣を出現させて手に持ち、大剣を持ったヒロムはガイと真助に武器を向けると言った。
「……まずは1人。次はどっちだ?
どっちがオレに潰されたい?」
「この野郎……!!」
(ナギトは弱くない。むしろその辺の能力者と比較したらナギトの方がレベルは上だ。ガイもそれを考えてはいるだろうが……ヒロムのスペックがこの短期間で上がりすぎなんだよ、単純に。付け入る隙がない……今のヒロムは強さのレベルが段違いだ)
「……その余裕、今すぐ斬り潰してやるよ」
ナギトが倒れ、ヒロムの今の強さがこれまでとは確実に違うと真助が思い知らされる中でガイは身に蒼い炎を纏い、蒼い炎を纏うガイは手に持つ刀……霊刀《折神》 に蒼い炎を纏わせながら構えて真助を鼓舞するかのような言葉をかける。
「真助、ヒロムに手も足も出ないと思い知らされたのならそこで見てろ。オマエの代わりに今ここで……オレがヒロムを倒して終わらせてやるよ」
「はっ……んなわけねぇだろ。ただのワクワクで足止めてるだけだ!!むしろ邪魔するなって話だ!!ヒロムを斬るのは……オレだ!!」
「……その意気だ真助。オレたちでヒロムを倒すぞ!!」
ガイの一言でやる気を見せる真助は黒い雷を強く纏うと走り出し、真助のやる気を見たガイは負けじと蒼い炎を強く纏うとヒロムを倒そうと走り出す。走り出した2人、その2人を前にしてヒロムは……




