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レディアント・ロード 2nd season  作者: hygirl
守護武闘編
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109話 冷たい報


「何でアンタがいるのよ!?」

 

 屋敷に戻ったナギト、そのナギトは氷堂シンクを連れて屋敷に帰り、シンクを見たアキナはヒカリとの件で散々声を出したと思っていたのにまだ足りないのかシンクに向けて叫んでいた。

 

「何で!?何でアンタがここにいるのよ!?

アンタがここにいる理由ってないでしょ!?」

 

「うるさいぞアキナ。半年前から変わらず口うるさい騒音女、そんなんだからヒロムに相手されないんだよ」

 

「はぁ!?何でアンタにそんなこと言われなきゃならないのよ!?

大体アンタみたいな冷たい男が偉そうに私に難癖つけないでくれる?」

 

「すまないがオレは公私を共に過ごしたいと言ってくれた女がいる。オマエと一緒にしてくれるな」

 

「嘘でしょ!?何でアンタにそんな相手が……」

「というか、そんな話をしに来たわけじゃない。

オマエは少し黙っていろ」

 

 アキナの相手をするのが嫌になったのか、それとも本題に早く入りたいからなのか……または両方なのかはさておきシンクはアキナに冷たく言うとヒロムに向けてある報告をする。

 

「《世界王府》のビースト、ヴィラン、ノーザン・ジャック、リュクス、そしてヒロムにそっくりの別世界から来たペインとヒロムたちがこれまで侵攻を阻止してきた主要メンバーが大きな動きを見せる可能性がある」

 

「大きな動き?ヤツらは何をするつもりだ?」

 

「目的は分からないがそれを示唆する2つの理由がある。1つは未だに姿を見せていない他の幹部クラスの能力者、その1人が首都のどこかに潜伏してるらしい。数日前にアメリカから密入国しようとした武装組織を潰した際にそいつらの1人が自分たちを手引きしたのが《世界王府》の幹部クラスでテラーと呼ばれる能力者だと語った」

 

「素性は?」

 

「明かされていない。ヒロムが迎え撃ったこれまでの幹部クラスの顔写真を見せても反応しない。おそらくまだ姿を現していないオレたちの把握してない能力者ということになる」

 

「それが何故首都に?」

 

「それが2つ目の理由だ。日は明らかにはされていないが……十神アルトが今投獄されている刑務所から別の刑務所に移送されるらしい」

 

「十神アルトを……?」

 

 シンクが口にした『十神アルト』という名にヒロムは反応し、ヒロムが反応したその名について詳しく知らないのかナギトはシンクにどういう人物なのか尋ねた。

 

「その十神アルトって誰なのさ?」

 

「十神アルトは半年前に起きた《十家騒乱事件》で明るみとなった1連の事件の黒幕であり、先祖が日本の権力として政界や警察をも牛耳るシステムである《十家》を作ったとされる《十神》の家の当主だった男であり、《世界王府》の序列10位の能力者だ」

 

「テロリストの主要メンバーってこと?」

 

「簡単に言えばな。警察や自衛隊の能力者絡みの事件への関与を妨げて自分の手のまわっている対能力者犯罪組織の《ギルド》という名目の駒を動かして日本の国を掻き乱した男だ。この男の策によって力を秘めていると危険視されたヒロムが《無能》と蔑まれるように絶望させようとし、今の《八神》の当主は10年に渡って精神を支配されて傀儡にされていた。今ヒロムたちに協力してくれている《一条》は《十家》の一角を担っていたがシステムの内側が腐敗しているとして《十家》のシステムそのものを破壊しようと暗躍し、ヒロムやオレたち《天獄》が《一条》のサポートを受ける形で《十家》の当主を倒し、ヒロムは満身創痍になりながらも禁じ手を使う形で黒幕を倒して日本国に本来の政治と警察の活動権を取り戻させたんだ」

 

「その十神アルトが何で移送される?

警察と自衛隊、さらにはアメリカや中国から技術支援として派遣された能力者が24時間365日休むことなく交代で見張り、襲撃に備えて万全のセキュリティで侵入すら困難になってるはずだろ」

 

「そのセキュリティと監視の中で大淵麿肥子が防衛対策として雇っている専門家が十神アルトに面会を求めたらしくてな。あまりにも危険すぎることに大淵麿肥子は何を思ったか容認してセキュリティと監視を一時的に解いてその専門家を通しやがった。警視総監の千山は一時的に解かれたセキュリティと監視の目をその専門家以外に抜けて内部に潜む危険性を指摘したことで別の刑務所に移送されることになったんだ」

 

「クソ野郎が……《センチネル・ガーディアン》の否定だけじゃ物足りないってか」

 

「千山はともかく葉王や一条カズキは大淵麿肥子が信用する専門家を怪しいと睨んでいる。身元は正真正銘の専門家で一流大学卒業の経歴があると大淵麿肥子は主張しているが今の世の中過去の経歴なんざ簡単に偽れる。改竄でも何でも可能な世の中で言葉による主張は意味をなさないとして一条カズキは部下に調査を命令し、決闘当日のメンバーの1人であるオレにこのことを伝えるよう依頼してきたってわけだ」

 

「アイツが選定した能力者の1人はオマエだったのか」

 

「最初は断ろうとしたが一条カズキは《センチネル・ガーディアン》の任務ではなく個人の意思で動けと言ったからな。それに……一条カズキから話を聞いていた通り《フラグメントスクール》の連中はゴミ以下のゲロレベルで笑えねぇから現実を思い知らせてやろうと思ってな」

 

「おいおい……殺すなよ?

せめて半殺しにしとけよ」

「ヒロムくん?半殺しもダメだよ?」

 

 シンクに対してのヒロムの言葉にユリナが素早くツッコミを入れ、その様子を見るとシンクは何故か嬉しそうな表情を見せる。シンクのその表情を見たナギトは不思議に思ってしまう。

 

「何かおかしかった?」

 

「いや……久しぶりにこの光景を見るとヒロムは変わってないなと思ってな。一時は復讐に心を奪われていたヒロムは何かを守るために戦うと決めて前に進もうとした。その時のヒロムを知ってるからか今のヒロムを見てると安心してしまうんだ」

 

「ふーん」

 

「……風乃ナギト、ヒロムの弟子を名乗るならこれだけは忘れるな。力を得ても私欲のために使うのは正しい強さでは無い、真の強さとは何かを守るためにその力を使えることでしか示せないってな」

 

「真の強さ……」

 

「そんなに難しく悩まなくていいさ。要は《フラグメントスクール》のバカどもみたいに強くなった気になって力を振りかざさなきゃそれでいい。それだけの話だからな」

 

 ナギトに伝えたいことをつたえるとシンクは帰ろうとし、帰ろうとする彼をユリナは引き止めようとする。

 

「シンク?もしよかったらこれから姫月さんの歓迎会するから一緒にご飯でも……」

「あいにくオレは一条カズキに与えられた仕事の最中に立ち寄った身だ。気持ちはありがたいが今回は遠慮しておく。それに、オレがいるとアキナがうるさくて仕方ないだろ?」

 

「いや、シンクがいてもいなくてもアキナは年中無休でうるせぇから気ぃ遣うだけ無駄だぞ」

 

「ヒロム!?アンタまで!?」

 

「……賑やかで何よりだ。何かあればまた立ち寄る、何も無ければ……決闘当日までお互いやれるだけの用意をしよう」

 

「ああ、またな」

 

 ヒロムの言葉に軽く手を振るとシンクは行ってしまう。シンクが帰っていくとナギトはヒロムに胸の内の思いを明かしていく。

 

「オレには守るための強さとかよく分からないけど、オレに足りないのがそれだって言うなら教えてよ」

 

「教えるほどの事じゃねぇよ。つうか、オレのそばにいれば何となく分かるだろ」

 

「……それもそうかもね」

 

 強さとは何か、真の強さとは何か。ヒロムやシンクの知るそれをまだ知らないナギトはただそこを目指すしか無かった。ヒロムたちに置いていかれぬためにも……《フラグメントスクール》のかつての仲間たちに今の自分の在り方を示すためにも。

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