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レディアント・ロード 2nd season  作者: hygirl
叛逆界雷編
1084/1085

1084話 去り際の疑問


 サウザンに確実な一撃を決めて倒れさせたヒロム。

 敵への確かな一撃を決めたヒロムの姿を見るユリナたちは彼の勝利を信じて喜び、彼女たちを守るように立つガイたちもこの一撃が確実に決まって戦いは終息すると思っていた。

 

 が、ヒロムは違った。

 

 彼だけは倒れたサウザンが立ち上がる事を前提にしたような警戒心を見せるように白銀の稲妻を拳に纏わせどのようなことが起きたとしても対応出来るように構えていた。

 

 その彼の警戒が大袈裟に思えたイクトは不思議そうに彼に尋ねようとした。

 

「大将、流石にこれ以上は無いと思わない?いくらサウザンが《負の想いの力》を開花させてるにしてもここから挽回するって無理がない?根本となるのが大将の見つけた《想いの力》と同じ心から来るものってんなら覚醒に伴い得られる力が疲弊した肉体の許容量を超えたとなれば自滅しか無いと思うけど……違うの?」

 

「その理屈ならオレが先に倒れてる」

「えっ……あっ!!」

 

「たしかにヒロムの言う通りだな。アイツが疲弊した状態で次の力を得られないって言うならアウロラに一度は心身共に追い詰められたヒロムが倒れてないと理屈として成り立たない」

「あれ?ガイ?大将の側とは思えない発言……」

「いや、贔屓目無しでもガイの言う通りだろ。というか、四条貴虎がヒロムを参考にして見出し種を与えてるとしたらここからが本番だろ」

 

「あ〜……真助のそれは大将の代わりに自分が戦いたいってだけだよね?分かるよ、言わなくても分かるからね?」

 

「……消耗云々はさておいて、オマエらはアウロラの姿を見失ってる事忘れてないか?」

 

「……」

「……」

 

「「アイツ、どこいった!?」」

 

 イクトの発言に対するヒロムの反論からガイと真助が冷静に語り、イクトが彼らの発言につっこむ中でヒロムはアウロラの存在に触れ、彼にアウロラの名を出された事でガイたちは悪意の魔女たるアウロラの姿がない事に今気づいてしまう。

 

 どこかにいる、となれば警戒しなければいけないとガイたちが慌てようとする中で呆れたようなため息をつきながらギルナイトは漆黒の力をサウザンの方へと強く放射させる。

 

 ギルナイトが放射させた漆黒の力はヒロムを横切り通り過ぎてサウザンへと向かっていくが、ギルナイトの攻撃がサウザンへと迫っていくと倒れるサウザンを守るようにアウロラが闇と共に現れて禍々しい闇を強く解き放つ形で防ぎ止め消してしまう。

 

「……クソ人間共が。ヒロムが警戒してるなら同じように警戒しとけ。チビたちに何かあったらオマエらの責任だからな?」

 

「わ、悪いギルナイト」

「大将の事認めてくれたと思ったらオレら『クソ人間』に格下げ!?」

 

「安心しろ、クソ人間はオマエだけだ元・死神もどき」

「おおい!?クソ人間ですら失礼なのにその前段階の名前雑になってる!!」

 

「イクト、集中しろ!!」

「そして大将冷たい!!」

 

 1つの戦いが終息した、それ故に多少は気が緩みはしてるらしく敵を前にして騒がしさを見せるヒロムたち。

 

 そんなヒロムたちの騒がしさを気にする様子も見せないアウロラは禍々しい闇をサウザンに向けて放つとそれで彼を包み込み、禍々しい闇に包まれたサウザンの体からはヒロムの先程の攻撃で負った全ての傷が消えてしまう。

 

「クソ女が」

「あら、褒められたと思っておくわ。でも、あまり気にしないで。どうせ見てくれだけで中身はボロボロだから」

 

「あ?どういう……」

「アウロラ……どういうつもりだ!!」

 

 サウザンから傷を消し去ったアウロラの事を鬱陶しそうに睨むヒロムに対して悪意の魔女は不敵な笑みを見せながら楽しそうに話し、アウロラの言葉の意味をヒロムが問い詰めようとすると傷を治してくれたアウロラへ感謝するはずのサウザンが苛立ちながら漆黒の羽衣を纏いながら立ち上がって彼女に強く問い詰める。

 

「オマエの力ならオレの中身まで回復させれるはずだろ!!なのに、何故やらない!!今のオレならオマエが心酔する災禍の王が求める強い悪意を発揮出来る!!それなのに……何故、完全に治さない!!」

「治しても無意味だからよ」

「何!?」

 

「アナタの力は大きな飛躍を起こせない。アナタの中のそれはあくまで目の前で起きた自分にとって都合の悪い事を拒絶するための現実逃避から生まれる力……《負の想いの力》なんて良いように言ってるだけでその本質は都合のいい解釈に上手く噛み合った力が手に入っただけという話よ」

「くっ……!!」

 

「分かったなら黙って帰る用意をしなさいな。ここでのこれ以上の戦いは私たちの損にしかならないわ」

「逃げると言うのか?」

 

「あそこの《叛逆の悪意》だった彼の説明忘れたのかしら?今の姫神ヒロムがやる気になればなるほどそれを支えようとする想いを抱く心が新たな力の覚醒の引き金に進化するリスクが生じている。とくに、アナタは《姫神》を裏切った白崎蓮夜として許せないと考えている子が多そうだし……下手にここでアナタの戦闘継続を許しでもしたら、追加で2個か3個くらい新しい霊装が生まれるかもしれないわね」

 

「くっ……!!」

 

「分かったなら去りなさい。加勢に来ておいて敵に塩を送る醜態晒した後なんだから」

 

「その話を静かに聞いて済ませるほどオレも優しくないけどな」

 

 サウザンの言葉全てに余裕を見せるように強く返した上で彼を黙らせたアウロラは撤退するよう伝えるもその会話を黙って聞き続ける気のないヒロムは白銀の稲妻を強く纏いながら動き出そうとした。

 

 が、ヒロムが動き出そうとしたその時、彼の纏う《エンゲージ・アップ》の力はもちろんの事、《ユニバース・ソウルギア》の力による姿の変化も突然解けて元の容姿に戻ってしまう。

 

 何が起きたのかは流石に理解出来てしまえるヒロムは舌打ちをしてしまい、ヒロムが舌打ちをするその裏で彼の右手に装着されている《プライム・ハート》の両隣の2つの指輪が光の粒子となって消失してしまう。

 

 《プライム・ハート》を残して他2つの指輪が消えたのを見逃さなかったユリナとサクラは先程まで自分たちが力になれていたという実感があったせいで動揺してしまうが、2人の反応に気づいたギルナイトは咳払いをした後に彼女たちに説明した。

 

「常に繋がり続けるのは双方の心へ負担が生まれてしまう。《ユニバース・ソウルギア》を経て《プライム・ハート》を介して発動するか《プライム・ハート》から単独で発動する時、必要に応じて現れる仕組みだから気にする必要は無い。オマエら女の方に指輪があれば再錬可能だから安心しとけ」

 

「そ、そうなんだ……びっくりしちゃった。ありがとうね」

「アナタ、優しいのね」

 

「別に。アイツが負けたらチビたちが悲しむ。そうならないようにアイツが戦えるようになるためにオマエらが不可欠ってだけだ」

 

「あらあら、《叛逆の悪意》だったアナタが人間に気を遣うなんて何の冗談かしら?」

 

 不安を取り除けるだけの説明を聞けた事でユリナとサクラが感謝を伝えるもギルナイトはあくまで白丸たちの安全のためとはぐらかす。が、そんなギルナイトの話を聞いていたアウロラは不敵な笑みが浮かべながら禍々しい闇で空間に穴を開けてサウザンをその中へ入らせながらギルナイトを煽るような言葉を口にし、サウザンが空間の穴へ消えていくのを止める気が無いであろうギルナイトはため息をつくと面倒くさそうにアウロラに反論した。

 

「……精霊の王として覚醒したヒロムに多少の期待をするだけ、その上でチビたちを守るのに利用出来るものを活かせるようにしておくだけの事。勝手な勘違いはダルいだけだからやめろ」

「勝手な勘違い?でも私にはアナタがそこの人間たちに期待してるように見えたわよ?」

 

「はっ、勝手に言ってろクソ魔女が。それとも、オマエらの計画を聞かされたオレが離反した事が恨めしいのか?」

「いいえ、ここでやるべき事は果たせた。だからそういうのはどうでもいいわ」

 

「つまり……禍の妃の狙い通りってわけか」

 

「「!?」」

 

 新たに出てきた名前、『禍の妃』というギルナイトの口から出た名前にヒロムとガイ、イクト、真助が反応する中でアウロラは不敵な笑みを浮かべながら何も言わずに空間の穴の中へ入って消えてしまう。

 

 アウロラとサウザンが消えた事で空間の穴は閉じ、それに伴いこの場で起きた壮大な戦いは完全な幕を下ろした。

 

 ただ1つ、最後にギルナイトが口にした『禍の妃』の謎だけが解決されぬまま有耶無耶になった事だけが……

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