1083話 ユニバース
新たに指輪を出現させるだけでなく自らに新たな武装を纏わせ、さらにサクラとヒカリ、アイナ、トウカの4人に対しても指輪が授けられた。
それらの煌きを解き放ち起こしたヒロムは全てを把握しているような状態でサウザンとの戦いに決着をつけようとやる気を漲らせるが、対するサウザンはヒロムの身に起きた変化を受け入れられずにいた。
「ありえない!!オマエらの信じる想いから成る力は奇跡が噛み合わなければ虚構に沈むだけだ!!なのに、何故オマエはそう都合よく何度も奇跡を引き当てられる!!」
「奇跡?バカが、これは必然だ」
「必然だと!?」
「たしかに《想いの力》はオマエらからすれば奇跡が起きて力を得ているように見えるのかもしれない。オレも心の中ではそんな風に思っていた」
「だったら何故……
「けど、それはオレ単体だったらの話だ。オレ単体なら《ユニバース・ソウルギア》で発現させる導く力で正しく未来へ導く事しか出来ない。だから、《プライム・ハート》が奇跡を必然に変えさせてくれる。コイツはオレとライガーの絆を強く結びつけるだけじゃなく、レディアントがユリナたち4人に託した指輪と白丸たち精霊の紡ぐ想いをオレのもとへ導いてくれる。《エクシード・リング》、ユリナがレディアントから受け取ってくれた白の指輪はオレの中の精霊の因子のその力を白丸と黒丸の秘めた可能性と共にユリナの優しい想いが未来への約束に繋げるための力としてオレに授けてくれる」
「他人の想いを……利用してると言うのか!?」
「利用?違う……助け合ってんだよ。戦う事しか出来ないオレの心の支えになろうとしてくれるユリナたちと小さくとも強く秘めた勇気を持つ白丸たちの代わりにオレが全てを受け止める。得意不得意がある、だからオレたちは助け合い手を取り合う……これがオレの、オレたちの導き出した未来へ向けたやり方、《エンゲージ・アップ》が成せる技だ!!」
「どれだけ言っても綺麗事……
「そう思いたければ思っていろ堕天、今のそいつは精霊の王として完成している」
ヒロムが語る指輪の霊装の力、《プライム・ハート》から始まり新たな白い指輪の霊装の《エクシード・リング》と共に敵を一方的に追い詰めた力を《エンゲージ・アップ》と呼んで語るヒロムの言葉を否定しようと綺麗事だと強く反論しようとするサウザンの言葉を遮るようにギルナイトは否定しようとするサウザンを非難するかのような言葉を口にし、ギルナイトに言葉を遮られたサウザンの彼を睨む中でギルナイトはヒロムが語った内容の続きを代わりに語り始める。
「そいつの《エンゲージ・アップ》はそいつとそいつに対しての想いを紡ぎ届ける女とで対になるよう用意された指輪の霊装を介して心の生み出す力が届けられる。そこには当然、各種族の因子の力の可能性を秘めているチビたちのそいつの力になりたいという純粋な想いすら加わる。単純な話、大きな悪意を前にしてそいつが諦めず、そいつの勝利を強く祈るものの想いが呼応し高まればいくらでも奇跡の生まれる未来へ導かれる……奇跡を確実に引き起こす、それ故の必然だ」
「なっ……!?」
「それだけじゃない。そいつとここにいる女共はアウロラが見せたまやかしの夢を現実にしようとしている。《エンゲージ・アップ》の状態から発動する約束の霊装の力を引き出す強化の導き、《エンゲージ・ライズ》を発動可能となったそいつは止められない」
「ギルナイト……妙に詳しいなオマエ」
「ふん、黙れクソ転生体。戦いの最中だから簡潔にまとめて言うが、新たにそこの女が手にした指輪は《エクシード・リング》と連なる力を秘めた霊装として《エクシード・ブルーム》の名を持ち、他の3人が手にしたものはそれを支えるための霊装として《ブルーム・リング》と呼ぶ事になる。この4つの指輪が揃って初めてオマエの力を引き出せる約束の霊装が完成する、とだけ覚えておけ」
「なるほど、要するに今のオレはライガーと白丸と黒丸、そんでユリナの想いを借り受けてる上にヒカリとアイナ、トウカの支えを受けたサクラの想いを借り受けてるって訳か」
「あくまで借り受けているという姿勢ならそう思えばいい。ただ、これだけは言える……今のオマエがあの羽衣程度の力を得て満足してる堕天如きには負けないってな。オマエの示した答えはオレの求めた以上の合格点と成った。行け……オマエの因縁を1つ潰してこい、ヒロム!!」
「……やっと名前で呼んでくれんのかよ。ありがとう、色々話してくれたけど……それが聞けただけで十分だ!!」
全ての説明がギルナイトの話が終わった事で一旦は終わり、そのギルナイトは否定的だったヒロムの事を認めるような言葉と共に彼の名を呼んでみせ、名を呼んでくれた彼の言葉によって心の中で何かが大きく芽生えたヒロムは瞳を白銀に光らせる。
そして……
ヒロムが片足を地から離し動き出そうとすると彼はサウザンの前まで一瞬で移動して拳を叩き込み、ヒロムの拳が叩き込まれると稲妻が花弁を散らすように強く炸裂して衝撃を食らわせ、それを受けたサウザンが怯む中でヒロムは続けて拳撃を叩き込んでいく。
次から次に叩き込まれる拳撃、その拳撃全ては命中すると共に炸裂して衝撃を食らわせサウザンを追い詰めようとする。が、サウザンも負けてはいない。
ヒロムの拳撃に対してサウザンは漆黒の羽衣に禍々しい闇を纏わせながら防ぎ止める事で炸裂する衝撃を周囲へ分散させながら凌いでみせ、全てを受けずに済むよう凌いだサウザンは漆黒の羽衣に黒い光を纏わせながら素早く振るう事で至近距離から黒い光弾を乱射させて反撃しようとする。
サウザンの反撃の黒い光弾が乱射される中でヒロムは白銀の稲妻を右手へ強く纏わせながら敵へとかざすと白銀の稲妻を煌きへ変えながら6枚の花弁の花の形の盾へ変化させて全て防ぎ消してみせる。
「何!?」
至近距離で乱射した黒い光弾の全てを防がれた事にサウザンが驚く中でヒロムは敵へかざした右手を勢いよく引きながら拳を握り、引くと共に握った拳に虹色の煌きを纏わせると素早く拳撃を放ってみせる。
スキを突くようにして放たれるヒロムの拳撃、これを受ければダメージが大きく流れが完全にヒロムに向いてしまうと考えたサウザンは漆黒の羽衣を身に纏い黒い光の翼を広げながら素早く翔ぶ事でギリギリで回避してみせ、どうにか回避したサウザンは拳撃を放った直後のヒロムに向けて光の翼を介しての光弾の乱射で迎撃しようとする、が……
「舞え、エクシード・ブルーム!!」
攻撃を放った直後を狙って乱射された光弾が迫る中でヒロムが叫ぶと不発に終わらされた拳撃が纏っていた煌きが炸裂すると無数の光刃となり、光刃は花弁が風で舞うかのようにヒロムの周囲を縦横無尽に飛翔ながら彼へ迫る全ての光弾を破壊していく。
それだけでは終わらない。光刃は全ての光弾を破壊した直後にサウザンへと迫り襲い掛かり、さらに光刃のいくつかが一体化して光剣となってサウザンを貫こうと飛んでいく。
「ちぃっ……!!」
攻撃を受ける訳にはいかない、そう考えたサウザンは漆黒の羽衣に禍々しい闇を強く纏わせながら鞭のように振り回して光刃を破壊し、飛んでくる光剣に対しても羽衣を剣のように変化させながら振るう事で両断して破壊してみせた。
全て凌いだ、そうサウザンは考える。が……そのサウザンの視界からはヒロムの姿が消えていた。
「しまっ……」
ヒロムを見失った、現状をどうにかしようとするもその結果として今その姿を見失うのは完全なミスだった。一瞬のミスが流れを完全に分ける状況、サウザンにとっては羽衣を得て対応可能になった今だからこそ視界からヒロムを見失うのは最大の痛手だった。
痛恨のミス、そう言っても差し支えない事をしてしまったサウザンはヒロムが流れを完全に掴まぬよう立て直すためにヒロムを探し当てようとする、が……
「はぁぁぁぁぁあ!!」
ヒロムを見失ったサウザンがその行方を探そうとする中でヒロムが天高くより急降下して現れ、現れたヒロムは両手に白銀の稲妻と虹色の煌きを強く纏わせ手刀を構えながら纏った力を渦巻かせるように体を回転させながらサウザンへと迫り、サウザンへ迫ると共に一気に駆け抜けるかのように加速しながら手刀を交差させるように振り抜く。
「終わりだ、サウザン!!」
交差させるように振り抜かれた左右の手刀、その攻撃はサウザンの背の光の翼を容易く破壊するだけでなく敵の体に確かな一撃を食らわせ、ヒロムの起こした回転により渦巻かされた稲妻と煌きは竜巻のように成りながらサウザンへ叩き込まれると敵を巻き込むようにしながら地面へと叩き込まれていく。
「がァァァァ!!」
ヒロムの攻撃を受けて何も出来ぬまま落とされ地に叩きつけられるサウザン。この一撃で致命傷を負ったであろうサウザンは血だらけになって倒れてしまい、サウザンへ一撃を決めたヒロムは敵から離れた位置へと静かに着地を決める。
勝敗は決した、サウザンが倒れた事で誰もがヒロムの勝利を確信していた。だが、ヒロムは……




