1074話 イグナイト・ドライヴ
瞬間移動に等しい速度でヒロムに接近した灰斗。闇の力を高めさせ纏わせる右手でヒロムの胸を貫き心臓を穿とうと灰斗の一撃が放たれる中で対応が間に合うか分からぬ状況でヒロムたちはどうにかしなければと考え行動を起こそうとする。
が、敵の接近速度に驚かされたその瞬間に生じた間がヒロムたちの反応を遅れさせられていた事もあって行動を起こしても間に合うかどうかという瀬戸際に立たされてしまっていた。
殺意に満ちた灰斗の一撃がヒロムの胸を抉ろうと迫る中で間に合うかも分からぬ対応を急かされるヒロムたち。
だが……
灰斗の一撃がヒロムの胸を抉ろうと鋭い爪の切っ先があと1cm程でヒロムの衣服の布を引き裂き肉に触れようとする直前で漆黒の力を纏ったギルナイトが灰斗の右手を掴み止め、ギルナイトの行動によって灰斗の一撃が寸前で止められる事でヒロムは危機を回避する事となった。
「ギルナイト!?」
「ふん、だるい事を……だから気を抜くなって忠告したろうが」
「わ、悪い!!」
「余計な礼は要らん。次は無いと切り替えろ」
危機からヒロムを救ったギルナイトはヒロムに対して強い念押しをした上で切り替えろと告げると灰斗を蹴り飛ばしてヒロムたちの思考と意識の切り替えの僅かな時間を生み出してみせる。
ギルナイトに蹴り飛ばされた灰斗は全身を闇に包みながら当たり前のように立ち、蹴り飛ばされた事実すら容易く何事も無かったかように振る舞い立つ灰斗に対してギルナイトは鬱陶しそうに舌打ちをするとヒロムを守るように前に出て立つと漆黒の力を両手へ纏わせていく。
「ギルナイト、何をする気だ?」
「何をする気だ、だと?あ?バカか、倒すに決まってんだろ」
「方法はあるのか?」
「あ?ったく……頭悪いやつとの会話はだるくて疲れる」
「なっ……!?頭悪いってどういう……
「オマエは倒す見込みが無ければ諦めるのか?」
「それは……」
「大体、オレの嫌いなオマエなら僅かな可能性すら諦めずに戦うはずなんだがな……どうやらオマエは未来の在り方云々と向き合って腑抜けたらしいな」
「っ……!?」
「だから代わりにオレがアイツを潰す。アイツを潰さなきゃ……チビたちが安心出来る未来には繋がらない!!」
ヒロムの言葉に不快感を伝えるような言葉で返すギルナイトは自らの考えと意思を言葉にして強く発すると漆黒の力を強く高めさせる。
そして……
「躍動撃火……イグナイト・ドライヴ!!」
ギルナイトが何かの名を口にすると高められた漆黒の力は稲妻や炎と成りながら彼の周囲を飛び交い、漆黒の力の稲妻や炎が飛び交う中でギルナイトの全身が漆黒の力が強く放出されていく。
漆黒の力とそこから成る稲妻や炎を飛び交わさせ纏うギルナイト。力の高まりが目に見えて分かるような状態となったギルナイト。彼のその姿を見せられたヒロムたちが言葉を奪われる中でギルナイトに対する警戒心を灰斗が抱いているとギルナイトは地を軽く蹴ると急激な加速を起こしながらで灰斗へ迫り、灰斗へと接近するとギルナイトはその勢いのまま連撃を放ち始める。
当然のように敵へ接近して連撃を放つギルナイトのその連撃に対して灰斗は禍々しい闇を全身に強く纏いながら怪物化したとは思えないような無駄の無い動きで躱し続ける。
が、ギルナイトの連撃を放つその速度は放たれる度に速度を増しており、その速度は次第に灰斗の反応速度に並び始めたのか灰斗はギルナイトの連撃を完全に躱せず肉体へ掠らせながら躱していた。
そして、次第にギルナイトが放つ連撃の速度は灰斗の反応速度を上回った瞬間に全ての連撃は怪物化した敵へ直撃していき、直撃した全ての攻撃は敵へと確実な打撃を叩き込ませていく。さらにギルナイトの連撃命中に合わせるように漆黒の力から成る稲妻と炎も直撃して炸裂を引き起こして敵への追撃を実行していく。
「グ……ウ……貴様、ヨクモ……コノ怒リ、必ズ……
「うるさい」
ギルナイトの連撃と漆黒の力から成る稲妻と炎の攻撃の炸裂を受けダメージを肉体へ蓄積された灰斗は怒りの矛先をギルナイトへ向けようとするも彼は『うるさい』の一言で一蹴すると漆黒の力とそれから成る力を右手に纏わせた拳撃を叩き込んで敵を殴り飛ばそうとした。
が、ギルナイトが一撃を確実に叩き込もうとすると灰斗が纏う禍々しい闇は彼を守るように一点へ収束されると盾の役割を果たすが如く彼の拳撃を防ぎ止め、さらに灰斗が瞳を妖しく光らせ唸り声を発すると禍々しい衝撃が解き放たれてギルナイトを吹き飛ばしてしまう。
「それなりに学習して抗うか……けど、この程度なら問題ないな」
吹き飛ばされたギルナイトは灰斗の行動について触れるような言葉を呟きながらも問題ないと切り替えて着地を決め、着地と同時にギルナイトは不発に終わった拳撃を放とうとしていた右手に纏わせている力をさらに高めさせると地を蹴ると同時に一瞬にして的の背後へ回り込んでみせる。
「受けろ……ッ!!」
灰斗の背後へと回り込んだギルナイトは反応される前に一撃を叩き込んで敵を仕留めようとする……が、ギルナイトが一撃を叩き込もうとしたその直前に灰斗は彼の回り込みからの攻撃の流れを予測していたかのように素早く振り向くと禍々しい闇を強く解き放って彼の一撃が放たれる前に迎撃を遂げようとした。
「無駄ダ……貴様ノ動キハ見エテイル!!」
ギルナイトの動きと攻撃を把握していると言わんばかりの言葉を発しながら闇を解き放つ灰斗のその攻撃は一撃を叩き込もうとするギルナイトの攻撃よりも先に直撃しようとする。灰斗の反応と迎撃を予測していなかったのかギルナイトが反応する様子は無く、その様子から直撃は確実だろうと灰斗は思っていた。
しかし……
「ならこれも見えてたのか?」
灰斗が迎撃として解き放った禍々しい闇が直撃するその瞬間、ギルナイトはいつの間にか振り向いた直後の灰斗の後ろで一撃を放とうと現れ、何が起きたか分からない灰斗の前にいるはずのギルナイトは解き放たれた闇に触れた途端に蜃気楼のように消えてしまう。
「幻……ダト!?」
「残念だったな……そっちは残像、こっちが本命だ!!」
目の前にいるはずのギルナイトが消えた事によって自身が仕留められると確信していた相手が幻だと灰斗は理解させられ、灰斗が理解しようとお構い無しにギルナイトは自らの一撃を放ち叩き込んでみせる。
ギルナイトの拳撃と漆黒の力とそれから成る稲妻と炎が更なる力を高めながら灰斗へ叩き込まれてその力を解き放ち炸裂させようとする……かに思われたが、力が解き放たれるその瞬間、背を無防備に晒す灰斗を守るように悪意の魔女たるアウロラが現れて禍々しい闇を纏わせた手でギルナイトの一撃を簡単に防ぎ止めてしまう。
「オマエ……!!」
「私を相手にしてた時は気怠げにしてたくせに、この子が相手だと無駄にやる気になってくれるのね……ホント、私を見下してる感じが腹立たしいわ!!」
攻撃を決められると確信していたらしいギルナイトが驚く中でアウロラは自身に対しての態度と灰斗へのやる気の落差に腹を立てるように闇を強く放出させる形でギルナイトを押し返し、力の押し合いに負ける形で押し返されたギルナイトは大きく飛ばされるも難なく着地するともう一度攻撃を仕掛けようとした。
だがギルナイトがもう一度攻撃を仕掛けるために動き出そうとすると突然彼の右腕の肉が裂けるような傷を負い、さらにその傷から血が吹き出してしまう。
「ちぃ……!!」
「ギルナイト!!」
突然の負傷を負うギルナイトの名を叫ぶヒロム。ギルナイトは何故負傷したのか、その傷を負わせたのは誰なのか……




