1072話 すぐそこまで迫る悪意
虹色の輝き、悪意を退ける力の象徴としてこ役目を果たすかのように禍々しい闇の力を宿す灰斗へ攻撃を命中させ、そして自分たちの未来や明日への想いを繋げる心を示すようにその力を解き放ち悪意の化け物を吹き飛ばしてみせたヒロムたち。
高く飛び上がり一撃を放ったヒロムは虹色の輝きを纏いながら着地し、着地を決めたヒロムのもとへとフレイとラミアが駆け寄ると彼は静かに息を吐きながら纏う虹色の輝きを抑えていく。
「ふぅー……」
「マスター、お体の方は大丈夫ですか?」
「見た感じ問題無さそうだけど……脳への負担とかはある?」
「心配してくれてありがとう2人共。大丈夫、2人の……いや、フレイやラミアたち皆がフォローしてくれたおかげでかなり助かった」
(ユニバース・フューチャー、フレイたちに与えられたこの力は虹色の力を纏うとか肉体主導権変更に伴う入れ替わりによる戦局対応とかで得られる恩恵が大きいなんてレベルじゃない。虹色の輝きはオレだけでなくフレイたちにも扱えるものとして共有される。この共有によってフレイたちはオレがさっきガイたち相手にやってた未来視と連動誘発への導きの過程を引き受けてくれるようになってオレが思考で導く事を簡略化出来るようになる事に繋がっている。この共有がオレとフレイたちの間でしか成り立たない分ガイたちへ作用させるのは難しいだろうけど……)
「フレイたちがオレの導く力に連動してガイたちの動きに連動してフォローしてくれればオレとガイたちは更なるレベルの戦いが出来るかもしれないな」
「だからと言って無理するのはダメよマスター。アナタ、そうやって抱え込むんだから」
「大丈夫だラミア。その辺はもう、無駄だって分かったから」
「そうですねマスター。今のマスターはもう……」
『ちょっとフレイ、長いわよ!!』
「マリア!?あの、もう少し……
『最後を譲るとは言ったけどそれは譲ってないわよ?』
「ユリアまで……すいませんが話の流れを切るような事はしないで」
『マスターとの会話をアナタだけで楽しむのは違反行為では?』
『まったく、さも自分たちがマスターのアシストにおいて功労者かのように振る舞うのは許されない事よ?』
「アンタの嫉妬は聞かないわよフラム。あとテミス、アンタのそれは御局のつもり?」
「えっと……フレイ?ラミア?どした?」
「すいませんマスター。その……この力、マスターと対等に並んで戦える有難い力なのですが難点が……」
「私たちの基本性能が上がった代わりとでも言いたいのかこの力、発動中は頭の中でずっと騒がしいのよ」
「そ、そうなのか……」
(オレの方には聞こえて来ないって事はフレイの方はフレイだけ、ラミアの方はラミアだけって感じなのか。まぁ、あの入れ替わりのギミック云々考えたらある程度の制約はありそうだよな。とはいえ……)
「その力もオレのこの導く力と同じで改良の余地はあるはずだ。これからそれを模索して全員が納得する形に完成させよう」
「……はい、マスター」
「そうね。アナタの言う通……
「アァァァァアァァァァアァァァァ!!」
《ユニバース・フューチャー》の難点として現状頭の中で起きている事をヒロムに伝えるフレイとラミア。彼女たちの中での会話の聞こえないヒロムは自身の発動させていた導く力と同様に彼女たちのその力も改良する事でより良くなるだろうとまとめようとした。
彼の言葉にフレイとラミアが頷き返事をしているその裏で雄叫びが発せられ、発せられた雄叫びにヒロムたちが反応するとそれの発せられる方……その先にて倒れる灰斗が禍々しい闇をより強くより濃く放出させ纏いながら立ち上がろうとする。
「マスターの攻撃を受けても倒せない!?」
「どういう事!?あの攻撃は私たちがあの瞬間へ繋げるために連動したパターンなのよ!?」
「怒り、憎悪……もはや灰斗っていう人間の心としてではなく自らを含む呪具使いとそれと同数の呪具を取り込んだ事による呪いと悪意の器としての感情って感じだね」
「流石に未来へ繋げたとしても呪い云々なら通りにくくなるのか」
灰斗未だ倒れてと立ち上がる事にフレイとラミアが驚きを隠せずにいると一旦はヒロムたちへ戦いを委ねたイクトとガイが彼らに加勢しようと歩いて来る中で冷静に話を進め、ヒロムたちのもとへと来るとガイは霊刀《折神》を抜刀するとヒロムへ戦闘への介入の旨を伝えようとする。
「流石にもう我慢の限界なんでね。邪魔させてもらう」
「手柄の横取りってか?悪いけど欲しいならくれて……
「違う。オマエがフレイたちとあんな連動と連携するのを見せつけてくれたんだ……オレたちも1枚2枚噛ませてくれねぇと気持ちが抑えらんねぇんだよ」
「そうそっ。オレたちをウズウズさせるだけさせてお預けなんて許さないよ大将」
「……はっ、アホらし。どんな理由かと思ったらそんな理由かよ」
「理由なんざ二の次、殺りたいかどうかって話だろ」
「こればかりは真助の言う通りだ。悪いがオレも……魔人らしく暴れる」
「あーあ、1番落ち着いてるノアルまで滾ってるよ。けど、あんなヤッバイの見せられたら心滾らない方がイカれてるって事だよな」
「想いの力ってのでこんなにも熱いものを抱いたのは初めてだ。だから……この熱さは譲らない」
戦いに参加する、ガイとイクトの介入を灰斗撃破の手柄欲しさと思ったヒロムは譲ろうとするが彼らはそんなものに興味などなかった。
2人だけではない。真助も、ノアルも、タクトも、そしてナギトもヒロムたちの連携に感化されてやる気に満ちていた。
「あぁ?ったく……気持ち悪いな。オレたちの連携に感化されたとかどうでもいいけどよ……けど、そうか。その熱、オレにまで伝えんなよ」
彼らのやる気、それを見せられるヒロムはやれやれと言ったような反応を見せるが内心では嬉しいらしく笑みを見せ、そして……
「フレイ、ラミア。も少しそれ維持してくれ」
「はい、もちろんです」
「ホントッ、アンタら単純バカに付き合わされるマスターと私たちの苦労を考えなさいよね」
「ハハッ、手厳しいね精霊の皆様は」
「だが今の状態だとオレたちが助けてもらう形になるだろうからな。そこについては……」
ガイたちとの連携、そのための導く力を最大限引き出すためにフレイとラミアに引き続きのフォローを頼むヒロムの言葉にフレイは快諾するもラミアが悪態をつくように返すとイクトとガイは手厳しいと思いながらも感謝しようとした。だが……
「ァ、ア……ア、ァ……コレガ、怒リ……」
「「!?」」
「まさか……」
「呪いと悪意の器の中に……」
「新たな魂が宿ったのか!?」
「コノ怒リ……晴らさねば気が済まぬ!!」
唸り声か雄叫びしか発しなかった化け物化した灰斗が片言ではあるが人の言葉を発した。化け物化した事で灰斗としての魂が消え残った肉体は悪意の器になっていると認識していたガイ、イクト、そしてヒロムは言葉を発したのが新たな魂だと瞬時に理解し、彼らの理解の裏でヒロムたちの攻撃で追い詰められた灰斗……だった化け物は憤怒の言葉を吐き放つと禍々しい闇と共に音を潰す衝撃を解き放ち、何か起きると認識したヒロムたちが慌てて行動を起こそうとしたその直後、灰斗だった化け物を中心に大きな爆発が轟き起き、灰斗を倒そうと士気を高めていたヒロムたちはそれに飲まれてしまう……




