107話 運命の出会い
ヒカリという少女が来た。それを受けてヒロムは1度ユリナたちをリビングに集めて彼女にユリナたちを紹介していた。
「……ってな感じで今いるメンバーはこんな感じだ。もう少し早ければナギトってヤツがランニング行く前で間に合ったんだけどな。あと夜になったら出払ってるガイたちも戻ってくるからそいつらについては後で紹介する」
「分かったわ」
「一応こっちからの紹介はこんな感じだ。えっと……」
「姫月ヒカリ、ヒカリと呼んでいただいて大丈夫 ですよ」
「あぁ……ヒカリ。
あとでサクラが屋敷の中を案内した後にヒカリがこれから使う部屋の場所を教えてくれるからその辺の分からないことは後々質問してくれ」
「わかりました。ご丁寧にありがとうございます」
少女は……姫月ヒカリはヒロムに対して感謝の言葉を伝え、感謝を伝えられたヒロムはどこかぎこちない笑顔を返してしまう。そのヒロムのぎこちない笑顔を見た隣に座るユリナは彼のその笑顔の謎について尋ねる。
「ねぇ、ヒロムくん。何か気になることでもあるの?」
「え?」
「なんか笑顔が不自然だし」
「あぁ……まぁ、うん」
「?」
「いや、ほら……サクラは過去の面識があることを記憶してたけどヒカリとの過去の記憶がないっつうか、こうして屋敷に来てくれたはいいけどどういう顔していいかわかんねぇんだよ」
「あぁ……そういうことなんだ。
それじゃあ……」
「それなら私に任せなさい」
ヒロムの気持ちを知ったユリナは彼に代わって何かしようとするが、そんなユリナに代わろうと勝手に名乗り出るアキナは飛天たちが別の場所で遊んでいてここにいないことを確認して咳払いをするとヒカリに言った。
「ねえ、用がないなら帰りなよ。ヒロムが困ってるわよ」
「アキナ!?何を任せられると思ってたの!?」
「おいアキナ、その言い方は……」
「黙ってて。愛華さんの指名なのはよく理解してるわ。
でも……今の状況でヒロムが困ってるのは確かよ。そのヒロムが納得いく理由が話せないなら邪魔でしかないのも事実よ」
「アキナ、いい加減に……」
「でしたら、私なりの理由を話しましょう」
アキナの言葉にヒロムは一瞬だが声色が変わりそうになったが、そんなヒロムの言葉を遮るようにヒカリは言うと1枚の写真を出してヒロムに手渡した。
ヒロムが手渡された写真、その写真にはどこかの病室で撮影された景色の中に3人の子どもが写っていた。赤い髪の笑顔の男の子とピンク色の髪の女の子、そしてベッドの上に座る金髪の女の子がいた。写真に写る3人の子どもが誰なのか、ヒロムはすぐにそれを理解した。
「オレとサクラと……アンタか?」
「14年くらい前になるかな。当時の私はすごく病弱でその頃は頻繁に入院していたの。検査検査の毎日に子どもながらに嫌になってるとその頃から仲の良かったサクラがアナタを連れてきてくれたの」
「……オレの記憶にはないんだけどな」
「私がアナタにあったのはの時が最初で最後、今こうして顔を合わせるのは2度目だもの。当時のアナタは色んなことを聞かせてくれてわたしに勇気をくれた。そしてアナタは……私に夢を与えてくれた」
「夢?」
「私の体が治ったら病院の外でもう一度会う、私はそう決めてアナタにその気持ちを伝えた。そしたらアナタは『ずっと待ってる』って言ってくれたの」
「……ごめん、記憶にない」
「ヒロムくん、またやらかしたの?」
「いや、これは……」
「私はサクラのようにアナタと接点が少ないから無理もないわ。それに……完治してすぐに会いに行くのを躊躇った私が悪いの」
ヒロムが悪い、ユリナはそう思ってヒロムに視線を向けるがヒカリはそんなユリナの考えを正すかのように真相を語っていく。
「7年前に私は体の状態が完全に良くなって病院に通わなくても大丈夫なまでに私は何とか回復出来た。私はアナタに会おうと勇気を出して会いに行こうとしたその道中で……引き返したの」
「何があったんですか……?」
「……会いに行く途中、たまたま見たの。彼が血だらけでボロボロになりながら数人の大人と戦う姿をね。当時の私はその写真だけが彼を思い出せる思い出だったから私の中の彼は笑顔の優しい男の子だった。でも……その時目にしたのは怒りに満ちた目と言葉にできない恐怖しかない彼だった」
「7年前……オレをよく思わないヤツらが差し向けた殺し屋共が襲ってくるようになった時期だな」
「私はそうとは知らずに逃げて、家に帰って泣いていたわ。アナタはもう私なんて忘れたんだって。だから私は諦めて忘れようとしたんだけどサクラと会った時に聞いたの。その時のアナタは色んな人に狙われてるって。サクラとの約束に手がつかなくなるほど厄介なことに巻き込まれてるから全部終われば私の知るアナタに戻るって」
「それからアンタは何を?」
「ちょうどその頃からアキナと話すようになって、そのタイミングでアキナがアナタに執着してるのを知ったわ」
「おいこらヒカリ。人の恋路を執着とか変な言い方しないでよ。ていうかアンタ、好きな男がいるって言ってたけどそれがヒロムだなんて1度も……」
「アキナがひたすらにアナタに執着してるなら私はサクラと同じ道を選んで支えられるようになりたい、そう思って私はアナタの役に立てるような色々勉強する道を選んだの。好きになったアナタへの想いは変わらないけど、ただ愛するくらいなら心の支えになってくれたそのお礼を出来るようになりたいって」
「え?私を反面教師にしたって言うの?」
「アキナ、少し静かにしてなさい」
「だから私は3年前からアナタの支えになれるように色々勉強することに専念してたの。それから色々勉強して、今愛華さんが私のことをお呼びしてくださってここに来ることになったのよ」
「そうなのか。というか、何でアキナには好きな男がいるのに誰なのか教えなかったんだ?」
「単純にアキナと同じ人に好意を持ってるなんてことをアキナには知られたくなかったし、知られたら知られたで何言われるか分からないから黙ってたの。黙ってたら何かとアナタに会う機会のあるアキナからアナタの近況を謎の自慢話から聞き出せたから黙ってる方がよさそうだったのよ」
「……計算高いんだな、アンタ」
「アキナがバカなだけよ」
「今バカって言ったわね!?」
ヒカリの考えとそれによる行動、どれもが計算されたようである種の恐ろしさをヒロムが感じてるとヒカリは笑顔ので一言言い、ヒカリの一言を受けたアキナは我慢ならなかったのか声を荒らげてしまう。
「人の一途な恋路を自慢話なんてバカにして!!挙句私の事をバカって言ったわね!!」
「ええ、言ったわよ」
「認めんのかい!!」
「アキナ、うるせぇ」
声を荒らげるアキナをヒロムが黙らせ、アキナを黙らせるとヒロムはヒカリに一言伝えた。
「とりあえず……よろしく頼む」
「はい、こちらこそ」
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その頃……
ランニングに出ていたナギトの前に軍服にも似た衣装を着た少年たちがいた。《フラグメントスクール》、その生徒たちだ。《フラグメントスクール》の生徒とナギトが一触即発の展開になる中で1人の少年が介入してこの展開を一変させようとしていた。
「話に聞いてた通り、クソ以下ゴミ野郎がぞろぞろと」
「アンタは……?」
「……ゴミ掃除に来ただけだ」




