1068話 虹色の導き
化け物と化した灰斗を倒して呪具使いとの戦いを終わらせるべく駆け出したガイたち。ヒロムの言葉を信じて走る彼らを迎え撃とうとする灰斗の攻撃に対して彼らを信じさせたその言葉を実現させるべくヒロムは敵の攻撃を防ぎ止めてみせ、ヒロムの言葉を信じそれを実現させるべくガイたちは地を蹴り加速するとそれぞれの攻撃を仕掛けるべく灰斗へ迫る中で散開していく。
敵を倒すため、それぞれの考える最適の動きを実行するために即興の連携を引き起こすべく動き出したガイたち。灰斗を仕留めるため、追い詰めるために散開したその直後、先陣を切ってみせたのは真助だった。
「とりあえず……斬らせろ!!」
妖刀《狂鬼》を手に持ちその身に黒い雷を纏いながら駆ける真助は敵を斬りたいという感情だけで我先にと突っ込んで行き、真助が一目散に迫ってくる中で灰斗は唸り声を上げると全身に禍々しい闇を纏いながらその闇の一部を刃へ変えて次から次に飛ばし始める。
「芸の無い野郎だな!!」
灰斗が飛ばした闇の刃がいくつも迫って来る中でそんなものを意に介さぬ真助は妖刀を振り見事な太刀筋を見せつけるようにしながら迫り来る闇の刃を一網打尽にしてみせる。全ての闇の刃を当たり前のように対処した真助はそんな事で止まるはずもなく妖刀を強く握りその刀身に黒い雷を纏わせると敵を斬るべく懐へ踏み入ろうとした。
だが、真助の妖刀に破壊された闇の刃は彼の背後でその残骸を弾丸へ変え始め、灰斗を斬ろうと接近することに意識が向けられている真助の背を卑怯に撃ち抜こうと残骸から変化を遂げた弾丸は一斉に彼を後ろから撃ち潰そうとした。
「なっ……2段式!?オレならあの程度突破するなんて当たり前だと思って仕込んでやがったのか。なら……!!」
一網打尽にしたはずの刃の残骸が弾丸となって背後から迫ってくる事に気づいた真助は向かってくる弾丸を何とかするために敵の懐へ踏み込もうとするその足を止め半歩だけでも引き返そうと考えた。真助のその行動が実行され彼の足が止まろうとしたその時だった。
虹色の光が彼の近くを一瞬通り抜け、その直後に翼型の鞘の《煌翼甲》を6つ飛ばすガイが蒼炎を纏いながら真助を背後から仕留めようと迫る弾丸の前に立つように現れる。
「ガイ!?」
「オレに任せとけ!!」
ガイの加勢に真助が驚く中で彼は《煌翼甲》に光刃を纏わせ飛翔させて全ての弾丸を切り払って凌いでみせた。
ガイの加勢により難を逃れた真助は止めかけていた足を動かし敵の懐へ今度こそ踏み込もうとし、真助が敵を斬ろうと踏み込むその後ろでガイは霊刀《折神》と《飛天》を《煌翼甲》の鞘から素早く抜刀して構えると斬撃を放った。
敵を斬ろうと至近距離で仕掛けようとする真助と彼の後ろから斬撃を敵に飛ばす事で彼のフォローになるよう先制打を決めようとするガイ。2人の攻撃の流れが迫っている中で灰斗は禍々しい闇を強く纏い翼を広げると間合いを取ろうと後ろへ大きく飛ぶ。
間合いを取るべく灰斗が後ろへ大きく飛んだ事でガイが放った斬撃は虚空を駆け抜けるだけで終わり、真助の攻撃も彼の妖刀の届く範囲から敵が外れた事で空を斬って終わってしまう。
2人の攻撃を不発に終わらせてみせた灰斗は大きく飛んだ先で着地を決めると禍々しい闇の力を高めてそれをビームのように放射させようとした。
敵の攻撃が来る、それを敵の行動で察してしまえたガイと真助は攻撃と防御の両方においてどう対処するか咄嗟の判断が求められる中で思考しようとするが、そんな彼らのそばを虹色の光が通り抜け彼らの前で消えてみせるとその場所へとノアルが素早く現れる。
現れたノアルは《スピリット・ライズ》の追加装甲を可変させて盾を形成して構え、ノアルが盾を構えると同時に灰斗は禍々しい闇をビームが如き勢いで放射して彼らを仕留めようとした。
強く放射された闇が迫り来る中でノアルは臆する事なく自らが宿す力を高めながら盾で受け止め、ノアルが完全に敵の攻撃を防ぎ止めると彼の両側に虹色の光が微かな輝きとともに駆ける。
虹色の光が駆けるとそれを追い掛けるようにガイと真助がノアルを躱すように飛び出し左右に展開するように駆け出していき、敵の攻撃を完全に防いでみせたノアルは盾に可変を解いて両腕の上で大型砲門へと再可変させて敵へ狙いを定めていく。
ガイ、真助、ノアル。3人の動きに対して禍々しい闇の力を高めて次の手を打とうと動きを見せようとする灰斗。次の攻撃を放とうと灰斗が力を1点に集めようとすると今度は敵から離れた地点に虹色の光が一瞬現れる。
灰斗はそれに気づいている気配はなく、一瞬現れた虹色の光が消えるとそこへ光と入れ替わるように流蓮弓を構えたタクトが駆けて現れ、光に導かれるように現れたタクトは勢いよく止まり流蓮弓を敵に向けて構えると水流の矢を連続で掃射していく。
タクトの出現とそこから続けての水流の矢の掃射を予測はもちろんの事、咄嗟に反応する事が出来なかった灰斗は水流の矢が直撃する寸前の所で気づく事で防御しようとする。だがその反応が遅かったせいでガイたちに向けて放とうと力を高めさせていた禍々しい闇に水流の矢が数発命中する事でその力は暴発してしまう。
水流の矢の命中で力の維持が不安定になったからこその暴発、それを防ぐ手立てなど無く灰斗は暴発に巻き込まれて負傷してしまう。
「っ……!?」
畳み掛けるならここだ、そう確信したガイと真助は駆ける足を加速させようとした。が、2人が加速しようとしたその時、力の暴発で負傷した灰斗はその負傷に至るまでの経緯に怒りを抱いたらしく雄叫びを上げると闇の力を増幅させ始める。
力の増幅に伴いタクトに負わされた灰斗の傷は静かに消えてしまい、当たり前のように傷を消した灰斗は翼を強く羽ばたかせる事でガイと真助に向けて衝撃波を撃ち飛ばした。
「させるか、《煌翼甲》!!」
撃ち飛ばされた衝撃波が迫る中でガイは《煌翼甲》を飛翔させて自身含め真助をも守ろうと考え行動を起こそうとする。だが、ガイが行動を起こそうとすると虹色の光が向かってくる衝撃波の前を横切りながら消え、虹色の光の残光に衝撃波が重なったその時、黒炎を纏った黒い斬撃が横切るように勢いよく飛んで来て衝撃波を消し飛ばしてみせる。
黒い斬撃、それを誰が放ったのかはガイと真助には見当がついており、2人が斬撃の飛んで来た方向へ視線を向けるとそこには大鎌《月獄》を勢いよく振り終えた直後のイクトが立っていた。
「道先案内人、て事で行きなよお2人さん!!」
「助かったぞイクト!!」
「気が利くな、調子乗り!!」
「一言余計だよな真助!?」
イクトの援護で敵の攻撃の対処を躱したガイと真助はそれぞれが宿す力を手に持つ刀へ纏わせその力を高めさせながら敵へ接近して斬撃を喰らわせようとし、真助の余計な一言に少しのストレスを感じたイクトはそれを発散するべく《月獄》に紫色のオーラを纏わせ一撃を撃ち飛ばそうと構え直した。彼らが力を高める中で流蓮弓を構えるタクトは薙刀・流閃刃を矢のように装填して敵へ狙いを定め、そして追加装甲を大型砲門へと変えているノアルも自らの力を一点へ収束させて解き放とうとしていた。
5人の攻撃が放たれる、感覚的にそれを理解した灰斗は翼を大きく広げ、さらにその翼を肥大化させると地を強く蹴り高く飛翔しようとした。
敵を仕留めるべく力を高めているガイたち、天へ逃げようとする灰斗の動きに合わせて狙いを合わせ直すのも間に合うか怪しいところではあった。
1度切り替えるしかないのかと彼らの頭の中で過ぎる中、天高くに虹色の光が微かに現れ直ぐに消えるとそこへ烈風を纏いしナギトが急降下して現れ、急降下して来たナギトはその勢いを活かすように烈風を纏わせた脚で蹴りを放つ事で飛び上がろうとする灰斗を地へ叩きつけさせ逃亡を見事に阻止してみせた。
「がぁっ!?」
「悪いね……ここで決めて挽回したいんでね」
「ナイスだナギト……これで決める!!」
ナギトの攻撃のお陰で敵の逃亡を阻止できた。このチャンスを逃す訳には行かないとガイたち5人は高めた力を最大限引き出すべく解き放とうとし、彼らが一撃を解き放つその瞬間、その一撃を導くかのように灰斗の胸元へ虹色の光が現れ、そして……
「「「「「喰らいやがれ!!」」」」」
ガイ、真助、イクト、タクト、ノアルによる渾身の一撃が同時に放たれ、放たれた5人の一撃は灰斗の胸元へ現れた光へ導かれるように飛んでいくとその勢いのまま直撃。この5人の一撃を直撃で受けた灰斗は……




