1061話 未来への道を歩む者たち
ユリナたちの気持ちと本音を聞いた事で何がいけなかったのか、何故ユリナたちに授けられた指輪が消失したのかを理解したヒロム。
それでも自信を完全に取り戻せないヒロムに向けてユリナが『未来はいつでも変えられる』と伝え、彼の心にそれが響いたその時、彼の胸元から光が現れ、そして強く輝き虹色の煌めきへ変化を遂げていく。
何が始まったのか分からないヒロムやそれを見るユリナたち。対してレディアントは何が始まるのか、虹色の煌めきが何を意味するのかを理解しており彼に語り明かそうとした。
「おめでとうございます。アナタは真に未来の在り方と未来へ先導する意味を理解されました。その結果、アナタ自身の心は未来と向き合う事が出来ました」
「オレの心が未来と?」
『はい。その通りです。そしてそれはこれまでアナタの想いに応えられずにあった《波導》を導く事になるのです』
「《波導》の力を!?」
『はい、そしてその煌めきこそ……《波導》と呼ばれている力の真の在り方です』
「この虹色の煌めきが……あのじゃじゃ馬の《波導》なのか?」
『はい、そのじゃじゃ馬だった《波導》です。その力の詳細は……語らずともアナタが体感される方が理解に繋がると思いますので割愛しますね』
「え、あ、おう……」
『真の在り方に至ったのでその力は《波導》ではない真名と成ります。それも……何れアナタの中に伝わると思いますので割愛しますね』
「割愛する部分多いな!?」
『お時間限られているのでお許しを……さて、アナタの霊装に宿る意思としてアナタのお役に立たなければアナタに尽力する精霊や小さな精霊たちに顔向け出来ませんので私からの助力をさせてもらってもよろしいですか?』
「顔向けも何もフレイたち居るし白丸たちも……
「ヒロム、そういう揚げ足取りは今はやめておこう」
「悪いガイ。それよりレディアント、助力って言うのは?」
『では、少しお待ちを』
虹色の煌めきについて《波導》の真の在り方であると割愛しながら話したレディアントの言う『助力』が気になるヒロム。彼女に何を指しているのか尋ねるとレディアントはヒロムへ向けて右手をかざし、彼女がヒロムへ右手をかざすと彼の胸元の虹色の煌めきの中より4つの光が飛び出し彼の周囲を舞い始める。
自分の周囲を飛び舞う4つの光が何を意味するのか分からないヒロム。だが、4つの光のその色について認識した時、彼はその光が何を意味するのか理解に至った。《》
「赤、青、緑、白……まさか、オレの中にある4種族の因子の力?」
『流石です我らがマスター。それらはアナタの中にある因子の力、4人の因子の守護者が内在せずともアナタの力として霊装と紐付けされているものです。アナタはその力を……とくに精霊の因子以外の力をこれまでの《波導》の力を用いて強引に引き出していたような状態でした。が、今この瞬間、真の在り方に至った《波導》だったその煌めきに過去のやり方は相応しくありません』
「まさか、オレに因子の力は荷が重いって事か?」
『いいえ、アナタ1人で扱う必要が無いという事です。彼が言ってましたよね?彼女たちが悪意の魔女に見せられた夢を現実にしてみろ、と』
「まさか……」
『彼の言葉の通りに彼女たちが見た夢を今すぐ完全再現するのは不可能ですが、それに近づけさせる事ならば今は出来ます。そして、その実現のためにはアナタ1人では不可能、アナタにはアナタにしか出来ないやり方があるのですから』
「オレにしか出来ないやり方?それは一体……」
レディアントの説明、何かを示唆するように語る彼女の言葉をヒロムが不思議に思い尋ねようとすると彼の周囲を舞い飛ぶ4つの光が彼から離れるように飛び出し……
赤の光はエレナのもとへ、青の光はリナのもとへ、緑の光はスミレのもとへ、そして白の光はユリナのもとへ向かっていくとそれぞれが彼女たちの周囲を舞い始める。
4つの光、その光がそれぞれ選んだ4人の少女は突然の事に驚きを隠せずにいるが、彼女たちの驚きなど無視するように4つの光はそれぞれが選んだ少女たちの左手に重なるように接すると光を強くさせる。
そして、4人の左手に重なるように接し強く光る4つの光は次第に小さな形を得て変化を遂げ、彼女たちの中指に装着されるように彼女たちを偉んだ色の光と同色のハート型の宝石が施された銀色の指輪と成ってみせた。
「これって……」
「新しい、指輪……?」
「私まで……?」
『それは彼の中にあった因子の力であり彼がこれから進む無限の可能性の中にある未来を見つけるために必要となる支え……彼と未来を導く存在を担う証です』
「《ユナイト》の指輪とは違うのか?」
『似て非なるものです。これは影の姫たちが託した未来への希望でもあります。そしてその指輪はアナタを支える役目を担わせるだけでなく同じ想いを持つ者を導く力を持ちます。未来への想いを繋げる……それを実現させるための指輪です』
「つまり……ユリナたちの持つ指輪そのものに《ユナイト》に近しい指輪を授ける力があるって事なのか?」
『はい、そうなりますね。でも……それだけではありませんよ』
4人の少女に与えられた指輪について説明するレディアントが何やらまだあるような言い方をし、そして彼女が瞳を光らせると4人の少女の与えられた指輪から小さな光がそれぞれ2つずつ放たれる。
ユリナの指輪から放たれた小さな光はユキナとマリナのもとへ、エレナの指輪から放たれた小さな光はアキナとユウリのもとへ、リナの指輪から放たれた小さな光はレイカとリセのもとへ、スミレの指輪から放たれた小さな光はチノとアスナのもとへそれぞれ向かうと彼女たちの左手に重なるように光りながら4人の少女の与えられた指輪の宝石より小さなサイズの宝石が施された指輪となって装着されていく。
「えっ、私たちにも!?」
『それは彼女たちを支える者の証、我らがマスターを支える4人の姫を支える者として受け取ってください』
「待てレディアント、これが《ユナイト》から指輪を与えられた人間に渡すってんならサクラやヒカリ、それにアイナには無いのか?」
新たに指輪を与えられた8人にはヒロムの《ユナイト》から指輪を授けられていたという共通点がある。が、この共通点についてヒロムはサクラ、ヒカリ、アイナも該当するはずだと不思議に思って尋ねてしまった。
その彼の疑問を想定していたのか、レディアントは彼の問いに対して冷静に話した。
『彼女たちの想いは何れ可能性に繋がり開花します。今はまだその時ではありませんので……焦らずお待ちくださいね』
「お、おう……」
『では我らがマスター、私からお話出来る事、そして私からお渡し出来るものは今はこれが全てです。答えは既に出たと思いますので……彼の事をお願いしますね』
「……あぁ、任せてくれ」
『ふふっ、そうですね。この戦いが1度終わったら彼とアナタと私でお茶会を開きましょう。親睦会でもいいですね』
「そう、だな……うん、そうしよう。ありがとうレディアント。おかげで助かった」
『いえ、私にとってマスターが全てですから。では皆さんも……何かあれば、またお会いしましょう』
ひとまずは区切りが見えた、そのせいかレディアントはユリナたちへ別れを告げるように挨拶をすると光となってヒロムの両手首に装着された白銀のブレスレットの霊装の中へと静かに消えていく。
彼女が消えると同時に虹色の煌めきも収まりを見せ始め、その時、ヒロムが深呼吸をすると彼の持つ《ユナイト》、《レゾナンス》、《シンフォニア》が光となって煌めきの中へ入っていってしまい、しばらくすると虹色の煌めきはヒロムの中へと完全に消えてしまう。
「ヒロム、他の霊装が……」
「ああ、大丈夫だよガイ。これは……必要な事だって今のオレなら分かる」
3つの霊装が煌めきの中へ消えた事に不安を隠せないガイに対して落ち着いた様子で大丈夫だと伝えるヒロム。彼の瞳にはアウロラに追い詰められ閉ざされた強き意志が再燃しており、そして……
「行こうガイ、ノアル……それに皆。アイツにオレの答えを示しに!!」
時間稼ぎを買って出たギルナイトが提示しろと要求してきた答えを示すために現地へ戻ろうと覚悟を決めるヒロム。彼の道を開かせるかのように白銀の空間は開き始め……




