1059話 何故想いが在るのか
《レディアント》から放たれる輝きにヒロムと共に飲み込まれるガイたち。
突然の事で驚いたのもあるが輝きの眩しさに目を閉じるか手で覆うなりして直視しないようにするガイたちだったが暫くすると輝きが収まりを見せ、それに合わせるようにガイたちは状況を確かめようとした。
そんな彼ら彼女らが目にしたのは自分たちを覆い囲うようなドーム形状と成った白銀の空間だった。
何が起きているのか分からないガイたち。ひとまず説明を求めたいガイたちがヒロムに視線を向けているとヒロムが宿す幼い精霊の白丸たちは嬉しそうに走り出してしまう。
「あっ、待て!!」
「皆、危ないよ!!」
『ご安心ください、ここは皆さんに害の無い安全な空間です』
白丸たちに止まるよう慌てて声に出すユリナと幼い精霊のお兄ちゃんを担う飛天が慌てる中でヒロムのブレスレットの霊装の《レディアント》から声が聞こえ、声が聞こえてくると《レディアント》から白眼の輝きが1つ飛び出し、飛び出したその光はヒロムたちの前で人の形……少女の形を成していく。
少女の形を成し、そして輝きは少女へ変化を遂げると挨拶するように一礼した。
誰なのか分からないガイたち、そして彼女が何者かを認識していないであろうヒロムの精霊のフレイが多少の警戒心を抱く、彼女を唯一知るヒロムだけは反応が違った。
「この形で会うのは初めてだな、レディアント」
『ええ、そうですね。アナタとこうしてお話出来るのは嬉しいです』
「レディアント!?えっ、この女がヒロムの霊装の中にいる存在なのか!?」
「驚いたぞ姫神……霊装には魂が宿っていると言うのかい?」
「少し話がややこしくなるが導一と戦った時に《レディアント》をセレクトライズする直前に対話して、少し前にも会って勾玉くれたんだ」
「ヒロムくん、説明ざっくりし過ぎてないかな……?」
「ヒロムらしいと言えばヒロムらしいんだけど……もう少し欲しいわね」
「ごめんユリナ、サクラ。ただ時間が無いんだ」
「え?どういう……
「簡単に言うとこの空間は『レディアント・ザ・ワールド』として発動させているけど彼女を呼ぶために構築してるだけの空間だからあん時みたいなインチキ効果は無いしこの空間内は精神世界みたいな時の流れの変化は無いんだよ」
「……どういう事?」
「つまり、よヒロム?ここでこの人と話すのは彼のくれた5分しかないって事なの?」
「あっ、うん。そうなる」
「軽いですよヒロムさん!?」
「緊張感無くなってるよヒロムくん!?」
置かれている状況を確認するように聞き返すユリナとサクラの言葉に恐ろしく軽い言葉で返すヒロム。彼のあまりの軽さに思わずエレナとリナが割って入る勢いでツッこんでしまうが、ヒロムと彼女たちのやり取りを見た少女……レディアントは嬉しそうに微笑むとヒロムに話し掛けた。
『どうやら少しは気持ちにまとまりが出来たようですね。立ち直れない可能性も見えていたので不安でしたが安心しました』
「……悪い、心配かけて」
『構いませんよ。アナタが困難に直面し立ち止まろうと信じて待つのが私の役割ですから』
「なら……今こかに呼び出した理由も分かってるって事なんだよな?」
『ええ、もちろん。《ユナイト》から授けられた指輪……大きく触れるのならば、大切な人たちの想いと向き合う方法についてですよね?』
「ああ、そうだ……って言い方気になるな」
『あら?事実ではありませんか?』
「……まぁ、間違ってねぇけど。とりあえず、その……ユリナたちの想いに向き合うにはこれまで通りじゃダメだって思ったんだ。霊装の事……とくにオレ自身の霊装の事ならアンタが詳しいと思ったんだ」
『はい、そうですね。その通りです』
「で、まぁ頼りない話がアウロラの存在に気づけず悪意の計画を止められなかったオレの頭だけじゃ答え出せないから力を借りたいんだ。他でもない、オレの霊装として現れてから今まで見守ってくれていたアンタのな」
『事情は分かりました。ですが……そういう事なら私以上に答えを出してくれる方に相談するべきかと思いますよ?』
「アンタより最適な存在がいるのか?」
『はい、そうです。ですよね……姫貴トウカ様』
「トウカが……?」
自分では答えを出せない、故にこれまで霊装の意思として見守って来てくれたレディアントに頼ろうと考えた旨を明かす彼の求めている最適な答えを出せる存在としてトウカを名指しした彼女に驚きを隠せないヒロム。
「トウカ、話してくれる……んだよな?」
「……そうですね。ヒロム様、私の意見にはなりますがお話させていただきます」
トウカが何を知っているのか、レディアントが指名した事でガイたちの注目も集まる中、彼女は話さなければならないと感じ小さく深呼吸をするとヒロムの今回の戦いを見守る中で感じた事を語り始めた。
「ヒロム様が《ソウルギア》と呼ばれる力を使われた際のフレイ様のご様子から感じたのですが、ヒロム様の中にある『想いの力に応える』という考えの根底には自分が道標となって基本を築いた上で導こうという風に捉えられる点が見受けられました」
「まぁ、そうだな。《ソウルギア》を使ったオレの強化を発展させたフレイたちに因子の力を借り受けさせるセレクトライズの発展型はトウカの言い方にピッタリ当てはまるしな」
「はい。まさにその点についてなのですが……申し上げにくいのですが、ヒロム様は基礎となる部分をご自身だけ完成系へ先行する形で構築させた後に追従するものに対する要素を追加されてませんか?」
「追従?」
「能力者というものに詳しくないので言葉選びが難しくなるのですがヒロム様は自身が先頭に立つ上で後続となるフレイ様たちがご自身に対応可能になるような道筋を構築されているように感じました。フレイ様たちにヒロム様のお力を貸し与えられる、反面のリスクとしてヒロム様ご自身の強化が疎かになる……これは本来はヒロム様単体で完結していたものに無理矢理後付けしたと取れてしまうんです」
「いや、そんな事……
「ヒロム、これに関してはトウカの言う通りだとオレも思う。さっきの戦いを見てて思ったが、アレは追加要素を後付けで備え付けたからこそ《ソウルギア》の真骨頂となら強化を捨てるしかなかったんじゃないのか?」
「それは……まぁ、ガイの言う通りか」
「フレイたちはヒロムの中にある因子の力を借り受けられるって事実で何とか受け入れてくれてるっぽいけど、言わないってだけで多少の不満はあったのかもな」
「ノアルまで……って、そう思われても仕方ないのか」
「それと、指輪の件ですが……ヒロム様、これも申し上げにくいのですがサクラたちとの繋がりを想いの力の追加要素のように思われていませんか?」
「待ってくれトウカ。それは流石に……聞き捨てならない」
ヒロムの先程の戦いを見ていて感じた事を話すトウカ。彼女の意見には《ソウルギア》の発動による圧倒的な戦いを見ていたガイとノアルも共感していた。
が、それに続けるようにトウカが話す《ユナイト》がユリナたちに授けた指輪の件をついでのような扱いをしていると指摘されたヒロムはただ聞いてるだけではいられなかった。
「その言い方だとまるでオレがユリナたちの想いを単なる力のように行使してるようにしか聞こえない。オレはそうならないよう常に気をつけてるし、そんな風に扱いたくないからこそどうするべきかを考えてたんだ」
「……でも、それに当てはまる事をあの時アナタはしてたわ」
「何言ってんだよミカ?オレはそんな風に……」
トウカの意見に賛同するように心当たりがあるような事を口にするミカ。そんなはずは無いと否定しようとしたヒロムだったが、ミカがいつの事を話しているのかをふと思い出したヒロムは自身の過去の行いを端的に振り返ってしまう。
「フルシンクロ……あの時か」
「名前は覚えていないけれど、アナタが姫乙女学院に来て戦ってくれたあの時に最後に使ったアレは彼女の言い分に当てはまらないかしら?」
トウカの話から広がりを見せるヒロムの中の彼の気づいていなかった問題点。指摘されて初めてそれを問題として認識した彼は果たして限られた時の中で何を思ってしまうのか……




