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レディアント・ロード 2nd season  作者: hygirl
叛逆界雷編
1049/1085

1049話 悪意芽吹く瞬間


 一撃を決める事に成功した、そんな風に思っていたヒロムとナギトの手応えを嘲笑うように立ち上がり闇を纏うアウロラ。

 

 敢えて攻撃を受ける流れを自作しただけでなく先手を打つべく仕掛けてきたナギトを仕留めるための罠を仕掛けていた事で彼を負傷させてみせたアウロラは何かを企むような笑みと共にヒロムに視線を向けていた。

 

 何か企んでる、敵に視線を向けられるヒロムは当たり前のようにそう考えて警戒すると《ソウルギア》の力と纏う白銀の稲妻の力を高めようとし、先程の話を聞いていたアウロラ彼の行動とその内容の矛盾点を指摘するように話し始めた。

 

「そんなに出力を上げるとアナタの力が上がってもアナタを手助けする精霊共は遅れを取る事になるわよ?アナタがパワーバランスを調整する形でないとあの子たちは戦力にならないんでしょ?大丈夫なの?アナタだけが強くなっても意味無いんじゃないの?」

 

「聞かれてた以上無理してでもオマエを倒すだけだ。フレイたちの出力増幅とオレ自身の強化の両立を実現出来れば負傷したナギトの分も補える……オマエのその余裕もぶっ潰せるだろうしな」

「それほ上手く行けばの話でしょ?甘いわね、その考え方は。アナタが知っているアウロラとここに居るアウロラは別物だと思っておかないと……後悔する事になるだけ、それでもいいならその安直な思考を続けなさい」

 

「ずいぶんと余裕だな。そんなにオレたちを出し抜いた事が嬉しいのか?」

「嬉しいわ、本当に……私の思惑通りに事が進んでるのはとても喜ばしい事だわ」

 

「思惑通りってのはここまでだ。こっから先、オマエの思い通りにはさせねぇよ。オレたちの反撃……

「私の思惑は既に達成の域にまで来ている。全ては《叛逆の悪意》……そう、姫神ヒロムを目覚めさせるための用意は整っているのよ」


「……は?」


「ハハハハハハハ!!そうそう、その反応!!その反応を求めていたのよ!!」

 

 アウロラが明かした衝撃の言葉に理解が追いつかなかったヒロムはただ間抜けに聞き返すしか出来ないヒロム。


 《叛逆の悪意》、言葉は既に認知していたがそれと自身を結び付けられた事が理解が未だ追いつかないヒロムに対してアウロラは面白おかしく笑うと彼を煽るような言葉を口にした後、彼を混乱させるが如く全てを明かし始めた。

 

「全ては純粋な悪意を持つ最凶の魂、誰も経験出来ない唯一無二の絶望を味わった魂を宿した人間を私は求めた。それがアナタであり、アナタの中にある『姫神ヒロム』の魂なのよ」

「何言ってやがる……!?オレは……

「アナタはシャリオが都合良く転生した魂でありその名を騙っているだけの愚者……いいえ、姫神ヒロムを陥れた最低の魂なのよ」

 

「デタラメ言うな、オレは……

「アナタはただの仮初の存在……シャリオの魂が転生して生まれた『姫神ヒロム』の本来の魂が宿した力に耐え切れず壊れる前に深層深くへ閉ざし隠した後に私のような悪意に力を利用されぬように『姫神ヒロム』という次代の王の存在を確立するために生み出されただけの贋作、それがアナタなのよ」

 

 突如として明かされた『姫神ヒロム』という人間の魂の在り方。敵が惑わし掻き乱すために用意した虚言だと自らに言い聞かせ反論しようと考えるヒロムだったが、そんな彼の意思を砕くかのようにアウロラは彼が虚言だと思い込もうとしている自身の言葉の更なる事実を語り始めた。

 

「アナタの周りにいる因子の守護者……それが実在するものだと思ってるの?アレはアナタの中の姫神ヒロムの本来の魂が目覚めぬように監視するためにジェイド、ルーツ、ウィズダムの思念体が残滓となった力を授け自分たちが世界のために因子の力を宿し守護者となる使命があると錯覚させられてる道化なのよ」

 

「アイツらが居ないからって適当な事を……

「適当な訳ないじゃない。その証拠に……最近の彼らはアナタの力になってくれてるのかしら?」

 

「そんなもの、タイミングが悪いと言えば……

「そこのクソガキはアナタを助けにタイミングよく駆けつけた……それはね、アナタの中の《叛逆の悪意》を目覚めさせたくないゼロが情報の一部を隠す形でここへ向かわせたからなのよ。アナタを助けるためではなく、アナタの中で目覚めかけている《叛逆の悪意》を私に呼び起こされたくなかったから……そのためにそこのクソガキが駆けつける事になったのよ」

 

「ナギトが……ゼロに……!?」

 

 次から次にアウロラの口から紡がれる言葉。敵が自分たちを惑わし混乱を招くために用いている虚言の可能性を理解しているヒロムだったが、否定したい自分の心とは裏腹に敵の紡ぐ言葉は彼の心の中で疑念の芽を開かせていた。


 揺らぐ信頼、敵の言葉が事実ならばナギトの介入は偶然などではなく自らを御するためのゼロからの間接的な抑止力とさせるためだという解釈になる。そしてナギトに対してもヒロムは彼が自身を騙していたのではないのかという疑心を抱いてしまっていた。


「オマエ……最初から……!?」

「待って天才、オレは知らなかった!!たしかにゼロに会いに行った……だけど、その時にアイツからあそこの魔女が復活した事を聞かされてアンタの助けになるよう指示されただけでアイツの目的とかそんなのは知らなかった!!」

「だとしてもオマエがここに来たのは……ゼロの差し金って事なんだろ?」

 

「惑わされるな天才!!アイツの狙いはアンタを……

「私の言葉で一度揺らげば彼は私の手の中にあるも同然……アンタが何を言っても無駄なのよ」

 

「黙れクソ魔女……!!」

「黙らせたいなら力で捻じ伏せればいいわ。ただ……もう手遅れなのよ」

 

 疑念と疑心に囚われるヒロムの心を正そうとするナギトの言葉を無駄と一蹴するアウロラ。敵に何を言われようとヒロムを信じるナギトが意志を曲げるはずなどないが、それを理解した上で彼の意思と行動が手遅れだと語るアウロラの瞳が妖しく光るとヒロムの体から突然漆黒の力が溢れ出るようにその姿を現し始める。

 

「ヒロム!?」

「アレは……四条貴虎との戦いで出てきた力か!?」

 

 呪具使いを相手に戦闘を継続している中でヒロムの異変に気づいたガイとノアル。とくにノアルの方は漆黒の力を以前の戦いの際に目撃している事もあってその心当たりがあり、以前起きた事を思い出すノアルは今起きている事が非常にまずい事だと認識すると今相手にしていた呪具使いを吹き飛ばしてでも彼のもとへ向かおうと考えた。

 

 当然ながら何か起きていると理解はしているガイもノアルと同じようにヒロムのもとへ向かう気ではあった。

 

 が、2人が相手をする呪具使いは彼らがヒロムのもとへ向かうのを理解しているかのように闇を纏い自らの力を高めさせると彼らを妨害するように次から次に攻撃を放ち始める。

 

 ヒロムのもとへ向かおうにも思うように動けないガイとノアルがどうにか敵の攻撃を凌いで強行突破を考える一方、ヒロムの体から溢れ現れた漆黒の力は彼を飲み込もうと大きくなり始めていた。

 

「ぐっ……!!」

 

「抗った所で手遅れ、アナタも違和感には気づいていたはずよ。自分の中で何かが目覚める兆しが現れ始めていた事を。でもアナタはどうにも出来なかった、いいえ……自分の中に押し込んで制御しようとしていたんでしょ?」

 

「オマエ……こうなる事を理解して……」

「理解も何も、これを狙っていたの。この瞬間を……その漆黒がアナタを飲み込み呪縛から解き放たれる瞬間を!!」

 

 ヒロムを飲み込もうと漆黒の力か大きくなる中でこの瞬間を待っていたと声高々に叫ぶアウロラ。

 

 漆黒の力に飲み込まれるヒロムを見下すように嘲笑うアウロラ、だが……

 

 漆黒の力に自身の存在が飲み込まれてしまう危機的状況の中、疑念と疑心に心を追い詰められていたはずのヒロムの瞳には微かな闘志が残っていた……

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