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レディアント・ロード 2nd season  作者: hygirl
叛逆界雷編
1038/1085

1038話 本家のソウルギア


 一瞬で容姿を変えてみせたヒロム。変えたといっても髪や服の色が変わった程度のものだが、その些細な変化を遂げたヒロムを前にする灰斗は自らの目を疑うしかなかった。

 

 いや、目だけではない……

 

 感覚だ。

 

 ヒロムを前にした灰斗は自らの感覚が捉えるものを疑うしかなかった。

 

「な、何……なんだ、これ……?」


 色が変わるという容姿の変化を遂げたヒロムを前にした敵は何かの疑いを抱き、自らの目にしたものと感覚が捉えるものを疑うしかなかった。

 

 そして、その疑いを敵の彼以外も抱いていた。

 

 

「は……?何、やったんだ……?」

「何なんですか……アレ……!?」

 

 灰斗と同じように目にしたものと感じたものに疑いを抱き混乱させられているタクトとケンゴ、彼らのような声は出てはいないもののノアルとシャウロン、そして……

 

 

 ヒロムの数々の活躍をいつも見て来たガイですら目の前の光景が現実のものなのかと疑問を持ってしまっていた。

 

「何だ……アレは……?」

(派手に戦ってた中での会話だったからってのもあるけど、聞き間違いじゃなかったらヒロムの今のアレが《ソウルギア》って事になるのか?あの状態がオレたちの知るヒロムの《ソウルギア》なのか?オレやソラが会得したのはゼロが改良した簡易版と言われても仕方のないものだが……だとしても、アレがヒロムがこれまで使っていた《ソウルギア》だって言われても納得出来ない。だって……)

 

 

「何で何も感じられないんだ……!?」

「どうして……オマエからは何も感じ取れないんだよ!?」

 

 戦闘経験のあるものが揃いも揃って疑いを抱き驚く中でガイが抱いていた疑問を口に出し、同じように感じ考えていた灰斗も疑問をハッキリさせたかったのかヒロムにぶつけるような強い言い方で問う。

 

 全員がヒロムに驚かされ疑問を抱かされる中で問う灰斗。敵の言葉に対してヒロムは首をゆっくり鳴らすと敵の問いに答える……のかと思われたが、何やら奇妙な事を話し始めた。

 

「テーブルに零した水は誰でも認識出来る。だが、水溜まりやプール……大海に流した水を識別するのは不可能だ」

 

「はぁ?」

「白の上に別の色を新しく重ねても認識出来ても黒の上に新しく別の色を重ねても認識出来ない。皿の上に出しただけの塩は目で認識出来たとしても料理の中に入れられた塩は目で認識する事は出来ない。木を隠すなら森の中……て言うくらいだからな」

 

「おい、何を言っ……

「今のオマエはオレから何も感じ取れていないんだろ?その理由も分かっていない……だからどうしてオレに対して何も感じ取れないのかを問うたんだろ?」

 

「っ……あぁ、そうだ!!さっきまで感じていたものを今のオマエからは一切感じ取れなくなった!!オマエと同じ力……《ソウルギア》の力を得たオレが何も感じ取れないなんておかしいだろうが!!」

「今言ったろ。木を隠すなら森の中、てよ」

 

「あ?何言ってんの火分かんねぇんだよ!!」

「はぁ……頭ん中に藁でも詰めてんのか?もうちょい思考働かせろよな。ったく……だから知覚出来ないんだよ」

 

「知覚出来ない、だと?」

 

「言葉の通りだ間抜け。オマエがオレから何も感じ取れなくなった理由は単純明快……オレの力がオマエが知覚可能なレベルから逸脱したものに成ったからだ」

「は?逸脱?んなもん……

「なら試させてやるよ」

 

 ヒロムの言葉の理解が追いつかない中で必死に反論し抗おうとする灰斗。その灰斗の理解が追いつかぬ中での反論の全てを聞き流すように話を進めたヒロムはただ一言、『試させてやる』と告げた。

 

 そして、その直後だった。

 

 

「っ……!?」

 

 ヒロムの一言、それを受けた灰斗の理解が追いつかない中で突然彼は何かに襲われたように衝撃を襲われ体勢が大きく崩れてしまう。

 

 何が起きた?何をされた?相手は何をした?

 

 身に起きた事の全ての理解を深めようとするもその理解が追いつくのを待つ事無きヒロムが1歩……ただ1歩だけ歩を進めると今度は無数の稲妻が灰斗へ直撃して炸裂を引き起こし、いつの間に放たれたのか分からない稲妻の直撃だけでなく引き起こされた炸裂により灰斗は全身に傷を負う大きなダメージを受けてしまう。

 

「な……に……」

 

 何が起きている?

 少し前までは理解が追いついていたはずの戦いが僅かな間を経た途端に理解出来ない領域に達してしまい、もはや思考しても意味があるのか分からない状況の中で一方的に負傷させられる灰斗は血を吐き膝をつきそうになる。

 

「アイツ、何……

「何をしたのかなんて理解しなくていい」

 

 体勢が大きく崩れる中で攻撃を受けた事で膝をつきそうになる中でどうにかして思考を働かせようとする灰斗。そんな灰斗の思考を邪魔するようにヒロムの声が彼の耳に入る。

 

 何か起きる、それだけは理解出来ている灰斗がヒロムの存在と行動を認識しようとする中でヒロムは灰斗の後ろに既に立っていた。自身の後ろに立つヒロム。

 

 自身の背後に現れたヒロムの気配を感じ取った灰斗はどうにかして倒れぬよう行動を起こそうとした。が、灰斗がヒロムの気配を感じ取ったその瞬間、灰斗を挟撃するが如き強い衝撃が左右から彼を襲う。

 

 いつの間に放たれたのか、いつ仕掛けられたのか分からない衝撃の挟撃に対応出来ない灰斗は更なるダメージを受けるしかなく、膝をつきそうになっていた彼は挟撃を受けた事で耐える事も出来ずに勢いよく膝をつき倒れてしまう。

 

「がっ……!?」

 

 何が起きているのか分からない、だが、確かな事として言える事はヒロムと灰斗の間に圧倒的な力の差が生まれているという事であり、その力の差がもたらす溝は灰斗の理解の及ばぬ規模になっているという事だけだ。

 

 そんな状況に追い詰められている灰斗が膝をつき倒れる中、ヒロムは何やら退屈そうに首を鳴らすと敵の方を向きながら語り始めた。

 

「オマエの《ソウルギア》は確かに能力者としての性能を大幅に引き上げるだけの爆発力と強化性がある。その点に関してはガイたちの会得に向けて改良したゼロの構築した《ソウルギア》の形と遜色ない。それについては認めてやる。けど、オレが手にしたものとは根本が違う」

 

「っ……何回も何回も……何が違うのか、ハッキリ言えや!!」

「威勢だけはいいなクソロン毛。そんなにハッキリ言って欲しいなら教えてやるよ。オレの《ソウルギア》はな……人間としての魂の形を精霊へと変異させるものなんだよ」

 

「……は?」

 

 自身の《ソウルギア》についての真相を敵に告げたヒロム。そのヒロムの言葉、その内容を受けた灰斗はただ聞き返すしか出来ず、当然言葉の意味を理解する事など出来なかった。

 

 おそらくヒロム以外の誰が聞いても灰斗と同じ反応をするであろう内容だ。

 

 その内容を深掘りするようにヒロムは敵に衝撃の事実を告げてみせた。

 

「オレが今使っているこの《ソウルギア》はオレを精霊という存在へ一時的に変革させ進化と覚醒を加速させるものだ。本来人間なら肉体の強度に対応した制限を受ける部分においても精霊と成る事でそれらを取り払って限界を超えた強さを実現可能に出来る……つまり、単なる強化とかそんなレベルじゃないんだよ」

 

「言い方複雑にしてるだけで……結局、強化してる事に変わりは……

「2倍」

 

「……?」

「ゼロの改良式の《ソウルギア》の出力強化は安定状態で2倍、急激的な強化状態なら3倍ほどの増幅を実現可能だ。オマエのもそんなもんだ」

 

「そうだ……っ!!オレの《ソウルギア》はオレの力を飛躍的に増幅させる!!2倍とか3倍とか、そんなもの簡単に……

「ただし、オレの《ソウルギア》は違う。《レディアント》、《ユナイト》、《レゾナンス》、そして四条貴虎との戦いで得た首飾りの霊装の《シンフォニア》……オレの《ソウルギア》の強化増幅はオレが扱う霊装の数だけ乗算を重ねる」

 

「乗算……っ!?」

「分かりやすく言ってやろうか?」


 ガイたちが扱う《ソウルギア》と灰斗が扱う《ソウルギア》の力の増幅は2倍か3倍。ヒロムの語ったその数値を事実として突きつけるように灰斗が言葉を発する中で自らの《ソウルギア》は霊装の数だけ増幅の倍率値が乗算されると明かしたヒロム。

 

 ヒロムの言葉を理解は出来ても事実として受け入れられない灰斗が驚愕する中でヒロムは敵に手をかざし……

 

 

 ヒロムが手をかざされた直後、白銀の稲妻が巨大な爆発を引き起こしながら敵へ直撃し、いつの間にか放たれていた白銀の稲妻が直撃した灰斗が全身に火傷をひどく負う中で冷たく告げられる。

 

「オマエの力じゃオレの《ソウルギア》には届かないって事だ」

 

 


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