1021話 剣豪試合
当然のように日常を壊すかのように現れた灰斗たち呪具使いの敵を迎撃するべく動き出したヒロムたち。
ヒロムと灰斗が誰よりも先に接敵・戦闘に突入しようとする中でガイも蒼炎を纏い加速しながら朧波へと迫り、ガイが迫る中で朧波は闇にも見える不気味な力を纏い太刀を構えるとガイへと一閃を放ち、朧波の一閃に対してガイは霊刀《折神》に蒼炎を纏わせ振り抜くと共に一閃を放ちぶつける事で相殺させ凌いでみせた。
一閃を相殺させたガイは臆すことなく敵よりも先に一撃を決めるために《折神》を強く握り加速すると確実に振り下ろし敵を斬れる間合いに踏み込もうとした。
が、ガイのその行動を予測した朧波は太刀を素早く逆手に持ち直しその場で体を素早く回転させながら連続で斬撃を飛ばす事でガイに直撃させようとし、朧波の連続で飛ばした斬撃が迫る中でガイは蒼炎を強く纏わせた《折神》による素早い一閃だけで飛んできた全ての斬撃を破壊してみせた。
ただの一閃で斬撃全てを破壊したガイを警戒するかのように朧波は距離を取るように少し後ろへと下がり、敵のその行動を視認したガイは何か意味があると警戒してか接敵しようとしていた足を止めその場で《折神》を構え直そうとした。
ガイの冷静な判断を感覚的に察知したのか朧波は何やら嬉しそうに口角を軽く上げ、朧波のその些細な反応に気づいたガイは敵の動きを警戒し刀を構えたまま敵の意図を確かめようとした。
「オマエ、今笑ってたろ?何か嬉しい事でもあったのか?」
「あぁ、もちろんだ。一目散に迫ってくる猪突猛進型かと思ったら冷静に見極めて切り替えられる利口なタイプだったもんだから少しは楽しめるかと思ってな。オレの剣技に即座に対応出来たってのが大きいが、オマエの中からはこれまでオレが出会ってきた剣士とは違う楽しめそうなものが感じ取れる……それを期待してるんだよ」
「なら残念だったな。生憎とオレはオマエみたいな悪人を笑わせる趣味を持ち合わせてないから楽しむ間もなくオマエはオレに倒されて終わりだ。無駄に怪我したくなかったら大人しく倒されろ」
「お断りだクソガキ。オマエみたいな生意気なガキの言葉に乗ってやるつもりはないが……そこまでナメた口叩かれたら大人しくしてられねぇって話なんだよ」
「そうか。ならそのクソガキに斬られろ」
朧波に大人しく倒されるように忠告するも敵が当然のようにそれを拒否、分かりきっている結果をあっさり受け入れるかのようにガイは呟くと地を蹴り再び走り出し、ガイが走り出すと朧波はやれやれと言いたそうなため息をつきつつ太刀を構えた。
走り出したガイを迎え撃とうと太刀を構える朧波、その朧波が完全に構えるよりも先にガイは蒼炎を脚に纏わせて地を強く蹴り出り瞬間的な加速を引き起こすと共に朧波との間合いを完全に詰めるとその勢いのまま一閃を放とうと《折神》を振り、瞬間的な加速と共に間合いを完全に詰めたガイのそのスピードに対して予想外だったのか朧波は回避が間に合わないのかガイの一閃を太刀で受け止める形でしか対応出来ず、ガイの一閃を受け止めた朧波は直撃を避けることは出来たものの咄嗟の対応故に敵の力を完全に受け止め切れずに吹き飛ばされ、朧波が吹き飛ばされるとガイは素早く踏み込み直し追撃しようと駆け出した。
「何って野郎だ……!!」
吹き飛ばされた朧波は自らの体を宙で回転させ受け身を取る流れを作って着地に繋げて上手く立て直し太刀を構え、追撃のためにガイが迫る事を理解している朧波は太刀に不気味な力を纏わせると地を強く踏み込むと共に視認が困難な速度で太刀を幾度と振り抜きガイに向けて斬撃をいくつも飛ばし、朧波が飛ばしてきた斬撃に対してガイは《折神》に纏わせる蒼炎のその力を高め素早く振り抜く事で一閃を放ち先程のように全て破壊してみせた。
朧波の飛ばした斬撃を再び完全に対処したガイはスピードを落とすことなく敵へ迫り、朧波は太刀を握り直すと不気味な力を纏わせ素早く走り出してガイを斬るべく刃の届く範囲に敵を捉えると太刀を素早く振り下ろし、朧波が太刀を振り下ろせるならばガイも攻撃に転じるなど容易いのか素早く《折神》を振り抜き、2人の刀が素早く強くぶつかり火花を散らし鍔迫り合いになろうとした。
鍔迫り合いとなり力の押し合いに持ち込まれた中、朧波は何やら感じ取ったのか不思議そうに言葉を発し始めた。
「クソガキ……その刀、本当に業物か?贋作じゃねぇのか?」
「何?どういう意味だ?」
「オレはいくつもの業物やいわく付きとされる得物と対峙してきたがオマエのそれは業物にしては軽過ぎる。まるで……中身がないかのようだ」
「中身だと?ふざけた事を」
「あの方が少し話していたが業物の中には魂を内包したものがあるとの事だが……そうか、オマエのその業物は内包していたはずの魂が消えたか何かの理由でこんなにも軽いのか」
「……っ!!」
(コイツ、次世代型の霊刀である《折神》の中に宿っていた織姫が刀の中に居ないことを見抜いてるのか!?たしかに織姫はオレが天霊の王の資格を得て進化した過程で《折神》からオレの魂の方へと繋がり先を変えて1人の天霊として行動しているが……だとしてもそれを対峙してから僅か数回の斬撃の応酬と1度の刀身同士の接触で看破可能なのか!?)
双方の斬撃の応酬、ガイの朧波を吹き飛ばした初撃、そして今起きている鍔迫り合いと限られた攻防の情報からガイの《折神》の全てを感覚だけで見抜いてみせた朧波のその洞察力にガイは驚かされ、ガイが内心で焦りを抱き始めると朧波は不気味な力を放出させて鍔迫り合いになっているガイを吹き飛ばし距離を無理やり取らせるなり放出させたその力を自らのその身に纏わせ始めた。
「甘く見られたもんだな、本っ当に……苛立ちしかねぇ。オレをそんな軽いもんに殺されるとでも思ってんのか?ナメやがって……そんなもん使うって事はオマエが本気を隠してるって事と同義だ。つまり、オマエはオレを見下してるって事なんだよ」
「そんな気はない。というか、人の事それなりに評価したかと思ったら訳の分からない事で萎えるなんてオマエの方こそオレをナメてるだろ?」
「評価?してねぇよバカが。さっきのはオマエに対して呪具を使う価値があるかを見定めただけ、呪具を使うに値する実力がありそうだから楽しませろって話をしたわけだが……どうやらオマエはオレをナメてるどころか見下してるらしい事がよくわかった」
「一方的な言いがかりだな……」
「これ以上はオレのプライドに関わるからな……て事で、せめてもの情けで太刀の力を見せてやる。だから耐えるなりして必死に生き延びろよ?コイツは生半可な覚悟なら全て壊すからな」
「何を……
「呪具解放……臥鳴裂」
『呪具解放』、その一言を発した次の瞬間に朧波の持つ太刀が不気味な力を強く放出すると刀身に超高速の振動を引き起こさせ、刀身の超高速の振動の影響か朧波の周囲の大気が地震が起きたと錯覚してしまえるほどに震え始める。
何かが起きている、その事実だけしか理解出来ないガイが《折神》を強く握りながら構え即座に対応出来るよう意識を集中させる中、朧波に変化が生じた。
敵の持つ太刀が妖しく光ると朧波の両頬に亀裂のような模様の紫色の痣が浮かび上がり、痣が両頬に浮かび上がると今度は眉間に三日月の形の痣が現れる。
そして……
「何だ……あれ!?」
「……遅い」
両頬と眉間に痣が浮かび上がった朧波が呟くように言葉を吐き捨て太刀を振ってみせるとその太刀の刃が届かぬ位置にいるはずのガイが突然無数の斬撃に襲われ全身を斬られ負傷させられてしまう。
「なっ……!?」
「ぬるいなクソガキ……このまま殺してやるから大人しくしとけ」
ただ痣が浮かんだ、その程度の変化しか確認出来ない朧波が放ったとされる無数の斬撃に襲われ傷を負うガイ。
彼を襲った無数の斬撃を放ったとされる朧波の顔に現れた痣、その痣の出現が何を意味するのかをガイは知る由もなく……




