1017話 初対紹介
突然背後からユリナを抱き締めたリオナの名を呼んだ謎の少女。腰くらいまでの長さのある茶色のかかったような少しくらい赤い髪、赤みのかかった黄色の瞳、抱き締められているユリナより少し高いくらいの背の少女はリオナと同じ希光学園の制服を着ており、少女に抱き締められて困惑しているユリナがどうにかして欲しそうにヒロムに助けを求め視線を送ろうとする中でリオナは咳払いをするとユリナを抱き締める少女について紹介を始めた。
「ユリナに抱きついているこの子は甘咲アマネ、制服から分かるかもだけど希光学園で私のクラスメイト。付き合いとしては中学の途中に転校してきた時に仲良くなって今に至る感じだよね?」
「そんな感じだと思うよ?」
「そんな感じって事でこの子の事もよろしくねヒロムくん」
「紹介の仕方が雑を通り越して適当すぎないか?その説明だと今拘束されてるユリナが納得しないぞ?」
「あっ、安心してユリナ。アマネも『ユリナを愛でる会』の会員だから、ね?」
「何も安心出来ないよ!?というかそのグループのメンバー増えてるの!?」
「増えてるわよ?そう……これも私やアキノたちでユリナの魅力を伝えてきたからこその結果よ!!」
「自信満々に言わないで!?不安しかないよ!?私の知らないところで私に関わる事が大きくなってるんだもん、不安だよ!?」
「普通に考えたらよく分からねぇ他校の女子紹介する側も大概だが紹介された側もよく分からねぇ他校の女子の事をすんなり受け入れ好意的に見れるとかイカれてるな」
「ヒロムくん?リオナたちが紹介してるそのよく分からねぇ他校の女子って私だよ?分かっててそんな風に言ってるなら私傷つくよ?」
「なら後でリオナかアマネに慰めてもらえ」
「今更だけど少しの申し訳なさもないんだね!?」
「というかヒロムくん、もうアマネの事普通に認識して話してくれてるじゃない。私としては嬉しいわ」
「ホントホント、私も初対面なのにこんなすぐにヒロムくんに名前呼んでもらえるとはビックリだよ」
「初対面の私を後ろから抱き締めたり初対面の異性との距離の詰め方が積極的過ぎてこっちもビックリしてますよ!?」
「ユリナうるさい」
「うる……エレナ〜、ヒロムくんが私をいじめる〜!!」
「ひ、ヒロムさん……もう少しユリナに優しくしてあげて下さいね?ユリナが泣くと……その、少し……面倒なので」
「何気にエレナが1番言葉強いな」
「こ、言葉のあやです!!とにかく優しくしてあげてください!!」
「はいはい、分かりやしたよエレナさん……で、リオナ。本題に入って欲しいんだがアマネも例の夢を?」
「流石、ヒロムくん。実は……
「そうなの!!私ね、アナタにそっっくりな人が出てくる夢を見たの!!前にリオナが写真で見せてくれた事あって覚えてたから起きた時に似てるなぁって感じで気になっちゃったからリオナに聞いてみたの!!そしたらビックリ!!リオナも私と同じ夢見てた上にアキノたちも見てたんだから驚きしかなかったよ!!」
「もうアマネ!!私が話したかったのに!!」
「いいじゃん〜。リオナは普段話してるんだから譲ってよ〜」
「……ガイ、コイツらを静かにさせてくれないか?聞いてて疲れてくる」
「まぁまぁ、ヒロムがこういうギャル系のノリ苦手なのは分かるけどこれを機に克服しろって。人間関係を築く上で今後必要になるだろうからさ」
「何の参考にもならねぇ……」
「それよりもヒロム、話を進めなくていいのか?彼女の事もだがエレナが紹介してくれた澄露さんの事もまとめておかないとだろ?」
「分かってるさノアル……けど、話を進めようとミホに色々聞こうとしたらユリナとアマネが話乱したんだから仕方ないだろ」
「ヒロムくん!?私巻き込まれだよ!?」
「もうユリナ〜、照れないでよ♪」
「照れてないよ!?」
「……まぁ、甘咲さんの方はユリナたちに任せよう。あの空気に男が入るのは無粋だろ」
「無粋?そうなのか?」
「とりあえずはそう認識しておいていいと思うって話だ。それより、この流れで紹介するならもう1人紹介してもらう必要のある人がいる事になるがヒロムは把握してるよな?」
「スミレに連絡入れたミユキとシノの紹介だったっけ?忘れてねぇよ」
「なら……
「坊っちゃん、遅くなりました!!」
話を大きく乱した(?)甘咲アマネがユリナを抱き締めたまま話を進めようとするも彼女と彼女を紹介しようとしたリオナがまるでふざけてるかのように話すせいで話は進展せず、ノアルがヒロムに対してユリナたちの見た夢の話について進展させるべきだと伝えるとヒロムはアマネの事をユリナに押し付けようとし、ガイの言葉を受けたヒロムはミホの話を聞く上で先にスミレへ連絡を入れたミユキとシノの発見した人物を紹介させようとした。
が、その流れを断ち切るかのように谷亀ハルキが走ってきてヒロムたちに合流しようとし、今朝散々注意された『坊っちゃん』呼びを無意識なのかしてしまったハルキに対してヒロムは睨むような視線を向けてしまう。
「あっ、またやっちまった……」
「オマエ……学習能力無いのか?あ?」
「す、すんません坊……ヒロム。悪いんだけど慣れねぇんだよ。前まで愛華様のところで雑務してたのもあって染みついてんだよ」
「なら慣れろ。あと今間が悪いから白丸たちの世話頼む」
「了解……早く慣れねぇとなぁ」
申し訳なさそうに謝り慣れない呼び方で間違えてしまうと弁解しようとハルキにかなり冷たく返したヒロムは話を戻したいがために彼に戯れを楽しんでいる白丸たち幼い精霊たちの面倒を見るよう頼み、ヒロムに頼まれたハルキは少しの泣き言を呟きながら白丸たちの方へ歩いていく。
話題を戻そうとして遮られた話、それを進めるべくヒロムは咳払いをして仕切り直そうとし、ヒロムが咳払いをするとシノが率先してヒロムに紹介しようとしていた人物と彼の前に立ち、ヒロムの前へと出たシノは改めて話を進めようとした。
「ヒロムさん、紹介させて頂きますね。こちらの子は私やミユキさんと同じ姫乙女学院に通う乙葉セイラです」
「よろしくお願いしますね、姫神さん」
「あぁ、よろしく頼む 。で……とりあえず合流場所に向かうか。アイツらが先に着いてる可能性あるしな」
「ここに全員揃って現れないって事は何かあったんだろうな。そうなるとイクトたちの話を聞かないと進まないから向かうしかないな」
「そういう事だ。じゃあ、いくか」
シノに紹介された人物……鎖骨辺りまでの長さの薄緑色の色の髪と水色の瞳の少女、乙葉セイラと紹介された彼女はヒロムに挨拶するが彼女から丁寧に挨拶されたヒロムはその丁寧な挨拶に反した軽いものを返すだけで済ませる。
ヒロムのその返事の仕方に加えて初対面でもお構い無しなヒロムはとりあえずエレナたちからの一通りの紹介が終わったとして捜索に向かったイクトたちと合流するために約束していた場所に移動を再開する旨を皆に伝え、捜索の結果を気にするガイもヒロムの考えに賛同すると彼はユリナたちを引き連れるように歩き出し、ユリナたちはもちろんの事戯れている最中だった白丸たち幼い精霊もヒロムたちに置いていかれないようにと歩き出す。
「これは……?」
イクトたちと合流するべく再び移動を始めたヒロムたち。だがこの時、シャウロンは何やら疑問を抱き不思議に思っているような顔をしながらかヒロムを見ており……




