1015話 薄ら見える謎と疑問
イクトの助力を受ける形で画切の呪具の力を攻略し、それだけでなく敵の攻撃を耐え凌ぎ自らの渾身の一撃を叩き込んで呪具を破壊し敵に致命傷を与えた真助。
真助が敵に致命傷を与える一撃を喰らわせたのを見届けたイクトは大鎌《月獄》を下ろし、画切に黒い一閃を喰らわせた真助は致命傷を負って後は倒れるしかない画切の最期を見届けようとしていた。
「さぁ、終わりだ……腕野郎!!」
画切に致命傷となる一撃を喰らわせたからか、それとも真助が無意識に解いたのかは分からないが気がつけば真助の発動させてた『村正モード』が解けて髪は元に戻り、それだけでなく彼の纏っていた闇もなりを潜めていた。
一段落!そう感じながらもあとは敵が倒れ今いる空間から自分たちのいた化学準備室に戻るだけだと真助とイクトが思い始めていたその時……異変が起き始めた。
「あっ……あっ……、そんな……嫌嫌!!拒拒!!」
真助の妖刀の一閃を受けても尚意識があるらしい画切だったが何やら大きく狼狽え、それだけでなく何かを拒むように怯えながら言葉を発し始め、画切が狼狽え怯えるように言葉を発していると真助に破壊された長刀の呪具《骸嶽》は亀裂を生じさせ勢いよく砕け散って消滅しまう。
「何が起きるのかと思えば……壊れただけか」
「あれだけの力を発揮出来ていた呪具が壊されたとなれば狼狽えたくもなるのかな……知らんけど」
単に呪具が消滅した……としか真助もイクトも認識出来なかったが、《骸嶽》が砕け散り消滅した次の瞬間、画切の全身に亀裂が走り始める。
「なっ……!?」
「ちょっ……何だよこれ!?」
『小僧共、アレが何かわからん以上そこを動くな!!』
画切の全身に亀裂が走り始めた事に驚きと戸惑いを隠せない真助とイクトに対して狂鬼は危険性があるとして2人に何もせず待機するよう命令し、何が起きてるのか分からない真助とイクトが理解出来ずにいると画切は全身に亀裂が走り続ける中で何かに懇願するように言葉を呟き始める。
「あっ……あっ……拒拒!!吾はまだ生きたい!!死など望んで……こんなこと、望んでいないのに何故なのです!!吾は……吾は全てを捧げると約束したのに、何故なのです!!」
懇願し助けを求めるように呟きがいつの間にか叫びに変わっていた画切の言葉。そんなものが抑止になるわけもなく画切の全身に亀裂は走り続け、目の前の敵の体に起きる異変が何なのか分からない真助とイクトはただ敵の行く末を見届けるしかなかった。
「おいおい……何の冗談だよ?」
「流石に笑えないって……ていうか、アイツの言葉って明らかに命乞いだよね?」
「それ以外何に聞こえんだよ?後味悪いな……」
『小僧、気を抜くな。単に呪具が壊されただけとは思えぬあの現象……下手をすればこちらも巻き込まれるかもしれぬと警戒しておけ』
「何だ狂鬼、やけに慎重だな」
「狂鬼がここまで警戒するって相当な事なんじゃない?もしかしたらオレや真助が理解出来ない次元の事が起きてるのかもしれないよ」
「まさかだが……この空間諸共オレたちを消すつもりか!?」
「いや、それは無いと思うよ。あの狼狽え方は巻き添えにするつもりの敵のものじゃない。むしろアレは……
「『……これはこれは、この感覚は幻霊の王か』」
「「!?」」
狂鬼の異様な警戒に真助とイクトが考えられるであろう可能性について触れようとし、そしてイクトが画切の現状を見て何かあるとでも言おうとしたその時、狼狽え怯え叫びを求めるように声を発していた画切が不気味な動きをしながら言葉を発するが、画切の発した言葉は何か別の声が重なったかのような不気味なものであり、画切の声の異様な変化に真助とイクトが驚き身構えようとすると不気味に重なる声で画切が言葉を紡ぎ始めた。
「『話には聞いていたが既に4種族の王の後継者が揃っていたとは……これは驚きよ。煉獄島に向かった紅月シオンを捕らえて全てを吐かせようと思うたがそんな事をしても手遅れでしかなき。し然し、まだ妾らに流れを向ける事は可能か』」
「おい、オマエは何なんだ!!」
「そいつに憑依してるのは分かってる。何者なのか、その素性を明かしてもらおうか」
「『幻霊の王の後継者に……片方は妖月の血筋ではないか。まさか仙月の血筋の紅月シオンだけでなく妖月の血筋までこの世に生まれていたのか……これは妾も悠長にしてられぬな』」
「妖月?仙月?何言ってやがる?」
「とりあえず敵って事で間違いないよね?その上で聞くけど……何者だ?」
「『妾が何者かを知らぬ……成程、紅月シオンは秘匿しているのか。いや、この大地から煉獄島に赴いていた2人の人の形を成した精神の具現体が口止めしておるのか?』」
「秘匿、だと?」
「それって……!?」
(今目の前にいるコイツがさっきまで戦ってた画切ってのと別人なのは確かだ。仮に……コイツの言ってる事が真実ならシオンはオレたちに何か隠してるって事になるよな?シオンがアキナたちをフルネームで呼んでいた理由としてガイに返した言葉だって聞かされた個人的なケジメと関係あるのか?つうか、2人の人の形を成したって……精神体として大将の魂から生み出されたゼロとクローズの事だよな?だとしたら……)
「ゼロのやつ、コイツの事を把握して姫さんたちを大将から引き離すつもりなのか?」
画切……否、画切の声と重なるように言葉を発している画切と異なる『妾』について謎しか感じられない中でイクトは『妾』の発言から煉獄島に行っていたシオン、ゼロ、クローズの3人が目の前の存在の関与の有無を無視しても何かを把握してると思考の中で整理し、その思考の整理の果てで現在のゼロの行動に関して目の前の存在がそうさせている可能性があるのではないかとイクトは考えを至らせようとした。
イクトが思考の中で考えを至らせようとする一方で真助は彼に知恵を働かせる事を託すかのように妖刀《狂鬼》を構えて画切を介して話してるとも取れる『妾』を潰すべく黒い雷を纏おうとするが、真助が『妾』を潰そうと考えると彼のそれを拒むかのように彼らが立つ大地に大きな亀裂が走り、さらに灰色の空に無数の亀裂が生じるとガラスが割れるかのように無数の破片が飛び散り始める。
「「!?」」
「『妾の事を探るのは構わぬがここで長く語る気は毛頭ない。妾は今回この画切……いや、その名を与え契って利用してやった呪いの器を介して今の時代を把握したかっただけの事。思わぬ収穫があって満足しておる、それ故に期待しておこう……貴様らが妾の興味の対象として必死になる事を。妾と相対するその時まで……死ぬでないぞ?』」
「待ちやがれ!!」
「逃がしてたまるか!!」
去り際の言葉としか取れぬ言葉を発する『妾』のその発言から真助とイクトはこのまま逃がして終われないとして『妾』を捕らえるべく何とかしなければと考え画切を仕留めるという考えに至ると駆け出し同時に一撃を放って画切に喰らわせようとするが2人が一撃を放とうとしたその瞬間、画切の全身が爆ぜるように消滅すると共に彼らがいた空間の景色が爆発するかのような勢いで砕け散り、景色が砕け散った事により真助たちが身構えようと行動を中断させてしまうと彼らはいつの間にか元々いた化学準備室の中に立たされていた。
「ここは……ていうかアイツは!?」
「逃げられたのか……いや、そもそも何も出来ていないのか」
(さっきのは一体何なんだ?今の時代って言い方からしてこの時代の存在じゃない?だとしたら……)
「敵なのは間違いない……だとしたら、シオンたちはどうして話さないんだ?」
『妾』が何者なのか、それを気にするイクトは先程の会話からシオンたちが何かを把握してる可能性を考え、そしてイクトは彼らが何故何も話さないのかを疑問に抱き始めていた……




