1007話 客人大来訪
しばらくすると彩蓮学園に通うエレナやユキナ、アキナ、カリナ、カエデ、メイアがノアルと真助、タクト同伴の上で到着し、続けて姫乙女学院に通うミカ、ミヤビ、ミユキ、シノ、凛がケンゴとレンジを連れ、それぞれの学校から来た彼らと共にヒロムが面会する相手となる人物も一緒に到着していた。
さらにこの集まりを聞きつけてかアイナとトウカも予定を合わせて話のためだけに来てくれていた。
件の関係者となる人物が集まってきたわけだが、彩蓮学園の方は何やらほのぼのとした光景を披露してくれていた。
「ガウ〜♪」
「バウ〜♪」
「ら、ラウ〜……」
ノアルの精霊である子竜の精霊のガウ、バウ、ラウが真助の宿す黒狼の精霊・狂牙の背に乗ってヒロムたちのもとへ現れ、3匹の子竜に微笑ましい状態を前にしたユリナたちはガウたちの可愛らしさに目を奪われていた。
「可愛い〜!!」
「子守りも大変そうだな狂牙」
「言ってくれるなヒロム。コイツらが退屈しないのならオレとしては不満は無いから大丈夫だ」
「ったく、チビたちにいいように遊ばれてるだけなのに不満も何もないだろ」
「そう思うなら代われやマスター」
「お断りだ」
「なら黙ってろ戦闘狂のマスターが」
「ワン!!」
ガウたち3匹の子竜を背に乗せる狂牙の苦労を気遣おうとするヒロムに対して自身の精霊に対してとは思えぬほどに他人事な反応を見せる真助。真助に少し強めに言葉を発した狂牙だったが、そんな狂牙のもとへと自分も構ってほしいと白丸が甘えに来るなり可愛らしく鳴くのだった。
「白丸、悪いがガウたちの相手で手一杯だ。帰ったらゆっくり遊んでやるから、な?」
「クゥン……」
「……ヒロム、これはオレが悪いのか?」
「気にするな狂牙 。白丸は単純にガウたちが羨ましかっただけだろうからな。ほら、代わりにオレが構ってやんよ」
狂牙に甘えようとする白丸だったがガウたち3匹の面倒を既に見ている狂牙はこれ以上は無理だと伝え、それを言われると白丸は悲しそうな反応を見せる。白丸のしょんぼりした様子に罪悪感を隠せない狂牙だったがヒロムは気にするなと伝えるなり白丸を抱き上げて優しく撫で、狂牙に構ってもらえずしょんぼりしていたはずの白丸はそんな事などなかったかのようにヒロムに撫でられる中で嬉しそうにしっぽを振り甘えようとしていた。
「ワン♪」
「まったく、弟たちが増えてもこういう所は変わらないな。飛天みたいにお兄ちゃんとしての自覚を持ってくれればオレとしては嬉しいんだが……」
「いいんじゃないの、大将?こういう甘えん坊で可愛い方でも大将の癒しにはなるだろうしさ」
「白丸たちをそんな風には見てないんだが……まぁ、イクトのその言葉をフォローだと思って聞き入れるよ」
黒丸や小姫、そしてドランたち幼い精霊をヒロムが次々に宿して白丸がお兄ちゃんという立場になろうと変わらず甘えん坊である事にヒロムは少しばかり悩みのような感覚で口にするもイクトは白丸はその方がヒロムのためになるだろうと言葉を掛け、イクトの言葉に少しの反論の余地を感じながらもヒロムは聞き入れる旨を伝えた上で白丸を甘やかすかのように優しく撫でてあげた。
狂牙の背に乗るガウたちの微笑ましい光景に続いてヒロムの白丸に対する愛情ある接し方にも尊さか何かを感じたのかユリナたちは優しく見守るように視線を向けており、ヒロムが白丸を甘やかしていると羨ましくなったのか黒丸たちはヒロムに構ってもらおうと駆け寄っていく。
「ワンッ!!」
「ギャウ!!」
「わーった、わーった。順番だ、順番。流石のオレも一気には無理だからな?」
「ワフッ」
「当たり前のように撫でられてるけどな白丸、も少ししたら下ろすからな?」
「ワフッ!?」
「当たり前だろ……流石に白丸だけ特別扱いは出来ねぇから」
白丸をはじめ黒丸やドランたちに優しく微笑み優しい口調で接するヒロム。戦いに明け暮れる彼ののもとへ生まれた微笑ましい日常風景、そんな日常風景の輪の中に入ろうとするかのように……
「ヒロムくん、ユリナ〜!!来たよ〜!!」
「やぁ、姫神!!私も来た!!」
ヒロムが白丸や黒丸たち相手に優しく接している希光学園に通っているリオナがアキノ、ユキノ、そしてヒロムたちの誰も連絡を取った覚えのないシャウロン・シャフリフォールが姫城高校につくなり陽気にヒロムたちへ声を掛けようとし、シャウロンの姿を視界に入れたヒロムは白丸を下ろすと思わず舌打ちをしてしまった。
「……何でオマエがいるんだよ、シャウロン」
「安心したまえ姫神。私はキミの手助けをするためにここへ来たのだよ」
「頼んでねぇよこの野郎。オマエは防衛指示受けてる希光学園で待機して職務でも果たせ」
「つれないことを言うな姫神。話は全て桃宮くんから聞かせてもらったからな!!」
「……リオナ、話したのか?」
「ほら、シャウロンさんって情報通でしょ?だから何かしら役に立つかなって思ったのよ」
「ふふっ、おかしいな……雨月、私は遠回しにディスられてないか?」
「安心していいぞシャウロン。リオナの言い分は間違ってないし気にするほどの事じゃない」
「そうか、ならばよかった。とはいえ、私もただここに手助けをするために来たわけではないぞ。姫神、開催が延期されていた学校間交流会に関しての詳細情報が判明したぞ」
「んだよ、姫乙女学院の騒動で無くなったと思ったのに延期になっただけかよ……」
白丸を抱き下ろしたからか口調が優しさから掛け離れた少し乱暴な物言いとなり、シャウロンに対してどこか素っ気ない態度を取るヒロムは彼がリオナからユリナたちが見た夢の事を聞いたと聞かされた事で何故話したのかをヒロムに尋ねられたリオナの言葉に少々違和感を覚えたシャウロンはガイに確認を取るも恐らく面倒になるのを避けようとしたガイの適当な言葉すら真に受けるシャウロンは唐突な舵切りで話題をいつの間にかヒロムたちの間で名前すら出てこなくなった『学校間交流会』についてのものへ差し替えようとし、シャウロンの無理やりな話題変更に呆れながら以前の騒動で無くなったものだと思っていたと口にしたヒロムは厄介に思ってるような反応を見せるしか無かった。
そんな時だった。
「あん……?おい、ヒロム」
「何だ真助?この学校にはオマエのお眼鏡にかなう斬り応えのある人間はいないぞ」
「そんなのは求めてない。それより……この視線、オレたちが来たからなのか?」
「……朝からだ。朝はユリナが何かしら気づいた反応を見せたからか一旦引いたんだけど、こんだけ揃うと嫌でも出てくるよなって感じだ」
「心当たりは?」
「2つ……身内か敵か、だ」
「そうか、よし。イクト、学校の中案内しろ」
「は!?こんな微かにしか感じ取れない気配を探しに行くのか!?」
「何だよイクト、気づいてたのか?」
「あー……まぁ、うん。黙っててごめん大将。なんか幻霊の力とアンジュの現界以降空間認識能力ってのが高まった感じなんだよね。だから真助の気づいた視線も少し前から認識出来てるって感じ」
「真助はどんな風に認識してるんだ?」
「あー……オレのは多分妖刀繋がりだな。なんか、こう……嫌な感覚ってのを感知出来ちまうんだよ」
「……どうするヒロム?野性のカンと空間認識能力での異なる感知、動くか?」
「そうだな……下手に動かれても面倒になるし、オレたちのテリトリーで好きにされるのは釈然としない。イクトは真助と探ってくれ。レンジ、ついでだから2人の代わりに伝言役としてケンゴにいつでも連絡取れるように同行してくれ」
「了解です!!頼られたからには頑張るっすよ!!」
「とりあえず……オレたちは『ゆっくり話せる場所』に移動する。イクト、いつもの開けたところにいく」
「オッケー、あとで合流ね」
「狂牙、主のオレの身に万が一が起きて感知したら迷わずヒロムに伝えろ」
「行ってくるっす!!」
何かの視線を感じ取った真助とそれに気づいていたイクト、そして2人に同行し連絡役として任命されたレンジの3人はその正体を探るべく動き始め、3人が捜索に向かうとヒロムはガイたちと共に客人となるシャウロンやエレナ、リオナたちを校舎の方へ案内しようと動き始めた。
ヒロムたちに向けられた謎の視線、果たしてその正体は……




