1005話 意外な進展
時間は流れて昼休み……
谷亀ハルキが世話役を引き受けて面倒を見ていた白丸たち幼い精霊たちを休憩時間中という事で彼から引き取ったヒロムはナギトと共にユリナやリナ、スミレ、サクラ、ヒカリ、ユウリ、リセ、アスナ、マリナ、レイカ、先日のライブハウスでリナとの音楽活動再開に伴いメンバー入りしたレイナとマリンから成り立つ女子会同然の校庭での昼食会に参加し、白丸たちが近くで戯れる中でヒロムはユリナが用意してくれた弁当を食べながら購買で買ったパンを食べるナギトに今朝判明したユリナたちの見た夢の件についての進展方法について話を進めようとしていた。
「とりあえず同じ夢を見た人間が現れる気配はないな」
「まぁ、たまたま見た夢程度でスルーされてんだろうね。やっぱ天才が何かしら派手な動き見せるしかなくない?」
「下手に動いたら目立つし《世界王府》のやつらが嗅ぎつけて邪魔してくる危険性があるし出来ねぇな」
「そこはほら……向かってくるなら迎え撃ってカッコイイところ見せつけたらよくない?」
「よくねぇよ、バカ。ただでさえ《世界王府》の動きに警戒しなきゃならないのにオレの方から悪目立ちするなんざ自殺行為でしかない」
「はぁ……ダメか」
「むしろ何でいけると思えた?」
ユリナたちと同じ夢を見たであろう該当者を見つけ出す方法について知恵を借りるために声をかけたナギトは手を貸す際はカッコよく引き受けてくれたものの実際口にする言葉はかなり適当でヒロムは呆れるしかなく、行動の方向性どころか話そのものが進まないヒロムとナギトの傍らでスミレのスマートフォンの着信音が鳴り、スミレが着信を確認するとヒロムの予想していない吉報が伝えられた。
「ヒロムさん、先日ライブハウスでお会いしたミユキさんとシノさんからメッセージ届きました」
「そうか。それで?」
「はい、お2人の方に私たちと同じ夢を見た人が声を掛けてきたそうなんです」
「本当か!?」
「シオンの言った通りに夢を見た向こう側から天才と接点のある人物に接触してきたんだね」
「あぁ、確率低いと思ってたから驚いたな……。それでスミレ、2人は何て言ってるんだ?」
「えっとですね……ミユキさんは1度ヒロムさんとお会いしてお話してもらいたいみたいです」
「でも天才が面会したらその瞬間屋敷にお持ち帰りコース確定だよ?」
「ナギト黙っとけ」
「あっ……えっと……」
「いいよスミレ、続けて」
「はい。ミユキさんもシノさんも私たちと同じ夢を見られていたのでそこの確認は取れているみたいなのですがヒロムさんと面識がないのに私たちと同じ夢を見たということに少し不安があるそうで……ミユキさんはヒロムさんと直接話をしてその不安を取り除いてもらいたいそうです」
「不安……」
(よくよく考えたら不安しかないのか。オレとの直接の面識がない人間が他人の空似と捉えられる夢を見て頭の片隅に流そうとしたところでオレと面識のある人間が自分と同じ夢を見た……なんて状況に直面するだけでも驚きなのに同じ夢を見た人間が2人3人とかじゃなくて10人以上ってなると怖いものがあるんだろうな)
「ヒロムさん、どうされますか?」
「どうするも何もないな。オレが直接関与していないと言い切れない奇妙な夢見て不安を抱いてるならそこをどうにかするためには会うしかないだろうし……とりあえずミユキとシノにはその子と会うって事を伝えてくれるか?」
「はい、分かりました」
着信がライブハウスにて出会ったミユキからのもので内容がユリナたちと同じ夢を見たという人物が接触してきた旨だった事をスミレに報告されたヒロムはまずは会うしかないとして彼女にそれを伝えるよう頼み、ヒロムがスミレにミユキへの返事を頼んでいると今度はユリナのスマートフォンに着信が入り、ユリナは当然のように着信の内容を確かめてヒロムに伝えようとした。
「ヒロムくん、エレナからの連絡で友達が同じ夢を見たんだって」
「エレナの友達が?へー……意外だな」
「え?何が?」
「なんかエレナってユキナとアキナとずっといるだろ?そのせいかエレナ自体友達居ないと思ってたからさ」
「それ聞いたらエレナ泣くよ?」
「言わなきゃ問題ないだろ。それで?エレナはどうしたいって?」
「えっとね……ヒロムくんさえ都合が合えば面会してほしいんだって」
「聞くまでもなく会うのは確定……てことか」
「うん、そういうことになると思う」
「なるほど……ミユキからの連絡の件と重なってるってなるとどっかで落ち合うしかないか。いつもみたいにオレの屋敷に……
「ミユキさんやエレナたちをここに招き入れるのはどうかしら?」
エレナからの連絡の内容をユリナから聞かされたヒロムがスミレが連絡を受けたミユキの件もあるとして双方の対応を取るべく自身の所有する屋敷に集まるという案を出そうとするとそれを遮るようにしてサクラは姫城高校へ来てもらうという案を出し、突然のサクラの提案にヒロムが少し意外そうな反応を見せると彼女はヒロムに現在の状況を整理するように話し始めた。
「アナタの屋敷に集まる形ならいつも通りで綺麗に事が進むのかもしれないけど1度屋敷に戻ってしまうと私たちと同じ夢を見たという可能性がある人がアナタや私たちと接触する機会を失う事になるわ。この学校の中にいる可能性もあるわけなのだから安直に進展の可能性がある人物との接触する機会を捨てるのはもったいないわ」
「……なるほど、流石はサクラ。着眼点が違うな」
「能力者としてのアナタの戦闘面では何の役にも立てないかもしれないけど、こういう支えられる部分でなら役に立つ自信があるわ」
「そうと決まればユリナ、スミレ。とりあえず事情説明とここに来るように伝えてくれると助かる。ここに来る道中の安全確保はカルラに頼むか美鶴たち護衛部隊に声を掛けるなりするからそれも一緒に伝えてくれ」
「うん、わかった」
「任せてください」
「さて……ここまで来ると昼休み以降の更なる進展を期待しておく他ないか」
「そうなるでしょうね。というか他の学校からともかく全国メディアにまで取り上げられた在校生としてアナタがいるこの学校内で見つからないっていうのは気になるわよね」
「そうか?やっぱり偶然って事で片付けられてるだけだろ?」
「そういう風に捉えると話が何も進まないわ。もしかしたらきっかけがなくて言い出せない子がいるかもしれないと思うと何か出来る事を探したくならない?」
「オレはサクラ程真面目じゃないからな。そんなきっかけなんて……」
サクラの提案でミユキやエレナからの報告にて判明した彼女やユリナたちと同じ夢を見たという人物と姫城高校で会う事が決まるもヒロムが在学中ということで1番該当者が現れる可能性があるとされる姫城高校で未だに現れていない事を気にかけるサクラの言葉にどこか他人事のように話すヒロム。だがそのヒロムは自分のそばで戯れている白丸たち幼い精霊の方に視線を向けると少し間を置くかのようにした後にサクラの意見に関して意外な言葉を返そうとした。
「……きっかけがあればいいんだよな?」
「え、ええ。何かきっかけがあれば私たちと同じ夢を見たって子が名乗り出るための1歩になるとは思うのだけど……何か思いついたの?」
「そうだな、思いついた。だから試してみようと思う」
きっかけ、それをつくるためのアイデアが閃いたであろうヒロムは立ち上がると戯れている白丸のもとへ歩み寄ると優しく抱き上げ、突然の事で白丸が不思議そうに首を傾げ、ヒロムは何やら自信満々な顔をユリナたちに見せようとした。
「ワフ?」
「大丈夫だよ白丸。オレと白丸……いや、オレたちにしか出来ない方法思いついたからな」
姫城高校内で該当者が見つからないという壁に直面した中で何かいいアイデアを見つけたらしいヒロム。果たしてその方法とは……




