1002話 夢と言うには奇妙
ユリナがヒロムに話した事でヒロムだけでなくガイたちにも認知されたヒロムにそっくりな人間が現れる夢を同じようにエレナやサクラたちも見ていたという奇妙な出来事が判明。
あまりにも奇妙な事にヒロムやガイ、ソラは何かあると怪しむような感じで話を聞いており、一方であまりにも非現実的な事だからかイクトとナギトはユリナたちの話を真剣に聞きながらも夢にそっくりな人間が出てきたと伝えられたヒロムを茶化すような態度を見せてヒロムを多少イラつかせていた。
そんなヒロムたちとは異なり何やら思い当たる節があるかのようにユリナやサクラに質問をして夢について明らかにさせようとするシオンはユリナたちが見ていた夢の核心に迫るべく彼女たちに質問を続けた。
「覚えていたらでいいがそのそっくりな人間の四方の光……ユリナとエレナ、リナ、スミレの意識と思われるその光の色は何だった?」
「い、色?えっと……サクラは覚えてる?」
「覚えているわ。その人の正面は白い光、後ろは赤い光、左側は青い光、右側は緑の光だったわ」
「え?それって……」
「ヒロムの《ワイルドブラッド》は紅い闇、《ミラージュハート》は蒼い光、四条貴虎との戦いで開花した《デスティニー・アライブ》って力は翠のオーラ。そして……」
「ヒロムの《レディアント》から発現する霊装の力は白銀の稲妻……」
「天才の発現させた因子の力と霊装の力と色が同じ……ってたまたまだよね?」
「たまたまって思いたいよね。姫さんたちが大将の持ってる力把握してたからとか因子の力のその色を覚えていて夢で見たものと偶然重なった、とかね」
「偶然……なのか?」
(このシオンの詰め方……これは何かを把握してるからこその詰め方だよな?煉獄島で因子の守護者や因子の力について知識を得た事で思考範囲が増えてオレたちと見えてるものが違うだけなのか、それともシオンは今よりも遥か先にあるものを理解して話してるのか?煉獄島から帰ってきたゼロとシオンで意見が対立しているって状況が何か関係して……)
「どうしたガイ?難しい顔して?」
「あっ、いや……何でもないソラ」
「ふん。で、シオン。オマエは今のを確認して何が言いたい?」
ユリナたちの見ていた夢、その夢に出てきた人物の四方にあった光がヒロムの精霊の王の力、魔人の因子の力、天霊の因子の力、幻霊の因子の力のそれぞれの色と同じである事が判明した中でナギトとイクトは偶然だろうと考え、一方でガイは先日のチノたちの相談の中でシオン共に考える事となった新たな霊装の方針になった際に聞かされたゼロとシオンでの方向性の違いと今のシオンが異様に詳しすぎることを違和感に感じていた。
ガイの中の違和感を雰囲気で察したのかソラが話し掛けるとガイは何でもないと返し、何もないならどうでもいいと言わんばかりにソラはシオンに今この状況、判明している事で何を言いたいのかを単刀直入に答えさせようとした。
ソラに何が言いたいのかを単刀直入に問われたシオンはヒロムに視線を向け、シオンの視線に気づいたヒロムが何があると思ったらしく身構えようとするがシオンはヒロムに視線を向けるだけで何もせずにソラが尋ねてきた『何を言いたいのか』について話し始めた。
「オレたち《天獄》の能力者はヒロムが見つけた『想いの力』を伝えられ能力者としての進化を果たしている。この進化はヒロムの意志……大きく言うならばヒロムの中の精霊の因子による『先導』から成る進化への誘導とも取れる」
「言い方が気になるが……まぁ、続けろ」
「この進化への誘導が能力者に対しての進化として作用していたのなら能力者の進化としてそれぞれが精霊を宿し新たな可能性と邂逅してその力を得ている事になる。が、今の夢の話から考えるならばその『先導』の力が非能力者にも作用し始めているということだ」
「それは悪い事なのか?」
「良くも悪くも捉えられる。だが……問題は『先導』が非能力者に作用している事にある。今把握出来ているのはヒロムと面識のある人間が同じ夢を見たという要素だけだがその夢に出ていた光の中にヒロムと面識のない人間が含まれている可能性は大いにある」
「そういうやつらは単なる夢で受け流すだろ?」
「そういうことじゃないソラ。問題はこの『先導』によりユリナたちと同じ夢を共有した人間にどんな影響が及んでいるか、だ。ヒロムと似ているという点をどう捉えるかにもよるがこれが本当に『先導』の影響によるものならその人間とヒロムとの間には何かしらの因果が生じている事は間違いない」
「つまり……オレの中の精霊の因子による影響を受けた人間を敵が狙う可能性があるって事か?」
「可能性、としてだがな。タイミング的に考えるならヒロムの中の4種族の因子の開花の完了とユリナたちが同じ夢を見る現象に加えて敵の方にはアッシュなんて偽物が現れている」
「敵がその辺も考えて動いてヒロムの贋作生み出してるってんなら相当厄介だな」
「そうなってくると単なる夢で済まされるのは不都合になるな」
「でもどうやって確かめるのさ?全員に『姫神ヒロムに似た人間が出てくる夢見ましたか?』て聞き回るの?」
「そんなんしたらオレら変質者じゃん」
「ナギトの言う通りだイクト。だから問題の解決方法を先に考えるべきだな」
「え?いや、それを……
「問題の『ユリナたちと同じ夢を見た』という部分を認識しているかどうかは今日のこの登校後にハッキリするはずだ。ユリナがエレナたちと認識を共有したように今回のこの夢を見た人間同士が巡り合わさり認識を共有すればヒロム本人かヒロムと面識のある人間にコンタクトを取ろうとするはずだ」
「そんな風に都合よくいくか?」
「そこは信じるしかない。問題はユリナたちと同じ夢を見ていながらそれについての認識の共有が出来ない人間をどうやって探し出すか、だ」
「つうか、何をどうやっても都合よく事が進むことを信じて待つしかないんなら認識の共有が出来ない人間と運良く巡り合うのを待つしかないな」
「まぁ、強引な解決策としてヒロムが『先導』を意図的に引き起こして自分のもとへ導き寄せる方法があるが……そこはヒロムが本気になるしかないから『頑張れ』としか言えないな」
「最後オレに丸投げかよ!?」
「とにかく今回のユリナたちの見た夢に関しての対応はヒロムとユリナたちに任せる。オレはガイと今後に備えての段取り、ソラは幻霊の王に成り立てのイクトの特訓の支援と忙しい。この際だからユリナたちと円滑なコミユニケーションが取れるように取れるよう頑張れ」
「って、おい!!最後の何だよ!?」
頑張れよ、とシオンは足早にヒロムたちから離れるように先に進んでいき、シオンの言葉が気になったのかガイは彼が足早に行く中でチノに飛天たちの面倒を見てもらえるよう話をつけると彼を追いかけ、ソラとイクトは気づけばこの場からいなくなっていた。
残ったのはヒロムとユリナたち女子陣、そして散歩中の白丸たちの保護者のように付き添うナギトだけだった。
「一応聞くが……ナギト、手を借りていいか?」
「手は貸さないけど知恵くらい貸すよ?」
「恩に着る」
先程まで茶化していたナギトに頼る他ないと思ったヒロムは恐る恐る彼に助力を依頼し、ヒロムに助力してほしいと頼まれたナギトは白丸たちを撫でながら手は貸さないと伝えた上で知恵は貸すと伝え、ナギトの遠回しの助力承諾にヒロムは感謝を述べるしか無かった。
ヒロムの知らぬ所で起きていた不思議な出来事、果たしてユリナたちの見たその夢は何を暗示しているのか……
そしてシオンは彼女たちの話から何を見出したのか……




