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レディアント・ロード 2nd season  作者: hygirl
魔獣怪異編
10/1085

10話 不穏のスタート


 姫神ヒロムは《姫神》という名家の息子だった。彼はある一件から《姫神》の家と離別、今では限られた資産を運用して生計を立てている。そんな彼は絵に書いたような高級な洋風の屋敷に暮らしている。噴水のある庭園、アニメや漫画、小説なら執事やらメイドがいてもおかしくなさそうな大きな屋敷の家主のヒロムは高校生として、《センチネル・ガーディアン》の能力者として、《天獄》のリーダーとして活動している。

 

 この屋敷にはメイドも執事も彼の肉親や身内は暮らしていない。そのため彼が好き放題使える屋敷であるため、ガイたちは何かあればここに集まり、気がつけばここに泊まっていることもある。

 

 風乃ナギトとの一悶着の後、ヒロムはガイとともに屋敷に戻り、当たり前のようにイクトとシオンも屋敷に来ており、彼らは広いリビングに集まっていた。

 

 屋敷に集まるとガイはイクトとシオンに風乃ナギトとの戦いで感じたことを彼らに話していた。

 

「風乃ナギトはかなりの手練だ。オレの動きを初見で見抜いて対応しやがった」

 

「ガイの剣術を初見で?珍しいこともあるもんだね」

 

「そんなに速いのか?その風乃ナギトってのは」

 

「……速いだけならシオンが勝ってる。オマエの場合《雷》の能力で落雷に近い速度が出せるからな」

 

「けどそのスピードも大将の前じゃ……」

「黙れよイクト」

 

 何か言おうとしたイクトにシオンは殺気を放ちながら冷たく言うと黙らせ、ガイに続きを話させようとした。

 

「……続きを話せ」

 

「あぁ、風乃ナギトの速さは能力を使ってしまえばシオンが負けることは無い。けど問題は反応と適応力だ」

 

「適応力?」

 

「咄嗟の判断つうのかな、とにかくアイツは素早い上に咄嗟の動きに切り替える反応と状況に適応する力に優れてる」

 

「……まるでどこかのハイスペック能力者だな」

 

「その点だけを言うなら風乃ナギトの実力はオレの見立てなら1年前のヒロムと同格くらいの強さを持っている」

 

「1年前の大将と……ってそれって強すぎないか!?

《センチネル・ガーディアン》の地位狙って来た自惚れ連中なんて加減して倒せるレベルなのに……そんな能力者がまだいたのかよ」

 

「……おもしれぇ、次はオレがそいつの相手をする」

 

「……出たよ、戦闘バカの謎スイッチ。

1年前の大将と同格って言っても今のシオンが負けるはずないじゃん」

 

「だが強いヤツと戦えるなら関係ない。

ここのところ悪党の質も低いし手応えに欠ける。1年前のヒロムと同格ってんならこの間の大男よりは楽しめそうだからな」

 

 風乃ナギトの話を聞いて俄然やる気に満ちるシオンにイクトが若干引いているとヒロムはイクトにある相談をした。

 

「イクト、頼まれてくれるか?」

 

「ん?」

 

「風乃ナギトの素性を調べてほしい。《天獄》一の情報網のオマエにしか頼めないことだ」

 

「……だろうね。

正直今の話だけなら怪しさしかないからね。過去の経歴とか何やら調べてみるよ。2日か3日もらえる?」

 

「十分だ。例の化け物に関しては警察に任せるとしてオレたちは風乃ナギトについてハッキリさせ……」

 

「ご主人〜!!」

 

 ヒロムが話をまとめようとすると突然可愛らしい声の幼い子が走ってくる。

 

 ブカブカの青いコートに身を包み、ブカブカなせいで袖で手が隠れ、頭は黄色の三角帽子を被った男の子は走ってくるなりガイに駆け寄り嬉しそうに話しかける。

 

「ご主人!!お外に綺麗なお花があったよ!!」

 

「そっか、飛天。

採ってきたのか?」

 

「ううん、見つけただけ!!」

 

「そうか」

 

「にーに」

 

 押さない男の子・飛天が嬉しそうに報告していると遅れる形でまた1人幼い子が走ってくる。

 

 飛天と同じようにブカブカの白いコートに身を包み、白い長い髪に額に小さな角が2本生えた可愛らしい幼い女の子は飛天に追いつくと彼に声をかける。

 

「にーに、きー置いてかないで」

 

「あっ、ごめんねきーちゃん」

 

 飛天は幼い女の子・希天に謝ると彼女の手を取り、飛天に手を取ってもらった希天は嬉しそうに微笑む。どこか微笑ましい光景、話を遮られたヒロムはそんなことを気にすることも無く見守るような視線を向けていたが、ふと何かの気配を感じると足元に視線を向ける。

 

 視線を向けた先には……ヒロムのそばにシベリアンハスキーの仔犬が尻尾を振りながら座っていた。

 

「なんだ鬼丸、オマエはご主人のとこじゃなくてオレのところに来たのか」

 

「ワン!!」

 

「あ?抱っこか?

仕方ねぇな……」

 

 ヒロムはシベリアンハスキーの仔犬・鬼丸を抱き上げると膝の上に乗せ、膝の上に乗せられた鬼丸は嬉しそうな顔を見せる。

 

 ご主人、飛天がガイに向けて言いヒロムが鬼丸に向けて言ったこの言葉。飛天、希天、鬼丸……彼らはガイに宿っている精霊なのだ。精霊、と言ってもヒロムが宿すフレイやラミアのような戦いも行える精霊ではなくソラが宿す子猫の精霊・キャロやシャロのような存在だ。

 

 精霊という異質である存在ではあるが、ガイは飛天たちを家族のように接し、ヒロムたちも仲間のように接している。

 

 ……という微笑ましい光景の中シオンは何やら不満があるような顔でヒロムを睨んでいた。

 

「……シオン、言いたいことがあるなら言え」

 

「話が脱線してんだよ。

風乃ナギトをどうするか、答えを出せよ」

 

「答えを出すも何もない。イクトが調べて出た結果で方針は変える。それに……化け物がまた現れるかもしれないからな」

 

「今さっきは警察に任せるとか言ってたじゃねぇか」

 

「それは化け物が何故現れたのかと雑貨屋で聞いた情報から関係する事を調べるってことだ。戦闘に関しては警察よりも《天獄》の方が得意だし、あの化け物が《魔人》ってなったら対処は引き受ける必要がある」

 

「……要するに、風乃ナギトは情報待ちで化け物が出たら好き放題していいってことだな?」

 

 そういうことだ、とヒロムは答えてシオンに納得してもらおうとし、ヒロムの言葉を聞いたシオンは彼の望んだ通りに納得すると不満がなくなってのか彼を睨むのをやめた。

 

 ガイが飛天と希天と戯れ、イクトは風乃ナギトについて調べるために何かを手配しようと携帯端末を操作し、シオンは1人勝手にやる気に燃えながら首を鳴らす。もはやバラバラで集団としてのまとまりが皆無なこの状況にヒロムは慣れてるのか何か言うわけでもなく一息つくとくつろごうとした。

 

 

 

 

******

 

 

 同じ頃……

 

 

 どこかの高層ビルの屋上

 

 ヘリポートの併設されたその屋上にはヘリコプターが着陸時していたが、そこは無惨な光景となっていた。

 

 ヘリコプターは何かに破壊されたのか煙を上げており、ヘリコプターの近くには血塗れで倒れる数人の死体があった。

 

「……狩りの楽しみもない」

 

 この惨劇を起こしたであろう人物像……黒いフードを深く被った男は鋭い爪を有したガントレットについた血を払うように腕を振ると地面に血を飛ばし、血を飛ばすと屋上から見える景色に目を向ける。

 

「ちっぽけな人間どもが……これから起こることには気がつかずに生活してやがる。まぁ、知ったところで無力な人間に出来るのは悲鳴を上げて恐怖を伝染させることくらいだがな」

 

 その通りだ、とどこからともなく1人の男が現れてフードの男の話に賛同すると彼に伝えた。

 

「この世界はまもなく変革の渦に巻き込まれる。

長き時をかけて用意してきた我々の理想への火種はついに開花される」

 

「……ようやく、世界を抹殺できるってことか」

 

「長きに渡り裏で暗躍してくれてご苦労だったねノーザン・ジャック。我々はついに光の世界に姿を晒して闇を広げる。我々の力に全人類がひれ伏すのを見届けてくれ」

 

 男は淡々とフードの男に話していくが、その男からは得体の知れない何かが感じ取れる。オールバックに整えられた黒髪と狂気のようなものを秘めた赤い瞳を持つ男。その男はフードの男に宣言した。

 

「我々《世界王府》は明日の夜明けとともに世界に宣戦布告する!!このヴィラン率いる闇の勢力を前にして人類は屈するしかないことを理解させる!!そのために……ビーストが手を打ってくれている」

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