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広い大きな河が蛇のようにくねりながらジャングルを南北に貫いている。
その河沿いにはいくつかの部落が散在していた。
河沿いの部落は河の魚を食料としていた。
豊富な魚は無尽蔵にある。
そこに住む者の性格は穏やかで、争いごとは皆無だ。部落ごとに長がいて、問題があればその長同士、話し合いで決めていく。
決して、話し合いがこじれて血を流すような争いは起こらなかった。
河沿いの部落から少し離れた場所、ジャングルの奥まったところにも部落が散在していた。
彼らは木の実や、果物を採取して生活をしていた。
この場所にもそのような食物が無尽蔵にあり食べ物に困るような事はなかった。
河沿いの部落とジャングルの部落は生活様式に多少違いがあるものの、温和で争いごとを好まぬ者同士だった。河沿いの部落、ジャングル奥の部落共に平和を愛する者達なのだ。
俺はジャングルの奥まった部落の出身だ。今、俺はジャングルの中を歩き続けている。
空を飛ぶ鳥、獣の鳴き声が鳴り叫んでいる。
俺の部族ではある年齢になった者は、ジャングルの中を一定期間一人で生活しなければならないという慣習がある。その期間を経て初めて大人とみなされる。
俺はその慣習に従い一人ジャングルの中で過ごしている。
ジャングルには危険がいっぱいだ。俺たちを襲う獣が多くいる。
その中で一番恐ろしい獣がいる。
噂では、恐ろしい長い腕を持ちその腕は目にもとまらぬ速さで自分たちより大きな獲物を一撃で倒してしまうらしい。
それは俺たちの部落、部族の間で「毛のない悪魔」と呼ばれていた。