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夢読姫綺譚(本編・外伝・関連)

追憶の闇楽園 〜夢魔LMの書より〜

作者: 愛野ニナ

 



 それは悪夢の残像。

 覚醒と眠りの狭間で、

 確かなはずの現実が揺らいでいく。




 頭上を目の前をそして私の指先をかすめ、

 幾千もの光の粒が流れている。

 青い流星のように、

 幻の蝶のように。

 ゆっくりと泳ぐように、

 舞うように。

 されど光には、けして触れることはできない。

 それは異なるセカイのものだから。

 時空を隔てたセカイの何かが、

 このセカイにただ屈折した像を結んでいるにすぎない。

 その淡い光が暗闇の空間を薄明に染めあげるとき、

 暴かれていく景色。

 それはこのセカイのどこからでも見ることができた。

 天を犯すがごとく屹立した尖塔。

 おぞましくも美しいその姿、

 まるで、ガラスの摩天楼。

 そこにいるのは…

 氷づけの囚人。

 …我々ガ閉ジ込メタ……

 その名は封じられ、

 存在は忘れ去られた。


 


 あれから私は、幾星霜の年月を、

 いくつのセカイを流れたのか、わからない。

 記憶の底には今もまだ、

 狂おしいほどの切ない想いが、

 あの罪といっしょに眠っている。


 


 たぶん、最初のセカイの記憶。

 私は、私達は、異能の女王の眠りからうまれた。

 私達には初め実体は無く、

 闇の中を漂うだけの、とても儚い存在だった。

 私達は、女王の夢クグツ。

 女王が目覚めれば、皆消えてしまうだけ。

 だから、私達は、

 女王が覚醒する前に、

 その眠れる魂を、

 塔の中に閉じ込めた。

 永遠に、

 女王が眠り続けてくれますように…

 それが、私達の願い。

 そして罪。

 女王が封じられたセカイで、

 時は緩やかに流れ過ぎてゆき、

 私達の透き通った体も次第に実体が整い、

 やがてひとりひとりが意思を持ち、

 この優しく静かな闇の楽園を、去っていった。

 たぶん、別のセカイに、

 生まれ変わるために。

 誰もいなくなったセカイは、

 どんな夢を見ていたのだろう。

 眠り続ける女王は、

 私達の女神は、

 私達の母は。


 


 二度と戻れない記憶の中の楽園。

 それでもまだ探しているのは何故だろう。

 眠れない夜を彷徨い、永い時を超え、

 擦り切れた魂を引き摺りながら。

 


 

 降り注ぐ紅い雨は、

 まるで女神の歓喜のよう。

 私は最後の願いをかける。

 女王の覚醒すなわちワタシの消滅なれと。

 この永遠はつらすぎる。




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