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夢読姫綺譚(本編・外伝・関連)

追憶の闇楽園 〜夢魔LMの書より〜

作者: 愛野ニナ
掲載日:2020/01/02

 



 それは悪夢の残像。

 覚醒と眠りの狭間で、

 確かなはずの現実が揺らいでいく。




 頭上を目の前をそして私の指先をかすめ、

 幾千もの光の粒が流れている。

 青い流星のように、

 幻の蝶のように。

 ゆっくりと泳ぐように、

 舞うように。

 されど光には、けして触れることはできない。

 それは異なるセカイのものだから。

 時空を隔てたセカイの何かが、

 このセカイにただ屈折した像を結んでいるにすぎない。

 その淡い光が暗闇の空間を薄明に染めあげるとき、

 暴かれていく景色。

 それはこのセカイのどこからでも見ることができた。

 天を犯すがごとく屹立した尖塔。

 おぞましくも美しいその姿、

 まるで、ガラスの摩天楼。

 そこにいるのは…

 氷づけの囚人。

 …我々ガ閉ジ込メタ……

 その名は封じられ、

 存在は忘れ去られた。


 


 あれから私は、幾星霜の年月を、

 いくつのセカイを流れたのか、わからない。

 記憶の底には今もまだ、

 狂おしいほどの切ない想いが、

 あの罪といっしょに眠っている。


 


 たぶん、最初のセカイの記憶。

 私は、私達は、異能の女王の眠りからうまれた。

 私達には初め実体は無く、

 闇の中を漂うだけの、とても儚い存在だった。

 私達は、女王の夢クグツ。

 女王が目覚めれば、皆消えてしまうだけ。

 だから、私達は、

 女王が覚醒する前に、

 その眠れる魂を、

 塔の中に閉じ込めた。

 永遠に、

 女王が眠り続けてくれますように…

 それが、私達の願い。

 そして罪。

 女王が封じられたセカイで、

 時は緩やかに流れ過ぎてゆき、

 私達の透き通った体も次第に実体が整い、

 やがてひとりひとりが意思を持ち、

 この優しく静かな闇の楽園を、去っていった。

 たぶん、別のセカイに、

 生まれ変わるために。

 誰もいなくなったセカイは、

 どんな夢を見ていたのだろう。

 眠り続ける女王は、

 私達の女神は、

 私達の母は。


 


 二度と戻れない記憶の中の楽園。

 それでもまだ探しているのは何故だろう。

 眠れない夜を彷徨い、永い時を超え、

 擦り切れた魂を引き摺りながら。

 


 

 降り注ぐ紅い雨は、

 まるで女神の歓喜のよう。

 私は最後の願いをかける。

 女王の覚醒すなわちワタシの消滅なれと。

 この永遠はつらすぎる。




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