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アカシック・ディスレコード  作者: 秋歳さざれ
prologue
7/12

お仕事日報 ―湧き出でる敵意―

引き続き講習の最中にある。

貴方が黙々としていたのは文書校正の復習である。

加減が掴めずに強めに攻撃してるのは仕方がない。

ジリジリ削れはするのが、その仕方だと時間が掛かりすぎる。

不器用に見えるかも知れないが、程よく手を抜く加減が難しいのである。


場数を踏めば、効率化が捗るとは思うのだが。



『カードの耐久性はどの程度残りましたか?』



受付嬢は、事も無げに貴方に数値を聞いてきた。


貴方は、カードの耐久性は120あると伝えた。

講習は終わったのではないのか?


数値を聞いてくるということは、まだチュートリアル中なのだろうか。



『浪費してますが、次の段階に行きましょう♪』



続投させるのか……。

貴方はイヤな流れに感じて汗が一筋垂れた。



『攻撃されなかったのは、今後の問題になるかなと想いまして。

前倒しで、講習を進めましょう』



時間があるからと捲し立て、次の講習を受けさせようとする「自動車学校の講師」のようなノリは止めて欲しいものである。



受付嬢は、何も無い空間を所々カンカン…っと叩いている。

ポトッポトッっと、何も無い空間から珠が落ちてくる。

小さな珠で、500円硬貨くらいの大きさである。

地面には珠が幾つも転がり、ユラユラ揺れていた。


珠は複数集まると動くらしい。

無機物?な癖に、気味が悪いのは何故だろう。

珠が小刻みに震えると何かが珠から出てる気がした。


共鳴しているのだろうか。


その行動は異様に映える。

やがて黒い霧のようなモノが明確に出現した。



『この現象が淀みを多数放置して産まれる元凶の予兆です。

黒い霧が複数集まると、大きな淀みになります。

更に放置されると渦が巻き起こり、穴が出現します』


『この状態が、第六段階の駆除と相成ります。

難易度が低くくても、油断しないようにしてください。

新人がするお仕事ではありませんが、脅威を体感することが経験となるので!』



その穴は、黒々と闇夜の昏さを感じる。

その穴は、禍禍しさを強くする。

その穴は、深淵を産み出していた。


見るからにヤバい。

威圧感が特にヤバい────。


得体の知れない何かが這い寄る。

名状しがたき形容のモノが────。



ふふふふふふ。

貴方は、寡黙にして目線で語るのを信条としていたが、この展開には着いていけてない。

乾いた笑いが出てしまうのは仕方がなかった。


人間は、局面に対して冷静では居られないのだ。

新人対応以前の問題ではなかろうか。

こういう展開は、後日に用意する流れである。



『穴から敵意が来ます!

防御の構えをしてくださいね!』



防御!?

貴方は受付嬢にそう指示されたが、防御とは何のことなのか。

貴方には装備が何も支給されて無いのだが!??


それ以前に、対象の事前講習という前置きイベントが抜けている気がするのだが────。



『敵意を遮るイメージするんです。

イメージするのは得意でしょう?』



脳裏に咄嗟に思い浮かべたのは、壁である。

盾とか薄っぺらい概念では心許ない。

敵意がどんな形なのかわからないので。

分厚い核シェルターのような強固な壁を想像した。


ガインっ…と音が鳴り響き、敵意が届かなかった気がする──。



『凄いモノを展開しましたね…………。

なんて無骨で、対比効果の悪いイメージですね。

才能の無駄遣いでしょうか』



貴方の目前には、分厚い白壁が一枚出現していた。

高さは、3メートルの正方形。

厚さは、50センチ程ある。


受付嬢の呆れた物言いが突き刺さる。

カードの耐久性は70に変化していた。

この壁は50の浪費なのか──!!



貴方は、おそるおそる敵意の大元を見に行った。

壁の横からヒョイ…っと、覗く。

敵意を放った対象は目線の先に居た。



目はない──。

鼻はなく。

耳がなく。

口もない。


手もない。

脚もない。


胴体はある。

背丈は程高い。


平面でのっぺりとした黒光り。

平板のようなモノがいた────。



あれは何だ──?



『モノリス系のエネミーです。

体当たりするのが、攻撃手段ですね。

角に当たると、涙が出て悶えるくらいには痛いです。

痛恨の一撃になります』



原始的な無機物が最初の強敵になるのか。


見た目は黒いポリゴンの実体化に見える。

スライムのイレギュラーに見えなくも無い。

凄く堅くて黒光りという、危険なワードが出てくるのだが。

その敵は平板。


色合いが樹木なら、木材と見ていたかも知れない。

エネミーというのは、モンスターのような感じではないのか。


異世界転移系統のモンスターというよりも。

SF映画に出てきたラスボスにして──。

キワモノ感が強いと言うのが、貴方の感想である。



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