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アカシック・ディスレコード  作者: 秋歳さざれ
prologue
6/12

お仕事日報 ―あるあるカード機能―

『手順を覚えたなら実践に進みましょう。

読み込みした文書に、何処かに出ている異質な淀みを探してください』


貴方は、異質というべきか。

これ見よがしにされているのが解る部分を見つめていた。

あからさまに黒く塗り潰している部分のことをしているのだろうか。



『読取りしたのは、解りやすい検閲文書のようですね。

黒っぽい部分に意識を集中して、撃ち込みます』



文体を攻撃する──?

文書を攻撃対象にしてるとか、受付嬢は頭がおかしいと見える。



『失礼なことを考えていませんか──?

文書が汚れているので綺麗にすることでお掃除するんです。

清書活動とは汚れを攻撃して落とす行為であり、文字通りに清めます。

汚れを払って清めて、文体を救済します』



この世界の汚れも「バイ菌」の様なものなのか。

病原菌を倒すから、攻撃するという言葉尻になるらしい。



『淀みを払うイメージがあるなら、お祓いする構えでも問題ありません』


『厳密には、想いによる願望を力にして発現させる概念実証を文書に織り込むことで、改編した認識を内払います』



貴方は、受付嬢に攻撃すればいいと急かされた。


貴方は、パコン…と、ゴキを叩く感じで内払う。

すると、パキン…と音がして黒い部分が消えて文体が出てきた。

なるほど、これが校正するということなのだろうか。



『カードの耐久性数値を見て確認してください。

幾らか数値が減っていると想います』



カードの耐久性200あった数値が、20減って180に変化している。



『20も浪費したのですか。力みすぎましたね。

加減を覚えて最適化しないと、非効率過ぎます。

清書する箇所は複数あるので、最適化した威力で施行が出来ないとお仕事になりません』



貴方は困惑している。

加減と言われても……。


修正箇所の耐久力が見えないと、加減しようがない気がする。

威力に関しては、実践慣れしないとどうにもならないのが貴方の実感である。


数値が見える機能は無いのだろうか?



『最初からそのような都合の良い機能に慣れられては困りますので、実績次第の解放になります』



効率を提唱してる癖に、面倒なことだ。

貴方は、鼻で笑う。



『面倒ごとに一通り慣れてからでないと、最適化効率を実感出来ないかと。

口頭説明では伝わらない領域ですからね。

人間は苦労してこそ成長すると聞いてますので』



人間は───、か。

このポンコツ受付嬢は、人間とは違うのだろうか。

人間は、自分を「人間」とは呼ばないし。

人型に見えるから人間だと思い込むのは避けるべきかと、貴方は嘆息した。



残りの黒い部分を消化する──。

淀みが消えて、スッキリ感が出ている。



『清書した文書になったようですね。

その状態に納得したのなら、文書を軽く押し込む感じにして、投影画面を横に払う感じで認識をズラしてください』



貴方が言葉通りに思い描くと、文書が消えた。



『カードにお仕事状況がストックされます。

カードには、お仕事に対する履歴が書き込まれて報酬の証明となります。

ストック数値を長押しすると、その履歴を私達に送信出来ます♪』



メモリーカード?


なんという多機能なカードなのだろうか。

便利は便利だが、監視されてるようで気味が悪く感じた。



『無くすと大変なのをより認識出来たようですね。

送信されたお仕事履歴を精査して、お財布機能を介して報酬が振り込まれる流れですよ』


『業務の最適化をめざした結果、カードに複数の機能を織り込むことで雇用者との絆が高まりました♪』



現実だと、機能が少なく無駄に種類が多いカード類にある。

主婦層では、カードのためだけの財布を別口で用意している程に大量にある。

カードをコレクトしてる感じだろうか。


一枚に機能が濃縮されたのは、このカードは利便性に優れている。

手軽なコンパクトさは良いが、保安面ては危険過ぎる代物になるだろう。

主に無くした時点で、先々が詰みそうだと思われる。



異世界転移の定番である神様からもらえるチート技能。

貴方は死んではいないので神様に面会していない。

故に、所持技能が現地での免許資格しかないのてある。


口頭言語が同一なのは救済と言える。

所在地が日本なので、日本語のままで苦労しないのは正直なところ安堵している次第である。




チートっぽい技術なのは、このカードの機能くらいしか思い当たらない。

この薄いカードに、貴方が元居た世界でのスマートフォンのような機能が秘められている。


軽く曲げようとしても曲がらない程度には硬質である。

本気で曲げて壊れては大人げないというか、ペナルティ事案になるのは避けたい一念なので、本気にもなれないが。

とにかく硬いカードである。



現時点で解る機能は────

0.拠点帰還機能 (強制リターン)

1.身代わり機能 (登録本人のセーフティ)

2.最終座標履歴 (アクセスポイント)

3.カードの耐久性 (活動限界数値)

4.資格のLV (貴方の実績証明)

5.保有功績数値 (功績数値の度合い)

6.お財布機能 (銀行&報酬受取)

7.メール受信機能 (情報伝達)

8.キーアイテム化機能 (カードキー?)



かなりのチートアイテムと見える。

元居た世界でも使えそうなのが、凄くて怖い。

多機能な反面、このくらいの機能が無いとお仕事の支障になるとも取れるのが懸念事項になっている。


貴方の元居た座標空間軸の科学基準でも、頑張れば造れそうなのが現実味を増させている一因であった。



座標空間軸の移送とかはチートだが。

魔法陣や超科学技術での転移装置を文書やゲームの中で見ているので、貴方の中では認識が出来ている。

貴方の元居た世界のSF映画では、これに似たモノを何度も見ているので、世界各国な超技術を結集すれば実現可能にも見える。



ただ、身代わり機能は完全にチートと言える代物である。

セーフティ機能のようなものだと思うのだが。

それを実際に発動させて証明する気にはなれない。


リアクティブ・アーマーという反発式の鎧。


リアクティブ・ダミーという身代わり防衛システム。


程度の差異はあれど、元居た世界にも前例があるので。

この世界の技術であればチートでは無いのだろうが。


どんなに死にそうになっても、一度は助かる機能というのはとてもありがたく感じる。

感謝感激雨霰三昧だが、この機能が保険にせざるを得ない状況が隠されているとも取れてしまうのが不穏の種にある。



善意で付ける機能にしては、性能が高過ぎるからだ。

露骨に反応して態度に出すのは非常に不味い。

小さなことで悪態付くのは許容範囲だとしても、核心に触れそうな事案は疎くなくてはならない。




概念実証の具現化もチートではあるが──。


仕組みが把握出来ないうちは、極力使わない方が良さげだ。

初回の軽い連想で、オーバーキルである。

何が強く反応するか解らないので、手探りで実証するのは危険極まりなかった。


概念実証のシミュレート体験装置とか在りそうなのだが、生憎とその施設紹介が未だない。

この手のイベントを通して実戦させるのが手順だと思うのだが、中抜きされて実施された。


「実戦に勝る修行はない」という格言があるが、日本国の一般人に行うのは無謀である。


初心者対応の太鼓判とか絶対に嘘だろう。


貴方は、受付嬢の手解きは戦い慣れはしているが、教え慣れていないような不自然さを感じたのだ。





貴方は、考えては思い悩む行為に耽る。

顎に手を掛けて受付嬢を鑑識していた。


見た目こそは年下に見えるが、若さと年月が噛み合わないのが古今東西の女性の魔力である。

笑顔満面の受付嬢を見やると、自然と溜息を吐いていた。








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