表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アカシック・ディスレコード  作者: 秋歳さざれ
prologue
4/12

お仕事日報 ―器なき世界への慟哭―

『見掛け倒しなのは残念要素ですね。

でも肉体的強化は後付け出来ますから、現時点で軟弱でも問題ありませんよ。

必要なのは精神的な支えですし』


この受付嬢、所々に不穏要素を交ぜてくる。

肉体的強化を後付けとか、修羅の世界に叩き込ませるつもりなのだろうか?



『貴方に英雄資質は皆無ですから、安心してください。

探検欲にまみれてるのはプラス評価と見れます。

無謀なところはマイナス評価ですが、実地研修で修正して差し上げますので』



受付嬢は、どうにも一言余計な不穏要素を追加するのが口癖なのだろうか。

貴方には「研修」という名のしごきが用意されているらしい。


言葉尻は懇切丁寧だが、黒さをフルオープンというのは、お家芸なのだろうか。


「アットホームな職場」というのは常套句であり、ブラック企業がよく使う耳障りのよいキャッチフレーズであるのが定説となっている。

心なし口頭詐欺に思えてくるのが一笑に期すところだろう。



『酷い言い種ですね。

軟弱者も成長できる初心者研修システムとして太鼓判を押されています!』



受付嬢は、証拠としてピシャリ…と、優良認定証みたいな賞状を提示してきた。

本当に、本物なのだろうか───。

本物だとしても、其が何も安心出来ないのはどういうことか。

アウェイだから何を保証されても、無意味と感じている邪推からだろうか。

言葉は通じても、言ってる意味が解らないというアレかも知れない。



『初心者対応していますので、序盤は私が付き添います。

早々と慣れて一人立ちしてくださいね』



受付嬢は、不親切設計なイカしたチュートリアル機能のようだ。

ゲームだと完全スキップでスルーしているのだが。

敢えて必要なことを伏せてるのは、この状況すら試練というの様相なのかも知れない。


深読み先読みが正しければが前者になる。

単なる言葉不足なら、相当のポンコツという後者。

どちらにしても大差無いのが、救いのない覚束無い現状と言えよう。



ともあれ、貴方は保護者同伴で現地研修に移行することにした。



『先ずは、こちらで依頼を受けます。

私はお仕事を斡旋していますが、依頼は他からも寄せられています。

万年氷漬けのような依頼も埋もれていますから、実力に見合うお仕事を選択するのが狙い目ですよ♪』


『お仕事は、文書投稿の貢献という最低限報酬の末端貢献が常時用意されています。

報酬も一口単価で激安なので、初心者専用と言えますね』


『上位業務は、仕分けと選別です。

文書投稿の末端管理業務の一翼を担ってもらいます。

毎日投稿されてくる文書は、膨大な数で攻めて来ます。

書き手が律儀に指定している属性とは違うのが困りモノでして、属性詐欺の分別が課題になります』



それは編集者として、文書を仕分けするお仕事ということなのだろうか。



『それは、中間管理業務の領分ですね。

末端管理業務は、仕分けされた文書が正しいのかを精査してくるお仕事です。

内容を添削して、模倣を潰すことを目的としている警邏隊に該当します』



文面上での模倣はありふれていて、対処出来ない事例なのではないだろうか。



『どういう対処方法なのかは、現地研修してから体感してください。

この業務は口頭で伝えても、意味を為さない特例事項です』



警邏隊という物騒な言葉が出てきた。

管理業務というよりも、巡回行動による保安業務に値するのではないかと思われる。


貴方は、紙屑職人をしてた時から模倣されて七難八苦してた案件なので。

コピペ職人が謳歌する現状がとても疎ましくあった。

効果が出てない案件に、これから従事することになろうとは、やれやれである。


立場が変われば見方が変わる。

この裏方作業は、ある意味を貴方の趣向を活かす天性の職務であるのは疑いようがない。

特定運営の詐欺案件の解析とかしていたのをマークされたのだろうか。



『説明する前から察する試みは流石ですね。

模倣は世の常ですが、悪質な模倣は易々と赦してしまうとテンプレートな温床になります。

病原体のようなモノでして、定期的に駆除しないと感染源が拡散して大変なことになるんですよ』



貴方は怒りを感じている。

現時点で、十分に悪質なコピペ職人は量産されているのだが?



『人材不足で対応仕切れてないんですよ。

恥ずかしながら、有望株な人材は職人枠でメディア化されてる方が多いので、此方に来る方は少ないのが切実な問題でして……』



貴方は至極当然な答を出してみた。

待遇をよくしたらいいのでは、と。



『作家希望の書き手が好んで、此方に来ると想いますか?』



作家崩れから人材選抜する基準というのが、そもそもおかしい。

それだと、流れてくる人材は雀の涙ほどしか居ないのではないだろうか。



『シリーズ作家に進化した紙屑職人が、日陰な生業を由とするなら人材が増えそうなモノですが。

想定以上に世知辛いのが現状なのです』



貴方は、質を量で覆う人海戦術を提唱した。

人数を増やして、場当たり的に特攻隊を突入させるのだ。

蠱毒の手法を用いれば、強い人材は獲得できるのだから。



『そのようなことは認められませんよ。

手続き忙殺されて、私達がとても苦労する未来図しか見えないのは遠慮いたします。

砂の楼閣で防衛できると本当に想われているのてすか?』



受付嬢は、疑惑の眼差しで貴方を責めてきている。

貴方は、確率は元から低いので「もののためしに行う戯れ」だと説明を加えた。



貴方は、受付嬢に無言で殴られた……。


解せぬ────。




貴方は、受付嬢に代替案を具申したというのに。

この処遇には業腹である。

対処出来ていない枯山水な現状よりはマシだと思っていたのだが。


貴方は、貴方一人追加してどうとなるモノでも無いと呟いた。




『検閲と校正が初めての講習任務になります。

カードにあった耐久性がお仕事をする上での貴方の精神力数値=活動数値になります。

貴方の知識から検索すると、APという概念に酷似しますね』


『活動数値は限界行動力の数値であり、この対処案件の領域で貴方が精査する活動時間に値するとも言えます』


『私が付き添いか──。

他に誰かが側に居れば、活動限界数値を超えても意識喪失で此処に送還されますが。

単独で送還された場合、貴方の身代わりになりカードは消失します』



何を言ってるのだろう。

身代わり機能が必要なくらいに危険性が高いとか、初心者対応からの範疇から漏れている気がする。

警邏というのは、見回りする保安業務ではないのか?


とりあえず、単独行動さえしなければ窮地に陥らない範囲だと思いたい。

貴方は、受付嬢の顔をじっと見る。

初心者対応講習者に不穏要素交えるのは、本当に止めて欲しい。


活動限界数値を超えたら、気絶するだけなのだろうか?



『気絶というのは、肉体があってこその抵抗反応ですよ。

貴方は此処に居る場合は認識がズレてますので、精神のみが弾き出された状態ですね』


『精神体には質量があるので壁抜けは無理です。

貴方が元居た座標空間での肉体の強度は無くなっていますが些細なことです。

昇格と実績を高めれば、肉体を引き寄せることは可能になりますから頑張ってください♪』



肉体が無い──?

精神だけ?


何を言ってるのだ。

何を言ってるのだろうか────。



貴方は、自分の身体を見るが何もおかしい所が見当たらなかった。

何も変化がないのはおかしいことなのだろうか。

認識のズレと言っていた。

心の対応が出来ていないから変化が解らないだけなのだろうか。



『初心者対応なので、講習では危険性が高いことに従事させませんよ。

迂闊な行為を慎むことを覚えていただくのが目的ですので』



貴方は、受付嬢を無言で見返す。



『信用していませんね──。

まあ、口頭で何かを伝えても実感出来ないでしょうから仕方がないことなのですが。

大人しく着いてきてください』



受付嬢はす───っと移動して行く。

足音がしないな。

貴方も追従していくが、足音はしないが地面を踏む感触はある。

ここはそういう領域なのだろうか。

疑問はあれど、従わなければ行けない流れらしい。


着いてきて案内された場所には、背景が見える何もない空間に不自然に幾つかの扉があった。

扉の数は、4つ。



難易度の分別コースだと思うのだが、講習に危険性高いのを選抜させないものと思いたい。


受付嬢は、手をかざして左端の扉を開いた。

同伴行動だからといって、無闇に安心するのは避けておく。

貴方は、受付嬢に対する信用度が0であった。



『貴方に体感させるのは、実地研修ですよ。

訓練では無いので、業務報酬が発生します。

お仕事の仕方を覚えていただきます♪』



貴方は、受付嬢の物言いからして生易しい難易度では無さそうだと悟る。

初心者対応というのは、何を意味しているのだろうか。


不安要素満載。

初心者講習という名の実地研修が始まった──。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ