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アカシック・ディスレコード  作者: 秋歳さざれ
prologue
2/12

お仕事日報 ―選別されし者―

■裏側

───というのが、現在の風潮のようです。


───・・・の模倣が溢れすぎていますね。

説話としてなら帰属させてもよいかと。


説話ですか────。


不要に感じますが、誓約に反しますので。



────では、通常規定に従って移管を行います。






定例会議が終わりました。


世の中は異世界転移ブームらしいです。

不思議です。

この世に、異世界転移はあり得ないのに────。


人間の憧れからくる幻想なのでしょうか。


影響がでない程度に配慮しなくては。






それはそれとして。


今回も収穫は無さそうですね。

私達が望む釣果には未だに至らないようです。


易々と見付からないような案件ですので、気長に待ち望みましょう。







とはいえ、待つだけでは何も変わらないような気がします。


規定通りに行動してきましたが、ままならないことに気を揉んできました。


誓約に反するかもしれませんが、一石投じて見ようと思います。






□表側


人間というのは、概ね五通りに分けられると言われている。

善と、悪と───。

光と、闇と───。


そして、全てに寛容で曖昧な中庸であると───。


「ゲームの世界」ではないのだから、その様に分けれるはずがないと頭ごなしに否定される。


「知ったかぶり」という罪である。


ゲームに反映するくらいに概念化してるとなれば、現実も相応だと推論する。


人間基軸の視点に、世界が想定されていると思うのは傲慢であろう。


現実は、都合が良すぎるくらいに「人間基軸の舞台」だと感じているのだから……。


世界情勢や文明は、人間にもたらされた福音。


貧富の差は、個人に付けられた彩り。


努力すれば報われ、成功すれば舞台に立つ。


世界を構成する駒であり、文明社会の歯車となる。


誰しも一度は考える哲学だろう。


よくよく現実逃避に使われる手口のテンプレ。




成功しなかった人間は夢を騙る───。


人並みなことを一辺通りにしていれば、普通に生活していたことだろうと。


道を外れる人間は、道を外した人間から感染する。


全くもって、ままならない人生論ということだ。


道を外された人間は、元の道に戻れない。


何も囚われずに謳歌したいと願う日常。


都合のいい現実など存在しないのが、世の常。


だからこそ都合の悪い現実に立ち向かい。


それを攻略して行ければ、道が拓けるのではないだろうか。


これは、敗者特有の思考─────。






■裏側


────という感じです。


人間の哲学的思考は、現実逃避の果てに生まれくるロマンなので。

少しの補正で大きな波紋になります。



駒にも、歯車にもならない人間の思考に一念を投じてみました。


彼らは、社会性不適合者の予備軍ですね。


「ニート」と呼ばれてる人間の予備軍です。


ニートのなりそこないで、ひねくれた思考を持つ無能ではない人間です。


ニートよりも自意識高いので、扱いにくいのが特徴でしょうか。


駒や歯車にならない人間の転職先になるように、思考誘導しています。




私達の業務は、人材は多ければ多いほど助かります。


耐久性が高く柔軟性が高い人間には、程よいお仕事を提供しています。


初心者でも懇切丁寧に指導できる研修システムがあります。




アットホームになるかは、あなた方次第になりますけどね。







□表側


────そして貴方は「紙屑職人」になっていた。




■裏側


※「紙屑職人」とは───

いろいろな部署(投稿先サイト)に応じて、文書を投稿していくお仕事です。


発想や閃きが大事です。


文書メモを拡散して、世界情勢を担う高尚な役割(マーケティング操作)が潜在している奉仕業務です。


無責任発言

不確定擁護

アンケート

レビュー

キャッチフレーズ


文書は力です。

語学力よりも勢いが全て。

魑魅魍魎の産物です。


企業からの依頼で、文書投稿による報酬発生の案件もあります。



この業務は、適応力の低い人材をふるい落とす試練も兼ねています。


様々なランキングや文書の精査で、一足飛びしますので、能力開発の側面もあります。


何事にもヘタれない頑強な精神の鍛練。


奇抜に富んだ発想の選択肢を増やすことが目的です。


頭脳明晰さは求めていません。


適応適宜に対処できる柔軟性が大切なのです。







□表側


貴方は、情報を集めるのが好きな人間である。


そこそこの対処で、其なりの人気を集める程度に運営できるサイトを作成してきた。


流行のユーチューバーやアフィリエイト満載のブロガー。


貴方は、彼らのような大層な野望的矜持は一切持ち合わせていない。


あくまでも、個人的な趣旨の慰めに過ぎないのだ。


共通の同志が増え、浸る世界を構築できればいい。

それだけで満足していた小市民である。


その冗長線の先に収入源となるなら、理想的な環境と感じていた。


職を転々としていたので、固有職を得ていない。


若気の至りで夢を謳歌して、現実に埋もれている。



貴方は、ひたすらに夢想し続けて怠惰な日常を過ごしていた。


貴方は、夢を捨てきれずに燻る中年である。



貴方は、作家の夢がこびりついて離れない。


貴方は、文字を打つ業務に従事していた。




この業務は自由時間は高めにある。

時期によっては忙殺されるリスクがある。

遊戯時間が全く取れず。

俗世から隔離されるイベントが定期的に起きるのが難点であった。


自称ライターはニートに非ず。

ひっそりと労働に足掻く、社会的弱者である。


社会性固有職に就いてる者から見れば、圧倒的にニート扱いされる理不尽。


派遣社員の方が遥かに社会貢献していると、非難されてしまう。


生産職を担うモノは、世界に貢献していると認識されているからだろう。


否定はしない───。


幾つか生産職に従事した実績があるので、給与が高い反面に精神的な摩耗が酷かった。


磨り減らした精神は、娯楽で補填するのである。


酒飲みは、酒に──。


金に溺れたものは、ギャンブルに──。


預金は貯まらず、延々とその場に拘留されるのだ。



その経験則から負担の少ない業務に移行。

そして10数年が経過していた。





社会性無職の生産職である「紙屑職人」のお仕事。


数ある投稿サイトから選んだ投稿先での業務は、海千山千の世界である。


無名が人気を博したら、模倣され。

周囲が同一化するような現象が巻き起こる無法地帯。

実力無き者は淘汰され、嘆き狂うような煉獄でもあった。


書き手の実力を認められなければ、その先の展望が拓けない。


苦渋の末に、貴方は物語を書き込んだ────。







■裏側


私達が芽を付けている対象は、面倒ごとを内包できる人間です。

与えられた職務以外の案件を無難に対処できる人材なのです。


私達は、カリスマ性は求めていません。


勇者や英雄の資質は不要なのです。


博士や賢者の博識さは、資質の向上にはなり得ますが。

その博識さが逆に枷となります。


聖者のような清らかさは、無知蒙昧と言えます。


愚者の行動は破滅を呼び込みますが、其ゆえに対処できる術に制限が無くなります。


人間の知識で例えるなら、冒険者や無法者。

傭兵に似ているとも言えますね。






□表側


拝啓 ────さん。


貴方が此方に投稿されてから、10年経過しました。


常にランキングは圏外で、荒波に揉まれ落ちた無名の一人です。


ですが、貴方が趣味で作成されていたサイトには一考の価値があります。


その趣味を活かして満喫できるお仕事に興味がおありなら、此方に返信してください。







─────とても胡散臭い。


貴方の第一印象は、お情けで来たメールという先読みが取れる文面である。


常にランキング圏外という現実は、読者にマメに返信しなかった代償だろうなと察している。


メディア化する先人は、マメに対応して、信者を増やしていた。


面倒ごとを避けていた代償が、圏外指定───。


そして、10年も此処のサイトに何故だか投稿している現状。


愛着は確かにあるのだが、運営に恩義は感じ得ないのが貴方の本音である。


そもそも、このメールが運営からの個人的対応メールかどうかの確認が出来ないのが躊躇する一因となっていた。


仮に悪質なメールだとしても、最悪メアドを変えればいいのではないだろうか。


実害は出ないだろうと、安直に解答を導き出した。


それにサイトの方の閲覧者なら、交流するのも一興かと思っていた。


面倒ごとを極力減らすため、掲示板設置はしていなかったからである。




貴方は、それなりに一考してから返信を出した。


対処できると踏んだ浅はかな行為だったと認める。


いささか不手際ではあるものも、この行動が外れではないことを此処に報告しておこう。


趣味を活かした満喫できるお仕事ということ自体には虚偽は無かった。


無かったのは確かだが────。







これは「契約詐欺」なのではないだろうか───。


────そして貴方は「紙屑傭兵」となっていた。


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