ヒーローその2〜双子の小悪魔担当〜
僕達は生まれた時から、ううん、母のお腹の中に居た時からずっと一緒だった。
僕の名前が「ハルカ」
双子の弟が「カナタ」
一卵性双生児の僕達は。
生まれた時からそっくりだったらしい。
最初は母たちが面白がって。
物心ついた時からは自分たちから。
お互いをより似せることに意識していた。
髪型や服装だけではなく。
仕草や話し方、行動や反応まで。
全てを同じにしていた。
誰にも僕達を見分けられない。
誰にも僕が僕である事がわからない。
それが楽しくて。
2人でひとつ。
それが当たり前のことだと。
そう、思っていた。
それは年々加速する。
そっくりで可愛い双子を求める周囲の期待に応えるかのように。
残念ながら伸びなかった身長。
筋肉のつきにくい体。
それらは逆に僕達の武器になった。
あどけない口調をシンクロさせて。
より双子の可愛らしさを演出する。
それだけで、周囲は僕達をより可愛がってくれた。
だけど。
いつからだろう。
誰にも見分けられないのが。
ちょっとだけ。
本当にちょっとだけ。
悲しく感じるようになったのは。
僕が僕である事が、誰にもわからないなら。
僕でなくても構わないって事だって。
もう1人の僕だけでも、良いんだって。
そう、気付いたから。
─気付いちゃいけなかったのに。
それは多分。
カナタも…。
そんな時だった。
あの娘に会ったのは。
カナタと2人で生徒会室から教室へ戻る途中の廊下で。
初めて見る顔だったから。
ああ、この娘が話題の季節外れの編入してきた娘だって思った。
先生から頼まれたのかな?両手いっぱいにプリントを抱えて歩いていた。
カナタもあの娘に気付いたのか、目で合図を送ってきた。
「「久しぶりにやろうか。」」
どうせ、見分けて貰えないけど。
それでも。
ひょっとしたら。
そんな願いもこめて。
僕達は彼女の前へ躍り出た。
「やあ、はじめまして、だよね。僕がハルカで。」
「僕がカナタ。それでは、問題でーす!」
「「さて、僕はどっちでしょー?」」
挨拶した後、彼女の周りを僕達は目で追えないようにとグルグルと回り、問題をだした。
どうせ当てることなんて出来ない。そんな諦めも含んで。
いきなりの出来事だったからか、彼女は目を丸くして暫くキョトンとしていたけど。
口元に手を置き、クスリと笑った後に。
僕を真っ直ぐな視線で射抜いた。
「こっちが、ハルカくん。」
「「!!」」
簡単な問題だと言うように。
迷いのない口調で解答を口にする。
それは僕達にとって、とても衝撃的な事だった。
この娘は、僕達を、見分けられるの?
ただ、一回だけでは、ただの偶然だってこともある…。
1/2の確率だ。
今までだって、何回も期待して裏切られた事はあった。
だから、繰り返した。
何回も何回も。
この日だけではなく。
見かけるたびに。
そして、確信する。
ああ、この娘は。
ちゃんと僕を見てくれてるんだって。
僕を僕として。
カナタのスペアじゃなく。
唯一の僕として。
どうしよう。
すごく、嬉しい。
どうしよう。
すごく、あの娘が欲しい。
─恐らくカナタも同じことを思っている。
「「ねえ、何処かに、隠して、僕達だけのものにしちゃおうか?」」
ヒロイン視点はまた後日