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親友が怨敵認定されました。

 憎い。


 『あの子、三上晴の子孫らしいよ』


 『ええ! あの三上晴の子孫!?』


 憎い、憎い。


 『あの子に、近寄っちゃいけません!!』


 三上晴が憎い。


 『本人に関係は無いって分ってるんだけどね……』


 何で、どうして。


 『ゴメンナサイ、貴方と仲良くすると私までいじめられるから……』


 自分は悪くないのに。

 

 『もう近づかないでください』


 アイツが悪い。

 自分は悪くない。

 三上晴が憎い!!

 殺してやる。


 ※


 そんな即興紙芝居を書いて未来電波少女に見せる。

 良い感じにおどろおどろしい絵を画けた気がするよ。

 やっぱり精神状態ってダイレクトに絵に関わるよね。


 「相手は大体こんな奴って事でOK?」


 「私を電波キャラ呼ばわりする割に貴方も貴方で大概キャラが濃いですよね」


 相手が怨恨で襲ってくると言われたのでそれっぽい理由で紙芝居を作ってみたのだが不評のようだ。

 それなりにそれっぽい理由を作ってみたのだが違ったのだろうか?

 もしくは理由が足りないとか?

 しかし、一体何が足らなかったのだろうか。

 子孫が多すぎて貧乏だとか?


 「足りないのは貴方の頭の方じゃ無いですか」


 「まさかお前(電波)にそんな事言われるとは思わなかったよ」


 一寸した息抜きジョークだったんだがな。

 いや、理由としては大体そんなもんだと予想しているが。


 「第一、この三日間ひっきりなしに襲撃があったからストレスと寝不足で禿げそうなんだよ」


 そう、三日だ。

 あのハルの家を襲撃してから三日経過している、今日は金曜日の朝で俺の家で三上月と現状確認兼会議の最中である。

 とはいえ月も此方をどこかで見ていたはずなのでそこまで話すことも無いのだが。


 「確かにあの人形しか出てこないし、襲撃自体は防げているけど気力が持たねぇよ」


 容易く倒せる敵とはいえ、そもそも禄に戦闘なんぞしたことも無い素人が戦い続けること自体が負担だ。

 魔法少女アプリの副次効果なのか体力はなんとか保っているが、それだってこうも連続で襲撃されるとキツい。

 それも三日三晩連続で、それこそひっきりなしにハルを襲撃をしてくるのだ。

 流石に人の多い所には出てこないので学校では問題ないんだが夜になるとピンポンダッシュレベルの気安さで明け方まで襲撃するので、最近の睡眠時間はもっぱら学校で確保しているのだ。

 いい加減死んでしまうぞ。


 「そうですね、私としても正直ここまで苛烈な襲撃を受けるとは予想していませんでしたので。よほど恨みを持っている相手なのかも知れませんね」


 『かもしれない』じゃなくて、確実にそうだよ!!

 明らかに怨恨で殺害が目的の襲撃だったぞ!!

 感情の無い人形から殺意と憎しみを感じるほどの勢いだっからな。


 「まぁそうですね、先程の紙芝居の話でしたが。怨恨の理由としてはそんな理由だと思いますよ、私もそんな感じに腫れ物扱いでしたし。相手によっては犯罪者に堕ちてでも復讐したい人はいるかもしれませんね」


 笑えねぇな、ネタにならねぇレベルで笑えねぇわ。

 拙いなぁ、どんどんハルの好感度が下がっていく。

 こんなんじゃ俺、ハルのこと守りたく無くなっちまうよ。

 いや、マジで。


 「三上晴の一族はそこら中に散らばっていますからね、少なくとも血族だと公言する人なんていませんよ」


 すげぇな、逆にここまで嫌われたら本当に末代までの恥を実際に出来るんじゃ無いか。

 少なくとも俺だったら絶縁状を叩き付けるし、少なくともコイツはハルのことを恥だと思っているわけだし。

 それが良いか悪いかはともかくとして。

 いや、確実に悪いことだったな。

 末代までのガチとか本当に見ると笑えねぇわ。

 

 「取りあえず三日経ちましたが襲撃の激しさは増すばかり、貴方に対する負担もそろそろ限界かも知れませんね」


 今更な事を言っている感じもするが要約すると手が足りないと言う事だろう。

 そもそも護衛を一人でやるって時点で可笑しいからな。


 「今更だけどお前も魔法少女アプリで戦えねぇの?」


 「本当に今更ですねぇ」


 法律なり何なりで使えない、一台以外持ち込めていないと予想はつくが一応聞いておきたい。

 もしも俺に何かあった時用に出来れば戦って欲しいんだが。


 「そうですね、貴方が予想しているとおり私はその魔法少女アプリを使うことは出来ません。ですが貴方が敗れた時用に一応保険は用意しているのでそこら辺はご安心を」


 保険ね、あんまり頼りにしない方が良さそうだな。

 そもそも頼りになるんだったら一般人の俺を使わないしな。

 気休め程度で考えた方が良いかもしれないな。


 「貴方の気力と睡眠時間に関しては私としても土日を使って回復してくれと言いたかったのですが、この襲撃頻度を考えるとヘタをすると今後は人の多い昼にも襲撃してくるかも知れません」


 そうなったら流石に無理だな。

 怨恨で動いている以上、最終的に形振り構わず襲い掛かってくるかも知れない。

 そうなったら体力・気力以前に物理的に不可能だ。


 「そうですね、此方でも対策は練っておきますが、せめて貴方の回復ぐらいはしておかなくてはいけません。ですので今日一日は学校を休んでください。学校の授業を昼寝で潰す位なら最初っから休んだ方が遙かに効率的ですので」


 確かにそうかも知れない、正直1週間ぐらい休んでもいい気もして来たからな。

 学校には他の生徒達もいて襲撃はあり得ないらしいし。

 親への説得もコイツの不思議道具ですれば良いしな。


 「最悪三上晴を監禁しますのでご安心を」

 

 「まだその計画するつもりだったのかよ!!」


 ※


 拝啓

 桜に続き、山吹が盛りとなりました。

 最近抜け毛が気になるお父様、喰いもしねぇダイエット食品を買い漁るお母様、お元気ですか。私は、最近落ち込んでたりするけども元気でした。

 そう、過去形です。

 最近は理不尽と不思議が手を組んで襲い掛かってくるので元気がガリガリと削られています。

 それはもう、盛大に元気と健康と正気を犠牲にしていますが五体満足なので元気といって良いかもしれません。


 さて、そんな私ではありますが、あなた方に言いたいことがいくつかございます。

 お母様、貴方の世話している花壇の花が荒らされていましたが犯人は近所の野良犬です。

 八つ当たりはやめてください。

 お父様、貴方の枕カバーをタオルケットで代用するのはおやめください、加齢臭が染みついて使えなくなります。

 お母様、貴方は私が親友への告白代理をしているのを知って非常に微妙な顔をしていましたね。

 気持ちは分りますが「孫の顔を見ることは出来るのかしら」と、口に出して言うのはおやめください。

 泣きたくなります。


 そんな私も高校二年生となり、二度目の桜を見た頃に転機が訪れました。

 街路樹の桜も葉桜が多くなり寂しげな心持ちになりながら商店街を歩いていると見知った顔に出会いました。

 柔らかそうな綺麗な金髪と光っているような碧眼、透き通るような白い肌。

 整った顔に柔らかな笑顔を見せてその人は此方に近づいてきました。


 これは余談なのですが。

 代理とは言え散々告白してきた私ではありますが。

 恥ずかしながら告白された経験はありませんでした。

 そんな私ではありますが。


 「一目惚れしました」


 私とうとう告白されてしまいました。


 「どうか、僕と付き合ってくれませんか」


 親友に。




 前略、親友様。

 私の貴方への認識が親友から怨敵に変化する日もそう遠く無さそうです。

 敬具。

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