ひかり
みんなが、ぼくを驚異の目で見つめているんだ。
どうして?
ぼくが 醜くて汚いから?
どろどろして じとじとしているから?
触れようとすると、みんなが見えない壁をつくって
ときにはぼくを殴って蹴散らそうとする。
みんながぼくを恐いって言うけれど
ぼくは みんなが恐いよ。
みんながぼくを「敵」だと言うのなら
ぼくはみんなを「敵」と呼ぶ。
悲しくて 悲しくて
前が見えない。
たまらなくなって ぼくは叫んだ。
だれか ねぇ 誰か。って
そしたら、みえたんだ。
ぼくにとっては、ひかりと呼ぶもの。
さいしょは恐くてたまらなかった。
みんなと同じものからできているんだ
そう思うとまた 悲しくなって。
悲しみが増えるのはいやだから
見なかったことにしようと思った。
それでも それでも
もしかしたら それは
あなたは
受け入れてくれるかもしれないって。
一瞬でも 期待してしまった。
だから 目をつぶったまま動けずにいたんだ。
それをひきょうと言われたら そうかもしれない。
ぼくはおくびょう者なんだ。
傷つきたくない。
時間がとまってくれたら
希望と絶望とのはざまで生きられたら
どんなに幸せだろう。
気づくと からだに熱が帯びていくのを感じた。
それは ぼくの熱じゃない。
ぼくはすっかり冷めているのだから。
驚き 目を開けると
目の前に ひかりが あった。
だめだ
だめだ
だめだ
ぼくは叫ぶ。
なのに それは抱きしめる腕を解こうとしない。
だめなんだ。
ぼくは 醜いから 汚いから
どろどろ じとじとしているから
だから はなして。
はなしたくない腕を はなして。
気づくと ぼくは 泣いていた。
なみだ
もう枯れたとおもっていた。
なくなったと思っていた 感情
ぼくは とりもどしたのかな
あたたかい からだ
あたたかい なみだ
たまらない
嬉しくて たまらない。
うそじゃない。
この思いも 世界も ぼくも あなたも
そう思ったら
嬉しくて たまらない。
だから
だから ぼくは
やっと 笑った。
笑うことが できた。
とけていく。
ぼくは あなたになる。
糧にして 生きる 活きて。
さいごの さいごまで
ぼくは あなたを見つめていた。
ひかり
ありがとう
あなたは、ぼくにひかりをくれたひと。
最初は 私も恐かった。
みんなと同じで 怯えていた。
触られること 触れること
拒んで あなたを傷つけた。
知っている。
私だけじゃない みんな気づいている。
みんな知らないフリだけ 得意になって
おとなになってしまった。
いや
イヤ
嫌
こんな私は いやなの。
あなたのもとへ行きたい。
あなたとともに生きたい。
恋い焦がれ
私は あなたの望むものになりたい。
私を見つめる あなた
最初は みんなと同じ驚異の瞳
それが とても悲しかった。
その瞳が閉じられたとき
もう開かないかもしれないと思うと怖かった。
ごめんなさい
ごめんなさい
もう一度だけで良い 私を 見て
願いはもう止まらなかった。
あなたが 今まで背負ってきた重さに比べたら
抱きしめる躊躇いなんて 何でもない。
背中にまわす腕に 力を込める。
冷たい 温度を感じない。
私の分をあげる だから 私にもあなたの分をちょうだい。
恐がらないで ここにいる。
わたしは ここにいる。
わたしは 必要としている。
わたしは あなたを必要としている。
あなたは わたしが必要ですか?
拒絶じゃない 拒絶
嘘じゃない 嘘
まるで幼子のよう
「もう、いいんだよ」
わたしも あなたも きっと
きれいな しずくは なみだ
嬉しい。
私は うれしい。
そのなみだが 私のこころを 潤していく。
ぬくもりを 感じた。
あなたの ぬくもりは やさしくて
どこか なつかしくて
あぁ そうか。
ふるさと なんだね。
あなたは 笑った。
笑った顔は 私だった。
あんなふうに 私は 笑うことができるのだと
あなたは 私に 示し 消えた。
あなたは私の 影かもしれない人
もしかしたら あなたじゃなくてもよかったのかもしれない。
あなたにとっても 私じゃなくてもよかったのかもしれない。
だから 影かもしれない人
それでいい。
胸があたたかいから、それでいい。