43:夏休み
本日、新連載を始めました! めちゃくちゃ面白いので、ぜひ読んでみてください!↓
『一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた~落第剣士の学院無双~』
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対校戦に勝利し、俺たちは無事に廃校の危機から脱出した。その晩に開かれた打ち上げは、今までにないぐらいに盛り上がった。
そしてその激闘の翌日――。
「なぁ、シキやん……僕らなんで普通に学校行ってるん?」
「そりゃ、登校日だからな」
時刻は朝の八時。
「いや、それはわかるんやけど……。何かこう、しっくりせんというか……釈然としんくない?」
「まぁ、祝日にしろとまでは言わないけど……せめて代休にしてほしかったな」
学校側にもカリキュラムとかややこしい都合があるんだろう。確か魔法学校には、一年あたり休日としてよい日数が法律で定められていたはずだ。
「というか、お前はよくその状態で登校しようと思ったな……」
現在俺は、厳しい日光と戦いながら帝辺高校へ向かっていた。――全身包帯でグルグル巻きとなった緑里と共に。
「いや、そこは意地よ、意地! 威霧高校の奴らにへこまされたと思われるんは嫌やん?」
「……すげぇよ、お前」
確かに威霧高校の奴らにやられたと思われるのは、俺だって嫌だ。しかし、人間には活動限界というものがある。
昨晩の打ち上げ時に聞いた話によれば緑里は昨日、団体戦で威霧高校の生徒三十名に本気の魔法を叩きこまれたそうだ。
(まぁ、予定通りと言えば予定通りなんだが……)
問題はその後だ。
普通の人間ならば、死んでいてもおかしくない。最低でも数日は病院送りとなってしかるべき攻撃を受けたはずなのに……。どうしてこうやって自分の足で歩いているんだ?
(こいつ……本当に人間か?)
まさか、シャルみたいに鬼族とか……。
そこまで考えたところで、入学間もないころのこいつとの思い出が脳裏をよぎった。
(あれは確か、緑里と赤威と野郎三人で遊園地にいったときのことだったか……)
そこで迷子の女の子を目ざとく見つけた緑里は、本当に親切心から彼女を迷子センターに連れて行こうとした。そのとき――。
「すまない、少し署まで同行願えるかな?」
「えっ、どうしてです?」
「いいから、とにかく来い!」
「な、何で、ちょっ、シキやん! 帝くん! 助けてーっ!?」
ちょうど園内を巡回していた私服の魔法警察に連行されていった。あれにはお腹の底から笑わせてもらった。他にもこいつの不憫な、エピソードはあげればキリがない。
「いやぁ、ないない!」
こんな面白くて、お人好しで、どうしようもない変態が鬼族に代表される妖魔なわけがない。
たまたまこいつは恐ろしく、まるでゴキブリのようにしぶといだけだ。
「ど、どないしたんシキやん、急に笑い出して……? 何か変なもので食べたん?」
「いや、気にすんな。ちょっと思い出し笑いをしただけだ」
■
そしてその日の午後、無事にすべての授業を乗り切り、今からは担任の飛鳥先生によるホームルームだ。ちなみに昨日ずいぶんと無理をした(早起き)赤威は、本日は欠席している。
「はい……。それじゃ……、ホームルーム始めるぞ……」
昨日打ち上げの際に、みんなの制止を振り切ってしこたま酒を飲んだ飛鳥先生は、予想通りというか激しい二日酔いに苦しんでいた。
「えー……、明日からはお楽しみの夏休みだ……。昔は夏休みといえば、長期休暇だったみたいだが、今は戦時下。わかっているとは思うが、週に三日は学校がある……。忘れずにちゃんと登校してくるよーに……」
そう、明日からは待ちに待った夏休みだ。四連休の後、三日登校する。今から約一カ月ちょっとの間は、このローテーションが繰り返される。
「それと……何だっけ……。あー、そうだ……。次の登校日から、臨時職員として一人女性教員が入るから、よろしくしてやってくれ……」
「じょ、女性教員やて!?」
たまらず緑里が椅子から立ち上がり、興奮を露わにする。
「そうだ、それもなんと現役の女子中学生だぞ」
「げ、現役の女子中学生っ!?」
「ちょっと落ち着けよ、緑里……」
そのコンディションで、これ以上の興奮はさすがに体に毒だ。俺は緑里の肩を掴んで、強引に椅子に座らせてやる。
「せ、先生、顔は……顔は可愛いんでしょうかっ!?」
その質問をした瞬間、クラスの女生徒から氷のような視線が緑里に殺到する。
(こいつ……やっぱりすげぇ……)
大勢の女子生徒がいる前でその質問を臆面もなく言えるこいつの胆力には、呆れを通り越してもはや尊敬の念を送りたくなる。
「そうだな、女の私から見てもずいぶん整った顔立ちをしている。正しく可愛い」
「飛鳥先生から見ても……可愛い!?」
この情報には今まで沈黙を守ってきた男子生徒も、にわかに色めき立つ。
飛鳥先生は全校生徒が認める美人だ。『伸ばしている』というよりも、『放っておいたらそうなった』感じの長い黒髪。すっぴんを疑うほどに化粧っ気がないにも関わらず、潤いのある地肌。左右均整のとれた顔は、まさに『整っている』と言えるだろう。
(これほど美人かつ婚活も積極的に行っている先生が、なぜ結婚できないのかは帝辺高校七不思議のひとつとなっている)
それはさておいて、飛鳥先生から見ても可愛いと呼ばれる女子中学生か……。年下は対象外の俺だが、さすがに一目見てみたい。
「はぁ……緑里。お前には先に忠告しておくが、間違っても変なことはするなよ?」
「勘違いせんとってください、先生! 男、緑里。決して法に触れるようなことはしませんっ!」
法に触れないことならするのか……。相も変わらず危険な男だ。
「ふぅ……これはお前の身の安全のために、言っているんだ」
「身の安全て……。だから、安心してくださいよ。僕はそんな魔法警察のお世話になるようなことはしませんって!」
「違う、そういう意味じゃない。今回派遣されてくる臨時職員はな――名門白桜女学院の中等部のSランクスキルを持つ才女なんだ」
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