42:対校戦決着!
いつのまにか鏡の右手には長い刀が握られていた。自慢Aランクスキル<鏡の世界/ミラーワールド>とやらで作り出したのだろう。
「ただの鏡だと思っていると、大怪我するよ? 僕の作り出す鏡の硬度は――ダイヤモンドを凌駕する」
鏡がその長い刀を地面に向けて一振りする。するとまるで豆腐でも斬るかのように、一筋の切れ目が生まれた。あんなもの人間の体ならば、ひとたまりもないだろう。そう、普通の人間の体ならば。
「でも、驚くのはまだ早いよ」
そういうと鏡は、大きく後ろに跳び下がり――背後にある鏡の一つに吸い込まれていった。
「へぇ……おもしろいな……」
「僕は鏡であり、鏡は僕っ! ふはははははっ! 君のようなド底辺に、この速度を捉えられるか……なっ!」
次の瞬間、鏡は自身が作り出した鏡のドームの中を移動し始めた。
『おぉっと、鏡選手! 鏡から鏡へと超高速移動を開始しましたっ! 速い速い速いっ! これには神夜選手、為す術なしかぁ!?』
その速度を目の当たりにした観客からも絶賛の声があがる。
「うぉっ!? はえぇぇええええっ!? マジで人間か、あいつ!?」
「かぁーっ! Aランカーは、やっぱ別格だなっ!」
「いいぞぉおおおっ! 鏡、やっちまえぇえええっ!」
これは確かに速いのだろう。――人間族の目から見るのであれば。
「ふふふっ、少しは楽しんでもらえているみたいだね……。さぁ、まずはその右手からいただこう――かっ!」
死角である背後から飛び出した鏡は、手に持つ刀を既に振りかぶっている。
しかし――。
「――<血の鎧/ブラッド・アーマー>」
俺の服を容易く切り裂いた刀は、皮膚上に展開された血の鎧に触れた瞬間――粉々に砕け散った。ダイヤモンド程度の硬度では、何よりもただの『鏡』では俺の血は砕けない。
「なっ……にぃ……っ!?」
中空で驚愕の表情を浮かべる鏡の顔面に、拳を振り下ろす。
「悪ぃな。――止まって見えるわ」
「かっ……ぱぁ……っ!?」
轟音と共に、鏡は地面に叩き付けられた。
同時に先ほどまで盛り上がりを見せていた会場が、水を打ったかのように静まり返る。
「「「……え?」」」
地面に顔面をめり込ませた鏡は、手足をビクビクと痙攣させており、戦闘継続は望むべくもない。
(まぁ、かなり手加減をした一発だからな……。さすがに死ぬことはないだろ)
それにあの感触。
(変な奴でも、さすがはAランカーだな……)
鏡は俺の一撃を食らう刹那――<鏡の世界/ミラーワールド>で作り出した鏡の盾を、自身の顔と俺の拳の間に滑り込ませたのだ。鏡の盾は俺の拳の速度に耐え切れずこれまた一瞬で砕けたが、おそらくクッションとしての役割は十分に果たしただろう。
鏡の意識が完全に飛んだからか、周りを囲むドーム状の鏡が消え去っていく。
恐る恐るといった風に、審判が鏡の状態を確認し、勝敗を告げる。
「しょ、勝者――神夜式久っ!」
『な、なななななんということでしょうかっ! 大番狂わせ――世紀の大番狂わせです! あのAランカーである鏡白夜選手が! たったのワンパンチでやられてしまいましたっ!? この結果、本日の対校戦は三勝二敗で――帝辺高校の勝利ですっ!』
実況解説により、帝辺高校の勝利が宣言された瞬間――。
「う……うぅぉおおおおおおっ! やるじゃねぇか、神夜っ!」
「Aランカーをワンパンとか、お前ほんとに人間かよっ!?」
「遅刻してきたときは、本当にぶっ殺してやろうかと思ったけどなっ!」
帝辺高校のみんなが、一斉に俺の元へと押し寄せてきた。
「ち、遅刻のことは、本当に悪かったって!」
みんなにもみくちゃにされながら俺は平謝りをし、飛鳥先生が上機嫌にみんなをまとめた。
「まぁまぁ、終わりよければ総て良し――今夜は打ち上げだっ! 支払は全て教頭が持つから安心しろっ!」
「いよっしゃぁーーーっ!」
こうして廃校の掛かった帝辺高校対威霧高校の世紀の一戦は、無事に俺たちの勝利で幕を閉じた。
これでようやく静かで平凡な、いつもの日常が戻ってくることだろう。
「この力……目覚めちゃったんだね……。残念だよ、シキヒサ……」
これにて対校戦編完結です。
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次章は日常編をやりながら、ずっと出したかった第二ヒロインが登場します。
臨海学校とかどうかなぁ……? と、ぼんやり考えています。
最後の不穏なセリフの主は誰なのか!? 神夜とシャルの今後は、どうなっていくのか!?
今後もがんばっていきますので、応援していただけると嬉しいです。




