3.終章
ラングリオンの闘技場の上空で、白い羽が舞う。
「ポラリス」
背から生えた白い羽を羽ばたかせながら、ポラリスがヴェラチュールの前で止まる。
「終わりだよ」
ヴェラチュールがポラリスを見て溜息を吐く。
「終わりか」
「終わりってどういうことだ。レイリスに何をしたんだ」
「私は何もしていない。…お前も一度見たことがあるだろう。対となる精霊が消える瞬間を」
「対となる精霊?そんな精霊、どこにも…」
「ポラリス。竜の山の封印の棺を移動したのはお前か」
「おや。失礼な言い草だね。封印の棺が竜の山にあるなんて、誰が言ったんだい」
「ルーベルに守らせていたのではないのか」
「さぁ、どうだろうねぇ」
竜の山にあった封印の棺が、今は王都で保管されていることを彼は知らない。
「どうせお前は棺を見つけられっこないのさ。アンシェラートに封印の棺を破壊させ、レイリスを追い払うのに使おうとしたようだけど、見事に失敗したね」
「封印の棺を寄越せ。神の力さえ取り戻せば、あれを止めることなど容易い」
「棺だけ手に入れてどうするつもりだい。精霊の力なくして、あれは開けないというのに。どうあがいても世界は終わる。…ほら、ご覧よ」
遥か遠くで、大地から伸びた手に向かって複数の光が取り巻いている。
「地下に居た神々がアンシェラートを地中に押し戻そうと戦っている。何度見ても美しい光景だねぇ」
「何故、終わりに導いた」
「お前の支配する世界には終わりしかないってことさ」
「世界はいずれ終わる。私がそれを伸ばせるのは確実だ」
「お前のやり方には飽きた。未知を探すのが私の役目」
ポラリスがエルロックを見る。
「私の知る終わりは少しずつ変化している。エルロック。リリーシア。運命に左右されない君たちが世界の希望だ」
「希望?」
「希望?」
「人間に希望を見るのか」
「ふふふ。私は人間贔屓なのでね」
「今は一体、誰の姿を借りているんだ」
ヴェラチュールがポラリスに向かって風の魔法を起こすと、ポラリスのローブのフードが外れる。
その顔を見て、エルロックが驚く。
「その顔は…」
「ばれてしまっては仕方がない。その目に焼き付けておくと良いよ。…新しい世界でも、その魂に刻まれた記憶を呼び出すことが可能かもしれないからね」
アンシェラートと、その片割れである創世の神の魂が手を結び、根源の神、オーへと還っていく。
大地が崩れ、自然が崩壊し、星の生き物が死に絶える。
その魂が片割れを求めて死者の世界へと押し寄せると、生まれることのない世界で魂は自らの片割れと共に一つとなり、全ての魂が根源の神・オーに還る。
それは世界の終りであり、はじまり。
END.
詳しい後書きは活動報告に書いてあります。
今回のバッドエンドは、エルとアレクの信頼度が一定以下だと発生するイベントです。具体的に言うと、二章ラストの「62 大切なものは目には見えない」がなかった場合、バッドエンドになります。
地上にレイリスと対になる大精霊は存在します。
ポラリスの顔が誰かわかりますか?エルが知っている誰かです。でも、あの人じゃありません。