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智枝理子の資料集  作者: 智枝 理子
Sep2エル編ノーカット版より抜粋「Requiescat in pace」
42/56

159 意気衝天

 熱気球に戻って、キャロルが用意してくれたサンドイッチを食べる。

「美味しい」

 ゆっくりランチを食べられる時間があって良かった。

 熱気球の魔法の玉も、まだ持ちそうだ。……でも、創世の神との戦いで吹き飛ばされてしまえば使えない。無事にここで留まってくれれば良いけど。

 あ。

 このサンドイッチ、ローグから貰ったマスタードを使ってるのか。

 美味い。

「水筒に温かい飲み物でも淹れてくれば良かったな」

 せっかくだから、温かいコーヒーと一緒に食べたかった。

 極寒の神の台座なら、すぐに冷めてしまうかもしれないけど。

 瓶に入ったオランジュエードだって、凍ってないだけましだろう。

「じゃあ、今度来る時は持って来ようね」

 ……今度って。

『また、こんなところに来たいの?』

「えっ?あの、そうじゃなくって、今度、ピクニックに行く時とか……」

『どこにピクニックに行く気?』

「えっと……」

 ……これも、ピクニックみたいなものか。

『僕は、もう少し温かい場所が良いな』

『そうだな』

『そう?私は、グラシアルでも構わないわ。オーロラもきれいだし』

『そおねぇ。綺麗だわぁ』

『グラシアルはピクニックに行くようなところじゃないだろ』

『人間には遠いねー』

『なら、グラム湖は?』

『それが丁度良いだろうな』

 グラム湖か。

「春になったら行こう。桜が綺麗なんだ」

「うん」

 リリーが微笑む。

 ……その笑顔が見られるだけで、幸せ。

 空にはオーロラが舞っている。

 まるで昼と夜の境目があるかのように、薄暗い北の空には星が瞬き、南の空には太陽と月が輝く。

「不思議だよね。太陽と月が並ぶなんて」

「あぁ」

 太陽の輝きに負けないほどの輝きを放つ月。

 月は、太陽の力を蓄えて輝くと言われているけど。

 満月の時だって、あそこまでの輝きを見たことはない。

「綺麗だな」

「うん」

 二度と見られない瞬間。

 それを、人間が簡単に来ることのできない場所で見てるなんて。

 ……神の台座。

 外側からしか観測できなかった場所に、今、居るんだ。

「神の台座の探索依頼が出たら引き受けても良いな」

「え?」

「神の台座は未開の地だ。でも、熱気球があれば、来ることが出来るだろ?だから、その内、探索依頼も出るかもしれない」

 風の精霊の力を借りずに自由に飛び回るには、熱気球の改良も必要だけど。

「冒険者ギルドって、そんな仕事もあるの?」

「ギルドじゃない。国が主体となって編成するんだよ」

「え?秘書官の仕事?」

 なんで、そうなるんだ。

 リリーの額に指を当てる。

「未開地の探索は騎士の仕事だぞ」

「えっ?私?」

「隊長として、国の代表として。時には周辺国との交渉を行い、時には未知の脅威から隊員たちを守る役目を負う。……それこそ、騎士物語とかになってるんじゃないか?」

 最近では、騎士の仕事は戦闘がメインと思われているけど。

 昔は、国王の代理として各地に赴くこともあれば、未開の土地の調査や開拓を行っていたこともある。

「私、そんなこと出来るかな……」

「出来るよ」

 もっと自信を持てば良いのに。

「困ったら、助けてくれる?」

「言っただろ。引き受けても良いって」

 リリーがやるなら、一緒に行きたい。

「今度は、ちゃんと水筒を持ってこないとな」

 リリーが微笑む。

「うん。温かい飲み物を淹れて来ようね」

 リリーと一緒なら、どこへ行っても何をしても楽しくなるに違いないから。

「あの、あのね」

 急に挙動不審になったリリーが、あちこちを見回した後、深呼吸をしてこちらを見る。

「北は、あっちだよね?」

 リリーが指で示した方角は。

「正解」

 真北。

「やったぁ」

 リリーが嬉しそうに微笑む。

 可愛い。

『呑気なもんだね。世界が終わるかもしれないのに』

「終わるなんて、誰も思ってないよ」

『創世の神の恐ろしさをしないからだろう』

「メラニーは……」

 リリーが周りを見る。

「ジオ。ユールも、バニラも知ってるの?」

 皆、当時のことを知ってるのか。

『空から落ちた光線が大地を焼き尽くしてー……』

『降り注ぐ岩石が地下深くまでめり込んでいったわぁ』

『風は嵐となって荒れ狂い、あらゆるものを根こそぎ巻き上げた』

 世界の崩壊。

 大精霊の力でも、あれほどの被害が出せるんだ。より上位の存在が行使する破壊なんて、想像を絶するだろう。

『神々が戦った時もそんなに被害が出たなんて……』

『また、そうなるかもしれないの?』

 ナターシャ。アンジュ。

『でも、今の世界は、そんなに壊れたことがあるように見えないけど』

『あの男が、植物を再生させたからな』

『大精霊たちも、自然の再生に奔走してたんだよー』

『わずかに生き残った生き物たちがぁ、今まで命を繋いできたのよぉ』

『そうして、世界は立ち直った』

 ラグナロクの記録に書かれていたこと。

 長い時をかけて、世界は再生した。

『私……。今の世界が壊れるなんて思いたくないわ』

『僕も。そんな怖いこと、起きないで欲しい』

「壊れないよ」

「大丈夫だよ、皆」

『……簡単に言うんだからさ』

 イリスの気持ちもわかるけど。

 それでも、今、真っ直ぐに進めるって信じられる。

「でも、良いのかな」

『何が?』

「創世の神は、アンシェラートを迎えに来ただけなのに。……一つになりたいと思っているだけなのに、それを邪魔するなんて」

『何言ってるの?創世の神とアンシェラートが一つになれば、世界が終わるんだよ?』

「そうだけど。私たちばっかり幸せになってて良いのかなって……」

 なんていうか。

 リリーらしいな。

「どうせ、神にとっては一万年も一億年も、気が遠くなるような月日も全部一緒だ。世界の終りまで待ってて貰えば良い」

「えぇ?そんなに長い間、待てないかもしれないよ?」

「俺はちゃんと我慢してたぞ。一か月以上も」

 セルメアに行った時。

 リリーが頬を膨らませる。

「だって、セルメアに行くのにひと月もかかるなんて、エルは言ってくれなかったから」

「……は?」

 なんだそれ。

 異国に行くんだし、地図を見れば……。

『リリーだからねー』

 ……そうだった。

 周りから、リリー以外の笑い声が聞こえる。

「あの……。ごめんなさい」

 あぁ。本当に。

 すぐ傍に居るリリーを抱きしめる。

「エル?」

「好きだよ。リリー」

「えっ?あの……。私も、好きだよ」

 可愛い。

 いくら一緒に居ても飽きない。

 ずっと一緒に居たい。

 だから。

「絶対、この世界を守るよ」

 リリーが居る世界を。

 大切な人が居る世界を。

「うん。守ろうね」

 一緒に。

 

 ※ 

 

 リリーと一緒に、アルテアの元へ戻る。

「大樹が大きくなってる」

「すごいな」

 ヴィエルジュの大樹。

 さっきと比べると三倍ぐらいの高さに成長してる。それに、ほのかに全体も光ってるな。

 これが、アンシェラートの力で溢れた姿?

「行こう」

「うん」

 リリーと一緒に、シミュラが作った盛土の上へ。

 魔法陣が地面のあちこちに描かれている。

 全部で十個も?

「戻ったか」

 アルテアがこちらを見る。

 その傍には、ヴィエルジュが。

 背が高くなった大樹の洞は、ここに開いたらしい。

「この紙に指示を書いた。月の力で指示通りに魔法陣を繋げ、そこに太陽の力を流し込んでくれ。……杖は返す」

「ん。わかった」

 アルテアからメモと杖を受け取る。

 ……多いな。

「一番下にあるのって、太陽の魔法陣?」

「そうだよ」

 俺が知ってるのとは、少し違うけど。

 太陽の力に対応した魔法陣なのは間違いない。

「太陽の力を流すって……。太陽の精霊を呼ぶの?」

 ……そういえば、知らないんだっけ。

「リリーが使うんだよ」

「え?」

 もう、隠しておけない。

「リリーが無意識に使っている魔法の正体。あれは、光の魔法でも何でもない。太陽の魔法だ」

 知らないなら、知らないままの方が良かっただろう。

「どうして、私……?」

 混乱してるな。

「説明は後。手伝って」

「……」

 ……納得しないか。

 でも、今は上手く説明する自信がない。

 不満そうに膨らんだ頬にキスをする。

「もう。怒ってるんだよ?」

 リリーが上目遣いでこちらを見る。

 可愛い。

「気づいてたけど、認めたくなかったんだ。……だから、後でゆっくり話すよ」

 今は魔法陣の完成が先だ。

 全体は、縦方向に三本のラインに分かれてる。

 左のラインに三つ、右のラインに三つ、魔法陣が等間隔に並んでいる。

 中央のラインは変則的に四つ並んでいる。等間隔に並べば良いはずが、何故か上から二番目が空白だ。その下は等間隔に三つ並んでいる。二番目が抜けているせいで、不自然に下に一つ飛び出してる。……飛び出しているのは、太陽の魔法陣だ。

 十個の魔法陣は、精霊の属性に対応している。

 中央の一番上は月。

 次の段は、左が闇で、右が真空。

 次の段は、左が炎で、右が水。

 次の段は中央に光の精霊の魔法陣。

 次の段は、左が氷で、右が大地。

 次の段は中央に風の精霊の魔法陣。

 そして、中央の一番下が太陽。

「エル」

「ん?」

 俺の方に来たリリーが、両手で俺の顔に触れる。

「私、エルのことが好きだよ」

 リリーが俺を引き寄せて、キスをする。

「だから……。私の一番大切な人で居てくれる?」

 ……それが、リリーの答え。

 リリーを抱きしめる。

「一緒に居られて幸せなんだ。離れたくないし、離したくない」

 太陽の力を持っていると気づいた時から、ずっと不安だった。

 これが、どこかで運命付けられたものじゃないかって。

 リリーの頬に触れて、その瞳を見つめる。

「ありがとう。大切に想ってくれて。……どんな事実があろうと、どんな要因があろうと、一緒に辿って来た道は嘘じゃない。この関係は何があっても変わらないって。そう思えるのは、リリーが信じられるからだ。だから、自分の気持ちも真っ直ぐに信じられる」

 リリーは、どんな不安も吹き飛ばしてくれるから。

「愛してる」

 リリーとキスをする。

「ありがとう」

 ここまで、二人で一緒に来た。

 だから、信じられる。

「始めよう」

「うん」

 視線を魔法陣に落とす。

 ……まずは、月と真空の魔法陣を繋ぐ線を描く。

「リリー。ここに太陽の力を流し込んで」

「えっ?えっと……」

 リリーの肩を抱く。

「落ち着いて。このラインを自分の力で光らせるイメージで、魔力を流し込むんだ」

 杖を渡すと、リリーが杖を持って、悩む。

「あの……。直接、触っても良い?」

「良いよ」

 杖を受け取ると、リリーがしゃがんで、月の魔法で描かれた金色の道に触れた。

 すると、その道が別の色で輝く。

 これが太陽の力?

「これで良いの?」

「あぁ。これと同じことを、順番にやっていくんだ」

 続いて、月と闇の魔法陣を繋ぐ。

 リリーが同じように触れると、今度は違う色に輝いた。

―虹の女神は、世界を繋ぐ架け橋。真実を繋ぐ女神って。

 これが、あらゆるものを繋ぐ力。

「じゃあ、次は……」

 

 それぞれを繋ぐ道。

 

 月と真空、月と闇、月と光。

 闇と真空。

 真空と光、真空と水。

 闇と光、闇と炎。

 炎と水。

 水と光、水と大地。

 炎と光、炎と氷。

 光と大地、光と風、光と氷。

 氷と大地。

 大地と氷、大地と太陽。

 氷と風、氷と太陽。

 そして、風と太陽。

 

 このすべてを、繋ぐ。

 

 ※

 

「これで全部?」

「あぁ。完成だ」

「……出来たぁ」

 リリーが大きく息を吐く。

 やることは単純だけど、流石に、これだけの量を描けば疲れるな。

「エルロック。杖を貸してくれ」

「ん」

 杖をアルテアに渡すと、アルテアが月の魔法陣と光の魔法陣の間に入って、そこに新しく魔法陣を描く。

 不自然に空いた中央二番目の空間。やっぱり、そこにも魔法陣が入るのか。

「リリー。大丈夫か?」

「うん」

 疲れてそうに見えるな。

 俺と同じ量の魔力を持っているなら、そう簡単に魔力が枯渇することは無いとは思うけど。

「ケイルドリンクでも飲むか?」

 即席で作れる用意はある。

 でも、リリーは首を傾げた後、大げさに首を振った。

「大丈夫。元気だよ。ほら、平気だから、心配しないで」

 ……そんなに苦手なのか。

「エルロックは月の魔法陣へ。リリーシアは太陽の魔法陣へ」

「ん」

「はい」

 リリーが太陽の魔法陣の方へ走って行くのを見送って、中央の一番上にある月の魔法陣の上へ。

 隣でアルテアが新しく描いたのは、転移の魔法陣に似た図柄のものだ。

 つまり、魔力を集める為の魔法陣。

「大精霊たちよ。力を貸してくれ」

 離れた場所に居た大精霊たちが集まって、それぞれの魔法陣の上に立つ。

 デルフィが連れてきた真空の大精霊、リスプも居る。

 っていうか……。

「お前たち、俺から離れてた方が良いんじゃないか?」

『じゃあ、あたしはぁ、リスプの所に行くわぁ』

『僕はエイダを手伝う』

『では、私はアーランの元へ行こう』

『シミュラの方へ行く』

『じゃあ、デルフィを手伝ってくるよー』

『えぇ?じゃあ、私もパスカルの方へ行こうかしら』

 イリスもリリーの元を離れてパスカルの所へ行ったみたいだ。

『私は君といるよ』

 精霊の声……?

 誰だ?

 アルテアの方から聞こえた気がするけど。

「離れていた方が良い」

『わかってる?ここは極寒の地なんだよ?離れたら君は凍え死ぬよ?』

「これだけの魔力が集まるなら問題ない。エイダの元へ行け」

『むぅ』

 エイダってことは、炎の精霊?

 エイダの元で、炎の精霊が顕現した。

 あの精霊……!

 ずっと、リンの巫女と旅を続けていた炎の精霊だ。

 今も、一緒に居たのか。

「∀1∈。準備は良いか?」

 アルテアが、大樹に居るヴィエルジュを見る。

「出来ている。……しかし、空は雲で覆っていた方が良いかもしれない」

「そうだな」

 アルテアが天に向かって手を上げると、周囲が雲に覆われた。

 太陽と月の姿が見える場所以外、すべて。

 創世の神が、真っ直ぐこっちに向かってくれれば良いけど。

「では、始める」

「わかった」

 ヴィエルジュの大樹が、さっきよりも眩い輝きを放つ。

 アルテアが魔法陣に何か書き込むと、すべての魔法陣も輝き出した。

 ……封印の棺を封印した時を思い出す。

 力が奪われる感覚。

 魔法陣同士を繋ぐ線を辿って、すべての力がアルテアの元に集う。

「エイルリオン……」

 杖を地面に立て、アルテアがエイルリオンを手にした。

 

 

 月が太陽と重なり、両者は共に眩い輝きを放つ。

 太陽と月は、地上からは観測できない場所で創世の神の力に抗ったものの、その力を越えて進んだ創世の神が、美しい星にアンシェラートの輝きを携える神樹を見いだす。

 

 

           み

           つ

           け

           た

 

 

「来る」

 

 

 太陽と月が重なる方角から真っ直ぐ目的へ向かって突き進む神。

 その神に向かって。

 地上から極彩色の光が放たれる。

 

 

「アルテア!」

 アルテアが、ふらつく。

 なんて力だ。

 まずい。

 このままじゃ、押し返される。

 一人じゃ無理だ。

 手伝いたいけど、今、ここを動けば月の力が……。

 そうだ。

「レイリス!」

 名前を叫ぶ。

「エル」

 来てくれた。

 でも、説明してる暇はない。

「俺の代わりに、ここに立ってくれ」

「は?」

「お願い」

 レイリスを魔法陣に残してアルテアの魔法陣へ行き、一緒にエイルリオンを持つ。

 ……なんて、重圧だ。

「世界を守るんだろ!絶対に倒れるな!」

 真っ直ぐ、この地に向かってくる巨大な力。

 これが、創世の神。

「エル!彩雲を貸して!」

 鞘から抜いた彩雲をリリーに向かって投げる。

「ありがとう!」

 彩雲を何に使うかは、わからないけど。

 剣なら……。

「レイリス!イリデッセンスもリリーに渡してくれ」

「リリー、ちゃんと受け取れよ!」

 レイリスが、リリーに向かってイリデッセンスを投げ渡す。

「ありがとう!」

 リリーが、自分の隣にリュヌリアンと彩雲を並べてる。

 何をするつもりなんだ?

 続けて、リリーがイリデッセンスを掲げた。

「いっけー!」

 リリーが、雲の隙間に向かって光を放つ。

 放たれた光は、エイルリオンから伸びる光を越えて、遥か遠く……?

 どこに行ったんだ?

「スタンピタ・ディスペーリ!」

 ……なんで、封印解除?

「なんて器用な真似を」

「どういう意味だ?」

「リリーシアは、神の力を使い、はるか遠くに居る太陽と月の女神の力を呼び寄せている」

「は?」

「今、私たちは創世の神を挟み撃ちにしてる」

 

 周囲に、淡いベールを纏った光が広がっていく。ここを起点に、まるで世界中へ広がっていくかのように、広く遠く……。

 

「これは……?」

「虹の大精霊の力は、世界を繋ぐ力」

 世界を繋ぐ……?

「エルロック。リンの力を使いこなせ」

「リンの力?」

 アルテアが消えて。

 ……急に、極彩色の光の輝きが増す。

 重い……。

 両手でしっかり持っているのに、溢れる力でエイルリオンが震える。

 目標を見失うな。

 しっかり構えて。

 剣が示す方向を常に創世の神の中心へ……。

 

『エル』

 

 今、少しでも気を緩めたら。

 

『エル』

 

 少しでも力が入らなくなれば。

 

『エル』

 

 少しでも集中を乱せば。

 

『エル』

 

 すべてが一瞬にして崩れてしまう。

 

『エル』

 

 絶対に、負けない。

 

『エル』

 

 絶対に、守る。

 

『エル!』

 

「……え?」

『聞いているのか?』

「メラニー」

『手伝うわよぉ』

「ユール、」

『オイラもー』

「ジオ」

『私も』

「バニラ」

『私も頼って』

「ナターシャ」

『僕も』

「アンジュ」

『ボクも、手伝うよ』

「イリスまで……」

 目の前で、イリスが顕現する。

『人間一人を支えるぐらい、ボクらにだって出来るからね』

 近くに居たら危ないって、言ったのに。

 ……こんなことをすれば、守るって契約を果たせない。

 でも。

「助けて」

 一人じゃ、無理だ。

『当然だ』

『ふふふ。まかせてぇ』

『力になるよー』

『助ける』

『良いわよ』

『僕も頑張る』

『頼りにしてよ』

「ありがとう、皆。顕現してくれ」

 ふらつきそうになる体を、今にも落ちそうな腕を、皆が支えてくれる。

 そうだ。

 いつだって、一人じゃなかった。

 傍に居てくれる誰かが居た。

 一緒に居ることを望んでくれる誰かが居た。

 離れていても、俺のことを想っていてくれる誰かが居た。

 身体が覚えてる。

 背中を押して支えてくれる皆の声を。力を。

 

 エイルリオンの震えが収まる。

 手に持つ力は遥かに強く、どんどん増大していくように感じるのに。

 剣の先は、迷うことなく真っ直ぐ創世の神に向かって伸びている。

『急に楽になったわ』

『エル、何かしたの?』

 首を振る。

 見えないものに支えられてる。

 ……これが、世界の加護?

 戦っているのは、ここに居るみんなだけじゃない。

 もっと、多くの何か。

 世界中の声が。

 祈りが、聞こえる。

 

『繋がった』

 

 極彩色の輝きは創世の神を捕らえ、太陽と月も加勢する。

 

 大丈夫。

 一人じゃない。

 今、あらゆるものが繋がってる。

 絶対に、押し返す。

 この世界を終わらせたりなんかしない。

 絶対に、守る!

 


 


 


 

る転し、巡る耀きのすきまから

ての形をしたものが現れた

し方八方から集った力をあてて抗う

いのちの煌めきを宿すおおきな祈りと

あたたかい生命と意思でうまれた希望で

   未知を架ける   

            

ら          さ

な          よ

よ          な

さ          ら

 


 


 


 





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