La petit sirene―Septarche ver.
Septarcheの登場人物で人魚姫。
誰が誰の役をやるのか楽しみながら読んでみてください。
本編とは関係ありません。
深い深い海の底。
矢車菊の花びらように美しい青の世界。
そこには、美しい魚の尾ひれを持った人魚たちの王国があります。
そして、王国には長く美しい髪を持った六人のお姫様が居ました。
「早く海の上に行きたいね、イリス」
「海の上は危ないってさんざん言われてるだろ」
―人魚姫=リリーシア
―人魚姫の親友(の魚)=イリス
「そうかな。きっと、とっても素敵な世界だよ」
「海の上には人間が居るんだよ。人間には絶対に見つかっちゃいけないんだからね。わかってる?」
「わかってるよ」
「だいたい。ただでさえ迷子なのに、海の上に出て戻れなくなったらどうするつもり?」
「海なら迷わないよ」
「当てにならないね」
「困ったら魚たちが教えてくれるし、大丈夫」
「その自信はどこから来るの?海の上に行くのは今日が初めてだって言うのにさ」
人魚たちには、人間に姿を見られてはいけないという掟と、成人を迎えるまで海の上に出てはいけないという掟があります。
五人のお姉さん人魚たちから外の世界を聞いていた末の姫は、海の上の世界に憧れていました。
今日は、とうとう末の姫が成人を迎える日です。
「ほら、そろそろ王様に会いに行こう」
「うん」
人魚姫は王様と王妃様に会いに行きました。
「良く来たな、リリーシア」
「お待ちしておりました」
―人魚の王様=シャルロ
―人魚の王妃様=カーリー
「シャルロさんとカーリーさん?」
「親の名前の呼び方も知らないのか」
「えっと……。お父様とお母様?」
「あんな喧しい娘たちの親になんてなりたくないが。……カーリー。あれを」
「かしこまりました。リリーシア様、冠で成人のお祝いをいたしましょう」
王様と王妃様は人魚姫へのお祝いに真珠で出来た冠を贈りました。
「ありがとうございます」
「成人の祝いだ。今日から好きに海の上に出て良いが、くれぐれも人間に姿を見られないようにな」
「はい」
「イリス。頼んだぞ」
「まぁ……。頑張るよ」
「いってらっしゃいませ」
王様と王妃様から海の上へ出ることを許された人魚姫は、喜んで海の上を目指しました。
人魚姫が初めて海から顔を出すと、海は燃えるような紅に染められていました。
丁度、夕暮れだったのです。
「わぁ。見て、イリス。綺麗だよ」
「あれは夕陽。太陽が沈んでるところなんだ」
「あれが太陽……。すごく綺麗だね」
「そう?ボクはこんなの見慣れてるから気にならないけど。ボクは人魚と違って、自由に海を泳ぎまわれるからね」
「あんまり海の上に行くと、人間に捕まって食べられちゃうんじゃないの?」
「ボクがそんなへますると思ってる?」
「お姉さんたちも危ないって言ってたよ」
「まぁ、気を付けるに越したことはないけど」
「ねぇ、あれがお月様とお星さま?」
「そうだよ。……あ、船だ。人間が海を移動する時に使う乗り物だよ。絶対に近づかないようにね」
「あれが、動いてる船……」
海の上には一隻の大きな船が浮かんでいました。
人魚姫は、難破して沈んだ船を見たことがありますが、動いている大きな船を見るのは初めてです。
船の上では、盛大な祝宴が催されていました。
今日は海辺の国の王子のお誕生日。
船には賑やかな音楽が流れ、王子の為にたくさんの花火が打ち上げられました。
「きゃあぁっ!」
花火の音に驚いた人魚姫は慌てて海の中に潜ります。
「大丈夫?リリー」
「うん」
しかし、気になって海から顔を出すと、空の上にたくさんの花が咲いているのが見えました。
「花火だよ。空に光を放ってるんだ」
「綺麗な花……」
人魚姫が花火を眺めていると、船の甲板に、煌びやかな衣装を身に着けた美しい王子様が現れました。
「あれは誰?」
「王子様だよ。派手な衣装に冠をつけてるし」
「ここからじゃ顔が良く見えないよね」
「こら。あんまり近づいちゃいけないって言ってるだろ」
王子に心を奪われた人魚姫は、王子から目が離せませんでした。
花火が終わり、船が動き始めます。
人魚姫は王子の姿を追って、船の後を追いかけました。
「リリー!待ってよ!」
そうしている内に、空には暗雲が立ち込め、遠くで雷が鳴り始めました。
嵐が来たのです。
「よし、皆で行くぜ」
「ひゃっほー」
「まかせて」
―嵐A(黒子)=ブレスト
―嵐B(黒子)=ジオ
―嵐C(黒子)=メキブ
「ブレスト、ジオ、メキブ」
「精霊三人の合成魔法よ。ちょっと危険だから気を付けてね」
「だっ、大丈夫なの?」
「海の中に居れば平気だと思うけどねー」
「そういうわけだ。行っくぜー!」
激しい風と共に雨が降り、雷が海に轟きます。
嵐の中、甲板に居た王子が荒れ狂う海の中に放り投げられました。
人魚姫は急いで王子に近寄ると、王子が海に沈まないよう抱きかかえます。
「アレクさんっ?」
―海辺の国の王子=アレクシス
「大丈夫ですか?」
「気を失ってるみたいだね。助けるの?」
「うん」
「船に戻すのは無理だし、陸に連れて行ってあげたら?人間は海の中じゃ生きられないからね」
「わかった」
嵐の中、人魚姫は大切に王子を抱えると、陸を目指しました。
明け方、ようやく酷い嵐が止んだ頃、人魚姫は王子を安全な岸辺に運ぶことが出来ました。
「しっかりして下さい」
その時、大きな鐘の音が鳴りました。
岸辺にある小さな礼拝堂の鐘の音です。
その音と共に、礼拝堂から一人の娘が出てきました。
「リリー!人が来るよ!逃げて!」
「うん!」
人魚姫は自分の姿を人間に見られてはいけないことを思い出し、慌てて岩陰に隠れました。
「まぁ、こんなところに人が」
―礼拝堂の娘=ロザリー
「起きて下さい」
娘に介抱された王子はようやく意識を取り戻します。
「君は?」
「気が付いたのですね。私はロザリーと申します」
「ロザリー。君が助けてくれたのか。ありがとう。私は海辺の国の王子だ」
「王子様……」
「リリー。もう帰らないと。皆心配するよ」
「うん」
助けたのが自分であることを伝えられないまま、王子の無事を確認した人魚姫は海の底の王国へ帰りました。
※
「リリー!待ってたわ。お帰りなさい」
「もーぅ!どれだけ心配したと思ってるのよ!」
「無事に帰って来たのだから良いじゃないか」
「そうだねぇ」
「でも、上では嵐があったんじゃなかった?大丈夫なの?」
―人魚のお姉さん五女=マリアンヌ
―人魚のお姉さん四女=ポリシア
―人魚のお姉さん長女=アリシア
―人魚のお姉さん三女=ユリア
―人魚のお姉さん次女=セリーヌ
「大丈夫だったよ」
「これだけ集まると賑やかだね……」
「一体どこまで遊びに行ってたのよ」
「私も付いて行ってあげれば良かったわ。海は広いのよ。リリーが帰れなくなっちゃったら大変だわ」
「心配要らないよ。イリスも居るし」
「そうだねぇ。この辺なら大丈夫だと思うけどぉ。ちょっと危ない場所もあるんだよぉ」
「危ない場所?」
「そうだな。灰の海には近づいてはいけないよ」
「灰の海?」
「海の中でも恐ろしい場所なの」
「海流も早くて危険な生き物も居るんだよぉ」
「お父様が支配する青い海から出ないようにね」
「うん。わかった」
「で?海の上で何を見て来たの?」
「えっと……」
「皆。リリーは一晩中出かけて居て疲れているんだ。話は後にして、少し休ませてあげた方が良い」
「そうね」
「じゃあ、後でね、リリー」
「はい。お姉さまたち、ありがとう」
※
海の底に帰ったお姫様は、その日から毎晩のように海に上がり、恋しい王子のことを思いました。
「アレクさん、無事にお城に帰れたのかな」
「心配なの?」
「だって、一晩中、人間が海の中に居たんだよ。ちゃんと元気になったかな」
「大丈夫だよ。他の人間がちゃんと助けに来てただろ」
「そうだけど……」
「そんなにあの人間が気になるの?」
「人間ってどんな風に生活してるのかな。海の外は本当にキラキラしてて、色んな色があって素敵だよね」
「人間なんて短命ですぐに死んじゃう弱っちぃ種族じゃないか」
「そんなことないよ。私たちの知らない世界に生きてる。私、あの夕焼けの紅が忘れられない。海には青しかないんだもん」
「紅、ねぇ」
「リリー!」
「ポリーだ」
「ポリー。どうしたの?」
「あの日から、なんだかずっと変じゃない。嵐の夜に何があったのかも教えてくれないし。いい加減、あの日に何があったか話してくれても良いんじゃない?」
「それは……。ちょっと……」
「話せない事情があるんだよ」
「誰にも言わないから教えてよ」
「誰にも言わないなんて、当てにならないけど」
「いいから教えなさい」
「……私、人間と関わっちゃったんだ」
「え?姿を見られたの?」
「見られたかは分からないけど。王子様を助けたの」
「王子様?どこの王子?」
「海辺の国の王子様って言ってたと思う」
「あー、あの国の」
「知ってるの?」
「知ってるわ。会いたいなら連れて行ってあげましょうか」
「会いたい」
「じゃあ、付いていらっしゃい」
お姉さんの一人が、人魚姫を王子が住むお城の近くまで案内してくれました。
お城のバルコニーには、人魚姫が助けた王子が立っています。
「王子様だ。……良かった。元気そうだよね」
「リリー。あの人間が気になるの?」
「うん」
「気に入ったなら助けたりしないで海の底に沈めれば良かったのに」
「えっ。そんなことしたら死んじゃうよ」
「死体を綺麗に保存する方法ぐらい、あの魔法使いなら知ってそうよ」
「魔法使い?」
「知らないの?」
「知らない。イリスは知ってる?」
「知ってるよ。怪しい薬を作ってる海の魔法使いだ」
「怪しい薬?」
「どんな薬でも作れるって言われてるけど、正直怪しいよね」
「まぁ、魔法使いが居るのは灰の海。あんな危険なところに行ってまで叶えたい願いなんてそうそうないわよね」
「灰の海の魔法使いか……」
王子への想いは日に日に募るばかりです。
人魚姫は、海の魔法使いに会いに行くことにしました。
「イリス、お願い。案内して」
「本当に行くの?」
「うん」
「危なくなったら途中で引き返すって約束できる?」
「うん」
「気軽に返事するんだからさ。本当に危ないところなんだからね」
「わかってるよ。お願い、イリス」
「仕方ないなぁ……。ついて来て」
美しく安全な青い海から、ほの暗い危険な魔法使いの住む海へ。
薄気味悪く、恐ろしい海の道を越えて、流れの早い危険な海流を泳ぎ、人魚姫は海の魔法使いの住処へ行きました。
「リリーシアちゃん、待ってたぜ」
―海の魔法使い=カミーユ
「カミーユさん?泳げるんですか?」
「開口一番それか。そういうことは聞かないでくれ。っていうか、マリーだって泳げるか微妙だぜ」
「リリー。ちゃんと用件を伝えなきゃ」
「あの……」
「恋の薬なら俺に任せな。ちょっと強めの媚薬なら……」
「違います!」
「あれ?人魚姫は王子を落としたいんだろ?」
「えっと……。そう、なのかな?」
「流されないでよ、リリー」
「とりあえず、人間になる薬で良いかい」
「はい!」
「えっ。リリー、ここには死体の保存方法を聞きに来たんじゃなかったの?」
「防腐剤かい?海の中で使えるのなら結構面倒そうだな」
「あの、人間になる薬で良いです」
「だよな。でも、知ってるかい。人魚は恋した相手と結ばれなきゃ泡になって消えるんだぜ」
「……知ってます」
「ついでに、人魚が人間になると不都合なことも結構ある。魚の尾を失うから海の国には帰れなくなるし、人間の足は人魚にとってはナイフで抉られるような痛みを味わう代物だ。君は、それに耐えられるかい」
「痛みは大丈夫だと思うけど……。皆に会えないのは寂しいかな。イリス、会いに来てくれる?」
「リリー、人間って魚を食べるんだよ。ボクを食べるつもり?」
「食べないよ。魚は友達だもん」
「だったら、会いに行っても良いけど。ポリーたちも会いに来てくれるんじゃない?」
「そっか」
「人間になる決心はついたみたいだな」
「はい」
「だったら薬を作ってやるぜ。あ、言い忘れてたな。人間になる薬は結構強い薬だから、代償にリリーシアちゃんの声が必要なんだ」
「声?喋れなくなるってこと?」
「そう。強い薬の代償。副作用だけど、一種の呪いみたいなものだな」
「喋れなくても大丈夫かな」
「心配要らないって。目は口ほどにものを言うって言うだろ?」
「……はい。頑張ってみます」
「よし。じゃあ、今から薬を作るぜ」
人魚姫は自分の声と引き換えに、魔法使いに薬を作ってもらうことにしました。
薬の力で二つの足を手に入れれば、人魚姫は人間になることが出来るのです。
しかし、そうすると人魚姫は二度と海の王国に帰ることが出来なくなり、二つの足は、歩くたびに人魚姫に激しい痛みを与えると言うのです。
しかも、人魚姫が王子と結ばれなければ人魚姫は海の泡になって消えてしまいます。
「出来たぜ」
「あの、この薬、本当に飲んでも大丈夫ですか?」
「大丈夫だって。俺の作った薬が信用できないかい」
「……」
「頼むから、信用してくれ」
「……はい」
それでも愛しい王子に会いたかった人魚姫は、魔法使いからもらった薬を飲みました。
「……!」
※
陽が昇る頃、人魚姫は海辺の国のお城の傍にある岸辺に居ました。
「大丈夫かい」
人魚姫が目を覚ますと、目の前には憧れの王子が居ます。
「あぁ、そのままで。体は起こさないようにね。君は誰?どこから来たんだい」
「……」
王子に声をかけようとして、人魚姫は自分が声を失ったことに気付きました。
「喋れないのかな。それなら砂に文字を書いて……。え?それは駄目?……参ったな。とりあえず、これを着て」
「!」
人魚姫が自分の体を見ると、魚の尾ひれが、人間と同じ二つの足に代わっているのがわかりました。魔法使いの言う通り、人間になったのです。
人魚姫は、その美しい瞳で王子を見つめます。
「本当に、お姫様みたいに可愛いね。それに宝石のように輝く瞳。……私の元に来ないかい。大切にするよ」
人魚姫は王子に連れられて、お城に行くことになりました。
しかし、一歩歩くごとに足に激痛が走ります。
「歩くのが大変そうだね。抱えて行こうか」
「……!」
人魚姫を気に入った王子は、どこへ行くにも人魚姫を連れて歩き、人魚姫を大層かわいがりました。
しかし、人魚姫が二本足で歩く度に、その足には燃えるような痛みが走ります。
人魚姫は夜な夜なお城を抜け出すと、冷たい海に足を浸し、痛みを癒していました。
「リリー、会いに来たよ」
そんな人魚姫を心配して、毎晩のようにお姉さんたちが会いに来てくれます。
「今日はどこに行って来たの?」
「……」
「あっち?」
「また狩りに行ってきたのぉ?」
「王子が狩りに出かけるのはリリーが魚を食べないからだろう」
「どういうこと?」
「人間は魚を食べるんだ。王子は、魚を食べないリリーの為に他の料理を用意してるんだろう」
「……」
「ふーん。大切にされてるじゃない。リリー」
「そうね。リリーが歩くと足が痛いってことをわかってるから、馬に乗せて歩いてるぐらいだもの」
「王子様、優しいねぇ」
「……」
「どうしたの?リリー」
「喋れないって不便ね。そろそろ海に帰りたくなった?」
「……」
「違うのぉ?……もしかして、最近イリスが来ないから寂しいのぉ?」
「……」
「そうみたいだな」
「イリスは魔法使いの所に入り浸ってるわ。リリーが人魚に戻れる方法を探してるみたい」
「?」
「だって、王子を落とせなかったら、死んじゃうんでしょ?」
「泡になって消えるのよ」
「人間ごっこに飽きたらいつでも言いなさいよ。私たちが人魚に戻してあげるから」
「……」
「そろそろ戻ろう」
「リリー、また来るわ」
「元気でね」
「じゃあねぇ」
「またね」
「……」
※
「毎晩、どこへ行っているんだい」
「……」
「責めているわけじゃないよ。その足で移動するのは大変だろう。行きたいところがあるなら、どこへでも連れて行くよ」
「……」
「ついて来て欲しくないんだね」
「……」
「大丈夫だよ。でも、今度、海を渡った隣国に行かなければならないんだ。長旅になってしまうのだけど、一緒に来てくれるかい」
「……」
「ありがとう。……君に一つ、懐かしい話をしてあげようか」
「?」
「私は君と出会う前に、海で死にかけたことがあってね。その時に私を助けてくれた人が居るんだ」
「!」
「君を見ているとその人のことを思い出す。君と同じ、黒髪の美しい人なんだ」
「……?」
「その人は、岸辺で倒れていた私を見つけて、私を助けてくれた恩人なんだよ。もう一度会いたいと思うのだけど、どこの誰かわからなくてね」
「……」
「私はあの人のことがずっと忘れられない。……でも、今度行く国の姫と婚約しなくてはならないんだ」
「!」
「君だけは、ずっと私の傍に居てくれないかい」
「……」
「君は優しいね。そういうところが大好きだよ」
「……」
※
海辺の国の王子は、海を挟んだ隣の国に旅に出ることになりました。
もちろん人魚姫も一緒です。
王子と人魚姫は隣の国に到着し、その国の王様とお姫様に会うことになりました。
「ようこそ、いらっしゃいました。海辺の国の王子様」
―隣の国の王=ガラハド
「お招きいただき光栄です」
「とんでもない。お越しいただき光栄です。私の娘を紹介しましょう。ロザリー」
「ロザリー?」
王子はお姫様の顔を見て驚きますが、人魚姫はそれ以上に驚きました。
「お久しぶりです。王子様」
「君は、あの時私を助けてくれた……」
「はい」
「ずっと会いたかった」
「私も、会いたかったです」
この国のお姫様は、あの日、人魚姫に助けられた王子を発見し、王子を介抱した礼拝堂の娘だったのです。
再会を喜んだ王子と姫は手を取り合い、そのまま結婚の約束をしました。
※
船の上では、盛大な宴会が開かれています。
人魚姫が人魚だった頃に見た花火も、盛大に打ち上げられています。
今日は結婚式。
人魚姫が恋した王子が、隣国のお姫様と結ばれるのです。
恋した相手が別の女性と結ばれてしまうと、人魚姫は海の泡になって消えてしまいます。
幸福な二人を見ながら、人魚姫は船の甲板に出ました。
「リリー!」
すると、海の中からお姉さんたちが現れました。
人魚姫は驚きます。
「!」
お姉さんたちは皆、あの美しい髪を切り落とし、髪が短くなっていたのです。
「この短剣を受け取りなさい!」
お姉さんの一人が、人魚姫に短剣を渡しました。
それは、お姉さんたちが可哀想な人魚姫を救うために、美しい髪と引き換えに魔法使いから貰ったものでした。
「イリスが、リリーが人魚に戻る方法を探してくれたんだ」
「私たち、あの魔法使いと取引したんだよぉ」
「その短剣は魔法の力があるのよ」
「それで王子の心臓を貫きなさい」
「!」
「王子の血を足にかけるの。そうすれば、あなたの足は魚の尾に戻って海に帰れるのよ」
「効果は夜明けまで。急いでね」
短剣で王子の心臓を貫けば人魚姫は人魚に戻ることが出来ます。
お姉さんたちは人魚姫に短剣を託すと、海の中へ帰って行きました。
一人残された人魚姫は短剣を胸に思い悩みます。
「……」
しかし、愛する人を殺すことなどできません。
人魚姫は短剣を海に投げ捨てました。
そして、そのまま、その身を海に投げ出しました。
「馬鹿」
しかし。
「?」
人魚姫がそのまま海に落ちることはありませんでした。
「この話は俺が変えてやるって言っただろ」
「んっ……」
「声、出るようになったか?」
「?」
「もう一回する?」
「あっ、あの……」
「治った?」
「あれ……?声が……」
「足は?」
「……痛くない。どうして?」
「真実の愛で結ばれれば、呪いは全部解けるんだろ?」
「えっ?そうなの?……これって呪いだったの?」
「物語なんて、最後は丸く収まるようにできてるんだよ。ほら、物語を終わらせようぜ」
「人魚姫は泡になって消えるんじゃ……」
「消えないって言ってるだろ。心の優しい人魚姫は、精霊に救われて精霊になるんだ」
「精霊?」
―精霊=エルロック
心の優しい人魚姫は、泡になって消えずに、大気の精霊の仲間になったのです。
「本物のお姫様は、俺がこれから攫うけどな」
「ここ、海のど真ん中だよ?」
「だからなんだって言うんだよ。ほら、行くぜ」
「……はい」
人魚姫は精霊に手を引かれ、空高く昇って行きました。
おしまい。
※2014年12月5日に投稿したものを、こちらに移動しました※
地の文だけ読めば、だいたい人魚姫のお話しになっているはずです。
原作準拠で書いていますが、人魚の王様と王妃様は人魚姫たちの祖父母だし、ラストで出て来るのも大気の精霊じゃないし、結構違う部分もあります。
会話だけ読むと大分違う話しになっているかもしれません。
ところで、この世界には筆談ってなかったんでしょうか。人魚姫が人間の言葉を理解してたってことは、たとえ人間の文字がわからなくても、勉強すればすぐに修得できたのでは?って思うのですが。
意志疎通の方法は、言葉以外にもたくさんあると思うんだけどな。
配役は……。
登場人物が女の子ばかりなので仕方がない。
主人公が喋れないので他の人との絡みが全然ない。
誰が何話してるかわからなくなってしまいましたが、特に割り振って書いているわけではないので、お好みの人を当てはめて下さい。
―人魚姫=リリーシア
人魚姫と言えばリリーです。
リリーが知っているマーメイドの物語と、原作の人魚姫は違うんです。
あ。船のシーンでは、ちゃんとエル特製の船酔い止め薬を飲んでますよ。
―人魚姫の親友(の魚)=イリス
リリーの大切な相棒です。
決して、突っ込み役が欲しかっただけじゃ……。
―人魚の王様=シャルロ
―人魚の王妃様=カーリー
夫婦役。他に任せられる人が居ませんでした。
娘ばかりの親になったら大変そうですね。
―嵐A(黒子)=ブレスト
―嵐B(黒子)=ジオ
―嵐C(黒子)=メキブ
嵐を起こせる精霊の組み合わせ。
お話しの中では王子だけが船から落ちたことにしましたが、あの船は無事だったんでしょうか。
―海辺の国の王子=アレクシス
安定の王子役。喋らない相手の意思を汲むのも得意だし。
必然的に物語の進行役になりました。
原作の王子と人魚姫。
終盤まで本当に良い感じで、このままいけば二人は結ばれるはずだったのに。
会いに行った婚約者が自分を救ってくれた愛しの彼女だったことが分かった途端、簡単に人魚姫を捨てました。
王子を救ったのが私だって言えなかった人魚姫が悪いのか、最後まで自分を救ってくれたのが人魚姫だって気づかなかった王子が悪いのか。
真実を知っていたら、王子は人魚姫を選んでいたんでしょうか。
―礼拝堂の娘=ロザリー
原作では、自分を救った礼拝堂(原作では礼拝堂じゃない)の娘と人魚姫が似てるって言ってるんですよね。王子。
黒髪でお揃いだったのと、アレクの婚約者役なのでロザリーになりました。
―人魚のお姉さん長女=アリシア
―人魚のお姉さん次女=セリーヌ
―人魚のお姉さん三女=ユリア
―人魚のお姉さん四女=ポリシア
―人魚のお姉さん五女=マリアンヌ
あれ。みんな二番目に「リ」が入ってるんだ。意外な共通点。
原作では年子の模様ですが。実年齢に当てはめると、アリシアはマリーたちより年下で、一番下はポリーです。
末っ子がリリーに変わりはないですが。
何かとリリーの世話を焼きたがるポリーです。
Septarche的には七人姉妹にしても良かったのですが。メルはリリーの姉にはならないし、イーシャを出しても絡みにくいので、六人姉妹になりました。
っていうか、この姦しさは五人が限界。これだけ賑やかな姉に囲まれてたら末っ子も無口になりそうです。
―海の魔法使い=カミーユ
ポラリスでも良かったんですが、薬を作るなんて魔法使いと言うよりは錬金術師のお仕事なので、カミーユにお願いしました。
人魚姫は確実に王子を落とすために媚薬も作ってもらっておけば良かったんじゃないかな。
―隣の国の王=ガラハド
台詞も少ないし、誰でも良かったんですが。
ロザリーの父親役って考えるとガラハドかなぁと。
―精霊=エルロック
主人公なので登場させてみました。
いきなり出てきて真実の愛も何もないと思うのですが。
リリーの呪いを勝手に解いた以外は、ちゃんとストーリー通りの動きをしてくれました。
あー、良かった。
ちなみに、エルを王子役にしたパターンも考えていました。
リリーがエルを救う→エルがロザリーに助けられる→リリーが人間になってエルに会いに行く→王子が隣国の姫と婚約。しかもそれはエルを救ったロザリー→失意のリリーにお姉さんたちが短剣を渡す。
ポリー「エルも、リリーになら喜んで刺されるんじゃない?」
マリー「そうよ。さくっと殺っちゃいなさい」
セリーヌ「頑張って。リリーなら出来るわ!」
ユリア「ふふふ。エルなら大丈夫そうだよねぇ」
アリシア「……エルロックに何か恨みでもあるのか?」
マリー「普段の行いが悪いだけよ」
セリーヌ「そうね」
→リリーは愛する人を殺せずに海に身投げ。……しようとするところをエルに止められる→実は婚約したのは兄王子のアレクとロザリーで、エルとリリーは無事に結ばれる。END.
ストーリー展開として原作準拠にならなかったことと、エルがリリーを捨てるはずなんてない→序盤で落ちが見える。のもどうかと思ったので没になりました。
配役の変更はそんなになかったんじゃないかな。
配役を全員女性にして王子役がマリーっていうパターンも考えてたんですよ。上手くまとまらなかったので没になりましたが。
読んでいただきありがとうございました。
このお話しは人魚姫をモチーフにした二次創作です。
Septarche本編とは、まったく関係ありません。




