Sep:雑談。本と紙と活版印刷、Sepの教育事情、ついでに火器の話
Sepの世界には印刷された本が存在します。そして、紙も存在します。
ですが、本と紙の話をするなら活版印刷の話が欠かせません。
というわけで、まずは、現実世界における活版印刷の歴史から。
・活版印刷の歴史
活版印刷は、文明の発展を大きく手助けした重要な発明の一つです。
何故かと言うと。
古い時代では、情報の記録(書物)による知識は、特権階級が独占していました。
文字を扱える人が限られていたことや、記録媒体(紙など)が貴重であったこと等、理由は様々です。
しかし、活版印刷技術の発明によって、一般の人が、広く安く情報を得られるシステムが確立しました。これによって、歴史が大きく動くことになったのです。
では、回り道しながら、だらだら説明していきます。
「活版印刷」とは。
一文字判子(活字)を、さまざまに組み合わせて文字列や文章にした板(活版)を使って、紙へ印刷→大量複製を可能にした技術です。
一文字一文字アナログで活字(一文字判子)を組み合わせて、新聞のような活版(文字列を組み合わせて作った板)を作る作業を想像してみてください。……昔の人は苦労してたなぁ。一応、紙型を作ったりと量産のための工夫はもっとされています。
というわけで、活版印刷には、この一文字判子=活字が必要です。
「判子」のはなし。
判子の発祥は中国の蒙刻のイメージが大きいかと思います。
しかし、判子≒印章の最古のものはメソポタミア文明で発掘されています。
円筒印章と呼ばれ、図柄を掘った円筒形のもの(石?材質は様々らしい)を柔らかい粘土板に転がして使っていたそう。それが世界各地に伝わったとか。
つまり、判子の歴史は、人類の歴史と呼べるぐらい古いものだったりする。
あ。これ、割りとどうでも良い話かもしれない。
「活版印刷」の発祥。
これも、発祥は中国なイメージ。
一応、中国生まれなんですが。ところが、これ、中国では流行らなかった。活版印刷は先ほども述べたように、一文字判子=活字をまず作らなきゃいけません。中国などの漢字圏だと文字の種類が多く、ものすごい量の活字が必要になってしまいます。
一方、ヨーロッパなどのアルファベット圏は文字の種類が少ない=活字の種類が格段に少なく済みます。しかも、アルファベットは漢字に比べてわかりやすい記号。こっちの方が量産は楽そうですよね。
……っていうか、今使ってるキーボードを見れば明らかなのか。漢字全種類を盛り込んだキーボードなんて、一文字探すのも大変だし、使い勝手が悪いに決まってる。
(中国のキーボードもアルファベットを使った読み入力が主流らしい・・・?ごめん。使ったことないから正確なことはわからない)
というわけで、中国で生まれたはずの活字印刷技術は、中国では不人気なまま、活版印刷の父・グーテンベルクの元、アルファベット圏で圧倒的な支持を得ると、あっという間にヨーロッパで普及しました。
それがタイプライター、ひいては現在も使っているキーボード文化の基礎を作り上げることになったのでした。
ちなみに、日本でもヨーロッパから活版印刷技術が伝わってますが、流行らなかったそうです。
理由は漢字圏であり、かつ平仮名も使いたかった日本は必然的に活字が多くなる&浮世絵技術によって、すでに高度な木版印刷技術を持っていた為。
流石、東洋のガラパゴス。
挿絵のない本より挿絵のある本が良いってことで、文字だけの活版印刷よりも木版印刷の方が好まれたとかなんとか。
・・・あ。ちゃんと他の理由もあります。書道で良く見られるような、流れるように繋がる書体。これを活字に直すのが面倒だったという理由もあるそうです。木版の方がフォントの自由度が高いもんね。
さて。この活版印刷によって世界が変わります。
誰もが手軽に情報と知識を得られる世界の始まりです。
ヨーロッパにおいては、教会への信仰が揺らぐ原因になったことで有名です。
これまで聖書の知識は教会(特権階級)に独占されてきました。教会が語ったことが聖書の内容=神の言葉で間違いないと思われていたのです。
しかし、誰もが聖書を手に入れ、読めるようになった結果。あれ?教会の言ってることおかしくない?となったわけです。
教会が、聖書に書いてあるような書いてないようなこと……、つまり、教会の都合の良いように説法してきたことが、ばれました。
やがてそれは、神と教会によって王権を維持していた国家を揺るがす大問題に発展し、あちこちで宗教革命が勃発する運びとなるのです。
それは、特権階級の崩壊。
活版印刷によって人々の知識欲が高まり、教育レベルが上がり、古い体質を滅ぼすことになったのです。
というわけで、活版印刷は人類の文明の発展を大いに助け、社会に大きな変化をもたらした発明なのでした。
また、印刷技術の発展によって紙幣が作られるようにもなります。ただの紙切れにお金という価値がついたのです。
これによって、紙幣と偽造紙幣との戦いが始まります。
新しい技術と、その新しい技術を悪用する技術によって、紙の技術はどんどん発展してきました。
いつの時代も、技術の発展にはライバルが必要なんでしょうね。
以上が活版印刷の歴史のお話でした。
大まかに、ざあっとまとめましたが。
細かいところを見ていくと面白い発見は山のようにあります。
気になったところがあったら、是非、調べてみてください。
歴史は深く面白い。
・ファンタジー世界に本が存在するということ
現実の歴史の流れとしては……。
活版印刷の普及=誰でも、情報が手に入るように。
→人々の知識欲の高騰(+教育レベルの向上)=もっと情報(本)が欲しい。
→知識や情報を伝える本や新聞がたくさん作られるように。
→本の素材(紙)の需要が爆発的に増加。=紙が足りない。
→大量に紙が作られるように=製紙技術の発展。っていうか、作っても作っても足りない。
……という感じの流れがあります。
製紙産業は、公害問題とセットですが、今回は省きます。
というわけで。
ファンタジー世界で本が一般に手に入ると言うことは、活版印刷が確立されていると考えて良いわけです。
(活版印刷技術がある=紙の需要がある=製紙技術も発展する=本も一般に手に入る)
そして、都市の教育レベルも、誰もが文字を読める程度に高いと考えられます。
(「本=紙の需要」が無ければ、製紙技術の発展もない為)
※逆に、手書き本しか存在しない世界の場合。
紙は非常に貴重なものであり、活版印刷のような技術はないと考えられる。
知識は特権階級や富裕層で独占されるものであり、一般人が自由に学習できる場は存在しないか、非常に限られる。
書物や知識は口伝か手書きにより伝わるので、その過程で伝言ゲームのような変化や喪失があってもおかしくない。
また、外部から情報を運んでくる吟遊詩人や冒険者、旅商人の存在は貴重で、情報に対する対価は高かったと考えられる。
・Sepの世界における本と紙
現代(ラングリオン王国暦六百年ごろ)のオービュミル大陸では、製紙技術が確立され、本も普通紙も自由に手に入れることが出来る環境にあります。
本や紙は、安く手に入るものではないけれど、貴族じゃないと手に入らないほど高額なものでもない、という位置づけです。
〇本について
本は、「本ってこれぐらいの価格かな?」と思った二倍~三倍が相場ってところでしょうか。
……イメージしにくいかなぁ。
新しい本を読める頻度が、今の半分から三分の一、もしくは、それよりもっと少なく抑えられてしまうって感じです。
まぁ、この世界にも食費削って本を買い読み漁る人は居そうですが。
脱線した。
欲しい知識があった場合、王都の人は王立図書館に行きます。
図書館は広く知識の共有の場を提供しています。市民に対し、多くの本が期限付きで無償で貸与されています(要は貸し出してくれる)。
エルも調べたいことがあったら図書館に行きます。リリーとキャロルも王立図書館で良く本を借りているし、ルイスも休日に勉強に行ってます。
このように、本は、日常的に手軽に買うものだと思われてません。
一方で、本を売る店である「本屋」もあります。一般市民が暮らすイーストにも本屋があるのは、市民が買える価格のものだからです。
トリオット物語のような話題の本や、子供のための絵本、花の本など、本は、プレゼントすると喜ばれるものです。
ルイスも誕生日プレゼントにエルから買ってもらって喜んでいましたが、親から子供へのプレゼントの定番でもあります。そういえば、エルもフラーダリーやリュオンに買ってもらってました。(あれ?リュオンがエルに本を与えてたって話はしたっけ?)
また、専門職なら専門書は揃えたくなるもの。高くても売れる本は存在します。エルは(というか錬金術師なら誰でも)、古い本を集めるのが好きなので、古文書の写本等、レアな本があったら迷わず買います。
エルの場合、家に置くスペースが無いので、だいたいシャルロのところに置いてあるんですが。ちなみに、エルの書斎にある本は、勉強の為に養成所時代に揃えたものがほとんどです。
〇紙について
紙には等級があります。
高級紙は主に公文書に使用され、一般の人が手に入れる機会は低いものです。
ラングリオンの市民証もそう。偽造したところで、紙質とホログラムで偽物とばれる仕様になってます。
紙質によって文章の重要度が変わって来ると言っても過言ではない。
もちろん、丈夫なもの、絵画に向いているもの、持ち運びに適したもの……、用途別の紙の種類もあります。
等級が低い紙は、メモ紙として使われてたり、お店で使われる紙袋に加工されたりします。
最も、紙袋自体、現実における歴史が浅いものなので、紙袋の存在自体がファンタジーと言われても仕方ないのですが。
トイレットペーパー?Sepの世界には不要なものです。
なら、羊皮紙やパピルス紙は存在しないのか?
Sepの中では、古い時代に使われていたもの、あるいは錬金術で使う道具ってイメージです。
そういえば、血の魔法印は羊皮紙に書かれてたっけ。(すっかり忘れてましたが)
以上、本と紙のお話しでした。
・王都の教育機関
王都の人たちの教育レベルは高いです。
文字の読み書きも簡単な計算も、キャロルぐらいの子供が十分に出来ます。と言っても、学校のように、すべての子供が一斉に学ぶような機関はありません。
その役割として、礼拝堂や商人ギルド、守備隊等が関わっています。
※王立魔術師養成所は、優秀な人材の育成に力を入れていますが、すべての人に開かれた場所ではありません。
〇礼拝堂。
礼拝堂は、冠婚葬祭を執り行う場として、市民活動を推進する場として、広く市民に開放されています。アリス礼拝堂は、キャロルが入ってるシルヴァンドル合唱団の活動拠点です。
子供は、大人が仕事をしている間、礼拝堂で預かってもらうことが多いです。
(付きっきりの世話が必要な赤ちゃんや幼児は、ナニーやベビーシッターを雇います。家で面倒を頼むこともあれば、ナニーやベビーシッターと共に礼拝堂に預けることもあります)
礼拝堂では、子供に対し、無償で文字の読み書きやラングリオンの歴史を教えています。(必要な物品は寄付によって賄っています)
ボランティアからも、簡単な計算や針仕事、あるいは、もっと難しい学問を教わることがあります。
※礼拝堂の近くには貧困者や障がい者の為の共同居住施設があり、ボランティア活動に関わっています。現役引退した老人や軽犯罪者がボランティアに携わることもあります。
※ラングリオンでは軽犯罪で犯罪歴は付きません。(と言っても、軽犯罪の定義なんて国によって違うよね……)
ラングリオンでは、軽犯罪=明確な犯罪には当たらないが違法、違反、迷惑行為を指します。
例えば、「深夜に酔って暴れて周りに迷惑をかけた」「公共の場での喧嘩や決闘で通行の邪魔をした」(三番隊の出番です)なんていうのが、これに当たる。
軽犯罪で捕まえた人を牢屋に放り込んでおくなんてことは、まずしません。
さっさと反省を促す為、罰金やボランティア活動への従事で済ませます。
ちなみに、このボランティア活動で一番多いのは、街頭清掃だったりする。昨日、暴れて騒いでた奴が街の清掃やってるってことで、街の人の感情的にもチャラにしてもらいます。そんなことするのが恥ずかしい貴族は、罰金を払って終わりにします。
※最も、剣術大会中の決闘は禁止されている為、軽犯罪であろうとも牢屋に入れられます。
〇商人ギルド
商人ギルドは、簡単な計算を教える教室や、商人育成講座をやっています。
基本的な数学を扱う講座等、未成年者や貧困者等に無償で開いている講座がいくつかあります。
エル編でも語られていましたが、一般人向けに有償の講座を開いています。
手芸や料理といった趣味のものから、個人のスキルを高めるものなど様々です。
専門職の育成講座は信頼性が高く、修了した者には、修了証が貰えます。「事務官養成コースの修了証」は、ラングリオンの王城で働く事務職の雇用条件となっています。
※ギルドに加盟することで商業に関する講座の多くは無料で受けられます。
商人ギルド加盟条件として、伝統的に「偽りの金貨」が必要です。商売人なら掴まされたことはあるでしょう。冒険者に頼んでも用意してもらえます。
〇守備隊
守備隊は隊員に剣術を教えてくれるので、成人前後の男子が剣術を習う目的で、見習い入隊することが良くあります。
こんな感じで、ラングリオンには、無料で勉強できる場所があちこちにあります。本格的に勉強したいと思うなら、王立魔術師養成所を目指しましょう。一般人にとっては狭き門ではありますが、魔法が使えなくても、優秀な人材を広く求めています。
・花火と火器
花火があるってことは火薬(黒色火薬)が存在する。
火薬が存在するってことは火器が存在するはず。
Sepの世界にも火器はあります。
ただし、あるのは投石器を強化した大砲や固定砲台ぐらいで、今のところ、それ以上の火器の発明はないと思ってます。
何が言いたいかって言うと、要は、片手で扱えるような小型銃はありません。
理由その一。
移動式大砲は戦争(陸戦)で使いにくい。
大砲みたいに大型なものを運ぶぐらいなら投石器を作った方が楽。
歴史においても投石器は、事前に作っていたものを戦場に投入していたケースはほとんどなく、その場(戦場)で組み立てていたのが主流です。(その方が、移動コストが少なくて済む)
それに比べて、組み立て不可能な大砲は、事前に作ったものを戦場に運ばなくてはいけません。ばらして運べる投石器に比べて移動コストがかかる上、移動中に発見されるリスクも高かったりします。&製鉄技術がそんなに高くない場合、砲弾作るのも大変(まぁ、飛ばせるものならチーズでも何でも良いかもしれない)。でもって、敗北すれば置いて撤退することは必至。相手の懐に入ってしまう火器を、わざわざコストをかけて作る理由もありません。(っていうか、持って帰れない場合って壊すのかな。大砲って、壊すにしても隠すにしても大変そうだよね)
大砲は、城砦を責める時には威力を発揮するんでしょうが。それにしても割に合わないと思いません?これ。
というわけで、戦争において火器は需要が低いというレッテルが貼られています。
最も、都市や要塞の防御能力を高める目的で固定砲台が設置されることは良くありそう。飛ばせる砲弾を持ってなくても、あるだけで威嚇になる。
固定砲台は移動不可で重くて頑丈であることが期待されているので、大型化しても小型化するって発想は出にくいかな。
※これは全部、陸戦のお話しです。海戦になってくると話が変わって来るよねぇ。
理由その二。
魔法使いの存在。
まさにファンタジーらしい理由。機動性、命中率、コスト……。どれをとっても、魔法使いの方が利便性が高いのです。
エルみたいなのは、そうそう居ませんが。攻撃はもちろん、防御や回復もこなせる魔法使いの存在は、戦争でも重宝されます。
っていうか、魔法の力を込めることのできる「魔法の玉」が存在している以上、それに強力な魔法込めて放つ方が合理的。リリー編でその辺りの研究しているのがちょっと見える。
※魔法の玉を遠くに飛ばすのに大砲も使えるって考えると、もしかしたら火器が発展(小型化)する余地はあるかもしれない。
理由その三。
火器の研究が捗らない一番の理由は、これ。
火薬の原料となる硝石が、超貴重品。
一般人が手に入れることは、ほぼない。
花火はラングリオンの王族の専売特許。手持ち花火なんて存在していません。
研究に使える量が限られている上、良い火器が開発されたところで、硝石が安定的に手に入らない状態では無意味なのです。
というのも、この世界では、火薬に必要な「硝石」を天然資源に頼るしかありません。
現実世界では、硝石を簡単に手に入れる方法はあるんですが。この世界でその方法は無理です。
ほら、この世界、トイレがないから。
RPGにおいて、主人公が使うことのないトイレが存在するファンタジーなんてナンセンスだと思いませんか?
硝石に関連してもう一つ。
ラングリオンが硝石を国で管理し、カウントダウン等のイベントで大量に打ち上げているのは、市民の娯楽の為だけじゃありません。
権力の誇示と、硝石を潤沢に保有していることを他国に知らしめる為です。
(ってことは、火器の開発が出来れば軍事大国になれるのにって思ってる人が一定数居るってことでもあるんですが・・・)
つまり、ラングリオンは硝石が潤沢に出る鉱脈を完全に独占出来ているのです。
その場所は……。
エル編でちょっと語られてました。硝石のある場所は国によって厳重に管理されています。それこそが、アルファド帝国から受け継いだ最大の遺産と言っても良いかもしれません。
まとめると……。
現時点では、火器の小型化=銃の開発が進む要因はないものの、将来的には開発の余地があるって感じでしょうか。単純に、作者がファンタジーで銃を出したくないだけっていうとそれまで。




