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智枝理子の資料集  作者: 智枝 理子
Sep2リリー編バッドエンド「迷走破綻」
18/56

153.魔法の彫刻

目次と注意書き


 Septarche2リリー編、Ⅶ.七色の弧「152 混ぜて」まで未読の方は、ネタバレありです。

 このお話の次、「153 魔法の彫刻」からバッドエンドに分岐します。

 

目次

153.魔法の彫刻

※間に「154 七つ葉と縁」が入りますが、本編と内容が同じ為、割愛します※

155.輝きの約束

156.迷走破綻

終章


 夕食の後片付けをして。

 装備を整えてから、エルと一緒に隊長さんの家を出る。

 少し寒かったかな。温かいマントにするんだった。

 あれ?

「エル。刀が光ってる……」

 エルが剣術大会で使ってた刀。この前、アレクさんの部屋から持ち出した武器だ。

「ロマーノで、太陽の神の力を得たんだ」

「ロマーノで?」

 エルが刀と短刀を抜く。

「これは彩雲。こっちは、逆虹。どっちも、太陽に縁のある名前だろ?」

 どっちも太陽の光が関係してるんだっけ?

 すごく輝いてる。

 あれ?

 彩雲と逆虹の、この輝き……?

「これ作ったの、師匠じゃないよね?」

「良く解ったな。作ったのはアヤスギだけど、ルミエールに手入れしてもらったんだ」

「師匠が……」

 そうだったんだ。

 ありがとう、師匠。

 エルに力を貸してくれて。

 

 エルと手を繋いで、オルロワール家の裏口へ。

 そこに居た兵士さんの案内で、ヴィエルジュの大樹がある所に行く。

 ここ、前に私が来た場所だよね。

 メルが使ってる部屋の近くのはずだけど、今は暗くて良く見えない。

「ヴィエルジュ」

 エルが呼ぶと、大樹の洞が開いた。

「アレクのところに連れて行ってくれ」

「良いだろう」

 暗い洞の中から声が聞こえる。

 エルと一緒に大樹の中に入ると、光に照らされたヴィエルジュの顔が見えた。

 

 転移する。

 

 いつものバルコニーだ。

 エルと一緒に降りて、アレクさんの部屋の中へ。

「こんばんは。ロザリー、ライーザ」

「こんばんは」

 部屋に居るのは、二人だけ?

「エル、リリー。こんばんは」

 ロザリーは、いつものソファーで編み物をしている。

 ライーザは軽く礼をした後、メイドの待機部屋に行ってしまった。

「アレクは?」

「もうすぐ戻ると思いますよ」

 大陸会議、忙しそうだよね。

 ロザリーの方へ行く。

「ロザリー、何を作ってるの?」

「膝掛けです。以前、王妃様にお作りしたのですが、侍女にも同じものを贈りたいと仰られたので」

 前みたいに、立体的な花の飾りがついたものだ。

 ロザリーって、本当に器用だよね。

「エルロック様。バイオリンをお持ち致しました」

 ライーザがバイオリンケースを持ってる。

「良くわかったな」

 そう言って、エルが受け取る。

 エル、バイオリンが欲しかったの?

「コーヒーをお淹れいたしましょうか」

「ん。頼むよ」

「かしこまりました」

 上機嫌でエルがバイオリンを出して、エルがバイオリンの音をいくつか鳴らす。

 何を弾くのかな。

 エルがバイオリンを構え直して、演奏を始める。

 ……綺麗な音色。

 夜想曲風レント。

 なんだかロマンチックな曲だ。

 

 

 余韻の残る綺麗な曲だった。

 一息ついて拍手をしようとしたら、先に拍手をした人が居た。

「アレク」

 いつ、部屋に入って来たんだろう。

 全然気づかなかった。

「美しい音だったね。エルがバイオリンを続けていること、先生はお喜びになるんじゃないかな」

「会ったのか?」

「どうぞ」

 ライーザが、私たちの前にコーヒーを四つ並べる。

 エルはアレクさんと何か話してるみたいだし、コーヒーを飲んで待ってようかな。

「エルは、バイオリンが好きなのですね」

「うん。……あ、そっか」

「どうしたんですか?」

「明日、エルのバイオリンの先生に会いに行くんだ。だから、バイオリンが欲しかったのかなって」

「そういえば、アレクもそんなことを言っていた気がします。昨日、来ていた演奏家が、エルが慕うバイオリニストだと」

「そうだったんだ」

 だから、アレクさんはバイオリンを用意しておいてくれたのかな。

 ……急に、変な声が聞こえて顔を上げる。

 これ、アレクさんの笑い声だ。

「笑う前に、ちゃんと答えろ」

「いや……。うん。……あぁ、本当に」

 そんなに面白い話をしてたのかな。

 エルは呆れてるみたいだけど。

 ロザリーが立ち上がって、アレクさんの方へ行く。

 代わりにエルが私の隣に座って、コーヒーを飲み始めた。

「アレクさん、どうして笑ってるの?」

「本人に聞け」

『あぁなったら、放っておくしかないからな』

 カート。

 ……アレクさん、たまに本当に変だよね。

 ロザリーがアレクさんを抱き寄せて、笑いの止まらないアレクさんの背を撫でている。

「良いよ。……その案に乗ろう。……用意するのは、砂漠の棺」

 砂漠の棺って、封印の棺のことだよね。

 棺がある場所は、月の渓谷。前にあの人と戦った場所だ。

 コーヒーを飲んでいると、ようやくいつもの感じに戻ったアレクさんが、私たちの方を向く。

「夜も遅いからね。私も行くよ」

「え?」

「今から取りに行くのか?」

「明後日には出発するのだし、今夜の内に終わらせておこう」

「別に、時間がかかることじゃないぞ」

 ……そうなの?

「私が取れる時間もあまりないからね」

「アレク。出かけるなら、近衛騎士を連れて行くべきです」

「撫子の騎士が一緒だよ」

「リリーの主命はエルの護衛です。アレクの護衛ではありません」

「参ったな。……ライーザ、グリフを呼んでくれるかい」

「はい」

 アレクさんの護衛、今はグリフがしてるんだ。

「ロザリーの護衛はどうするんだ」

「ロニーが居るよ」

 ロザリーの護衛はロニー。

 そして、私の護衛対象はエル。

 ……アレクさんは、勇者ではなく、近衛騎士としてエルと一緒に居て欲しいと思ってるのかな。

 部屋に入って来たグリフが、アレクさんの方に行く。

「どうしたんだ?」

「出かけるよ」

 グリフがため息を吐いてる。

「大陸会議の間は、これだけにしてくれよ」

「グリフに頼むのは、今回だけにしよう」

 アレクさんの傍に居た精霊が一人飛んで行く。

『また告げ口されてるぞ』

『本当に懲りないな』

 告げ口って……。今のは、国王陛下の精霊ってこと?

 前に、一緒に居るのは味方の精霊ばかりじゃないって言ってたっけ。

「その前に、ヴィエルジュに棺を運んでもらえるか聞いて来る。リリー、ヴィエルジュに頼んで来よう」

「うん」

 

 エルと一緒にベランダに出る。

「ヴィエルジュ」

「何だ」

「頼みがあるんだ。封印の棺の運搬を手伝って欲しい」

「良いだろう」

 あっさり了解してくれた。

「砂漠で呼び出したら、来てくれるか?」

「可能だ」

「えっ?大丈夫なの?」

―木々を生やすことのできる土地ならば、どこにでも行くことは可能だ。

 砂漠に木なんてないよね?

「砂漠にも植物はあるからな」

「あの地はかつて、植物が豊かにあった場所だ」

「……そっか」

 炎の大精霊が焼き尽くす前は、自然豊かな場所だったんだっけ。

「月の渓谷で呼び出して、封印の棺を回収し、その後、皆でここに戻って来る。棺はヴィエルジュが保管していてくれ」

「保管?どこかに運ぶのではないのか」

「運ぶよ。神の台座に。封印を解いた状態で」

 急に、ヴィエルジュの顔が曇る。

「あの男に神の力を渡すなど、あってはならない」

 そうじゃないんだけど……。

「あのね、ヴィエルジュ。これは……」

 話そうとしたところで、エルに口を塞がれる。

 そして、エルが耳元で私に話す。

「今、話したら意味がないだろ」

 わかってるよ。

 大切な言葉は、あの人が言わなくちゃいけないことだって。

「俺たちは、この棺を賭けてあいつと交渉するつもりだ。交渉にはヴィエルジュも参加してもらう」

「交渉?そんなもの、あの男には無意味だ」

「俺たちは、意味があると思ってる」

「勇者に望まれているものは、そんなものではない」

 ヴィエルジュ……。

『エル。リリーに任せてみたら?』

 エルが手を離してくれた。

 ありがとう。イリス。

「あのね。これは、私たちが勝つ為に必要なことなの」

「勝つ為に?まさか、神の力を取り込むつもりか?神の力を取り込むことが出来るのは、あの男だけ。お前たちが中身を手に入れようとしたところで……」

「勘違いするな。俺たちは、中身が欲しいわけじゃない」

 エルがヴィエルジュの言葉を止める。

 頑張って説得しなくちゃ。

「では、あの男に中身を明け渡そうと言うのか」

「そうじゃなくって……。私たちは、私たちが納得する方法であの人に勝ちたいの」

「戦いによる勝利とは、敵の死を意味するだろう」

「違う。私たちは、滅ぼす為に戦うんじゃない。取り戻す為に戦いたいの」

「取り戻す?」

「本来あるべき姿に」

 あの人を。

 ヴィエルジュを。

 この、すれ違いの状態を解消したい。

 私を真っ直ぐ見ていたヴィエルジュが、目を閉じる。

 ……ヴィエルジュが、あの人になんて返事するかはわからない。でも、お互いに素直になれる時間があるなら、気持ちの確認はできるはずだ。

 アレクさんとロザリーも、ちゃんと気持ちの確認が出来た。

 だから、きっと二人も……。

 ヴィエルジュが目を開く。

「良いだろう。封印の棺は、私が神の台座へ運ぶ」

 良かった。

「ありがとう。ヴィエルジュ」

「ただし、神の台座のどこへでも運べるわけではない。運べるのは、すでに私の大樹がある場所だけだ」

「その場所、あいつは知ってるのか?」

「知っている」

「なら、問題ない。……俺たちは、これから転移の魔法陣で砂漠へ行く。月の渓谷で呼び出すから、待っててくれ」

「わかった」

 

 部屋に戻ると、アレクさんとグリフが出かける準備をして待っていた。

「話は付いたのかい」

「あぁ。……リリー、防寒着は持ってるか?」

「大丈夫」

 砂漠用のマントもあるけど、夜だから防寒用のマントで良いよね。

 毛皮のマントを出して羽織る。

 エルは、炎脈のコートにしたみたいだ。これも、防寒着になるんだっけ。

「行きはセントオ経由でコッロの魔法陣へ飛ぶ。ヴィエルジュを呼び出して封印の棺を預けたら、リリーが封印を解く。そして、皆でヴィエルジュと一緒に帰って来る」

「ん?それだけか?」

「そうだよ」

 それだけっていうか……。

 私、本当に封印の棺の封印を解けるのかな。

 そんな魔法、使ったことないのに。

「行ってくるよ」

「はい。気を付けて」

 アレクさんがロザリーの頬に触れて。二人で見つめ合って微笑む。

 二人とも、前よりも素直に向き合えるようになったのかな。

 ……もっと、言いたいことがありそうな顔してるけど。

 エルが転移の魔法陣を描いて、こちらを見る。

「全員、手を繋いでくれ。セントオに飛ぶ」

 

 ※

 

 砂漠の月の渓谷。

 ……きれい。

 月の石が、リュヌリアンのように淡く光って、いつにも増して幻想的な光と砂の世界が広がる。

「エル。先にヴィエルジュを呼び出してくれるかい」

 この辺りには植物なんて見当たらないけど。

 大丈夫かな?

「ヴィエルジュ。ここに来てくれ」

 エルが呼ぶと、少しの時間をおいて、地面が揺れて。

 目の前にヴィエルジュの大樹が現れて、洞が開く。

 中を覗くと、さっきと同じようにヴィエルジュが座っていた。

「じゃあ、封印の棺を……」

 エルの言葉が終わる前に、エルの方で何かが煌めく。

 え……?

 アレクさんが持つサンゲタルと、エルの持つジュレイドが交差している。

 どういうこと?

 アレクさんが微笑む。

「砂時計の砂が落ちるまでに私を倒してごらん」

 倒すって……。

「おいで」

 羽織っていたマントを取り払って、アレクさんが空を飛ぶ。

 月の渓谷の上に行くつもりだ。

「戦うの?エル」

 エルが頷く。

「行ってくる」

 アレクさんを追って、エルが飛んで行く。

『追わなくて良いの?』

 イリスこそ。

『ボクは、エルに呼ばれたら行くよ』

 呼ぶかな。

 月の魔法はエルに効果がないし、アレクさんは魔法を使わないはずだ。

 だったら、エルも魔法は使わないよね。

 グリフがアレクさんのマントを拾ってる。

 その手には、砂時計も。

「それって、何を計る砂時計なの?」

「乾燥パスタ用だ」

 いつもキッチンに置いてあるのだ。

 だったら、すぐに帰って来るのかな。

「暇なら、俺と勝負でもするか?」

「え?でも……。前にここに来た時は、あの人が来たから……」

「一度負けてる戦場には、わざわざ来ないと思うぜ」

 どうなんだろう。

 ここは月の女神の力で溢れてる場所で、あの人にとって苦手な場所だ。

 それに今は夜で、雲を追い払えば月の女神の助力が得られる。ヴィエルジュも居るし、エルとアレクさんも居るし……。

 あれ?もしかして、これってすごく私たちに有利な状況?

 ……だったら、来ないかな。

「うん。じゃあ、勝負する」

「ルールは簡単。この砂時計が落ちるまでに、俺が作った岩を砂にしてみな」

 岩?

 グリフは、大地の魔法が使えるみたいだよね。

「わかった。やってみる」

「よし」

 グリフが目の前に向かって魔法を使う。

「岩……?」

 空中に現れたのは、フィカスぐらいの大きさのドラゴンの形をしたもの。

『すごいね。大地の魔法使いって、彫刻が得意なの?』

 嫌な予感がして、リュヌリアンに手をかける。

「剣を使うのはなしだ。ここなら好きなだけ魔法を使えるんだし、魔法で壊してみな」

 魔法?

 あの岩のドラゴンが砂になるイメージ……。

 ……砂にならない。

 当たり前か。思っただけじゃ魔法なんて使えない。

 どうしよう?とりあえず、直接触ってみる?

『来るよ』

 跳躍して避けようとして、砂に足を取られて転ぶ。

 危ない。

 慌てて砂の上で転がって、ドラゴンの攻撃を避ける。

 ドラゴンが素早く通過した勢いで、辺りに砂が舞った。

 砂塵で周りが見えない。

『どうするの?』

 私も飛ぶ。

 砂の魔法で砂塵の上まで飛んで、岩のドラゴンと対峙する。

 あれを砂にする。

 真っ直ぐ私の方に向かって飛んできたドラゴンの羽の部分を掴んで、砂をイメージする。

 ……だめだ。全然、砂になってくれない。

『何やってんの?』

 どうして?

 グリフの魔法の方が強いってこと?

 ……ドラゴンは、私を押しながら飛んでる。このままじゃ月の石の壁にぶつかる。

 どうにかしなくちゃ。

『リリー、ぶつかるよ!』

 イリス。

 氷の刃をイメージして、岩のドラゴンの羽に突き刺す。

 岩が削れた。

 こっちの方が効果がある?

 ……そっか。より、魔法の力が強く発揮されるものをイメージした方が良いんだ。

 でも、まずは避けないと。

 翼を掴んでいた手を離して、岩のドラゴンの上に飛ぶ。

 ドラゴンは軽々と方向転換して、私を追ってきた。

 頑丈で重い岩とは思えない動きだ。まともにぶつかったら、かなり吹き飛ばされそう。

 リュヌリアンで薙ぎ払えたら良いのに。

 ……だめだよね。

 今のところ、私の方が早く飛べてる。

 落ち着いて距離を取って。

 剣……。

 砂の剣をイメージ……?

 違う。もっと威力の高い月の魔法を、私は知ってる。

 新年に、紫竜フォルテに向かって放たれた剣。

 振り返って、あの時見たものをイメージして。

 放つ。

 

 金色に輝く大剣。

 

『おぉ』

 イメージ通りの黄金に輝く剣が、岩のドラゴンに向かって放たれる。

 そして、岩のドラゴンを砕いて砂に変えた。

 ……出来た。

『リリー、落ちないでよ』

 そうだ。私、空中に居たんだ。

 集中力が切れた瞬間、落下する。

『リリー!』

「大丈夫」

 着地の瞬間に砂の魔法を使って衝撃を緩和する。

『冷や冷やさせないでよ』

「ごめんね、イリス」

 えっと……。

 グリフは?

 周囲を見回して、ヴィエルジュの大樹がある方に向かう。

「グリフ、間に合った?」

 グリフが砂時計を私に見せる。

「あぁ。ぴったりだ」

 砂時計の最後の数粒が落下した。

 良かった。間に合ったんだ。

「本当に使えるんだな。アレクと同じ魔法」

「え?……うーん」

 使えてるのかな。

 金色の大剣は上手く出せたけど……。

「これ、アレクに届けてくれないか?俺は上までは飛べないんだ」

「わかった」

 グリフから砂時計を預かって、月の渓谷の上に向かって飛ぶ。

 

 月の渓谷の上。

 時が止まっているかのようにアレクさんとエルが向かい合っていて。

 アレクさんのサンゲタルが、エルの脇に当たってる。

 一瞬だけ、アレクさんが私の方を見た。

「時間だ。……惜しかったね」

 二人が剣を下ろす。

 これが、二人の戦いの結果?

 最後は、エルがアレクさんに斬られてるみたいだったけど……。

「本気だったよ」

「本当に?」

 エルの言葉に、アレクさんが微笑む。

「楽しかったよ。……最後も、レイリスに止められなかったら、力を緩められなかったかもしれない」

 エル、アレクさんの本気を引き出したんだ。

 そして、エルも本気だった。

 アレクさんがエルの頬に触れる。

「エルは強いよ。自分を信じて進めば良い」

 ……でも、結果はエルの敗北。

「エル!」

 呼ぶと、エルが振り返る。

 ……元気がなさそうだ。

「怪我してない?」

「してないよ」

 エルとアレクさんが剣を鞘に納める。

 エル……。

 

 ※

 

 エルと一緒に、封印の棺を運ぶ。

 二人でヴィエルジュのところまで持って行って、大樹の中へ。

『リリー』

 カート?

『俺たちはそいつに触れるとやばいんだ。もっと奥に入れられねーか?』

 これ、精霊が触っちゃいけないんだ。

「エル、もっと奥の方に入れられる?アレクさんの精霊が触れたら大変みたい」

「そうだな」

 精霊には、なるべく手前に居てもらおう。

「ヴィエルジュ、もう少し広げられるか?」

「可能だ」

 すぐに中が広がった。

 エルが大樹の中に入って、棺を奥の方に押す。

「これから封印を解くから、開けないように気を付けてくれ」

「わかった」

 ……封印、私が解くんだよね。

 エルが大樹から出てくる。

「リリー。封印を解こう」

「えっ?あの……」

「ちゃんと教えるよ。魔法陣の中央に立ってくれ」

「うん」

 言われた通り、エルが前に描いた転移の魔法陣の上に立つ。

「魔法陣が消えるイメージをしながら、スタンピタ・ディスペーリって唱えてくれ」

 足元の魔法陣が消えるイメージ。

 お願い。

 消えて。

「スタンピタ・ディスペーリ」

 封印解除。

 急に、周りが光り出す。魔法陣が光って、空中に浮かび上がってくるくる動く。

 動きが止まったかと思うと、眩しい光を放って、消えた。

 周りにはもう何もない。

「これで、終わり?」

「あぁ」

 本当に、私、出来たんだ……。

「帰るぞ。俺は封印の棺の傍に居るから、リリーは入口の方で、アレクの精霊を守ってやってくれ」

「わかった」

 エルが先に大樹に入る。

「精霊は頼んだよ」

「はい。……皆、集まって」

『ちゃんとリリーの言うこと聞かねーと置いて行かれるぞ』

「もう。置いて行ったりしないよ」

 グリフ、アレクさんに続いて、大樹の中に入る。

「皆、私の前に居てね」

 精霊たちを確認する。

 大丈夫。皆、居る。

「エル。皆、揃ったよ」

「ん。じゃあ、ヴィエルジュ、アレクの部屋に戻ってくれ」

「わかった。では、転移する」

 大樹の洞が閉じて。

 

 転移する。

 


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